皆さま、こんにちは。
本日は、宝塚歌劇団で上演された宙組さん「シェイクスピア」、月組さん「PUCK」つながりで、兵庫県立芸術文化センターで上演された「夏の夜の夢」を旦那はんと娘と一緒に仲良く観劇してきました。その感想をお届けします。何といっても、シェイクスピア没後400年にあたる今年、世界各地で様々な取組みがあるようですね。
1.1960年初演の比較的新しいオペラ
英国の作曲家 ベンジャミン・ブリテン氏が作曲し、1960年に彼が住んでいたオールドバラのまちの音楽祭(ブリテン氏と彼のパートナーであったピアーズ氏が始めたそう、オールドバラはロンドンから列車だとおよそ2時間だそうです)で初演された作品です。
古典的なオペラとは違い、比較的新しい作品だったのですね。日本で上演される機会がそれほどあるわけではないようで、オペラファンの旦那はんも映像を含めて初めて見るとのことでした。
3幕もので、1幕は現代音楽ぽいニュアンス、2幕では森の中の恋人達のどたばた、3幕では恋人達が和解し、宮廷で職人達の劇を見るという構成でした。(もとの作品より少し短縮されて上演されています)
オペラがミュージカルに近づいたような、とてもユニークで幻想的で、しかしユーモアもある、なかなかおもしろい作品だったと思います。
ただ、私達は宝塚歌劇団にて月組さんの「PUCK」を観ていたため、キーになる三色スミレや妖精パックの存在、ストーリー展開に何となく馴染みがありますが、初めてご覧になった方は「ちょっと、ぴんとこない」という感想も帰り道で聞かれました。
ある意味、オペラらしくない現代的な作品であり、ミュージカルが好きな私達はむしろ楽しめたが、オペラファンの方にはしっくり来ない感じがあったのかもしれませんね。
2.日本語と英語が入り混じった演出とお子さん達の妖精
初めて拝見したと思います。途中で娘が気づき、演出ノートを読み返したら確かにそう書いてあったのですが、この作品では日本人キャストが妖精を「日本語」で歌い演じ、英国人キャストが人間を「英語」で歌うという演出になっています。
なるほど!人間は昼と英語の世界、妖精は夜と日本語の世界と対比させているのですね。
そして、この妖精のキャストが「ひょうごプロデュースオペラ児童合唱団」の皆様。小学校2年生から中学生の方々だそうで、斬新なお衣装とともに、とても可愛らしく、かつきちんと演じておられて驚きました。マイクなしでお子さん達の声が響きます。素敵ですね。
3.素晴らしかったティターニアの歌声とパックのダンス、怪我を押しての熱演
妖精の女王・ティターニアを演じられた森谷真理さんはウィーン在住のソプラノ歌手。「魔笛」の夜の女王役等で海外でもご活躍の方のようです。
美しく、本日最も声量のある歌声を聞かせてくださった方ではなかったかと思います。最後に再び夜=妖精の世界が訪れ、子ども達と一緒に歌われる場面があるのですが、幻想的で美しい場面でした。一番拍手も多かったように思います。
オーベロン役はカウンターテナーの方が歌われる役で、弥勒忠史さんがとても高い声で歌われていました。私はオペラでカウンターテナーの方の声を初めて聞きましたので、最初は背の高い女性なのかしら?と思っていたほどです。素敵な声でした。
本日一番驚かされたの方がパック役の塩谷南さん。ダンサー役であり、セリフとダンスだけで進行役を務めておられます。私は初めて拝見した方でしたが、勅使川原三郎さんの作品でご活躍の方のようです。
体のほんの少しの動きで、こうもパックの驚きや戸惑いや好奇心を表現できるのかと、驚きました。パントマイムに時々セリフも入ってくるようなイメージです。真風涼帆さんが宝塚歌劇団「ロミオとジュリエット」で見せられた「死」のダンスだけの演技も素晴らしいものでした。ダンスで雄弁な方を好きなんでしょうね、私は。
実は最初に佐渡裕さんが登場され、ご説明されたのですが、ハーミア役のクレア・プレスランドさんが2日めにお怪我をされ、骨にひびが入るほどだったそうです。
傘を杖がわりにしたり、包帯を巻き足を引きずり、男性達に時にさりげなく支えられながらの公演をまっとうされようとされており、その情熱に打たれました。カーテンコールで足を引きずりながら登場された姿に思わずもらい泣きです。
佐渡裕さんも拍手で迎えられたとき、彼女の頬にキスをしてから真ん中に。さすが佐渡さんです!
4.幻想的だった夜の森
この佐渡裕さんプロデュースのオペラは以前の記事でも書きましたが、一番いいお席で12,000円というオペラとしてはとてもお得な公演です。低予算の中でいろいろな工夫をこらされており、今年は舞台美術においてどのような工夫がされているか、楽しみにしておりました。
今回の作品は舞台を上まで届く壁により分割、丸ごと回転させておられました。舞台背景も美術もそのまま丸ごと回転して場面転換です。その背景に白色で描かれた夜の森の木々。幻想的で美しいものでした。
最後に、パックがご挨拶をしてツルに飛び乗り、舞台をフライングのように横切って去っていくのですが、これが、かっこよかった!舞台の奥から客席に向けて強いライトの照明が光り、その中をパックが飛んでいくように去っていき、幕。とても印象的な幕切れでした。
5.名前が一緒!
宝塚歌劇団の「PUCK」とは登場人物の名前が一緒のことが多く、親しみがありました(^^)。原作から来ているのでしょうね、おそらく。
ハーミア、ヘレナ。そして村の職人達が劇中劇を演じるのですが、彼らがクインス、フルート、スナッグ、スナウト、スターヴリング(宝塚ではスターヴィング)。妖精は豆の花、芥子の種、蜘蛛の巣(宝塚ではくもの糸)、蛾(宝塚では蛾の羽)。
宝塚では職人による劇中劇ではなく、ロックバンドでしたが、いやん、名前が一緒やん?(^^)と急激に親しみがわき、楽しめました。これは宝塚ファンならではのお楽しみだったと思います。
しかし、おそらくはこのオペラにヒントを得て、宝塚歌劇団としての「PUCK」を創作された小池修一郎先生はやっぱり天才です。パックはいたずらっ子の妖精ですが、あくまで進行役。そのパックと主人公の一人であるハーミアの恋を誰が思いつくでしょうか?オペラのハーミアはあくまで人間どおしで恋をする役。宝塚歌劇団の「PUCK」ではパックは歌の妖精として生まれ少女のハーミアと出会い恋をし、人間界に行く時に声を失い、しかし最後にハーミアの危機を救うために歌い、人間になる。素晴らしいストーリー展開です。
それにしても、佐渡裕さんがまさにトップスターのようでした。指揮者ってそういう存在なんでしょうね。最後にカーテンコールで羽根しょって出てきていただいても違和感のない押し出しぶり。かっこよかったです!
来年の演目は早くも決定しており、「フィガロの結婚」を7/14から23日まで。もしご関心を持たれた方は、来年の演目をどうぞお楽しみください(^^)。今年の「夏の夜の夢」は明日が千秋楽です。