新人公演帰りのmiyakoguです。
今回、あまりにこの「星逢一夜」に思い入れが強すぎ、新人公演で泣けなかったらどうしよう?と思って臨んだ観劇でしたが、全くの無問題でしたね・・。miyakoguはほろほろ、周りの皆さんもずびずび。
(最新作品 バウ「銀二貫」の感想はこちらからたどってくださいね)
また、組替えについての記事はこちらです。よろしければどうぞ。
1.作品の力と月城かなとさんの色気
宝塚歌劇に辛口なくせに、「チケット取りなさいよ」と暗に詰め寄ってくる旦那はんですが、開口一番、「これは脚本がいいね、誰?」と聞いてきたのです。
そうであろう、そうであろう!!どや、これが宝塚歌劇団新進気鋭の女性演出家 上田久美子先生の大劇場デビュー作なのだよ。ほほほ。いや、私が自慢することではないのですが・・。
その中で炸裂する月城かなとさんの美と色気。
まあ、月城さんが出てこられると、周りの皆様のオペラグラスがさささーーーとあがるのです。これ舞台から冷静にもし観察できたら、相当面白いはずです。ほら、稲が風にざざーっとなびくじゃないですか?ああいう感じだと思うんですよね。
少年の美しさ、青年武士の美しさ。そして、再会時に泉に迫る時に炸裂する色気!!
うちのばっさり娘(小学高学年)いわく、「かなとさんがエロすぎて」と、はらはらしたそうです。小学生をもとりこにするフェロモン。怖い、怖いです。
月城かなとさんはインタビューでもお答えになっていたようですが、喉の状況は万全ではなかったご様子です。実はうちの娘が前日に観劇、月城かなとさんの声を心配していたのです。マイクトラブルかな?と思っていたのですが、子どもの感性はさすがに鋭く、異変に気づいていたようです。
しかし、この点がさすが研7さんだと思ったのですが、万全でない状況でできるところで勝負なさっている様子がうかがえ、しかも堂々とされていて、その技術と舞台度胸に感心いたしました。後半はセリフの声はいけると確信をもたれたのか、凛々しい青年武士のゆらぎのなさを感じさせる素晴らしい演技でした。
ただ、これは個性の問題だと思うのですが、早霧せいなさん独特の軽やかさ、素朴な中の無邪気さ、こういったものは出すのがとても難しいものなのだと、改めて感じました。
権力のあるポジションにいる人は、自分にへつらわないまっすぐで無邪気な頑固さ、正直さを愛するものだと思います。早霧せいなさん=ちぎちゃんの晴興はそのあたりが本当にうまい!ちぎちゃん自身の個性なのかもしれないと思わせるようなさりげなさです。
最後に泉に生涯でたった一つの望みを語るとき、ちぎちゃんは少年に戻り、本当に少年の夢を語るようにセリフを言われるのです。その軽やかさ(純真さ、とでも言えばいいのでしょうか?※)、無邪気なゆえのかなわないことの残酷さ、儚さ、このあたりは本役さんならではかと思いました。
※言葉で表現するのが難しいのですが、力まず、実現するとは思っていないのだけれど、本気で夢を見ているのだということが伝わるような演技です。その後の、「からかっただけだ」の言い方も含めて、相当難しい演技だと思います。
2.彩みちるさんの泉
本役さんが咲妃みゆさんで、しかも初ヒロインというのは、大変なプレッシャーだったと思います。観る前から、私の一番好きな=泣ける場面である、最後の2人の場面で泣けなかったらと心配していたのですが、杞憂でした。他の場面よりも相当、みゆちゃんに肉薄されていたと思います。
彩みちるさんは声がお綺麗で、セリフもよく通り、初ヒロインとは思えないお上手さで驚きました。場面場面では、役を生きておられる、そのような手ごたえを十分に感じました。
ただ、これも本役さんがあまりに上手すぎ、子ども・娘・母それぞれの時代、その中で揺れる心、晴興を刺せない気持ちの吐露、晴興を逃がそうとする狂気すら感じる演技、これらがあまりにすごすぎて、比較するのはお気の毒です。
結局、新人公演を観て決意したのは、もう一回、必ず本公演を観る!ということ。娘には内緒でチケットを押さえてとっとと観劇に臨みたいと思います。
3.永久輝せあさんの源太と美形ぞろいの三日月藩農民
永久輝せあさんは、さすがに新人公演主役経験者。とても安定感があり、安心して観劇できました。子ども時代、二人で櫓に座ってのやりとりは、「ちょ、三日月藩!美少年二人ってありえへんやろ、これ!」といいたくなるような美しい二人。
そうなのです。永久輝せあさんは、ごめん、農民にはとても見えない上品な公達のような方・・。美しい公達二人として、ぜひ観てみたいコンビです。ただ、一揆での晴興との戦いの場面での永久輝せあさんは、一揆を担うリーダーとしての迫力ある戦いぶりでした。
三日月藩に美形が多すぎ、イケメン少年バンドの上品なボーカルにも見えなくもないのです。あかんやろ、三日月藩農民の皆様。
上品な永久輝せあさん、背が高く青いはちまきがお似合いの真地佑果さん、後ろにくくった髪が素敵な諏訪さきさん。この3人でユニットでぜひ、売り出していただきたい!その名もロックバンド「蛍」。ビジュアル重視ですので、エアバンドでも結構です。いかがでしょうか??
3.芸達者さん達の納得の演技
徳川吉宗役の真條まからさん、源太の母役の愛すみれさん、貴姫役の有沙瞳さん。安定のお上手さでした。
そこに加えて、今回目を引いたのが、ちょび康役の陽向春輝さん。かわいらしく、泣き虫で、笑いを取りつつ、泣かせる。ちょっと大げさかもしれませんが、今回の新人公演で月城かなとさんに次いで、その役を生きている印象を受けた方でした。今後を楽しみにさせていただきます。
また、叶ゆうりさん。お上手だし、男役として目立つ方なので演出側も配役しやすいのか、いろいろ出ておられて、「あれれ?」となりました。一揆の場面にも出ておられるのですが、叶さん以外の三日月藩足軽隊の皆様、娘役さんが大半なんですね。
4.そして本役トリデンテに馳せる思い
結論をざっくり申し上げると、ノドが万全ではなかったにも関わらず、月城かなとさんがダントツの存在感で、トリデンテというより円錐という感じでした。円錐を螺旋に降りていくと永久輝せあさんがおられ、そして彩みちるさんがおられるような、そういう円錐形トリデンテです。しかし、これはご経験の差からおのずと出てしまうもので、そのトリデンテで、この難しい作品を十分に演じておられたと思います。
新人公演を観て結局感じたこと。それは、本公演をもう一度観たいということでした。
ちぎちゃんの哀しいのに軽やかな明るささえ感じさせる演技、みゆちゃんの鈴が微かに鳴っているかのような声の響き、だいもんさんの星逢のお祭りの場面での粋な歌声。
確かに奇跡のトリデンテ。もう一度、何とか観劇したいものです。
最後にうちの小学高学年ばっさり娘の感想で新人公演を総括したいと思います。
「かなとさん、エロい」、「蛍村、ちゃらい」。
(最後に櫓で晴興が泉を抱きしめる場面について)
「新人公演では泉が暴れてないから、かなとさんもそっと抱きしめるけど。泉はもっと暴れてるねん、だから晴興がぎゅっと抱きしめるねん!」
「暴れる」というのは錯乱さえ感じさせる迫真の演技ということですね。 なるほど、率直なご感想、ありがとうございました・・。
※その後、娘が書いた月城さんの色気についてはこちらです。