代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

雪組・星逢一夜 まじめに考察 オペラ「椿姫」観劇後に考える号泣の理由とトリデンテの威力

天神祭が終わり、夏真っ盛りの大阪です。皆様、お元気ですか。つい先ほど、ゆで卵を早く引き上げ過ぎ、半熟です。固ゆでの好きなmiyakogu、耐熱皿にいれオーブントースターで焼いてみました。

大成功です!!ワインを片手に「正義は勝つ!」(⌒▽⌒)!。そう叫んでいると、「それって正義なん?」と冷静な娘の突っ込み・・。

放っておいてくれる?!とっとと、夏休みの宿題をしなさいよね!!

 ※お越しいただき、ありがとうございます。勢いのあまり、「星逢一夜」について、結局16個もの記事を書いていました。そのまとめがこちらです。よろしければご覧下さい(^-^)。 

mothercoenote.hatenablog.com

 

1.兵庫県立芸術センター「椿姫」の美しい旋律、斬新な映像、佐渡さんの情熱

さて、19日に宝塚大劇場にて雪組「星逢一夜」を観劇した翌日、miyakogu一家は兵庫県立芸術センターにてヴェルディ先生の「椿姫」を観劇したのです。同センター開館10周年記念公演、佐渡裕さんプロデュースオペラです。

片や、翌日も頭痛が残るほど号泣した宝塚歌劇団「星逢一夜」

片や、佐渡裕さんの力の入った指揮棒が観客席に感動を与える「椿姫」。佐渡裕さんが書かれているとおり「胸が締め付けられるような美しいメロディ」(出典:兵庫県立芸術文化センター「椿姫」パンフレット、同センター発行)。傑作悲恋オペラです。どういうご縁か、「アイーダ」に続きヴェルディ先生の演目が続いています。

美しいオーケストラの旋律、オペラ合唱団による迫力のあるコーラスマイクなしのオペラの歌声、斬新な映像による舞台芸術。佐渡さんの指揮棒を握る手の激しい動きが見え、情熱がほとばしるようです。

佐渡裕さんはオペラを気軽に楽しめるようにという趣旨で毎年、オペラをプロデュースされており、一番高いA席で12,000円、毎年、オペラファンを集める定期公演になっています。miyakoguも昨年、このおかげでモーツアルト作「コジ・ファン・トゥッテ」を初めて観劇いたしました。

また、イタリア人のマウロ・マッテウッチさんによる映像が大変斬新でした。後ろの縦長の大きな液晶パネル数枚に、夜会に出かける馬車が映し出され、シャンデリアの映像、主人公達の映像が映し出されることにより、臨場感を演出します。初めてみた演出で、夜会の場面では白い椿の花が一杯に映し出され、その前で歌うヴィオレッタ。大変に美しい舞台でした。

 

2.オペラ「椿姫」の涙の行方と座り直したバリトン

miyakoguは、何を隠そう、月組さんの短編「明日への指針 -センチュリー号の航海日誌」で泣いたことがあります。凪七さん演じるナイジェルの告白シーンです。

しかし、この「椿姫」、素晴らしい舞台作品であるにも関わらず一粒の涙も出ませんでした・・。いえ、佐渡裕さんの情熱には感嘆しております。(ただし、キャストは交替制であり、私が観劇した7/20のキャストでの感想です)

値段をお安く抑えているだけに、メインを張るオペラ歌手の皆様はまだお若い、ご経験のそれほどにはない方のようでした。もちろん、本職のオペラ歌手、確かにポイント、ポイントでは十分に聴かせますまた、ヴィオレッタ役のテオナ・ドヴァリさんは、すらりとした美しい方で、外見の説得力もあります。

ヴィオレッタとアルフレードが二人で恋を歌い、さらにヴィオレッタが二人が暮らす屋敷を去る第2幕第1場。正直に告白します。美しいオーケストラの旋律の中(多分、音楽が美しすぎるのも罪だと思いますが)、うとうととするmiyakogu・・・。しかし・・。

「椿姫」における重要な役であるアルフレードの父・ジェルモンが現れ歌い始めたとたん、一気に目が覚め、座り直しました。miyakoguだけではなく、劇場に静かな集中が感じられます。だ、誰?このバリトン歌手??

ジェルモンを演じられたのは高田智宏さんというオペラ歌手で、現在、ドイツ在住の方のようです。終演後、誰よりも大きな拍手、ブラヴォーのかけ声を受けておられ、この方をお目当てのお客さんも多いご様子でした。

では、彼は何が違ったのか?

主人公お二人も、当然、場面場面での歌唱はお上手だったのです。イタリア語と字幕を介していることによる、ダイレクトな響きのなさ?

いえ、高田さんも当然イタリア語です。そして、私達が驚嘆した「オペラ座の怪人」25周年記念のDVDは、英語な上にかつ映像でした。しかしながら、タオルで涙をふく有様でした。

では、いったい何が違ったのでしょうか?

それは、おそらく、椿姫=ヴィオレッタとの恋を息子アルフレードの放蕩と思い、娘の縁談のためにヴィオレッタに身を引くように頼むジェルモンの心を乗せた歌唱の力だったと思います。

ただ歌唱そのものが優れていたのでなく、歌われたバリトン歌手の高田さんは父・ジェロモンとしてその場を生きておられたように、あふれ出る感情を劇場に飛ばされているようにお見受けしました。他の方は、浅学の身の失礼な言い方で大変申し訳ないのですが、間違いのないように歌うことに、優れた演技をすることに精一杯だったのではないかと思いました。もちろん、場面場面では優れたものがあるのです。しかし、劇全体を通じて、その役を生ききったかどうか・・。

「間違いのない歌唱」であるがゆえに、その差がより明確に出てしまう。オペラとは非常に残酷な芸術なのかもしれないと、miyakoguは感じ入りました。

 

※上記の「オペラ座の怪人」25周年記念公演で怪人役を演じているラミンさんの演技についてはこちらです。

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3.恐ろしいトリデンテを見せる雪組「星逢一夜」

雪組さんの「星逢一夜」をまだ一度しか観劇していないにも関わらず、「この作品は何だろう」「この人たちは何なんだろう」「宝塚歌劇団のすごさとは何だろう」とmiyakoguは先日来、ずっと考え続けているのです。仕事で移動の時、通勤電車の中で一人でずっと。

観劇歴のごく浅いmiyakoguがこのように申し上げることをお許しいただきたいのですが、ひょっとすると、私達は今、宝塚史上に残る名作の一つに同時代の証人として立ち会っているのではないか? そう思えてきてしまいます。

稀代のソプラノ歌手エディタ・グルベローヴァさんの「椿姫」を生で観劇したことのある旦那はんのご意見によると、「外見はもうおばさんだったけれど、最後にヴィオレッタが亡くなる場面では、ほんまに涙出そうやった」とのこと。素晴らしい歌声だけでなく、その演技に泣きそうになったとのことです。

そうなのです。舞台での感動を生む要素声、美、演技。そして、その役の人生を今、ここで生きている人たちがいる、そこからまっすぐにズドーーンと観客側の心に届く、演者達の本気度、時に狂気とも言えるような舞台からゆらめく何か。それが必要なのだと思うのです。

オペラ「アイーダ」との比較により、伶美うららさんの声について、宝塚では「美」こそ正義だと書きました。一人の美しい演者に全てを求めるのは酷だと。

しかし、雪組「星逢一夜」は、以下の要素が一人の演者ではなく3人の絶妙のトリデンテにより実現されています。

●早霧せいなさんの触れてはならないような青年武士の美しさと、哀しみを秘めた繊細な演技

●咲妃みゆさんの強さと静けさの中に熱情を秘めた声と、時に狂気すらゆらめく演技

●望海風斗さんの包むような優しい声と、男の静かな意地を感じさせる歌と演技

 

宝塚ファンが求めてやまない絶対的な美がそこにあり、驚嘆するような声を震わせる演技があり、そして歌がある。声、美、演技の全てが3人の演者によって揃い、それぞれの役を生きておられることで、舞台から観客席に放出される秘めた熱情と哀切。

観客席にいたmiyakoguはその熱量に圧倒され、受け取めるのに精一杯だったのです。ストーリーに、セリフに、歌に、声に、そして美に。理解するのを超えるような、信じがたいような何かを受け取ってしまったとき、観客というのはおのずと涙をこぼしてしまうのではないでしょうか?

ちぎちゃんのが、みゆちゃんから狂気がゆらめくような熱情の演技を引き出し、みゆちゃんの演技が、ちぎちゃんの繊細な演技を増幅させ、だいもんさんの慈愛の声が劇場全体を包みこむ。

雪組さんの3人が生み出す奇跡のトリデンテ。どうぞタオルとともにご観劇ください。

 

このように、「あ!そうか、この3人だからこそ、全部揃うんだ!!」と今日の帰りにようやく腑に落ちました。ずっと考えていたのです。

miyakogu娘の大好きな、近くのお弁当屋さんの巨大弁当(525円、超お得だが、カロリー超危険)が2つ入った袋を下げ、横断歩道を歩いている時、天啓を受けたようにひらめきました。いや、お弁当、おいしかったです。

何も考えていないかのように歩いている忙しげな疲れた夕方のワーキングマザー。頭の中には壮大な世界が渦巻いているのです。

ほんま、いっそがしいわぁ!!