代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

100週年時の最後のトップスター 月組・龍真咲さん退団会見のスカイステージ放映を拝見して思うこと

皆様、こんにちは。今朝のスカステで月組トップスター・龍真咲さんの退団記者会見が放映されましたね。

 

1.100周年トップの中でも異色の存在

宝塚99周年の春に突如として宝塚歌劇のファンになった私と娘にとって、99周年から100周年にかけてトップスターでおられた5名の皆様は、ある意味絶対的な存在です。

娘にとっては仕事している素敵なプロフェッショナルの女性であり、同時に憧れのお兄様のようなお姉様達。そして、私にとっては本来、年下であるはずなのに、会社の憧れの先輩のような方々。

背が高くて美しくてかっこよくて。その上、各組のリーダーであり、仕事人としての強烈なプロ意識がひしひしと感じられ、それぞれの美学がある。社長見習い中の私にとって、100周年トップスターの皆様の個性的なトップとしてのあり方は眩しいほどでした。

女性のリーダーとして、参考になるお手本というべきリアルな人材が多様性をもって存在されている。私にとって宝塚歌劇団というのはそういう側面が確かにあるのです。

そんな100周年のトップスターさんの中で、龍真咲さんだけは少し異なる存在でした。他の皆様が「年下なのに先輩のように思える存在」であったのに対して、真咲さんだけは少し年下で「らしいなぁ」と苦笑しつつ、でもどこか認めていて、むしろ「次に何をしですか?」と楽しみになるような後輩的な存在だったのです。

包容力のある旦那さんにしたい№1であるかのような蘭寿とむさん。

近くの道場の美剣士のような壮一帆さん。

ものすごく真剣に競技ダンスに取り組んでいるラテンの世界チャンピオンのような柚希礼音さん。(時々、クラブにも出ています)

そして、その微笑に運命を狂わされそうな謎めいた凰稀かなめさん。

そういった方々とは少し傾向の違うトップスターさんだというのは、新米ファンでも何となく察知しました。良し悪しも含めた宝塚界隈の噂話も含めてです。

 

2.大店の勝気でまっすぐな「いとはん」のような真咲さん

皆様の職場や身近にもおられませんか?

何だかよくわけがわからないんだけれど強気な自信の持ち主で、よぉーく考えるとうむむ?となるのだけれどその場は勢いに押し切られて、でもいっつも元気がよくてきらきらしてて、若干無神経そうなのに意外と繊細で真摯で、ときどきほろっとかわいいところがあって、ついつい味方してしまって、誰かが批判的なことを言うと肩をもって、「しょうがないなぁ」と言いながらも飲み会に欠席しているのに、その場の話題になってしまう人。

なぜ私がそのような方に詳しいかって?それはうちの創業会長(ただし男性)が、まさにこのタイプだから!!(泣)

私にとっては真咲さんというのはそういう存在で、かつ江戸の大店の呉服屋さんの勝気ないとはんというイメージなのです。おきゃんで、勝気で、いつも回りを押し切るのだけど、時々少しだけ弱気なところを見せると、周り中がほろっと味方になって、でもこちらが心配しているうちに当の本人はとっくの昔に次のステージに行ってしまっているんです。

あのね、ただいま大人気のNHK朝の連続ドラマ「あさが来た」の主人公・あささんに似てなくもないのです。度胸も才覚もあり、真摯でお転婆で、でも実はとっても綺麗な御嬢さん。好きな人は肩入れするけれど、反発する人も多い

そういう、とてもおもしろい方だなぁと拝見しておりました。私は実は「Puck」が大好きで、そして100周年の記念公演の三本立ても大好きでした。100周年の記念公演向けに「クズ」呼ばわりされるような男役主人公のミュージカル・プレイを創作する石田先生もなかなかどうしてと思いますが、それを難なく演じられる真咲さんというのはなかなかのものです。

「Puck」では終盤、声を出しては妖精に戻れないはずのPuckが、ハーミアのために「私が歌いましょう」と切り出す場面。そこで既に真咲節が炸裂し、「おおーーー」と新鮮な驚きを感じたものです。そして、「クリスタル・タカラヅカ」で真咲さんが「らいらいらい」と歌い始めた時の巻き舌に、くすっと苦笑いしながらも「そうこなくっちゃ!」と思ったのも事実。

娘と真咲さんの退団について話しあっていたときのこと。就任が長くおられたので、次の新しい月組トップさんを観てみたいという気持ちがあるのと同時に、「やっぱり、どこか寂しくなるなぁ」という意見で一致しました。

9月のご退団以降、月組を観劇しに行っても真咲さんの「ほぅーー!」という大店の「いとはん」はもう観られないのです。多分、今年のタカスペはしっちゃかめっちゃかになってそうで怖いけど・・。

 

3.客観的な目

今朝のスカステで、龍真咲さんの退団会見を拝見して驚いたことがあります。細部は少し間違っているかもしれませんが、彼女はこのように語っておられました。

「わがままで、自由奔放で、タカラジェンヌらしくない、私のいいところを見つけて応援して下さった貴重なファンの皆様」

 

私はこの言葉にとてもとても驚いたのです。

私は天然さんなのかな?と思っていたのですが、彼女は自分があまり従来タイプのジェンヌさんではないとご自身できちんと自覚をされていた。おそらく推察するに、ある時期は自分もそれまでの先輩と同じようなジェンヌさんにとなるべしと努力された時代も少しはあると思うのです。でも、そういう自分自身と真摯に向かい合った時期を経てある時、「自分は自分にしかなれない」と悟り、いい意味での開き直りを得られたのではないでしょうか?おそらく、それは月組の「まさみり」時代なのかもしれません・・。

そして、そういう自分を見つけてくれたファンへの感謝の言葉。彼女は自分のファンになってくれる人のことを「貴重」だと思っていたのかもしれない。その点にとても驚いたのです。

真咲さんの「いとはん」ぶりを観ていると、「ほら、みんな、私のことが好きなんやろ、結局?」という強烈な自信を感じていたのですが、そんな真咲さんであっても、大勢のジェンヌさんがいる中で、少し異色の自分を好きになってくれてありがとうという感謝、謙虚のお気持ちがあったのかと、非常に心打たれました

おそらく、真咲さんのファンの方々は自由奔放に、自分の思い通りに昇竜のように生きているように見える真咲さんに、思い通りには生きられない自分自身を負託していたと思うのです。彼女になら、なりたかった自分、もしも許されるのなら思いっきり思い通りに我儘に何でも自分の意のままになるかのように勝気に振舞える自分、でも決してそうはできない自分を安心して託すことができる。そう思っておられたのではないかと、全くの見当はずれでしたら申し訳ないのですが、miyakoguは勝手に思っていたのです。

そういう皆の思いを一身に受け止められるほどの大胆不敵で奔放そうな人が、自分自身を客観的に分析し自覚していたということ、そして、それでも自分を見つけてくれてありがとうと言うお気持ちをお持ちだったということに、とても心打たれた退団会見でした。

彼女への「もしかして真咲さんって意外と繊細なのかな?」という思いは、100周年記念公演の初日に、真咲さんが涙を少しこぼされたという話を伝え聞いて以来、心の中にありました。もしかしたら、「いとはん」としての重責を、なんでもない風を装いながら大変な緊張を持って果たそうとされたのかもしれません。

贔屓組以外では初めて買った月組さんの「Puck」のDVD。何だか真咲さんに負けるようで少し抵抗感があったのは事実ですが、私はとても好きでした。

 

こちらは以前にもアップさせてもらったことのある「100周年時トップスターさんと轟様のサイン入り本」です。9月の真咲さん退団公演の千秋楽以降、専科の轟様以外、このサインのトップスターさんは、もうどなたもおられなくなるのです。

目まぐるしく変化と進化を遂げる宝塚歌劇団に、少しばかり微妙な違和感を感じたそんな今日の記者会見の放映でした。うん、まぁ、新生の各組もとっても期待して観劇するんですけどね!(^-^)。

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