代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

星組・ガイズ&ドールズ まじめに感想 北翔海莉さんの甘く伸びやかな声と風ちゃんを包む力

「桜華に舞え」の感想はこちらです。よろしければどうぞ(^^)

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皆様、こんばんは。本日午後公演の新生・星組さん「ガイズ&ドールズ」を観劇したmiyakoguです。満員の会場、アナウンスで入る拍手、フィナーレでの大きな拍手。お披露目公演の2日目らしい熱気と期待に満ちた大劇場と、期待に応える安定した船出のトップコンビ

1950年代のブロードウエイ・ミュージカルらしいハッピーで明るいミュージカル・エンターティンメントであり、群舞とコーラスも楽しい賑やかで笑いが一杯の作品です。

翔海莉さん、妃海風さん、ファンの皆様、おめでとうございます。

※皆様のパフォーマンスは大変素晴らしいと思いましたが、作品自体にはやや不満が残りました。これは演者のお力とは全く関係なく、作品の選択の問題かと思いますので、最後に少しだけ。

 

1.北翔海莉さんの甘く伸びやかな声

本日、最も印象に残ったのは当然ながら、北翔海莉さんの劇場一杯に伸びる声です。私はあいにくと北翔さんの主演舞台を生で観劇したことがなく(ご出演の大劇場作品は観劇しておりますが)、作品全体を通じてその声の素晴らしさを体感する機会を持たないままの今日の観劇で、正直、びっくりしました。「晴れやかな声」「伸びやかな声」とは思っていましたが、「甘やかな声」だとは認識していなかったからです。

ただ、男役さんがカバーされた曲によるCD「14covers」での未涼亜希さんとのデュエット曲「太陽と埃の中で」を聴き、お二人それぞれに対照的な素敵な声だと思ったのは覚えています。北翔さんは明るい伸びやかな、軽やかな色気を含んだ声だなと、その時から思っていました。お一人で歌われている「悲しみにさよなら」よりも、お二人の対象的なお声が印象に残っています。

今作品において、北翔さんご自身もパンフレットで書いておられますが、「帰り道に口ずさみたくなるような名曲」が多い中、miyakoguが帰り道に口ずさんだのはテーマソングともいえる「はじめての恋」。(作詞 フランク・レッサー 訳詞 岩谷時子)

「恋のワイン 甘く強く」と北翔さんと風ちゃんがそれぞれに歌い、デュエットもされます。最後のフィナーレのデュエットダンスで、お二人は銀橋でも歌われています。

フィナーレでも確かこの曲を歌っておられたと思うのですが、劇場一杯に伸びる素晴らしい声、甘く晴れやかな伸びやかな声。専科を経られたこともあってか、さすがにご経験が長いだけあって、力みの感じられない軽みのある伸びやかな、心地よい声でした。

スーツ、帽子、踊り。見せ方を非常に心得ておられる演者であるとも思いました。柚希礼音さんという素晴らしいトップスターさんが退団された後の星組を、ぐいぐいと引っ張っておられ、「北翔さんの星組」ができていることに感心しきりです。

考えてみると、柚希さんの後を次いで星組・トップスターになるというのはとても難しいことでしょう。どなたがなられても、ファンは柚希さんと比べてしまいます。しかし、北翔さんであれば、柚希さんとはまた違う形である種完成された姿をファンにいち早く見せることができる、劇団側はそのように判断されたのではないかと推察いたしました。

公演2日目の現時点では化学反応で新しいものが生まれているというより、トップの北翔さんが新しい星組をひっぱっている、そういう印象でした。

 

2.風ちゃんの可愛らしさと弾ける生気

このお二人は非常に相性のいいコンビで、劇場の皆様からも似たようなコメントがあちこちで聞かれました。お二人とも歌が上手く、作品自体もそういう作品ですが、ミュージカル・ショウとして純粋に楽しめます

1幕7場、8場の酔っ払った風ちゃんの可愛らしいこと!救世軍としての自分の仕事に「向いていないかもしれない」と悩む一方で、年頃の娘らしい弾けるものが開放され、まっすぐに恋に向かって花開くような素直な美しい心があることが、この場面での風ちゃんのダンス、演技から伝わってきました。風ちゃんというのは、まっすぐな可愛らしさ、弾けるような「生気」を根っこにお持ちの娘役さんではないかとインタビューや映像から感じております。

 

3.北翔さんの年上の包容力に溢れたデュエットダンス

そして、フィナーレでのデュエットダンス。男役さんがはけた後、一人残った北翔さんが風ちゃんを包み込んでおられます。

年上の余裕を感じさせる、そして北翔さんが風ちゃんをとても大切にしておられるのが伝わってくるような、そんなデュエットダンスでした。いや、なかなかええもん見せてもらいました。柚希さんと夢咲ねねさんのアダルティなトップコンビとは全く異なるスタイルでの新生星組デュエット・ダンスでした。

 

4.絶妙の間の紅ゆずるさん、美城れんさん、十輝いりすさん、七海ひろきさんの華

そのトップコンビをがっちり支え、絶妙な間で笑いを取っていくのが紅さん、美城さん、十輝さん。特に北翔さん演じるスカイとの賭けに負けて、風ちゃん演じるサラ達の救世軍の支部のミサに参加させられ、懺悔を行うナイスリーを演じる美城さんの演技は絶妙な間で、本日午後一番の大きな笑いを取っていました。

紅さんの役であるネイサンは、ちょっと難しい役ですね。ナイスリーほどの笑い担当でもなく、アデレイドにあれだけ愛される男の魅力を出しつつ、ギャンブラー達のリーダー的存在でありながらもギャンブルの場所探しに四苦八苦する情けなさや、結婚に踏み切れない優柔不断なずるさや、その一方で男として放っておけないような愛らしい頼りなさも必要かと思います。紅さんはそのあたり、うまいバランスでご健闘中でおられるのかな、とお見受けしました。

今後、北翔さんとの化学反応の中で、さらにくっきりとした役づくりが進むのではないかと期待しています。あ、十輝さんのパンフレット写真にはどうぞご注目。笑えます。十輝さんの素敵な低音ボイスでの「クラップ、やろうぜ」。楽しいです。

また、組替えで来られた七海ひろきさんは、今作品ではセリフが少ないのですが、群舞で必ず目を引く華のある方だなと拝見しておりました。ネイサンのイケメン友人ですね。

 その後、もう一度観劇して感じた素敵な変化、3度目の感想はその4です。

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5.素晴らしいミュージカル・スター、礼真琴さん

北翔さんに次いでびっくりさせられたのが、礼真琴さんのアデレイド。男役臭を消した非常にキュートで可愛らしい演技でした。階段降りでは紅さんの前にお一人で降りてこられますが、何とウエディング姿。とっても可愛らしい演技・ダンスに加えて、定評のある歌!

これはもう、押しも押されぬミュージカル・スターとして完成されているのではないでしょうか?。素晴らしかったです。女性としての声での歌も素敵でした。時々、ダンスのときにやや足が開き気味なのがかわいいところです。

 

6.ハッピーエンターティンメント!なのですが・・

1950年代のブロードウェイ・ミュージカルらしい、歌・ダンスがふんだんに取り入れられたショウ的なミュージカル。何も考えず、楽しく、リズムに乗って楽しめるハッピー・エンターティンメントです。帰り道にスキップをしながら、テーマソングを口ずさめる週末のお楽しみとして満足感が高い作品でしょう。私もロンドンで観たことのあるような、お決まりの展開のハッピーなミュージカルです。

ただ、作品中での「アデレイドの悲嘆」等の結婚を巡る女性達の考え方は、観客席の相当割合を占める現代の日本女性にとって、違和感を覚えることもあると思います。

こういう作品って、実は、結末がやたらと結婚式ってご存知でした??ミー・アンド・マイガールもそう、トップハットもそうです。

そして、サラとアデレイドが終盤、2人で「相手を変えてみせる」という趣旨で歌いますが、観客のかなりを占めるであろう既婚の女性達は、結婚において相手を変えようとするのは軋轢の始まりであり、期待できないことをご存知ではないかと思います。お話としてはもちろん「あり」なのですが、若干、違和感が・・。もちろん著作権を巡る契約上、時代に応じての改変は容易にはできないでしょうね。ノスタルジーはあるけれど、すこーしばかり、古い感じでしょうか?

 

そしてもう一つ、改めて思ったこと。

それは小池修一郎先生は訳詞を音楽に載せ、海外作品を宝塚のものにしてみせる天才であり(植田紳爾先生もそう語っておられました)、オペラの原作があるとはいえ、そこから飛躍してミュージカル作品「アイーダ」を創り出した木村信司先生は素晴らしいということです。

宝塚は、世界の最先端の作品を日本に一番に紹介するような、そんな役割を一時期、担ってこられたと思います。しかし、今日のファンは「その先」のものを観る機会にも恵まれています。

以前、ある芸能プロダクションの役員の方にこう教えていただいたことがあります。「miyakoguさん。僕達の世代はね、サザンを聞く還暦になるんですよ。そういう時代の中高年向けのエンターティンメントは自ずとこれからとは違ってきますよ」と。

ミュージカル映画の黄金時代とも言われた1950年代から1960年代の作品は素晴らしく楽しいものであり、当然、折々にそれを取り上げるのはありえると私も思います。ただ、宝塚歌劇団の次の100年はおそらく、オリジナルなミュージカル作品、演劇作品をいかに創造しうるか、既にお取組みがあるように、そこにかかっているようにも思います

私は、当事者の皆様はこちら側が計り知れないような努力をされていると重々承知しており、一ファンであるmiyakoguがこのような勝手な考察を申し上げて大変恐縮ですが、そのように思った今日の観劇でした。

それは些細な私の意見として置いておいて。とにかく、北翔さんのあの歌声、風ちゃんとのコンビぶりを純粋に楽しめるハッピー・エンターティンメント、ぜひご観劇ください。

天寿さんに着目した感想2はこちらです。よろしければどうぞ。また、小学高学年娘のやや辛口評も追加しました。

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「こうもり」の感想はこちらです。よろしければどうぞ。(4/26 本当をいうと、サヨナラショー向けの歌詞だと観劇時に思いました。とても素敵な「天翔ける翼」の歌詞でした。その続編のような記事は退団記者会見についての中で書いております)


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