代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。

宙組・全国ツアー メランコリック・ジゴロ感想5 実咲ファンタジー「孤独で硬質な天然少女の一途さ」

皆様、こんばんは。ようやく1週間が終わりましたね。本日、特急電車の中でさらに書き留めた「メランコリック・ジゴロ」の感想をお送りします。「朝夏ドリーム」に続く、「実咲ファンタジー」についての考察です。今後、「真風マジック」についても書きたいところです。

 

1.天然な中に一途な強さを秘めたフェリシア

残念ながら、前公演の「王家に捧ぐ歌」におけるアイーダが、あまり好きなキャラクターではなかった私。あくまで役柄なのですが、実咲凛音さん演じるアイーダに対してちょっと辛口気味に、また、みりおんさんがもう一段感情を表現できる力量のある方のはずとの思いから、勝手な願いを書いたことがありました。これは実際には演出・脚本への若干の不満であり、みりおんさんファンの皆様、どうぞお許しくださいませ。

余談になりますが、木村信司先生の作品を生の舞台ではまだ2作品しかみていないので、あくまで今のところの感想なのですが、木村先生は実はヒロインではなく、№2の女子を描くのがむしろ上手なのかなぁと思ったりしております。

真風さん主演の「日の当たる方へ」でも思ったのですが、妃南風さん演じるヒロインのマリアより、音波みのりさんが演じておられたジュリア(真風さんジキルの恋人として最初は登場)の方が、共感しやすい血の通った役に思えました。「王家に捧ぐ歌」も同様で、アイーダよりもアムネリス様に共感しきりでした。

これに対して、今回、正塚先生の「メランコリック・ジゴロ」においてフェリシアを演じておられる実咲凛音さん、私は非常に好きです

以前に、植田紳爾先生がみりおんさんのことを「マリー・アントワネットができる役者」として、とても評価されている内容を引用したことがあります。

みりおんさんは強い高貴な役がお似合いになるとは思うのですが、それ以上に、むしろ、たおやかさや天然な中に秘めた芯の強さ。そういう強さを、ご自身の中にお持ちの方なのではないかと感じ、今回のフェリシアはうまくはまっておられるのではないかと思います。

 

2.対比の中で笑いを誘うフェリシア

また、フェリシアは天然の言動から、結構笑いを取る存在、あるいは笑いの起点になる重要な存在です。たとえば・・。

 

・図書館でのやり取り

相続人を探す新聞広告から、お兄ちゃんが見つかったとわかって、フェリシアは図書館勤務をいきなり休み、ダニエルのいるまちへと旅立ちます。ここのシーンの先輩同僚のイレーネを演じておられる美風舞良さんの演技が爆笑なのです。

しかし、これはみりおんフェリシアがきまじめ天然で、一途に思いつめれば思うほど、その対比で笑えるのだと思うのです。「すみません」と言いつつ、大胆で一途に思いつめ、旅立ってしまうフェリシアです。

この場面の美風さん、立ち姿のだささも含めて、本当にお上手です。タカラジェンヌさんでも、あんなにださく立てるのですね、その計算された身体の形(ポイントは多分、膝と頭の傾き具合)まで含めた驚きの演技です。

 

・お兄ちゃん(仮)との再会シーン

銀行(裁判所だったかもしれません)からカフェまで、お兄ちゃん(仮)の後をつけてきたフェリシア。大したことはなかったようですが嘘から得た資金で、カフェで皆におごり楽しく騒いでいるところへ、「お兄ちゃん!フェリシアよ!」とフェリシアは登場します。

他人の相続人に成りすましているのですから、慌てるダニエル。当然、フェリシアの名前がわかるはずもなく困ります。とっさに近くを通りながら、「フェリシアーー」と囁くスタン真風。笑いを取る場面ですね。

ここも、フェリシアが一途で一生懸命であればあるほど、慌てるスタンとの対比が明確になり、笑えるのです。

みりおんさん、上手いなあと思うのが、いい加減で陽気な酔っ払いが騒いでいる中で、ただ一人、生真面目な一途さを感じさせる演技をされていて、彼女のいるところだけが硬質なスポットライトが当たっているようです。

お父さんとの再会シーンもそうです。「お兄ちゃんよ!」とダニエルを振り返り、その後、嘘がばれるのですが、彼女一人だけが硬質に一途に再会だと信じていれば信じているほど、ドラマが際立つのです。お見事でした。というか、素で噴き出してしまいそうな場面ですよね!

 

3.ダニエルとのやり取りで浮かび上がる孤独

もちろん正塚先生のセリフが素晴らしいのですが、私はェリシアの「一人って嫌ね」から始まるダニエルとの二人のシーンがとても好きなのです。一人暮らしが長く、独身生活の長かったmiyakogu、見につまされる思いです・・(T-T)。

お父さんが家を去り、お兄さん(真の)が行方不明になり(いずれも真の事情は最後に明らかになります)、お母さんと二人で暮らしてきたフェリシア。そのお母さんが亡くなってしまった後、一人ぽっちで生きてきた年若き女性。硬質で頼りなげなたたずまいから、むしろ少女のようなフェリシアです。

新聞で相続人であるお兄さんが現れたとわかり、いても立ってもいられず、駆けつけてきたのですね。本来、「愚図」なはずの彼女がとったその行動の一途さ、一生懸命さにほろりとさせられます

でも嘘っこ相続人のダニエル、妹と久しぶりに出会った感動は、もちろんありません。それに対して、「迷惑だった?お兄ちゃん、あんまり嬉しそうじゃないから」と思い切って尋ねるフェリシア。おそらく、遠慮がちに生きてきたこれまでの人生をほうふつとさせるセリフで、ほろりと切なくなります。

 

・「すみません」が口癖

ダニエルは指摘します。「すみませんが口癖なのか」と。そして、まぁ様の感動のセリフ、「そういう人間は人に嫌なことはしない」というのが続きます。(詳しくは「まじめに感想3」をご覧下さいね)

いや、これほんまに、子どもの頃からのコンプレックスで固まってしまっていただろう心を、柔らかく解きほぐす、とても優しいセリフですよね。おそらく、お兄ちゃんだという以上に、まぁ様ダニエルの「わかってくれそうな」雰囲気に触れ、フェリシアは話をしたくなったのだと思います。正塚先生の素敵なセリフ、それを語るまぁ様の優しさ、そしてそのセリフをかけられるにふさわしい、みりおんフェリシアの健気で一途な寂しさ・・

これ、もしも、健気さの感じられない人間にかけられたとしたら、全く説得力なしのセリフです。大阪の小太りおばちゃん(=miyakogu)に、まぁ様が同じセリフをかけたとしても、あんまり説得力ありませんわなぁ・・。

(ちょっと場面がごっちゃになってたかも、すいません。いずれにしても、夜のまちで送っていく場面と、閉じ込められていた時に二人で話をしている場面、確かこの2つでのまぁ様とみりおんさんのやり取りが素敵なのです)

 

4.ダニエルへの感情のためらい、そして発露

少しずつ近づく二人の心。ダニエルがお兄ちゃんではないとわかってからの、戸惑いのみりおんさんの表情・演技を観ていると、信じていい人なのか?というためらいを含みつつ、ダニエルの優しさに惹かれていく微妙な感情のゆらめきが感じ取れるようです。

そして、汽車が出ようとする間際、見送りに来たダニエルはフェリシアのカバンを放さず、「お前が好きだ!」と叫ぶのです。観客、どっひゃーー!!の赤面場面です。

ここでの、みりおんフェリシアの「へ?」が混じった「え?」が好きです。そして、確かもう一回叫ぶダニエル、駅をゆっくりと出てしまう汽車。

観客が心の中で叫ぶ「おっしゃーー、今やで、フェリシア!(注 大阪のおばちゃんバージョン)」の、「フェ」あたりで、みりおんフェリシアは既にダニエルに抱きついています

「はやっ!」 意外なところで一途な行動力を見せるフェリシアに驚く客席。しかし、まぁ、納得ですわなぁ・・。

 

うん、わかった。財産も手にできたし、これからは二人で幸せに暮らしてね!

そのように笑顔で終わる、ハッピーで小粋で笑えて、少しほろりとさせる素敵なお芝居でした。

そりゃぁ、おばちゃんの口内炎も治るわ!!ありがとうな、宙組さん(^-^)。