代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

都市ガスの復旧方法について -大阪ガスさんの説明よりー

皆さま、お元気ですか?地震に合われた方、ご無事でしたか?

朝、駅に向かっていたところ、後ろからどーーんとものすごい音がして、ざっと風が吹いたように思いますが、何が起ったかよくわからないままでいたら、まさかの直下型地震でした。今から思うと、その方向が震源地の方向。大阪北部ですが、やや震源地からは離れています。

幸いにして家族も会社メンバーも全員無事で、明日以降、余震に警戒しつつ、できるところを日々と、そう思います。明日はスニーカーで出社予定。

さて、うちは都市ガス供給停止地区ではなかったのですが、ガスは止まっていました。おかしいなぁと思いつつ、Lineでヅカ友のSちゃんと話していたら、ご近所さんが復旧方法を教えてくれてと何気ない会話。

あれ?もしかして?

そう思って、パネルをあけてリセットボタンらしきところを旦那さんがいじってみたところ、復旧しました。震度5以上だと自動で止まるということも知らなかったです。

 

で、ここからは、都市ガスが供給停止区域以外なのに、ガスが止まっている友人のために私信としてお伝えします。ブログをお読みの方のどなたかにでも届けば幸いです。問い合わせ電話もなかなか通じないようなので・・。

以下、大阪ガスさんのtweetより。(あくまで復旧できることがあります、とのことですのでご注意ください)

「ガスが使えない場合、下記の方法によりマイコンメーターを復旧できることがあります。

現在、大阪ガスWebサイトがアクセスしにくい状況になっており、ご迷惑をおかけしております。

引き続きFacebook、Twitterで情報を発信いたします。」とのこと。

 

そのtweetで、以下の説明文の画像が示されています。

以上文章および以下の画像の出典:大阪ガス通信,2018年6月18日

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皆さまの無事を祈りつつ・・。

一緒に生きるよ!

宙組・天は赤い河のほとり ライブビューイング感想 とてもとても良かった!

皆さま、こんばんは。本日、映画館にて宙組「天は赤い河のほとり/シトラスの風ーSunriseー」千秋楽のライブビューイングを見てきましたので、その感想をお芝居についてお届けします!

一言でいうと、とてもとても良かった! 驚くほどでした。

宝塚大劇場で観劇した時に比べると特にお芝居が素晴らしい変化を遂げておられ、その変貌は、3月16日に始まった真風さんと新生宙組の闘いの軌跡でもあるかのような鮮やかな変貌でした。ドラマティックな音楽もあって、疾走感のある青春の闘いというような勢いがありました。 

 

1.真風さんのお芝居での歌の自信

大劇場の時から真風さんのお歌は良く、安定しておられたと思うのですが、間の期間を含めてほぼ3か月にわたって舞台上で歌われる中で、おそらくは自信を付けていかれたと感じます。その自信が伝わってくる伸び伸びとしたカイル皇子としての迫力に満ちた歌声でした。

 

2.星風まどかさんのユーリの演技

素晴らしかったです。宝塚大劇場で拝見した際にとても気になったかなり早いテンポでのセリフが、様々な緩急の中で表情をもって感情を乗せて話されるようになった印象があります。

もともと澄んだ素直な歌声で、ショースターの才能もおありになる娘役さん。後はお芝居のセリフだけと思っていたのですが、さすがお若いだけあって成長が早い!

先生方のご指導も、真風さんのサポートもいろいろあったと思うのですが(愛ちゃんの原作ファンとしての熱血サポートもおそらくは)、安心してお芝居に身をゆだねることができました。

 

3.まかまどコンビ

宝塚大劇場の頃から真風さんがとても優しい目でまどかさんを見ておられるのを拝見していて、これは大丈夫かな?と思っていたのですが、ものすごく大丈夫でした!!

まどかさんが取材などでみせられているとおり、真風さんへの尊敬や憧れが見ている側にも伝わってくる一心なまなざし。

ずっとずっと、真風さんを見ておられるのですね、まどかちゃんは。

「ヴァンパイア・サクセション」ではそのコンビネーションが生れる前に、真風さんが主役として走り出していかれた印象を持ってたのですが(少なくともDCでは)、トップコンビとして長期間の公演を終えられた今、素敵なコンビネーションが生まれ、見ている側にも伝わるように思います。

背が高くすらっとした真風さんの優しいまなざしの先に、可憐で芯が強く「歌劇」や他の方のお茶会等のエピソードから察するに少しお茶目なまどかさんがおられて。二人でにこにこほっこりとした暖かな関係性があるように拝見。ちぎみゆ時代のガラスケースに入れて飾っておきたい素敵なコンビをほうふつとさせる多幸感がありました。

素敵な男役さんと、その男役さんを慕う可愛い娘役さんをにこにこと見るというのも、宝塚ならではの喜びだと思うのですね。私は力が拮抗するような並び立つトップスターの関係性も好きですが、まかまどには宝塚ならではの見る側の喜びを感じます。

宝塚大劇場では、ラムセスの「俺の嫁になれよソング」(注 そういうタイトルではない)の場面、あまりにまどかさんが楽しそうで、「ちょっとぉぉ、カイル皇子はどうなったんよ!カイル皇子は?!」と客席で静かーーに激怒しておりましたmiyakogu(抑えてましたよ、もちろん)。軽妙に素敵な演技を見せておられるラムセスキキちゃんには悪いのですが、本日は「あ、カイル皇子のこと、忘れてないんだな」という演技になっておられました。

別の場所にいてもなお、相手役の存在を感じさせる演技だったということです。

そのため、銀橋での「私、帰らないよ!」の場面、観ている側の心にぐいぐいと迫ってくる力があり涙、涙、涙でした。

その前に、真風さんカイルが一人でユーリを帰そうとする場面の真風さんの伸ばした後に閉じられた指先、うつむいた横顔の切なさ。グッジョブ!ライブビューイングご担当者様。素晴らしい場面でした。

 

4.見事な宙組コーラスと下級生さんのご活躍

このお芝居を盛り上げているのはとても素敵な音楽。お芝居冒頭、考古学者になっているかつてのユーリのボーイフレンド氷室(希峰かなたさん)が読み始める「天と地の・・」の直後に響く音楽が美しいですよね。あの旋律、とても好きです。重厚で、今から素晴らしい物語が始まるのだという期待感を地響きのように伝えてきます。

特筆すべきは宙組さんのコーラス。

いったん劇場の天井にばーーんと届いた後、劇場一杯にその声が降り注ぐかのような素晴らしいコーラス。今の宙組さんは明日へのエナジーで素晴らしい歌声を響かせておられる美風まいらさんを筆頭に、中堅~下級生さんにお歌が上手な方が固まっておられて、皆様、本当に素晴らしい。

主要役の方々については既に書いたとおりですが、本日は下級生さん中心に。

お祭りの場面で、出てこられる穂稀せりさん(だと思うのですが、違っていたら教えてください)と若翔りつさん。冒頭出てこられる小春乃さよさん。今回のお芝居で素晴らしい演技を見せてくださっている華妃まいあさん。クルヌギアでの秋奈るいさん(こちらも違っていたら教えてください)。

桜木みなとさん、和希そらさん、瑠風輝さん、瑠依蒔世さん、鷹翔千空さんとお歌で活躍されてきた方々に加えて、ご活躍の方が増えるのは拝見していても嬉しいことです。

お芝居でも、ティトの愛海ひかるさん真名瀬みらさんがご活躍、「神々の土地」の優希しおんさんのように新たな注目を集めたと思います。組替えでこられた天彩峰里さん、ネフェルティティ子ども時代の夢白あやさんも美しく素敵でした。

今日の千秋楽ならではのアドリブも楽しかったですよね!ラムセス一家は何かと楽しい。

ご退団の星条海斗さんのウルヒ、純矢ちとせさんのナキア、澄輝さやとさんのネフェルティティ、愛月ひかるさんの黒太子・マッティワザ、風馬翔さんのタロス等、複雑な心境を映し出した見事かつ重厚な演技、あるいは蒼羽りくさんや桜木みなとさん、和希そらさんのように原作にある設定をさりげなく織り込んでくださった繊細の演技のもと、様々な下級生さんが多彩にご活躍の本作、結果として素晴らしい仕上がりでした。

多分、今、組の状態がとてもいいのだろうと想像します。少人数で集まって演技について話し合ったり、自主的に練習したり、そういう小さな努力が結集されたであろう総合力を本日、感じました。ブラーボーー!!

 

5.期待以上の成果と清く正しく美しいスター

真風さんはおそらく、素敵なトップになられるだろうとある程度予測はしていたのですが、まさかお披露目の第一作めで、新生宙組さんがこのような素敵な成長とまとまりを見せてくださるとは正直、思っていなかったのです。予想以上の嬉しい驚きです。

勝手ながら、その根底に自分は宙組20周年に巡り合ったトップなんだという真風さんの覚悟を感じます。

真風さんは仮に他の組でも素敵なトップスターになられたでしょう。それだけの育て方をされていて、そういう育て方をしたくなる何かをお持ちのはずだからです。

けれど、20周年の節目を迎える宙組で良かった。朝夏まなとさんという太陽のようなトップのもとで、安定した幸せな2番手時代を送ることができて、本当に良かったとまぁ様におおいなる感謝を!

そして、素敵なコンビネーションを生み出しつつある星風まどかさんに感謝を。

それまでご縁のなかった宙組で退団公演となったのに、いつも素敵なコメントを出してくださった星条海斗さんにも感謝を。さすが芸歴20年、重厚な品を今公演に加えてくださったと思います。これからの人生も着実に前進されるでしょう。おばあ様とのお約束だったという「10年」の倍を宝塚で一心に過ごしてこられたことは、大きな力だと思います。

今公演、真風さんに携わってくださったすべての皆さまに感謝を込めて、ありがとうございました! ←いや、あんたが言うてどうすんの、しかもお披露目なんで、今からなんで、落ち着いて、miyakoguさん?!

 

真風さんは清く正しく美しい見事なトップスターでした。お披露目公演の千秋楽、本当におめでとうございます。

次作のビジュアルも素敵すぎて、うっかり田渕先生に「よろしくお願いいたします」というお手紙を書きそうなmiyakoguです・・。

ブログ始めて3周年でした(^^) どうもありがとうございます。

皆さま、こんばんは。冷えたり蒸し暑かったりの日々、お元気でしたか?働き女子の皆さまもゆったりお過ごしの皆さまも、お疲れ様でしたの金曜夜です。

さて、このブログを開始後、昨日がちょうど3周年でした。5月が誕生月でしたので、そのお祝いを先日してもらったのですが、6月に入ってしまったのでこのブログのお祝いのようでもありますね(^^)。

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1.ブログの3年間を振り返る

3年続けてみて、当ブログのこれまでの成果は以下のとおりでした。

・記事数は566 ←よう書きましたなあ・・

・アクセス数(PV数)ははてなブログのカウントでおよそ252万 ←宙組「エリザベート」で記事をかきまくり急増しましたが、その後多忙になり、ただいまは週一ペースでのんびり更新中です。月5~10万アクセスというのは個人ブログとしては悪くないみたいですね(^^)。

・その中で・・・。

miyakogu絶対的スターの真風涼帆さんに始まり、

珠城りょうさんの激情ホセ沼にうっかり落ち、

朝夏まなとさんの太陽に憧れて、

まさかのテレビドラマで林遣都さん演じる牧君に切なくなる

という経緯があからさまに描かれているわけです。わはは。←ばか。

 

2.割としょっちゅう沼に落ちている、自覚はある

いやぁ、よく書き綴ったものですね・・。-

そして、しょっちゅう沼に落っこちてるやーーーん?!

あほなん、自分?! うん、まぁ、自覚はある(きっぱり)

自分でも時々、内容のあほさ加減に、これでアラフィフの大人として本当に大丈夫だろうか?と自問自答をすることもあります(大真面目)。

が、次の瞬間にはBlu-rayをぽちったり、「歌劇」にあわわーーーとなったり、過去作品を順番に振り返ってみたりと忙しいので、自問自答は割とすぐに終わります。

うん。それこそ大人に必要なことやな!!!

あのね、好きなスターさんがおられる方はよくおわかりいただけると思うのですが、忙しいんですよ、我々は。萌えたり、切なくなったり、涙したり、笑ったり、ずきゅーーんとなったり、展開にいらいらしたり、拝んだり、ばんばんばん!となったり。 ←miyakoguさん、落ち着いて・・。

 

「小人閑居して不善をなす」という言葉がありますが、時間があるとねぇ、しょうもないことで悩んだり、訳もなく不安になったり、注目しなくていいはずの欠点に必要以上に注目したり、ろくなことがないように思うのです。それが人生50年の大阪のおばちゃんの実感。ニュースも悲しくなったり、いらだったりするようなものが多いですしね。

で、仕事とはまったく関係なく、頭からっぽで過ごせる時間が大人には必要だと思うのです。小さな男の子が昆虫採集に一生懸命になるような夢中の時間。

その時間を美しく授けてくれたのが、宝塚歌劇団だったのですね。

 

3.宝塚の美しい風

劇場にいそいそと出かけて、どきどきと開幕を待って、オペラグラスを必死であげて、時々目線があったり、ハイタッチしたり、ウィンクを稀にくらったりするとびくーーーー!と客席で静かに萌えたり。

始まりは元雪組トップスター・壮一帆さんのお披露目公演「ベルサイユのばら -フェルゼン編ー」のとても美しい黒燕尾。ただただ美しいなあと感嘆しました。

次に観劇した星組「ロミオとジュリエット」の幕開け、長身銀髪の真風さんがかっと目を大きく見開かれた瞬間、ものすごい奔流が心の中に流れ込んできたのです。

このブログで実況できたのは、珠城りょうさんや林遣都さんへのリアルタイムあわわわーー!(注 miyakoguが沼に落ちる時の奇声)や朝夏まなとさんへの感謝や涙でした。

が、真風さんを見つけてしまったときはねぇ、ふっ。こんなもんじゃなかったから・・。

2~3日に一度は梅田のキャトルに通い、真風さんの過去映像や舞台写真を買い込み、すべての作品のフィナーレの真風さん登場場面を一旦停止ボタンを押して見続けたから。

すべての始まりは真風さんだったんだなぁ。人は出会うときに、出会う人に出会うべくして出会うのかもしれません。

真風さんをはじめとする宝塚歌劇団の皆さま、仕事と子育てに忙しく終わっていく一方だった日常に、きらきらとした美しい風をありがとうございます。

 

4.共感への感謝を込めて

そして、ネットの広大な海でこのブログに何らかの方法でたどりつき、お読みいただいたりコメントをいただいたりスターをつけてくださった方々、本当にありがとうございました。時には記事に反感を持たれたり、娘自慢がうざいと思われた方もおられたようですね。ふふふ。

ただ、その中で「同じ気持ちでした」「泣きました」「言いたいことを言葉にしてもらって」というコメントをtwitterを含めて頂戴したすべての皆さま。どうもありがとうございました!

皆さまが共感してくださったかもしれない「泣ける記事」は、実は私自身も書いているときにその感情がよみがえって泣きながら書いたもの。

そして、「笑えました」と言ってくださる記事を書いているときは、だいたい何かにあほのように夢中になっているとき。

うん。泣いたり笑ったり、忙しいなぁ。何かに夢中になれて、それを表出できる大人になれて、良かったと思います(^^)。

女女男の三人姉弟の真ん中っ子でやや「すね気味」に育った私の”夢中”を引き出してくれたのは宝塚。そして、子どもの部分を引き出してくれたのは多分、小さかった時の娘のピュアな感情表現の力。

まぁ様のご退団もあり、また昨年の秋頃からさすがにとても忙しくなってしまって、記事も当分、週1ペースになりそうですが、できれば細くでも長く続けられたらと思います。

引き続きどうぞよろしくお願いいたします(^^)。

おっさんずラブ 第7話最終回感想 牧春の幸せ、部長の愛 ー結婚の意味について考えた

えー、以下はTV朝日系「おっさんずラブ」第7話最終回の感想を、牧春の幸せと吉田鋼太郎さん演じる黒澤部長の切なさを中心に書いています。本来のホームである宝塚ファン同志の皆さまは、ラスト1回(のはず)、暖かく見守ってやってください・・。

 

1.牧春の幸せ、それは私たちの恋の成就(涙目)

第6話のラスト、「はぁぁん?!」という予告が出てtwitterは荒れていた。そこに図ったかのように公式から投下された様々な写真、記事。うん、ちょっとあざといな。そう思ったのは事実。けれど、この作品が視聴率以上のインパクトを残した存在としてTV局上層部にわかってもらうためには、このお祭りを盛り上げておいた方がいいのでは?そう思ったのも事実。

でも、そんな考えを一切合切、視聴者の心臓のドキドキの爆音とともに、見事にはるか彼方に吹っ飛ばしてくれた春田さんが牧君に向けて言った「一緒にいたい、だから結婚してください」というピュアで力強い幸せ。

春田さんのたくましい腕が、牧君が何を言っても今度は絶対に離さないと言っているように強く強く牧君を抱きしめて。

牧君がこの幸せをつかんでいいのかとおそるおそる背中に手を回して。

でもやっぱり夢じゃないとわかって、牧君がぎゅっとして嗚咽して。

幸せに泣く牧君を最後の最後に観られて、思い残すことはございません!ありがとうございました。TV朝日と制作に関わったすべての方へ、合掌。

牧君が春田さんに一生懸命恋をして、春田さんが戸惑いながら巻き込まれるように牧君に恋をして、その恋が実る。それは観ている側の私達の恋の成就でもあった。

はらはらしてどきどきして、考え始めたら寝られないくらい切ない。その現象をどう呼ぶのが一番妥当かと言えば、やはりそれは「恋」だったと思う。

でも、それは誰への恋だったのだろう?多分、牧春二人が描く風景への恋だったのかもしれない。中でも、牧君を演じた林遣都さんが美しい青年であったことは大きいと思う。

 

2.林遣都さんが演じる牧君の多弁な瞳

林遣都さん演じる牧君の瞳は、この物語において誰よりも多弁だった。第7話においても。

「僕は部長とおつきあいをしているわけではないので」という春田さんの言葉を聞いたときのかすかな希望の目。

部長との結婚お祝いの飲み会を一人だけ抜けてちずちゃんに呼び止められた時の目。

上海に行く前にできるだけ引継ぎを一緒に回りたいという時の思いを含めた目。

武川さんに本当にいいのかと詰め寄られた後の、どこか遠くを見るような目。

春田さんが走ってきてくれた時、信じられないくらい嬉しいのにまだ信じられない目。

牧君は第1話、シャワー中の春田さんに乱入して「好きだ」と言える強さがあるはずなのに「俺とつきあってください」と告げる強さがあるのに、第1話からずっとずっと切なくて、不安や揺らぎを示す方の言葉はいつも呑み込んでしまう。

何も言わずに、いや何も言えずに、勝手に一人で結論を出して一人で去っていく。

第6話ラスト、心とは正反対の言葉を口にして泣く牧君はエリートの青年ではなく、ただ恋する25歳だった。

本当はもっと素敵で洗練された賢い恋の一手はもっとある。観ているだけの立場からは見える。けれど、25歳の恋する彼に、必死でいつも不安な彼にそんなことは無理だ。恋する若者は自分でもどうしたらいいか迷子になって、必死過ぎて暴走する。シェイクスピアの時代からそう決まっている。恋する人は賢くなんてなれない。それでいい。

牧君の瞳が語る本当のことに一番気づくのは同じ人を好きだったちずちゃんだ。ちずちゃんが「私は辛かったよ」と言うから、彼ははじめて「つれぇ・・」と言える。

同じ人を好きだったちずちゃんとなら、橋の上から「なんで部長なんだよー!」と叫ぶことができる。ありがとう、ちずちゃん。

そして、春田さんにストレートに「好きだ」と言ってもらって真正面から抱きしめられたから、彼はもう我慢しないって決められたんだ。牧君の心を解放してくれて、ありがとう、春田さん(涙目)

 

3.田中圭さん演じる春田さんの正直な強さ

春田さんは、言葉を呑み込んだ牧君に置き去りにされてきた。

好きだ、つきあってくださいと言われて、実家に挨拶に行って家族と仲良しになりたいと告げた日に、「一緒にいると苦しいばっかりで」「もう好きじゃない」と号泣しながら言われたら、彼は止まってしまう。

だって、春田さんはいつも言葉と感情がまっすぐにつながっているから。彼は言葉を呑み込んだり、心と裏腹の言葉を言ったりしない。

ストレートでまっすぐに”ばか”。部長が最後に送った手紙に書いたとおり、愛おしいほど”ばか”だから。彼の最大の強みである率直な強さは、牧君の言葉をそのままに受け止めてしまう弱さでもある。

ただし、彼はこの恋を経て、少しだけいい意味でも悪い意味でも大人になっている。「俺があいつに振られたんですよ」「そんな今さら」という言葉に感じる彼のかたくなな心。冷蔵庫に残されていた牧君のメモを見つめる春田さんは、言いたい言葉を少しだけ呑み込む人になっている。

オープン一方だった心に傷を受けて、一番大切な部分に鍵をかけてしまっている。彼は愛も結婚も何なのか、わからないまま止ってしまう。会社で牧君に話しかけようとして避けられた彼にとって、この1年は彼がその鍵の中から出てくるのに必要な時間だったのだと私は思う。

それくらい深い傷。それくらい牧君が好きになっていたからこその。1年の間、たとえ部長と暮らしていても、彼は何度も何度も牧君のことを想ったはずだ。キスの感触を繰り返し想ったはずだ。主題歌にあるように何度も牧君を思い出したはずだ。

 

4.吉田鋼太郎さん演じる黒澤部長の愛

そんな春田さんの心に優しくストレートにノックして、少しだけドアが開いたらずんずんと乗り込んでいくのが吉田鋼太郎さん演じる黒澤部長だ。

牧君に振られて傷心で生活も乱れた春田さんを救いに来る部長。彼は白馬に乗った大人の色気と優しさ一杯の王子様。

かつて、蝶子さんをぐいぐい押して結婚したように、今は春田さんを一心に愛している部長は10年来の想いを込めて愛を形=結婚にしようとする。部長にとってはそれこそが最大級の愛の証だからだと同年代の私は思う。

部長がずんずんと準備して実現を推し進める結婚。フラッシュモブでのプロポーズ、お祝いの飲み会、結婚式、披露宴。すべて準備が整っている。

唯一、準備が整っていないのは春田さんの心だ。

部長は気づいてしまう、そのことに。誰よりも春田さんのことを見つめてきた人だから。その時間の長さは牧君以上だから、ずっと見つめてきた部長には春田さんの心の揺れがわかってしまう。

武川さんに「正直、部長のことは好きなのか」と聞かれた春田さんは、結婚祝いの飲み会なのに「え、好きですよ。何すか?」と逆切れ的にしか言えない・・。それを部長は聞いてしまっている。

牧君のことを好きなの?とちずちゃんに聞かれた時とは全く違う・・。牧君を思い浮かべたであろう一瞬の間を置いて「うん、まぁ」とほほ笑んだ春田さん。

部長、多分、「おっさんずラブ」を毎週、見てたんだよね(涙目)。だから分かってしまうんだよね・・。←落ち着いて、miyakoguさん。

「君に出会えて良かった」との手紙を残し夜の街を歩き、春田さんを想う部長は何かの心を決めている。

 

5.結婚式から一人だけの披露宴へ

「誓いのキスを」と促されて止ってしまう春田さん。彼は嘘をつけない。絶対に。彼はただただ牧君を思い出す。

牧師さんにすっと手をあげる吉田鋼太郎さんの演技、その一瞬の手の動きだけで、すべて部長がわかっていたことを伝えてくる。だから二人だけの式、おそらくは牧師さんにも事前にある可能性を伝えてあったのだろう。

部長は本当は披露宴をキャンセルしていない。ほんの少しの望みを託した最後の賭けに自分で潔く負けて、「披露宴はキャンセルしてある」と部長は優しい嘘をつく。そうでなければ、また春田さんが流されてしまうから。

彼は春田さんの迷いをきっぱりと断ち切るために「行けーー!」と背中を押す。

春田さんに、愛を、結婚とは何かを教えてくれたのは部長だ。

彼は素敵なかっこいい大人だった。一人だけで披露宴会場にやってきて「振られちゃった」と笑う。年甲斐もなく年下を好きになって、結婚式からその人に去られる。ものすごくかっこ悪いことだ。

でも、吉田鋼太郎さんの演技は素敵にしか見えない。チャーミングで一生懸命恋をした清々しさしかない。見事な演技だった。私が一番泣いたのは実はここ。

 

6.結婚の意味について考えた

このドラマが投げかけようとした結婚とは何なのか?について考えてみると、春田さんがたどりついた「ずっと一緒にいたい」という気持ちを”約束”することなのかもしれないと、私は思う。もちろん後でほころぶこともあるけれど、少なくともその時は。

誰かを想う「好き」の中にもいろいろな気持ちがある。

「好きの物語」はそれぞれに異なる。その中で、では、結婚って何だろう?

 

私達家族は自分達の家のことを「巣穴」と呼んでいる。三重県に「伊賀の里手づくりもくもくファーム」という観光農園がある。娘が小さい頃、何度も行った場所だが、そこで暮らすミニブタや羊達は、何匹かいつもひっついて寝ていて安心そうで、「生き物」としてそれは根源的に必要な何かに思えた。

くっついて眠ることができる安心。それが明日も続くという約束。

「この人とそうありたい」と強く思う相手と、私たちは結びつくのだと思う。年齢も性別もおそらくは関係なく。

 

だからこそ、迷子だった牧君は「ただいま」と言って、春田さんは「おかえり」と言ったんだと思う。そう、今は彼らはくっついて眠ることができる。そして性愛のひと時は、恋を全身で相手に伝えられる時間だ。

大人になった春田さんは牧君にやめろよと言いつつ、「・・なわけねぇーだろ」と低い声で言って、獲物をやさしく仕留める目をして牧君を見下ろしてキスを落とす。

その慣れた口調で、うん、この間に何があったかは、まぁ、察したよね!←落ち着いて、miyakoguさん。

田中圭さんは官能的な作品ですばらしいエロスを体現されている方だと聞く。この場面の春田さんは田中圭さんの魅力が炸裂している。

観ている我々は「あーーーー!」と叫んで、終了後即、延々とリピートしたり、タイトルでシャットダウンされるぎりぎりの瞬間を切り取ったり、続きを見せろ!と叫んだりいろいろ忙しい。あの二人が放った官能が様々な形で伝播していく。笑ってしまうほどに。それは男性俳優としてのお二人の素晴らしい力だ。

 

無事に私たちの旅は終わった。ありがとう、牧春と部長。そして、牧君の背中を押してくれた武川さんとちずちゃん、ナイスタイミングで部長と春田さんがつきあっているわけではないと世に知らしめてくれたまいまい、まいまいが課金する鉄平兄、蝶子さんを大切にしてくれるだろうマロ、ちずちゃんを大切にしてくれそうな名前を知らない君も。最大に懸念していたBlu-rayも出る。もうスクショしてスライドをつくらなくてもいい。安堵した。

中学生娘はただいま、「正気を取り戻したい」と宝塚専門チャンネルを見ている。それで正気を保てるのか、別の沼に行くだけではないのか?と尋ねたところ、「常駐している沼の方がまだ安心できる」とのこと。

おっさんずラブの沼、または林遣都さんの美しい湖は、いつもいる沼とは酸素濃度が違って、我々は時々呼吸困難になった。

そのどきどきを、ありがとう。

星組・ANOTHER WORLD 感想 集団で演じられる落語、冥途でも心優しき紅さんはヒーローでした

皆さま、こんばんは。雨の一日、お元気でしたか?本日、宝塚大劇場にて星組さんの「ANOTHER WORLD / Killar Rouge」(アナザー・ワールド、キラー・ルージュ)を観劇してまいりましたので、その感想をお芝居中心でお届けいたします。 

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※こちらのお写真は著作権法第46条に該当するとして掲載しています。

詳しくは文化庁のこちらのサイトをどうぞ(^^)

http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

1.ちょっとお疲れ気味な心に効いた宝塚

先週、日曜から翌土曜午後まで1週間連続勤務になってしまったmiyakogu。おまけに最近ドはまりしていたTVドラマ「おっさんずラブ」の最終回予告があんまりで、さすがに心が疲れておりました。優れたドラマと役者さんでピュアなラブストーリーを展開されているとはいえ、あのね、TVってちょっとあざといね。視聴率や話題性が大事ですものね。

同ドラマは、最終回予告でファンに衝撃を与えてtwitterを沸騰させた後、前々から準備されていたであろう対談や記事が矢継ぎ早に出され、あれ?やっぱり牧君の恋は実るよね?と希望を抱かせて最終回に呼び戻すというマーケティング戦略が透けて見えるようで。いや、ビジネスとしては大変正しいよ。ただ、ちょっとね。

そこで、これはもう宝塚しかないわ!とチケットをお譲りいただき(定価以下ね)、本日15時を観劇し、帰りの電車で真風さんの「異人たちのルネサンス」超絶ビジュアルを確認。真風さまーーー!!(発狂)

星組・紅さんに心癒され、宙組・真風さんに魂を取り戻された有意義な午後でした。いや、ほんま。

みんな、わかってはる?!宝塚ってねぇ、ほんとにねぇ、ええとこよ!!(涙目)←miyakoguさん、皆様、よくわかってはると思うんで、落ち着いて。

正直、今回の星組さん、私の周囲の評判はよろしくはありませんでした。長年のヅカファンの方から「miyakoguさんはお忙しいでしょうし、観なくていいですよ」とか、「松竹新喜劇です」とか、「お芝居はおもしろかったんだけど、ショーが・・」とか。なかなかでした・・。ごめんね!私が言ったんじゃないよ!

ただ、本日、お芝居で一か所、信じてもらえないとは思いますが、私がひそかに泣いた場面があるんです。この点について書きたいと思います。

 

2.これは集団で演じられる落語だと思います

ぱっと明るくなって本日貸し切りのお客様も「わぁっ」となった幕開け。華やかで綺麗で見事な桜の場面から始まります。

紅さん演じる康次郎さんは大阪の両替商の一人息子。恋煩いで死んでしまって、この世とあの世の間に蓮の花びらの船に乗って流れてきます。冒頭とこの場面の紅さんは江戸時代の浮世絵に描かれた歌舞伎役者のような涼やかさ。黙っていれば超美形。

もちろん、紅さんが黙っているはずもなく(笑)、おもしろおかしく進む物語。耳に心地よい声でセリフが明晰な礼真琴さんとの掛け合いもテンポよく、ぽんぽんと進んでいく物語のリズムには、確かに落語だなと思わせるものがありました。

これは宝塚のお芝居というより、集団で演じられている落語だなと。そう思います。そうご覧いただければ、大変意欲的でチャレンジングな作品です。

音楽も東西こだわりなく、美しい衣装をふんだんに、ネオンサインもきらきらと。冥途歌劇団には笑いました。組の名前に加えて「専」とあるのが大笑い。

落語では一人の演者が口調もがらっと変えて、言葉と身振り(あくまで座布団の上で)で見事に笑いとともに物語が描かれます。天満天神繁盛亭で見事な落語を聞いた時のことをよく覚えていますが、小屋が笑いで揺れて、笑いがきらきらと空中に見えるよでした。ただ一人の男性が演じているだけなのに。

ところが、宝塚のこの舞台では言葉でしか表現されないそのおかしみ、きらきらとした輝き、一人が演じ分ける登場人物すべてを、色と音楽と大勢の演者で物語として見せることができるのです。

どうぞ「集団で演じられる落語」と、そう思って観劇を(落語を)お楽しみください。

 

3.実はひそかに泣けました なぜ?

本日、この落語で感動した最大のポイントがあるのです。

5日目のサバにあたって死んでしまった店の喜六(七海ひろきさんがかわいい!)、礼真琴さん演じる徳三郎さん、そのお付きの人たちに、天寿光希さんがいなせにかわいく演じる三途の川の渡しの杢兵衛。そして、出会った貧乏神(華形ひかるさん)。

私は拝見したことがないのですが、花組「くらわんか」でも確か演じておられたのですよね。この貧ちゃんがまぁ絶品で身振りがかわいいこと。見事な華形さんの演技でした。その貧ちゃんの夢は天国に行って「福の神」に生まれ変わること。

そんなのって、ぷぷぷ。

 

もちろん笑いどころであり、冥途で出会った人々がうつぶせで顔を隠す貧ちゃんを一笑に付す中、康次郎さんだけは言います。「夢を応援する」と。

そして彼は閻魔様の前で地獄に行くか、天国に行くか、誰か一人だけ地獄だとなった時も、貧ちゃんの夢をかなえるために「俺が地獄に行く」と立ち上がります。彼は恋しいお澄さんと一緒に天国に行くべくがんばっていたのに・・。

miyakoguがこっそり一人で泣いたのはここ。あの笑える落語お芝居で、まさか泣いている人がいるなんて、誰も思わなかったでしょ?あほみたいでしょ?

でもね、泣けたんですよ。

 

4.紅さんはあの世でも心優しきヒーローでした

瞬間思ったことは、役としての康次郎さんとしても、中の人の紅さんとしても多分、真剣に貧ちゃんを応援するだろうなとということです。

笑って笑って、どこかほろりとさせる人情ものの落語。

紅さんの康次郎さんは、他でもいつも「いや、そうじゃない」と一人だけ立ち上がったり、希望や状況を打破する解決策を見つけています。

ふらふらとしているように見えて、彼はいつも友情と人情に厚く状況に巻き込まれながらも状況をうまく利用して、最後にはこの世に戻り、愛しいお澄さんとの恋も成就させます。

ちゃらんぽらんで、あーれーと状況に巻き込まれている感じなのに、なぜかちゃっかりと強い。

康次郎さんは心優しきヒーローなんですね。いつだって、実は。

それは何だか紅さんご自身の個性と重なるように私には思えました。おそらく紅さんはトップスターとして誰よりも強く宝塚に憧れ、誰かを応援する気持ちが人一倍強くて、人情に厚い方なのではないかしら?そう感じました。

 

5.宝塚にはいつだって夢がある

宝塚は清く正しく美しく。そしてこの作品は落語作家の小佐田定雄さんがパンフレットに寄せられているとおり「清く正しくおもしろく」でした。

たとえあの世であっても、トップスターは心優しきヒーローとして描かれる。

「そーりゃ そりゃ そら ありがたや そーりゃ そりゃ そら なんまいだ」という歌を、大真面目に踊り歌う。あの世でもきらびやかな衣装を身に着け、美しい蓮の花びらに乗ってたどり着く。(「ありがたや なんまいだ」より 作詞:谷正純氏)

全部、無駄に美しくて、全力で一生懸命です。鬼なんて、もう誰が誰だかさっぱりわかりません(ごめんね!)。女性が演じてていいのかしら?となるくらい、驚きのおかしさです。

でも、一生懸命で星組の皆さんはノリノリで楽しそうで。宝塚はお客さんのためにという気持ちが他のジャンルよりとても強く感じられ、その根底に共通の約束として夢を守る、夢を見ていいということがあるように思います。

とっても不思議でユニークでチャレンジングな作品、残り少ない大劇場公演ですがどうぞ、東京も含めて観劇をお楽しみください。

 

6.ショー感想

ショーはねぇ、音楽がずっと同じ感じでメリハリがないままぼーっと終わってしまいました。ごめんなさい、斎藤先生!

ただ、私は久しぶりの星組さんでしたので、あ、イケメン、うわ、美形、あれ誰?とウォッチングに忙しく楽しむことができました。

スタイルのいい美形しか舞台上におらんがな?!これが本日、miyakogu心の叫びです。印象に残ったのは以下の皆さま。きらきら、ぎらぎらと大人の魅力の上級生さんが特に印象に残りました。

紅さんと綺咲さんは一対のお人形さんのよう

礼真琴さんはイケボで、ダンスのきれや表情がどこか柚希礼音さんを思わせました

七海ひろきさんはほっそりと長身の美貌(ビジュアル完璧!)

天寿光希さんはどこにいたってきらきらとした端正さ

大輝真琴さんは長い前髪が黒い目元にぱさーーとかかってすごい色気

・退団される十碧れいやさんは銀橋で優しい笑顔(とっても素敵でした)

輝咲玲央さんは低音のイケボ

瀬央ゆりあさんはきりっとした目元がかっこよく、ポストマンの歌がとても良かったです

漣レイラさんは揺れる黒髪が素敵

柴藤りゅうさんのウィンクは2回確認

・多分、極美慎さんは小顔で華がありました

夢妃杏瑠さんは随所で歌声が魅力的、お芝居もかっこよかった!

有沙瞳ちゃんはお芝居のめいどかふぇの初音も良かったし、客席降りでは指差し笑顔、ありがとう

初舞台生さんのラインダンスの羽根が桜の花びらのようでとっても綺麗

・そしてラストは音波みのりさん 

 

7.かっこよく素敵な娘役さんはショーの華

音波みのりさんがとても素敵でした第7場Bかな?

礼真琴さんと二人で踊る場面。きりっとした表情で、きびきびとしたダンスで美しい脚で。大人の素敵な女性で華がおありになりました。

私は基本的には男役さん中心に宝塚を見てしまいますが、組ごとに楽しみにしている上級生娘役さんがおられます。たとえば月組なら退団された早乙女わかばさんや、花組の花野じゅりあさん。

星組はずっと前から音波みのりさんです。お綺麗で、強い演技も大人の演技もできて、踊ればかっこいい大人の女性の見事な華。素晴らしかったと思います。

 

というわけで、久しぶりの星組さんを楽しみ、かつ癒してもらいました。

いつでも清く正しく夢を見せてくれる宝塚歌劇団。もちろん大人の事情も様々にあるでしょう、内部では役付きを巡った嫉妬もあるでしょう。しかし、舞台上ではいつもヒーローがいて、ヒロインがいて、素敵な人たちが生き生きと演じ踊り歌う。ありがとうね、宝塚歌劇団の皆さま。

皆さまも集団で演じられる落語、その中の心優しきヒーロー像をどうぞお楽しみください。

おっさんずラブ第6話感想 林遣都さんの涙の演技について考えた ー牧春の幸せを諦めてはいない

えー、以下はTV朝日系「おっさんずラブ」第6話の感想を、林遣都さんの涙の演技に関する考察を中心に切々と書いています。本来のホームである宝塚ファン同志の皆さまは、後1週間だけ生暖かく見守ってやってください・・。 

第7話感想はこちらです(嬉し泣き)。

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1.楽しそうな牧春、けれど・・

第6話は「僕たち、つきあってます」宣言を巡るすれ違いはあるものの、コミカルに始まっていって、うん、これ大丈夫だ、コミカル回だと気を抜いて見始めた。ほら、公式はよく爆弾を落とすけど、本編はいつも違う流れじゃん?

風邪で寝込んだ牧君を心配してお粥をつくろうとする春田さんと牧君のコミカルでかわいい掛け合いに大爆笑したり、吉田鋼太郎さん演じる部長のぐいぐいぶりに大笑いしていた。

そして、もちろん、あれな。

お見舞いに来た武川さんが残していった大量のお見舞い(牧君の好きなみかんゼリー含む)に気づくだろう春田さんがわぁわぁ言い出すのを察知した「黙らせるためのキス」。キスした後のちょっとどや気味の林遣都さんの顔を含めて、誠にありがとうございました(合掌)。

本気キスにうろたえる春田さんがおかしくって、おまけに実家に連れていく男子は初めてではないと言われて牧君の過去に嫉妬したりして。なーーんだ、付き合い始めてのカップルじゃーーん!というノリで。

ごはんをどうしよう?と言うかなと思ってと春田さんの物まねをいたずらっぽく牧君がしたり、牧君の理解者である天然らしい実母と妹に春田さんが翻弄されたり、前半はただ楽しくて幸せだった。けれど・・。

 

2.牧君が抱え込んでいる苦しさ

昼間、風邪の時に牧君が必要そうなものを大量に買い込んでやってくる武川さん。熱をはかる体で、おでこをひっつけられた牧君は「政宗!」と彼を突き飛ばす。

武川さんは弱っている牧君につけこもうとしたんじゃなくて、彼は牧君の不安を察知している。なぜ、つきあっていることを隠したのかという問いに「春田さんは本当に幸せなのかなと思って」と答える正直な牧君。武川さんなら分かるはずだから。

「自分の幸せより、相手の幸せか」 そうつぶやくと武川さんは「お大事に」と去っていく。武川さんも多分、同じことを思っている。

「牧がいないと俺がダメなんだ」というほど必要不可欠な相手なのに、牧君の幸せを願うから、彼はもうすがったりしない。

それは、後で春田さんに別れを切り出す牧君と同じだ。

 

3.ちずちゃんの存在

この物語で牧君にとって最大の脅威はちずちゃんだ。相手が同性の部長には、部長と春田さんの間にある10年という時間を無視して、牧君は真っ向戦いを挑める。(少なくとも第2話では)

けれど、女性であり結婚して子どもを持つことができる可能性があり、春田さんと10年よりはるかに長い時間を共有していて、牧君のことも認めてくれている人の好さそうなちずちゃんは、春田さんの心が向いてしまえば牧君がおそらくかなわない相手だ。牧君の目には自分ではなく、彼女の方が春田さんが「本当に幸せになれる」相手に見えている。

ちずちゃんから「春田に告白していい?」と聞かれた牧君は、「俺は大丈夫ですよ、全然」と言うけれど、見送る彼はもちろん全然大丈夫じゃない顔をしている。

だから、いきなり春田さんを実家に連れていって紹介しようとする。実家からの帰り道、「自分が安心したかっただけ」と言うとおり、それはちずちゃんに対する守りだ。

一方、ちずちゃんは、牧君は完璧で自分ではかなわないと思っている。

いろいろな人が、少しずつ間違っていく

客観的に戦略的に正しい一手なんて、恋では打てない。それこそ、人の愛おしさだと私は思う。

 

4.揺れる春田さんの心と優しさの罪

残念ながら娘と一緒に予想していたとおり、春田さんがちずちゃんに呼び出されているとき、たまたま家に戻ってきた春田母は牧君と遭遇し、春田の結婚への心配に触れ、孫の顔がみたい、ずっと友人でいてねと明るく去っていく。私だって将来、言いそうなセリフ、誰にも罪はない。

決定打になったのは、春田母の「早くちずちゃんとくっついてくれたらいいのに」という一言だったと思う。牧君はうなだれて、とぼとぼとリビングの席に戻る。

そして、春田母の忘れ物のストールに気づく。その瞬間、全視聴者が気づいただろう。春田母を探して牧君が夜のまちに飛び出すことに、ドラマでしかありえないほど必然かつ決定的に、ちずちゃんと春田の場面に牧君がたどり着くことに。

やっぱり牧君はその場面に遭遇し抱き合う二人を見て、泣きそうな顔をして一人ぼっちで帰っていく。

ちずちゃんの告白を聞いた春田さんの心は揺れ動いている「そんなの、俺だって」の後に本当は何を言おうとしたのだろう・・。明るく去ろうとした涙顔のちずちゃんを思わず引き留めて抱きしめてしまう彼の心は何を考えていたのだろう。いや、考えていたんじゃない、感じていたんだ。

でも、それはしかたないことだと私は思う。ちずちゃんと春田さんの間の時間は膨大で、関係は家族以下友人以上の親密な何かだから。そして春田さんは第1話で春田さんが無事だとわかって抱き着いた部長の髪をなでてしまうほどに全方位に優しいから。だからこそ、牧君は春田さんを好きになったんだから。

春田さんの優しさ。それはいろいろな人を惹きつけ、そして無意識に残酷に人を傷つける。

 

5.林遣都さんの涙の演技

「春田さんと一緒にいても苦しいことばっかりです。ずぅっーと。苦しいです」

ああ・・。やっぱり・・。牧君はずっとずっと苦しかったんだ・・。楽しそうなデート場面に萌えていたけれど、見ている私たちもうすうす気づいていた。

ずっとずっと牧君として大きな目一杯に涙をためていた林遣都さんの目から、涙の粒がぽろぽろと滑り落ちる。

その一粒ごとに彼の思いが散っていく。涙の一粒ごとに、彼の喜びが苦しさとともに散っていく。

人を好きになるのは嬉しくて楽しくて切なくて苦しい。配分はそれぞれに違っていても、喜びや楽しさ一方だけではない。それでも人は恋をする。いや、時にそういう恋をしてしまう。しようと思って恋をするんじゃない。

かつて、そんなふうに恋をした人の中にあるきらめく記憶と苦。今、そういう恋をしている人の想いと切なさ。そういう恋をしてみたいという人の憧れと恐れ

見ている側が心の奥にしまってある様々な思いを、林遣都さんの涙の演技は揺さぶってくる。

とんとんとノックして、どんどんとドアを突き破って、しまってあった思いをダイレクトに揺さぶり、震え始めさせてしまう。瞬間的に忘れていたはずの時間の中に、私たちは放り込まれる。

だからこそ、私たちは牧君の苦しさに同期して、虚構の物語のはずなのにここまで苦しくなってしまう。

「俺は、春田さんのことなんか、好きじゃない」

涙とともにそう叫ぶ牧君は、全身であなたが好きだ、あなたに幸せになってほしいと伝えていた。

それは林遣都さんのものすごい力だ。

 

6.牧春の幸せを諦めてはいない

ドラマ本編は1年後、なぜか春田さんが部長と同棲するところで終わる。実はTV情報誌のわずか数行の先取り情報で、金曜夜にそのことは知っていた。その分、立ち直りは昨夜初めて知った人よりわずかに早いと思う。

TVとサイトの予告編とサイトにある数点の写真。それらから察すると、大丈夫だ。これは牧春エンドだ。

というか、えーと、信じる、信じたい。まだ諦めてはいない。というか、お願いしたい(涙目)。

予告編では、夜の橋の上で牧君が「ふっざけんじゃねぇよー!」と叫んでいる。新郎タキシード姿の春田さんは泣きながら何かを言っていて、希望的観測では彼は向かい合った部長にぎりぎりのところで謝っている。部長は「君と会えて良かった」とつぶやいている。

写真や画像から察するに、ちずちゃんも武川も牧君の背中を押している。

大丈夫だ。(部長派の皆さま、ごめんなさい)

牧春ハッピーエンドの鍵を握るのは、春田さんが”分かること”だと私は思う。

別れを切り出された春田さんは、母親にきつく叱られた子どものように、ちゃんとするから、そばにいてほしいと言う。あさっての方向に一生懸命で、目の前で泣いている牧君をただ抱きしめて心臓の音を聴かせてあげればいいことに気づかない。多分、人として向かい合う相手に対してはすっとできることなのに。牧君相手だとなぜこうなる・・。

春田さんには牧君にキスをして、あなたでなければダメなんだと伝えてあげてほしい。ただ、彼はおそらく、もう好きじゃないという牧君の言葉をそのまま受け止めてしまって何も動けない。牧君への好きが異性への想いと違うのか同じなのか、違っていても愛なのかが分からない。精一杯で必死で一杯一杯でかわいそうで、田中圭さんの演技はそのことを見事に伝えている。

金子大地さん演じるマロ君ができることを、春田さんはできない。マロは予告編ではすっかりいい男に育っているように見える。必死で誰かを愛することは人を大人にする。マロ君はきっぱりと強い目で蝶子さんに近づいていける。

 

後、第6話のつっこみどころの一つはこれ。牧君は家の鍵が開いているのに気づいて虫捕り網で防御しようとしているけれど・・。それ、かなり弱い武器だと思う!かわいい牧君ショット、お礼申し上げたい。

後1週間でこの物語は終わる。終わった後、画面には田中圭さんと林遣都さんがにこやかに現れてDVD発売決定を知らせてくれるはずだ。あれ?公式だった?妄想だった?

ええと、妄想でもいい。それを頼りに1週間、生き抜きたい。私には宝塚歌劇団という頼りになる先もある。大丈夫だ、きっと(涙目)。

TVnaviの牧春写真のイケメンチワワ 宝塚「まぁまか」ファンに告げたい

皆さま、こんばんは。お元気でしたか?ふぅう。←宝塚ファンとして息を吹き返すmiyakogu。筆致も元通り。※ちなみに中学生娘には「筆致が違ってて、気持ち悪かった」と言われました・・。

 最新第6話の感想はこちらです。よろしければどうぞ・・(涙目)

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しばらく、遠方に旅に出てまして・・。

いやぁ、ほんっとちょっとしたバードウォッチングに湿地帯に出かけたらさぁ、沼にうっかり足を取られてどんぐりこ、さぁ大変ですよ、イケメンチワワですよ!!

というわけでTV朝日系「おっさんずラブ」第4話を見てから大変な目にあっていたmiyakogu。後2回でお話が終わってしまうため、悲しみにくれると同時にほっとしてもいます。

明後日はいよいよ第6話ですが、「おっさんずラブ」にて「牧春」コンビを演じておられる田中圭さん(春田)と林遣都さん(牧君)が出ておられるらしいという情報をキャッチ、「TVnavi」を購入しますた。

ぱらっと開いてみると・・。ひぃぃぃぃーー!

田中圭さんの右肩に後ろから顎をのせる林遣都さんの牧君。田中圭さんは牧君の方を振り返って・・・。おまけにハートの切り抜き形の中にその二人が同じ構図でおさまっていて楽しそうな笑顔。

なんというあざとさ!!

これ牧春ファン(牧春の民というらしい)を萌え殺しにかかってるわ。

このイケメンチワワがーー!!(歓喜)

となっております・・。他は仲良しの男子どおしの二人映りのお写真であり、インタビューでは「週3ペースで遊びに行ってる」と。ほぅ。←その映像を見せてほしい。

おまけに林さんご自身から「最近SNSの文章とかまで、『チワワが~』みたいになってきて」と話されるなど、把握されているご様子。

ご本人もご自分の魅力に自覚が出てこられたようで何よりです(合掌)。

しかし、この構図にこの笑顔。

片方が背が少し高くて男性的

もう片方は背が高いのにワワのような小動物感が少しあって夢見るような大きな目。舞台裏ではいちゃいちゃ、にこにこ。

 

絶対的既視感。

絶対に、我々はこれに近しい何かを知っている。

「あったじゃーーーーん!」(「おっさんずラブ」吉田鋼太郎さんセリフより)

これ、「まぁまか」やーーん!!

あざとかわいい目の大きな少年と背が高く優し気な笑顔が素敵な青年。宙組前トップスター・朝夏まなとさんと、現トップスター・真風涼帆さんのお二人がつくりあげていた名コンビ「まぁまか」とほぼほぼ同じやーーーん。

牧春のお二人のファンの皆さま、あくまで宝塚ファンの主観でごめんなさい。牧春のお二人はもちろんとっても素敵な男性陣ですが、スタイルはまぁまかの方が抜群かも。

 

なので、宝塚・まぁまかファンに告ぐ。

「神々の土地」のドミトリーとフェリックス、あるいは「メランコリック・ジゴロ」のダニエルとスタン。舞台設定は現代のオフィスで、あの二人がピュアで切ないラブストーリーを繰り広げているとしたら・・。見るでしょ?!

宝塚ファンの皆さまからは、まぁ様のかわいさはこんなもんじゃねぇ!真風はもっとかっこいいから!と怒られるかな?とも思うの。(めんね、田中圭さんと林遣都さんのファンの皆さま。宝塚ファンはかなり盲目的。実際、美しいし。あ、朝夏まなとさんは退団されていて今度、女優としてミュージカル「マイ・フェア・レディ」を役替わりで主演されますので、ぜひ見てね!)

見たくないです?現代社会でのドミフェリ・ピュアストーリー。

あ、うん、おおーー?!(注 妄想中) ふぅぅぅ。(妄想のあまり溜息)

 

それにしても。今ほど宝塚をありがたく思ったことはありませですわ、奥様。

だってね、これ1話50分で全7話なんですよ。

50分×7回=350分、ほぼほぼ6時間ですよ。

土日いずれかにマチソワ、または遠征で土曜日午後と日曜午前と2回みたら、結末がわかるんですよ、結末までちゃんとわかる分量なんですよ。マチソワすれば。(注 遠征民のヅカヲタがしがちな行動)

それをあなた、ご丁寧に7週にまたがって、毎週毎週、ドラマ終盤と予告にとんでも映像をぶっこんでくるから1週間はらはらどきどきですよ!日々、大事な会議もプレゼンもあるってのに、これ以上、試練を増やしてどうする?!

くぅぅぅ。(TV局に踊らされる牧春の民)

宝塚ならお芝居1.5時間(1本ものだと2.5時間)、劇場でちーんって座ってれば結論がわかるってのにさぁぁーーー!(miyakogu心の叫び)

おまけにどんな切ない終わり方でも、ちゃぁんとその後にショーがあって(1本ものでも最後にミニショー)、心を鎮めて帰ることができるってのにさぁーー!

ううう。(泣くmiyakogu)

 

最後にちょっと真面目に。

田中圭さんがインタビューで語っておられる作り手側が届けたい思い、しかと届いております。

林遣都さん演じる牧君の切なさをはらはらとみていると、あぁ、そうかぁ、こういう思いをされている方が現実におられるんだろうなぁ・・とか、これまで何も知らずに独身でおられる方に誰か紹介しようとしたりとかしてなかったかなぁと、ちょっぴり反省したりしています(大阪のお節介おばちゃんね)。これから、そういう方が入社されることもあるかもしれませんし。

現実は多分、ドラマとはまた少し違うワールドのようだけれど。←ちょこっと調べた。

「おっさんずラブ」 永遠に続いてほしいような、終わってほしいようなドラマ。ほんっとハッピーエンドでお願いいたします。牧君の笑顔を見るのが我々の願いです(涙目)。

TVドラマ・おっさんずラブ第5話 林遣都さんは多分、切なさの化身なんだと思う

えー、以下は普段とは異なる筆致で別の沼らしき林遣都さんが体現している切なさについて書いています。宝塚ファンの方は生暖かく見守ってやってください・・。 

第6話感想はこちらです💧牧君の幸せってどうやったら実現できるの・・?

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1.牧君が嬉しそうだと私たちも嬉しい

先週末土曜日のおっさんずラブ第5話。いつもうるんだような目をしている例の美形チワワ=林遣都さんが演じる牧君は、相変わらず切ない目をしていた。

けれど第5話では、彼は少しはしゃいで、嬉しそうに笑っていて、少しばかり切ない場面があったとしても、その目は哀しみではなく次第に微笑みに切り替わっていく。

牧君が嬉しそうだと、私たちもふわふわと嬉しい。

牧君が傷つくと、私たちの心もちくりと痛い。

牧君が切ない目をすると、私たちも泣きそうになる。

これはものすごい才能だと私は思う。

 

私と中学生娘は宝塚歌劇団のファンで、普段は宝塚大劇場で生の舞台を観ていてTVドラマにはほぼ興味がない。華やかでゴージャスな宝塚の舞台にも、大きな目一杯に切なさや夢をたたえて、その人の心の震えや揺らぎが波のように押し寄せてくる方が時におられる。私の好きな方を挙げるとOGになられたが朝夏まなとさん、早霧せいなさん、月組トップスターの珠城りょうさん。

また、抜群のスタイルを含めてなんて美しい生き物なんだろうとただ見ているだけで満足できる方がいる。私の好きな方では宙組トップスターの真風涼帆さん。

舞台から息遣いが直接聞こえてくるような、飛ぶ汗が見えるような距離感で、その人の心の震えが声やふとしたしぐさになって波のように舞台から響き伝わるとき、私たちは心を動かされて泣いたり、笑ったり、心臓が止まりそうになったりする。

それはよくわかる。だって、舞台だもの。今、一緒にこのひと時を確かに生きているのだもの。

 

けれど、林遣都さんという俳優さんは、その心の震えを液晶画面の向こうから波のように伝えてくる。

だから、牧君を生きている彼の心が躍るとこちらまで嬉しくなって、彼の心がきりりと痛むとこちらまでちくりとなって、彼が泣きそうになるとこちらまで泣きそうになってしまう。

それはものすごい力だ。

 

2.林遣都さんは切なさの化身なんだと思う

第5話では大学生の牧君が登場する。

髪の分け目を逆にして、自信がなく将来への夢も見つけられなくてぼんやりとなげやりな牧君は、長身眼鏡美形(イケボ)の武川さんに恋をする。

少し猫背で無表情で就活でOB訪問に来た学生として登場した牧君は、見事な情けなさで武川さんをいらつかせて追い返される。けれど、偶然再会した武川さんを見上げる憧れに満ちた目。多分、偶然じゃないと思う。牧君は会えそうな場所を張ってじっと待っていたんだと思う。

不動産会社の営業所でビラを配っている武川さんを勝手に手伝って、二人で休憩するとき、ベンチの端っこに嬉しそうに座って、恥ずかしそうに少しだけにじり寄って、武川さんのことを見つめる。

彼の目からは「この人が好きだ」という気持ちがきらきらとこぼれ落ちるようで、弾んだ心の切なさが見ている側にまっすぐに伝わってくる。

ああ・・。牧君はいつだって、半分欠けている彼の心にかちりと音をたててぴったりと合う人を捜し求めているんだ・・。

ごく短い場面からでも、牧君がいつだって誰かを探していたこと、その人に一心に恋をすることが伝わってくる。その背景に彼が抱えている寂しさと孤独があることすらも。

それはやっぱりものすごい力だ。

彼は切なさを体現している。「切なさの化身」なんだと思う。

 

でも、20代最初と40代。牧君が社会人になり武川さんのもとでどんどん成長していく中、すれ違っていった二人は別れている。

恋にはナイーブでも、仕事では25歳らしい強気を培う牧君。いつしか二人の立場は逆転していて、牧君は武川さんのもとを飛び立ち、今は武川さんが牧君がいないとだめになっている。

生活のすれ違いが原因と武川さんは言っているけれど、本当はそうじゃないと彼自身もわかっていると思う。多分。違っていたのは20代と40代の変化のスピード。

 

3.嬉しくて切ない牧君

第4話で上半身裸の春田さんにバックハグで引き留められた牧君は、目撃した幼馴染のちずちゃんが慌てて出て行った後、降ろしたバッグの端を美しい手でつかんでから思い切ったように、なぜ引き留めたのかと田中圭さん演じる春田さんに尋ねる。

家事が便利だから?とやや自嘲気味に、でも少しだけ期待を込めて詰め寄る牧君。ほんのわずか、かすかな期待が彼の心の中で震えているような表情で。

戸惑いつつそうじゃないと言う春田さんに、一歩ずんと進んで牧君は「じゃあ、僕とつきあってください」と踏み込む。期待の方へバランスがわずかに変わったような表情で。

自分でもわからないまま「はい・・」と答える春田さんに、一瞬驚いて口をわずかに開ける牧君。今聞いた嬉しい言葉が信じられない、でも本当のことなんだと自分に言い聞かせるような表情で。

田中圭さんの演技もおかしくて、秀逸だった。俺は「彼氏なの?彼女なの?」と髪をつんつんひっぱって尋ねる春田さんを見て、とっても嬉しそうに牧君は笑う。

 

第5話では、二人は春田さんの休日服を買うという目的でうきうきとデートする。

自分がコーディネートした”彼氏”を嬉しそうに写真に収める牧君

「牧と行きたい店があるんだ」と言われて、一瞬ぼぅっとした後、「ちょっと待って」と弾むように追いかける牧君

ラーメン屋さんで並ぶとき、押されて瞬間的に手が重なってしまった後、手を払われてしまう牧君

春田さんにとって僕は恥ずかしい存在なんですか?と直球で傷ついた目を向ける牧君・・

あーーー、また・・・。牧君が悲しそうで切ない・・。私たちの心は同期する。

休日だけれど仕事で呼び出された牧君はその場を去っていってしまう。

でも一波乱の後、「好きになってもらえるよう、俺、がんばるんで」とほほ笑む牧君

健気過ぎて可愛すぎて、震えたお!

 

第5話の田中圭さん演じる春田さんはイケメンだった。牧君にまっすぐに向かうと「牧のことはぜっぜん恥ずかしい存在じゃない」と強く言い放ち、少し下を向いて笑って、牧君に自分の帽子をぽんとかぶせて先に歩き出す。(ぜっぜんの小さい「っ」が大事)

その春田さんを見つめる牧君は、一瞬、虚をつかれたように切ない目をしてゆっくりとほほ笑む。その時の彼はやっぱり本当は泣きそうな顔をしている。

すぐに春田さんの背中を追いかけて走り出した牧君の弾んだ心が、遠くなる後ろ姿からこちらにぽんぽんとボールのように届く。

それはやっぱりものすごい力だと思う。

 

4.かわいいというのは

林遣都さんはご自分のことを「かわいい」と言われるのが、あまりお好きではないらしい。かっこいいとか渋いの方がいいと。

ふっ。ばん!!(立ち上がるブログ主、宝塚感想では恒例)。

あのね、遣都さん。違うのよ!

あなた、中学生娘にも「かわいい・・」と絶句されてるから。そして、その「かわいい」の意味を、今から人生50年の大阪のおばちゃんが分解するから!

林遣都さんに対する「かわいい」は、「美しくて切なくて見ている側の胸がきゅうぅぅんとして、何をどうしたらいいのかわからないけれど、ずっと笑う顔を見ていたい愛しさに満ちている」という意味だから!!

とにかく、存在が罪だから!自覚して!

 

5.美は間に合ってます、本来。なのに・・

私と中学生娘は宝塚ファンで、美しさもかわいさも切なさも、抜群のスタイルも足の長さもスーツの着こなしも、儚さも涙も笑いも、渋さもイケボもちゃらさもキザも色気も、ほぼ間に合ってる。ショーでは、運が良ければあるいは勘違いでも、ウィンクも指差しも目線もあってずきゅーん!も間に合っている。

ゴージャスもきらきらも夢も切なさも萌えも、全部、宝塚大劇場にある。

ベルサイユのばらに始まり、近年では銀河英雄伝説、ルパン3世、るろうに剣心、はいからさんが通る、ポーの一族、天は赤い河のほとりと、名作漫画作品を見事なビジュアルで再現してきた宝塚歌劇団。

だから間に合ってますって、うちは。本来。

なのに、突然、何なんだろう?この人は。

修学旅行で行った東京で、思わずスカウトの方が声をかけてしまうほど、林遣都さんはきらきらきらと多分、当時から強くきらめていたのだろうと思う。太陽というより、ひときわ強く輝く星。多分、青く儚げだけれど強い光。

 

第6話の予告では、牧君は泣いていた。

彼は春田さんが最大級に幸せになれる相手は自分じゃないと思っているようだった。それは予測しうる事態だ。春田さんが牧君を人間として好きで、心底大切に思っていて、愛おしい存在だと思っているのは無意識に出る様々な言葉から間違いないと思う。

けれど、牧君が春田さんに思わずキスしてしまうのと同じ、一つになりたい、触れ合いたいと願う愛と同じなのかは、まだわからない・・。彼らの鍵は、かちりと本当に合うのだろうか?

全員がハッピーにというプロデューサーの方のご発言を信じて、次の土曜日までを生き抜きたい。

先週末は無事に録画できていたので、スライド作成はいったん置いておく。あの美形チワワにこれ以上、生活ペースを乱されるのは本当に困る。林遣都さん主演映画「にがくてあまい」と、NHKで主演されたドラマ「銀二貫」(※)のDVDを握りしめながら、今夜はこれで終わりたい。

※「銀二貫」:宝塚歌劇団では当時雪組だった月城かなとさん(美形男役さん)が主演。月城さんは「るろうに剣心」でも蒼紫を超絶ビジュアルで演じた方。現、月組。

TVドラマ・おっさんずラブ 林遣都さん演じる牧の切ない瞳 ―彼はもう泣いていいんだと思う・・

えー、以下は普段とは異なる筆致で別の沼らしき林遣都さんの美しくも切ない目について書いています。 

最新第6話の感想はこちらです。林遣都さんの涙の演技の力に関する考察を切々と書いております・・(涙目)

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1.林遣都さんという美しい湿地帯、というか沼

以前からうすうす感じてはいた。

5月、それは何か新しいことが始まる新緑の季節。年度単位が多い私の仕事がちょうど一区切りする月であり、多分、誕生月であることも原因なんだと思う。

思い起こせば宝塚歌劇を初めて観たのも5月だった。

始まりはいつも突然に。人は別に沼にはまりに行こうと思って何かを始める訳ではない。少し気になっていた美しい湿地帯の霧のかかった風景を見にいくつもりで進んだ先、そこに沼があるなんて知らずに足を取られる。そういうことが人生には時々ある。

 

ことの発端は吉田鋼太郎さんだった。

twitterのTL上に時々流れてくる画像。どうやらTV朝日系列で土曜深夜に「おっさんずラブ」というTVドラマが始まっていて、「花子とアン」で男気ある石炭王・嘉納伝助さんを見事に演じておられた天下の舞台俳優さんが乙女な部長らしい。好きな相手のことを「存在が罪」「可愛すぎるぅー」と言うその姿は、宝塚ファンにとっては身近なものだ。宝塚ファンは、いつだって自分の好きなスターさんのことをそう思っているから。

吉田鋼太郎さんに朝ドラ以上に興味を持ったのも、実は宝塚歌劇団がらみだ。元星組トップスター・柚希礼音さんという100周年の見事なトップスターさんは退団後、ミュージカル界でご活躍。去年の秋、その柚希さんは英国ミュージカル「ビリー・エリオット」で吉田鋼太郎さんと共演されていて、とても観たかったのだが、残念なことにお二人が共演される日程はことごとく仕事があり、断念した。

なので。

ふぅぅぅん。乙女な部長が部下に恋をする、コミカルでいて真摯なドラマなんだろうと勝手に思っていた。そこにすっぽりと一人、抜け落ちていた人物がいることに気づかずに。

それこそ、主人公・33歳の普通の男子である春田創一(田中圭さん)に恋する若きエリート・牧凌太(林遣都さん)。吉田鋼太郎さん演じる黒澤部長のライバルだ。

 

2.大切な人を思って泣くということ

娘が第3話を観て、その日、確かたまたま眠くって土曜23時過ぎにはきっぱりと眠りについていたアラフィフ@健康第一。

「爆笑だった」 娘のその一言を信じて第4話を先週土曜日に観たのが、私自身の物語の始まり。

冒頭の振り返りシーン、シャワーを浴びる主人公に「好きだ」と詰め寄る美形の大きな切ない瞳。美しい横顔のライン、イケボ、一瞬でもわかる美しい鼻の形。

ドラマが進むにつれ、春田(はるたん)の素晴らしい顔芸に大笑いしていると、時々画面に現れる例の美形。

あれ?この子は別に乙女じゃないんだ?

黒っぽいスーツを着て、繊細な美しいラインを描くお顔とは裏腹に「一回黙れ!」という強い声を発し、冷静に仕事を進める例の美形。

どうやら例の美形は、牧君というらしい。でも、その強そうな頭の切れそうな例の美形は、時々とても切ない目をする。

主人公・春田の幼馴染女子ちずちゃんが転がりこんだ場面では、料理を褒められてくしゃっと笑う。男二人で暮らしているけれど、牧君はこの率直で単純そうだけれどまっすぐに普通の男子の春田さんに恋しているらしい。

春田と幼馴染女子の会話を聞いてうつむく牧君の大きな目。湧き上がる複雑な感情に耐えている彼は、本当は泣きたかったんだと思う。

そして、どうやら牧君のことを好きらしい別の長身美形眼鏡(イケボ)に「不毛な恋」だと言われても、「そんなこと、僕が一番わかってます」と笑って去る牧君。笑っているけれど、彼はやっぱり泣きたかったんじゃないかと思う。

くだんの吉田鋼太郎さんは、見事な振られっぷりで泣く。「こんな僕を好きになってくれて」とお礼を言う主人公・春田も泣く。彼は部長が「男だからだめなんだ」とは決して言わない。

その部長を影から見守り泣く妻役の大塚寧々さん。30年連れ添った夫の男性に対する失恋に一緒に涙する・・。

それぞれに大切な人だからだ。

 

でも、牧君は泣かない。涙ぐむけれど涙を大きな目一杯にためて耐えている。少なくともこの第4話までは。

春田の幼馴染のピンチをきっぱりと解決するのは牧君だ。でもその後、幼馴染に電話する春田を見守る牧君の切ない目。

彼はこの時も本当は泣きたかったんだと思う。

身を引くと決めて家を出て行こうとする牧君を春田が引き留めるバックハグに「え?」と戸惑う牧君、なぜかバックハグの手に手を添える牧君。そこに実にタイミング良く帰ってくる幼馴染、さすがドラマ。第4話はここで終わる。

 

3.涙をたたえた切ない瞳

翌日、第1話から第3話を有料サイトで一気視聴したところ・・。

まーーーじーーーでーーーー!!(絶叫)

出ていくに至るまで、彼はいろんなことを既に試みていた。

 

突然の告白とキスする前の思い詰めた目

可能性のない恋を止められない自分が嫌になるという寂しくうつむく目

冗談ですよというはぐらかしの複雑な目

ライバルの部長への嫉妬の目

絶対に奪われたくないという闘う目

怒りながら半分切れながら好きだという自暴の目

公園で一人ぼっちで振り向く寂しい目

普通には戻れないですという諦めの目、そこから背伸びしてのおでこへのキス。

その目には涙が一杯たまっていて、きらきらと輝いていて。

林遣都さんのあの大きな目は多分、美しい沼への入口なんだと思う。

 

その後、第3話では「放っておいてくださいよ」と切れる牧君。通しで観た上、第4話を見直すとさらに・・。

牧君は泣きたいんだと思う。本当は、大声をあげて。

というか、泣いてほしい。

心の中に積もっているこれまでの悲しみや寂しさや傷を全部放り出して、泣いてほしい。他のみんなは泣いているんだから。

目に涙を一杯ためずに、ほろほろと、わんわんと泣いてほしい。

春田の単純でまっすぐな明るい感情表現は、無神経でもあるけれど、牧君の中にためこんでいる様々な感情を解放できる「窓」で、その窓から射す光は牧君には「希望」なんだと思う。

だからこそ、考えるより先にその光に向かって走っていった牧君の恋。シャツを着たままシャワーの中に思わず入っていく牧君の目は、この人に近づきたい、触れたいというまっすぐで強い憧れと欲望満ちていた。大きな黒い目が少し紫がかるような切なさ。

幸い(?)にして、第6話では大号泣シーンがあるらしい。その物語が悲しみなのか、喜びなのか、切なさなのか、それはわからない。

けれど、牧君にはもう心から泣いて泣いて、最後に笑ってほしい。自分の心をずっと守ってきた鎧を少しだけはずして、その人の前で。

 

4.宝塚歌劇団の良さが身に染みたスライド

そして驚くべきことに、このTVドラマのDVDやBlu-rayの発売はまだ発表されていない。

宝塚歌劇団であれば、公演途中で実況CDが出て、大劇場や2番手さん以上であれば別箱も含めて、確実に映像が販売される。ある程度以上のスターであれば舞台写真もポストカードも、公演ごとの台本と写真が収録された紙媒体も、普段の動きを伝える定期刊行物もとりどりにある。宝塚歌劇団のありがたさをしみじみと実感した。

 

この作品で牧凌太を演じる林遣都さんの美と切ない目を、円盤に閉じ込められないのだとしたら・・。しかも観たのは第4話からで、それまでの録画は一切ない。その第4話すら録画は失敗していて一部しかない。

おおいに焦った。

そこで、GYAOで購入した第1話から第3話と、TV朝日の公式サイトで無料で公開されている第4話の動画から、牧君場面をスクリーンショット→PPTでスライドに張り付けるという作業をここ3晩かけて実施。

昨夜、無事に作業は完了し、スライドは実に120枚近くになった。1話あたりおよそ30枚。後3話あるからおよそ200枚くらいになる予定。これで何とか生き延びられそうだ。

中間テスト勉強中の娘に「お母さんがあほ過ぎて、もう・・」と哀れまれたとしても、駆け出した心は止められない。そこまで林遣都さんの目の演技に心が動かされたということ。あのイケメンチワワになぜここまで心を乱されないといけないのか、若干の理不尽感もあるにはある。

 

とにかく話はまだ終わっていない。

土曜日夜11:15。牧君の幸せを心から願っている。笑う目が最後には見たい。

ほんっと、ハッピーエンドで頼む!!!(涙目)

第5話の感想はこちらです。

mothercoenote.hatenablog.com

花組博多座・あかねさす紫の花A日程ライビュー感想 必要欠くべからざる者

皆さま、こんばんは。寒暖差が激しい日々ですが、お元気でしたか?

先週土曜日に花組博多座公演「あかねさす紫の花」Aパターンライブ・ビューイングで拝見いたしました。基本、劇場での観劇感想が中心で映像のみでの観劇感想はあまり書かない派ですが、初見の「あかねさす紫の花」については書きたいことがあるので、書き残しておきたいと思います。

以下は、鳳月杏さんが演じられた中大兄皇子について、いつもながら私が勝手に受け止めた思いを書いたものです。宝塚ファンとしての歴史がごく短いmiyakogu。「あかねさす紫の花」は全くの初見。スカステでも見たことがありませんでした。ですので、自分がまっさらで拝見した印象で以下は書いております。

 

大熱演の花組さん、中でも明日海りおさんの大海人皇子は、心優しく暖かな人柄の中に揺れている複雑でいて多様・多彩な感情表現が見事だったと思います。

額田女王への少年から青年期の爽やかな愛、兄と家族への暖かな思い

兄皇子を助けて国をまとめるのだという青年らしい夢と野心

額田女王が兄に取り上げられそうになってからの兄への抵抗、従順、諦念

ずっと秘めていた思いの断ち切れなさ、やるせなさ

断ち切れない思いは、やがて狂気のような嫉妬と怒りへと転換していく。その様を見事に見せてくださったと思います。みりおさん、大熱演でしたね!

A日程は本日までとのこと。仙名彩世さんが演じられた額田女王も同様に多彩で複雑な感情を演じ分けておられ、また柚香光さんの天比古も幻のような恋に取りつかれた若き仏師の絶望を切なく演じておられました。

私は田辺聖子さんが短編(エッセイと言うべきかな?)で描かれた額田女王でイメージができあがっており、実はもっとおおらかでさらに強い額田女王をイメージしていました。そこは期待と異なりましたが、twitterでの感想を拝見すると、これまでの額田女王はどちらかというと強引に抗えぬ運命に引きずりこまれるようだった様子。なるほど、今回の花組公演では、宝塚版としては額田女王がより強く自分の意思で選んだように見えたのですね。

役替わりA日程は本日まで。皆様、お疲れ様でした!

 

さて、A日程で私は最も驚かされたのは鳳月杏さんが演じられた中大兄皇子でした。

ライブビューイングの映像のみの感想で恐縮ながら、鳳月さんが演じた中大兄皇子は国をまとめ大和王朝を確立させようとする若き王の夢と野心、その孤独が強く感じられたのです。

鳳月さんからは華やぐ儀式や宴にあっても、その周りにすっと静かな水の膜があるような、静謐でどこか激しさを秘めた孤独が感じられました。

観ている者の目をとらえて離さない、けれど近づけない領域。

鳳月杏さんが目線を動かすとそれは水が細かく波打つようで。「ちなつさんの色気」として客席の皆さまが圧倒されたように思われたのは、タカラジェンヌとしての色気以上に権力を掌握しつつある若き王としての佇まいからくるものだと、私は受け止めました。

 

彼は、弟とともに王の座へと駆け昇った。常に共にあった弟の皇子。

しかし、兄の持つ器量が他の誰にも理解が及ぶものではなくなったとき、心優しい弟の皇子はいつしか少しずつ、そこから置いていかれていったのではないかと思うのです。それまで100あれば100、お互いに響き合うようだった心が、わずかに1、2ずれていく。

置いていかれる方に同レベルの才気がなければ気づかないわずかな差異。弟の皇子はそのズレに気づいてしまう。同等に賢いから、けれど中大兄ほど冷徹にはなれないから。

おそらく、ともに進む中で二人の皇子には、互いにはっしと投げれば受け止めてもらえる喜びがあったと思うのです。

彼らは必要欠くべからざる者だった。

けれど、中大兄皇子が王となり、一人その座に座ったとき、彼の目に見えたものは中大兄にしか見えなかった。

その孤独。進んでいった者も、置いていかれた者も孤独の中にいる。

 

では、その孤独の中で、ただ一人、自分が見えている道の光も闇も同じように見ている者がいるとしたら?自分を補完してくれる者がいるとしたら?

若き王が見出した存在、それが額田女王だったか、と拝見していて私は思いました。

額田女王もそうなのです。国が大きくなっていく過程で、中大兄皇子と響き合うものを自分だけが持っていることに気づいてしまう。

 

必要欠くべからざる者。その組み合わせがいつしか変わってしまった悲劇。

私はこの「あかねさす紫の花」は、単に二人の皇子の間で奪い合われ揺れ動いた額田女王の「恋」のみを描いたものではないだろうと、今回の花組公演から感じました。

そして、そのように感じさせたのはやはり、明日海りおさんと鳳月杏さんの二人の皇子だったからではないかと思うのです。

鳳月杏さんは「兄」であり「王」でした。圧倒的に。

そう感じさせる演技をみせてくださったちなつさん。その演技力と説得力のある佇まいに拍手をお送りしたいと思います。

B日程、今度は明日海りおさんは、弟資質を備えた柚香光さんを相手にまた異なる説得力のある兄を演じられることでしょう。

博多座公演、観劇やライビューをお楽しみください。