皆様、こんばんは。待っておりましたこの日、遂に柚希礼音さん、ラミン・カリムルーさんご出演の「プリンス・オブ・ブロードウェイ」、本日午後、観劇してまいりました。
「週刊新潮」にて柚希礼音さんの芸能界船出が「台無し」と書かれたこの公演ですが、ちょっと、ちょっと、誰?「台無し」って書いたん。ちゃうやん、これ今でき得る「最高の船出」ちゃうのん!さすが、柚希礼音さん。おばちゃん、びっくりしたわ。
1.劇場の熱気とパンフレット、グッズの列
まず最初に驚いたのが、パンフレットとグッズに並ぶ人々の列。梅芸でこれほど列が並んでいるのは珍しいのではないでしょうか?さすがに柚希礼音さんの人気ぶりです。
miyakoguは公演パンフレットの簡易版だと勘違いして、柚希さんのNYの暮らしを伝える薄い写真集を買ってしまいました。しかし、「誰?これ?!」となった方が複数名おられたので公演パンフレット2500円(ちょっとお高いですね)も買いましたよ!(結果的にはどちらも読み応え十分でした)
2.引き込まれた1幕の歌!
いやはや・・・(-_-)。これは公演プログラムの巻末インタビューで柚希さんご自身が語っておられることですが、引用させていただきます。
「まず、歌が上手いとはどういうことかわからなくなりました(笑)。私がこれまでに感じていた「歌が上手い」というものさしは、今考えると、歌の技術が優れているということだったのかと。こちらでは皆さん、高い技術と類稀なる声の持ち主である上、役になりきって歌うことができます。役として表現することで、聴く人の心を揺り動かすことができる。お客様を感動させてこそ、歌が上手いと言えるのだと、目からウロコでした。」
(出典:「Prince of Broadway」公演プログラムにおける「Reon Yuzuki on Broadway」,2015より)
そうなのです。miyakoguが宝塚歌劇団での「歌上手さん」と言われる方々について、時々、大変申し訳ないのですが物足りない感じを持っているのはそこです。
そして、そここそ、今公演の素晴らしいところなのです。
あまり良く知らないミュージカルの美味しいシーンがずらずらっと続き、ええ?と戸惑っているところへ、1幕途中から場面にぐっといきなり引き込むパフォーマンスが続き、圧巻の舞台が繰り広げられます。特に印象に残ったのは、以下の方々。
・「フォーリーズ」から「The Right Girl」を歌いタップで踊るトニー・ヤズベックさん
ちえさんがピアノを楽しそうに弾く演技をされている場面です。「な、何なん?」という圧巻のタップダンスを繰り広げるトニーさん。この劇中、彼はおそらく人生で「正しい相手」と出会っていたのにその時はわかってなかった。そして今は一人。歌詞としては失敗の多い人生のようです。その後悔、苛立ち、それを歌の声に乗せ、タップダンスにぶつける。素晴らしいパフォーマンスでした。
「オペラ座の怪人」ファントム役を演じるラミン・カリムルーさんも、「自分がもし踊れたら、トニーみたいに踊りたい」と語っておられます。
・予想外だった「リトル・ナイト・ミュージック」から「Send in The Crowns」を歌うエミリー・スキナーさんの驚きの歌
トニーのタップに続き、一人だけ舞台に登場して椅子に座るエミリーさん。ベテラン女優さんなのにタイミングを間違えたのよ、おかしいでしょう?という設定と思われます。道化師はどこ?←自分もその一員なんだと自嘲するかのような歌です。人生の哀歓。舞台はがらっと色を変えます。シンプルな照明の中、椅子に座ってただ歌っておられるだけなのに、非常に驚きました。澄んだ声、感情が静かににじみ出し、いつか流れとなって観客席に確かに届くような歌声。
ここでよくわからない涙を流すmiyakogu、ひょっとすると一番心にしみた歌だったかもしれません。他の共演者からも彼女へのリスペクトのコメントがありました。
・ものすごい声量の「キャバレー」からの「Cabaret」を歌うブリヨーナ・マリー・パーハムさんの迫力
続いて白塗りのMCが始めるキャバレー。ここで迫力あるボディで歌う、歌う、歌う、パーハムさんです。いや、ものすんごい声量。最後はわーーっと両腕を上げて歌いきり、観客席の興奮もボルテージがあがります。すごかった。
・「オペラ座の怪人」からの3曲を歌う、ラミン・カリムルーさん、若きケイリー・アン・ヴォーヒーズさん
本日一番のお目当てのシーンです。ラミンのパフォーマンスはある意味、予測どおり。劇場に響き渡るファントム。クリスティーヌさんの歌が素晴らしかった。宝塚に出演してくれないでしょうか?期間限定でぜひ!
ここで一幕終了です。私の後ろの方もおっしゃってましたが、「はやっ!!」。そうなんです、途中までは慣れない展開に戸惑いを覚えつつ、「くたばれ、ヤンキース!」で小悪魔ローラを演じる柚希さんを「ちえちゃん、がんばれ」と応援していたのですが、途中からぐぐぐっと引き込まれ、あっという間でした。驚きました。
ちえさんは野球のユニフォームから、一転、黒い下着姿でセクシーに。しかし健康的な素晴らしい肢体、コケティッシュなちえさんに少し戸惑いますが立派に小悪魔でしたよ(^-^)。
2.ちえさんが大活躍の2幕のダンス!
2幕が開けてすぐの「カンパニー」からのラミンさんの歌が素晴らしく、日常の中に潜む孤独を切なく表現されていて、マダムを演じたエミリー・スキナーさんの歌とともに心を打ちます。もしかしたら、ラミンさんはファントムより、こちらの方が良かったかもしれません。
そして、いよいよ、ちえさんの「タイムズ・スクエア・バレエ」。彼女のためにミュージカル「フォーリーズ」の曲「ブロードウェイ・ベイビー」をモチーフにつくられたオリジナル場面のようです。
ちえさんは若きダンサー。オーディションを受けますがお断り続き。でもミュージカルを観劇してはチャレンジを続けます。そして、トニー演じるプロデューサーに見出され、共に踊りスターになるのです。
この時のちえさんとトニーさんのダンス!二人で組んで踊り、ちえさんがリフトされます。とても楽しそうに、そしてものすごい切れ、回転の速さで踊るちえさん。
彼女の踊るのが楽しくてたまらないという気持ちがきらきらとした光の粒になって、伸ばした手から、上げたつま先から観客席に飛び散るようです。
素晴らしい素敵な場面であり、そして、ちえさんが少なくともダンスではこのカンパニーの誰にも引けをとらない、このカンパニーで一、二のダンサーであることがわかるダンスでした。
3.女性共演者の礼音さんへのコメント
女性陣で一番のベテランと思われるナンシー・オペルさん。「キャバレー」で「So What?」を情感豊かに歌われるのですが、彼女はこのように語っておられます。
「私はダンサーではないので、舞台袖から礼音のダンスを見ては、あまりの素敵さにいつもため息をついてばかり(笑)。」
また、「エビータ」から「Don't Cry for Me Argentina」を朗々と歌い上げたマリアンド・トーレスさんも同様です。
「おススメの場面を選ぶのは至難の業ですが、私は礼音とトニーのダンスを見ているのが何よりの幸せ。残念ながら私はダンサー系の女優ではないので、二人のように優雅で楽しく踊ることができるなんて、見ているだけで胸が高鳴ります。」
そして、トニーさんも「ダンスで組む礼音は、優雅で美しくて」と語っておられます。
皆様、ちえさんは「優雅」なのです。確かに舞台に出演者がずらっと並ぶ時、一際際立つプロポーション、足の長さ。宝塚歌劇団ならではの美と舞台映えです。誇らしい限りです。
いや、これで歌が本日の共演者クラスやったら、それはブロードウェイでもいきなり大スターです。そこへはまた厳しい道かもしれませんが、今の柚希さんのベストを十分に発揮されていて、とても感心いたしました。蜘蛛女のキス、久しぶりに聞いたちえさんの低音ボイス、素敵でしたよ。
4.「台無し」ではなく、「柚希さんだからこそ」ですね(^-^)
いや、これ。日本で成立しえたのは柚希さんだからこそですね。柚希さんが出演されるからこそ、チケットがここまで売れるのであって、このよく知らないミュージカルのクライマックスシーンの連続のコンサート形式のショウ。これ、いかにハロルド・プリンス様といえ、普通では売るの無理!と正直、思います。で、宝塚歌劇ファンが恐る恐る観に行ってみて、圧倒されて帰ってくると。
実際に見てみると、いやはや、驚きの幸せな公演でした。ハロルド・プリンス様、ご関係者の皆様、素晴らしい公演をありがとうございました。宝塚歌劇ファンの皆様、宝塚歌劇以外の世界はええわという方は除いて、もしもダンス好き・歌うま好きであれば、ぜひご観劇下さい。百聞は一見にしかず、驚きの舞台です。確実に。
本日、宝塚歌劇団になくて、ブロードウェイのミュージカルにある歌以外のものに、一つ気がつきました。それは「That is life.」とでも言いたくなるような人生の哀歓。中年にさしかかった男女の人生への追憶と後悔。しかしそこから再び「それが何か?=So What?」とふっと笑って立ち上がるような強さ。これはあまり宝塚歌劇団では見かけないものでした。こういった流れの中でみると、柚希礼音さんというのはやはりまだまだお若い女性なのです、未来がある。
人生は続いていく、そしてそのコーナーを曲がったところに何があるかわからない。それが最後の歌に込められたハロルド・プリンスさんのメッセージだったかと思います。
あのな、おばちゃんにはぴったりやったわ!ありがとうなっ(^-^)。