代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宙組・神々の土地/クラシカルビジュー 千秋楽ライブビューイング感想 翼ある人がくれた美しい時間

皆さま、こんばんは(涙)。本日、宙組・朝夏まなとさんの退団公演である「神々の土地/クラシカルビジュー」千秋楽 ライブビューイングを観てきましたので、その感想をお届けします!涙とともに・・(T-T)

こちらは阪急百貨店の入り口の装飾です。この公演が始まったのはお盆だったのに、本日は雪がちらつきそうな日曜日、寒いけれどまぁ様らしく晴れ渡った千秋楽でした。

f:id:miyakogu:20171119212537j:plain

 

1.宙組の進化を感じたお芝居

本日、大劇場以来、久しぶりにご覧になった関西ファンも多いと思われます。私は2週間前に東京で観劇していますが、それでもなお宙組の皆さまのお芝居に進化を感じました。ご一緒していた関西ファンはお芝居直後、宙組さんのお芝居の熱量にとても驚かれていました。

何と申し上げたらいいのか。運命のどうしようもないある一点に向かって、それぞれの人生が集結していくことが伝わるお芝居になっていたと思います。

宝塚大劇場では、その一点に向かって、主役である朝夏まなとさんがお芝居を先導し突き進んでいる印象がありました。しかし、本日の千秋楽では、それぞれの方がそれぞれの立場で”生きる”ことにより、運命が綾なす様、ロマノフがどうしようもなく滅亡する様が観てとれたのです。

 

これまで、この作品では私は不思議と泣けませんでした。しかし、朝夏さんドミトリーが汽車から飛び降り、イリナに最後の別れを告げるために訪ねてくる場面において。「なぜ、ここに」と問う伶美うららさんイリナの「ここに」の声が震えていて、目に涙が光っているのが見えて・・。泣けました。その涙は、この場面に至る少しずつの変化がもたらしたものだと私は思います。

 

たとえば、冒頭の雪原の場面。朝夏さんドミトリーが言う「僕はあなたと踊るのが好きだったのに」というセリフには、ドミトリーはイリナに”触れたくて”踊るのが好きだったのではないかと思わせる清冽な官能を感じました。ドミトリーが歌う「束の間触れたぬくもり」とは、リアルにはダンスの時にこそ近づく身体のことではないかと私は思います。うーん、キスしようとしたドミトリー、避けたイリナ。もしかすると一度だけ、何かあったのかとすら思えてきました(〃∇〃)

また、イリナも。オリガとの結婚を打診されていることをドミトリーが打ち明ける場面や、ドミトリーがオリガの腕を取って舞踏会から退出するのを見送る場面など、各場面で伶美うららさんイリナが、ドミトリーへの想いに自分でも気づいていることが感じられる戸惑いが、より感じられるようになっていました。

それらの少しずつの変化が、最後の場面での「なぜ、ここに」の涙へとつながっているように思います。

真風さんフェリックスも。舞踏会で踊る二人を観ている時の嫉妬、ドミトリーを皇女オリガと結婚させたくない気持ちが、少しずつ強く出ていたように思います。

開始間もないシーンで、アリーナと婚約されたそうねとイリナに尋ねられたフェリックスが返す「(あなたがなびかないでの)やけを起こしました」もです。

イリナもフェリックスも、言葉とはうらはらにそれが嘘だと知っているような演技。フェリックスはイリナではなくドミトリーにこそ固執していると、お互いが知っているかのような演技になっていると私は思いました。

皇女オリガを演じる星風まどかさんの演技も。彼女はただきゃんきゃんとセリフを言っているのではないと私は思います。聡明な少女ゆえに、ロマノフの滅亡に向かって運命が進もうとしているのを鋭敏に感じ取り、皇帝一家の中でたった一人、その運命を変えようと必死な少女なのだという悲壮感が伝わりました。

「私達が助かるかもしれない最後の船」が出ていってしまったことを決定的に感じた後、彼女は母・アレクサンドラ皇后を守り抱きかかえ、時代の波のように見える民衆の中を、流れに逆らって舞台の奥へと消えていきます。

主要なお役の方の演技も進化し、東京遠征で私が感じたように民衆側のお芝居も進化している。そのことによって舞台は2週間前と比べてもなお、進化していたのです。お見事でした、宙組の皆さま!

 

2.ショー

黒燕尾のまぁ様がずっとにこやかだったのが、とても印象的でした。

そのほのかに白く輝くようなほほえみを観ていて、「ああ、まぁ様はご自分の目指されていた黒燕尾の完成を確信されたのだ」と、とても嬉しく思いました。

わざと足音を入れる場面以外、一切、足音を立てず、雲の上を滑るように踊られる黒燕尾の優美な動き。

目元はきりりと力強く、動きはあくまで優美に。男性的な美と、どこか女性性を感じさせる優雅で優美な黒燕尾。これこそ、宝塚の男役にしかない「宝塚にしかない唯一無二の美しい世界」だったと思います。まぁ様、あなたがご挨拶でおっしゃったとおりに。

 

3.サヨナラショー

圧巻でした、「ソーラン宙組」の熱。まぁ様、あなたが率いた宙組はここまで見事に来たのですね。私もとても嬉しく拝見いたしました。

そして、北白川先生らしい動きと声で軽やかに歌った後、暗転した一瞬を経て、一気にトート閣下の目元に。その鮮やかな切り替えに、大劇場でみた前楽の時も驚きましたが本日も改めて。見事なショーでした。ショーについては、大劇場で書き尽くしたとおりです。

 

4.ご挨拶

まぁ様に、ここまではっきりとすっぱりと爽やかに「やり切りました!」「思い残すことはありません!」と言われてしまったら、我々ファンも拍手をして送り出すしかないのです(涙)。そのようにおっしゃられる境地にまで、まぁ様がたどりつかれたことを、喜びたいと思います。

何度めかの幕が開き、袖に向かって「ゆりか」と真風さんを呼び出されたまぁ様。ぎこちない動きで出てくる真風さん。

「今日まで支えてもらって、ありがとう」とおっしゃるまぁ様に、「そんな、私の方こそ感謝しか、○△×・・」と、もごもご言葉に詰まる真風さん。

ばんっ!(立ち上がるmiyakogu)

ゆりかさんときたら、最初、「まぁ様!」とただ呼びかけられたのです!高めの声で。真風さんもまぁ様の一ファンですかっての?!(知ってます、仲間意識しかない!)

あなた!男性にしか見えない見事な黒燕尾姿なのに、すっかり素ですよ、素(^^)。とってもかわいいゆりかさんでした。

「まどか」と星風まどかさんも呼び出し、これからの宙組をお願いしますと明るくさわやかなまぁ様・・。

正直、まぁ様が去られた後、私も中学生娘も、宝塚も宙組もそれほど観劇するだろうか?と疑問に思っていました。ただ、今日の見事な引継ぎぶり、これは観ないわけにはいかないです(^^)。

後ね、まぁ様の後ろに何気に映りこむ風馬翔さんの気合の入ったダンスとお顔を観ていたら、やっぱり宙組かなと不思議と思いました(^^)。ありがとう、かけるさん。

 

5.翼に乗せてくれたまぁ様

まぁ様の黒燕尾は空の上で踊っておられるようで、私にはこの人の「翼」に乗せてもらって、まぁ様が見ている美しい夢を共に見せてくださっているように思えたのです。

美しい大きな白い鳥にまぁ様が乗っていて、観客も大勢乗せてくださって、新しいファンが「乗せてもらってもいいのかな?」と迷っていると、「あ、乗って乗って」とにっこりしてくださるような、そんな錯覚があるのです。

まぁ様がとびっきり楽しそうに、時に真剣に集中して見ている夢と風景を、一緒に見させてもらっているような感覚。観劇している時間、「この人と今、ここで確かに共に生きている!」と感じさせてくださる稀有なトップさんでいらしゃると私は思います。

真風さんが「グラフ」の対談で語っておられたように、「まぁ様」と訳もなく呼びかけたくなるような、そして「どした?」と聞いてくださるような錯覚。

退団後、どこかで偶然、会ったとして「あの、あの、ファンでした」と言えば、にっこりと「あ、知ってるよ」と言ってくださりそうな錯覚。

 

なぜそう思うのだろう?

それは、まぁ様が私達ファンに美しい時間を分けてくれていたからだと思うのです。

千秋楽のご挨拶でおっしゃった「唯一無二のこの美しい世界が、永遠に続きますように」という言葉どおり、黒燕尾という宝塚の象徴を追求することによって、私達にその世界を見せようとしてくださった。ご自身が見たかった風景、そして私達にも見せてくれようとされた美しい夢。

 

twitterでも書いたのですが、私は気づいてしまったのです、宝塚で何を観たいのかに。

もし、真にミュージカルを観たいなら私は、男性歌手も出ていて、歌手は歌手、ダンサーはダンサーと特化している海外作品等の外部作品を観ると思います。若い頃、一時期ですが住んでいたロンドンで、繰り返し私が観たのはそういう作品でした。(ただし、宝塚歌劇団が日本発オリジナルの素晴らしいミュージカル作品を生み出す可能性は相当高いと、生田先生には期待しております)

 

私は宝塚では、宝塚でしか観られない美しい世界が観たいのです。

美しい人の美しい物語、美しい人の美しいダンス、美しい人の美しい声。

その物語にダンスに声に、泣き笑い、心を震わせる美しい時間。その時間が私の人生の中にあって欲しいと願うのです。

その「美しい時間」を、朝夏まなとさんは高い技術とともに、ふんだんに私達に贈ってくださった。

その時間に感謝を込めて。朝夏まなとさん、ありがとうございました。本当に。

あなたの夢の完成を共に見られて、幸せでした。