代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宝塚雪組中日劇場・ローマの休日 感想2 笑って笑って泣きました(続) 見送るジョーの切なさと信頼の再生

宝塚歌劇団雪組の中日劇場公演「ローマの休日」の感想の続きです。感想1はこちらをどうぞ。できるだけぼやかして書きましたが、一部どうしてもネタバレしていますので、お嫌な方は読まないでくださいね。

mothercoenote.hatenablog.com

★梅田芸術劇場役替りB日程の感想はこちらです。よろしければどうぞ。

宝塚雪組・梅芸「ローマの休日」役替わりB 感想 絶好調です! ちぎみゆと雪組の皆様の舞台から得る満足感 - 代取マザー、時々おとめ

4.見送るジョーの切なさと信頼がもたらす変化、早霧せいなさん

早霧せいなさんは、映画では大柄で男くさいグレゴリー・ペックが演じた新聞記者ジョー・ブラッドレーを、雪組らしい、ある種、日本物の情緒を感じさせるような演技を見せて演じておられます。

映画でもそうですが、ジョーはローマでの暮らしにうんざりしていて、仕事は寝坊で遅刻は常習、海外赴任にやさぐれている様子です。うん、やさぐれたサラリーマンね、そこんとこ、よくわかるよ!!(涙)。

アン王女が一日の出会いの中で、可憐な王女から次期王へと成長していくのに対して、ジョーは最初は嘘であり演技だったはずなのに、アン王女から寄せられた信頼に応え、一緒に楽しむうちに、誰かに信じられ、誰かを信じ、誰かと一緒に生きていく意味と実感を取り戻したのではないか。そう感じさせる演技をちぎさんが見せてくださいます。

そのやさぐれっぷりからは、少し前に相当手痛く恋を失った経験があるかのように推察されるのですね。カフェでも、超絶イケメン店長の透真かずきさんに「ジョーが女性と一緒とは珍しい」と言われています。りーしゃさんの髪型、とってもかっこいいよ!

 

田渕先生が作詞され、ちぎさんが最後に歌われる「約束の場所」では以下のような歌詞があります。

「君に会えた時間が 僕の凍った心溶かした

 君のくれた奇跡が 目に映るこの街の色を変えた」

(作詞:田渕大輔) 公演パンフレットより引用

そして、「君が信じた僕を もう二度と見失いはしない」と続きます。ジョーにとってローマは永遠の「約束の場所」となったのです。これは宝塚歌劇団の作品らしく付け加えられた素敵な部分だったと思います。

 

ちぎさんは1幕、どちらかというと受けの演技をされています。しかし、アン王女や相棒のカメラマンであるアーヴィングと一緒に行った「真実の口」、「祈りの壁」のあたりから、ジョーの葛藤が伝わる演技を出してこられ、その思いは歌、セリフ、まなざしを通じて、ぱーんと観客に伝わります。

そして、今作品で私が一番好きなちぎさんの演技は、ジョーのアパートを新聞社の支局長が尋ねてきて、「スプークを出せ」と詰め寄られたのを「スプークなんてない」と断った後、アーヴィングから「いい写真だ」と渡された写真をジョーが見る場面です。

早霧せいなさんが芯のところでお持ちなんだろうと思わせるような、無邪気な少年のような喜びに満ちた笑顔。アン王女の写真を見て思わず笑ってしまう純粋な美しい笑顔から、彼の心を満たしてくれた共に生きる喜びが伝わってくるのです。

でも、もちろん映画と同じく、彼は写真をアーヴィングに返し、スクープにはしません。ジョーの切ない思いが伝わってくる場面でした。

アーヴィングを演じる彩凪翔さんはお髭の大人の男、お見事でした。ジョーに振り回されてばかりなのに、結局、写真を売るようなことはせず、映画と同じくアン王女に「ローマの記念に」と渡すのです。

クラブでの乱闘時にもくわえタバコのまま、大人の男性を演じておられる彩凪さん、素敵でした。歌がね!!!お上手になっておられるのですよ。これもガトリング砲の歌の効果でしょうか。ええ声ですやんか。彩凪さんは、一つ上のステップに進まれた感を受けました。ぜひ劇場にてご確認下さい。

 

5.2幕後半からは、いろいろ泣きでした

もうね・・。泣いたね。2幕真ん中の「祈りの壁」のあたりから・・。笑いもするけれど、だいたい泣いているというか・・。

一番泣いたのはもちろん、ジョーのアパートに逃げ帰った二人が、ラジオから流れてきた音楽に合わせて最後のダンスを踊る場面です。切なすぎる・・(涙)。そして、miyakoguの人生にはこんな素敵な場面はなかったぞ、とそちらもちょっぴり切ない後悔っすねぇ!!これからのおねえさん方、がんばってよ(^^)。

ヴェスパに乗って、前にみゆちゃん、後ろにちぎさんという場面もとても新鮮でした。ちぎさんが後ろからぎゅっとみゆちゃんを抱きかかえているんですね。ほんとに楽しそうで、結末を知っているだけにこれがまた泣けるというか・・。

記者会見でアン王女が、ジョーを見つける場面。二人の間に光の道が見えるかのようです。

フィナーレの大人っぽいタンゴ。私の勝手な解釈では、大人になり王になったアン(30代後半くらいか)が、青春の一日を思い出し、思い出とともに踊っているかのような場面に思えました。そう見ると、とても切ないタンゴなのです。あ、おばちゃんの回顧って私だけ?ま、ええか・・。

 

6.印象に残った方々

既にお名前を挙げた方以外では、以下の方々が印象に残りました。

・背の高いかっこいい支局長の鳳翔大さん、脚が長いですね~。一曲、朗々と歌われます。これまたるろ剣で口上をやり遂げられた効果でしょうか?

・警察官として登場場面から朗々とした声がよくとおり、クラブで美声を聞かせてくださる久城あすさん、とても素敵な声です。

・記者会見の仕切り(式部官)、警察署長を見事なイケメンぶりで演じておられる朝風れいさん

・落ち着いた声と物腰が素敵なジェラート売りの桜路薫さん

・美容院の客として、コミカルな動きとダンスを見せてくださった愛すみれさん

もちろん、組長・副組長の大人のコミカルさも素敵でした。とっても楽しかった。そして、泣きました。2幕後半はほぼずっと泣いてましたよ・・。ずるずる。

 

最後に一つだけ

原作の名作映画は、たった一日の儚い夢のような出来事を描いたもの。その舞台化ですから、今作品も映画と同じような”ある種の儚さ”があります。

ジョーとアンが歌うとおり、「悲しいハッピーエンドのおとぎ話」なのです。その悲しいハッピーエンドを田渕先生は「天気雨」と言う言葉で最後、表現されていて、とても素敵な言葉のセンスだと思いました。

たった一日の儚い夢のような切ないおとぎ話。その幕が上がり、幕が下りるのを私達は観ているのです。

そのため、しっとりとした切ないお話ではありますが、派手な盛り上がりや物語の激しい起伏がある訳ではありません。押さえた演技からもれ伝わる切なさが真骨頂の作品となっています。このあたり、ひょっとすると物足りなく思われる方もおられるかもしれないと思いました。

これは娘と議論したのですが、映画で表現されていたヴェスパでローマのまちを駆け抜ける疾走感が、舞台では安全面から上手く出し切ることができないため、その分のメリハリが出し切れないからではないかと思います。

儚い夢のようなおとぎ話。それを宝塚らしく、主人公の人生を大きく変え、生きる喜びを再生するものとして見せておられる。そういう作品として、お楽しみいただけるのではないでしょうか。どうぞご観劇をお楽しみください。

 

とにかく、ちぎみゆでしょ、それからマリオの美容院を観て!!マリオの月城かなとさんとアシスタントの陽向春輝さん。「何やってんの、この人達?!」(^^)と大笑いでした。美形なのに。

これをるろ剣でガトリング砲の歌を歌いきった彩凪翔さんが、役替わりでされる梅田芸術劇場の公演期間も、どうなることかと、今からとっても楽しみです。

雪組さん、しっとりとしたお芝居の力はそのままに、何だかすごい方向にブレイクしておられるように思う今作品でした。ぜひご観劇ください。