代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

花組・雪華抄/金色の砂漠 感想2 明日海りおさんと花乃まりあさんの見事な熱演!ただし結末はうーん?でした

皆さま、こんばんは。引き続き、宝塚大劇場にて公演中の宝塚歌劇団花組「雪華抄/金色の砂漠」のお芝居感想をお届けします!

こちらは公演を彩るロビーのお花です。金色の砂漠のオアシスに咲く花々のイメージでしょうか。以下、ネタバレは避けたいのですが、でもどうしても少しネタバレをしてしまいますので、お嫌な方はお読みにならないでくださいね。

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1.美しき奴隷・ギィの情念の炎 -恨み、復讐、そして一途な恋

ああ、もぅぅぅぅ!! 誰?!明日海りおさんに真っ白な衣装を着せて、王女専属の特別な誇り高き奴隷とかいう役をつけたのは!! ←上田久美子先生なんで、落ち着いて、miyakoguさん。

こんなん、はまりすぎるやん?わかってたけど。

子ども時代のみりおさんは、前髪を全部下ろしておられるんですよ!そいで、英真さん演じる年長の奴隷・ピピの膝に顔をうずめて泣いたりするんですよ!

長じては前髪が乱れてて。あの方はね、前髪が似合うと思う!!何書いているのか、分からなくなってきたけど・・。おばちゃん、言うとくわ。

子ども時代の無邪気さ、聡明さ、正直なやりきれなさ。

少年が長じる中で、王女に対して揺れ動く心。

青年となり、王女を見つめる目の強さ、焼け付くような恋、その恋を告げる強引さ

これは部分的には公式にも出ておりましたので構わないかと思いますが、みりおさんのギィが婚礼前夜に花乃ちゃん王女にぐぃっと行く場面。あわわわーーとなる観客席です。(美しく処理されていますので、どうぞご安心を・・。)

観客席のmiyakogu、動揺のあまり、「アンドレ、アンドレーー、強引でも思いが叶ってよかったね、未遂じゃなくーー」と心の中で叫んでおりました。←お話も、時代も全く違いますので、落ち着いて、miyakoguさん。ただ、そういうことなの、察して!!

 

その鍵は仙名さんの美しき王妃が握っているのですが、彼の出自が明らかになる場面があります。その場面での、みりおさんの自暴自棄ともいえる叫び。悲痛な彼の思いが伝わってくるかのような、10代後半の若者の無謀さと激情。

痛々しいのです、みりおさんのギィは。その無謀とも思える復讐、そしてその根底にある彼の焼け付くような激しい恋。ひりひりとしたむき出しの情念が、舞台から観客席にまっすぐに届くのです。

それは青臭く、無謀で、若い故に混じりけがないまっすぐな復讐の青白い炎であり、真っ赤な恋心の炎なのです。賢い奴隷のピピ(英真さん)のように、避けようと思えば避けられる炎の真っ只中に、ギィは身を投じてしまいます。傷だらけになりながら、身も心も・・。

 

2.花乃まりあさんの第一王女・タルハーミネの激しさと誇り

花乃まりあさんが演じられた第一王女・タルハーミネは、勇敢で強い武人の父を誇りに思う、まさに王の娘です。激しい気性、プライドの高さ。その中に時折、垣間見えるギィへの恋心への戸惑い。

ギィは知っているのです。そば近く仕えているからこそ。自分を見るときの彼女の震えを。ギィには出自の秘密があり、彼は聡明なのです。たとえ今は奴隷であったとしても。

タルハーミネは、激情のままに生きる砂漠の国の王女。婚礼の前夜、強引なギィの腕から逃げ出すことはせず、激しい流れの中に身を投じます。しかし・・・。

王女として、奴隷の妻になるなど、許されることではありません。婚礼は国と国を結びつけるもの。柚香光さんが演じるガリア国の王子・テオドロスの説得と、それしかない選択肢の中で、結局、王子を婿に迎えいれます。柚香さんの王子は笑っちゃうほどのイケメン!計算高く怜悧でありながら、違う世界の常識による判断で、当然ながらギィを遠ざけようとする王子。美しいタルハーミネに惹かれ、彼女の膝枕でくつろぐ柚香さん。どうなってんの?という美形on美形です。

話を戻しますと、王女が婚礼を選びギィに死を宣告する中で、ギィは・・・。ある助けにより彼は拷問から逃げ、生き延び、再び王宮に戻り、復讐を遂げるのです。数奇な運命の二人の恋。しかし、それは因果応報とでも言うべき、運命の巡りの中での必然なのですね。

 

3.王と王妃の愛、第二王女と奴隷ジャーの愛

この物語を非常に立体的なものにし、運命の綾なすものに見せているのは、鳳月杏さんが演じる砂漠の武人であるジャハンギール王の、王妃アムダリヤへの恋です。ジャハンギール王は、国を奪った前王の王妃であった美しいアムダリヤに、どうしようもない恋をしたのですね。彼もまた。その恋が、生きたアムダリヤを手に入れたいという執着が、後に運命の輪廻のように、彼を滅ぼす結果になるのです。

そして、哀しげな王妃・アムダリヤ。彼女は誇りを押し殺し、生き延びることを選び、いつしか・・。その結果、復讐を果たしたはずのギィに思いもよらない悲劇が襲います・・。ああ、もう!かわいそうすぎるやん、ギィは!!

ジャハンギール王は王宮が襲われる中で、王妃の手を取り、王妃を守り続けます。ああ、そうだったのだと思わせる場面でした。

そして、もう一つ。運命が折り重なるように進むこの物語の優しい横糸が、桜咲彩花さんが演じる優しい第二王女・ビルマーヤと王女付の穏やかな奴隷である、芹香斗亜さんが演じるジャーの恋です。ジャーはこの物語の語り部であると同時に、恋する一人でもあるのです。

第二王女への求婚者である天真みちるさん演じるゴラーズが、ええ人なんやって!!!この物語のオアシスなのです、この3人は。それから、第三王女付の奴隷・プリーの瀬戸かずやさんも楽しく快活なお役でした。

ゴラーズはおそらく、優しく美しい王女ビルマーヤとジャーの間の絆が、愛であると静かな諦めを持って見抜いていたと思うのです。彼の穏やかな大きな愛は、二人をまとめて包むかのようでした。ゴラーズはジャーを奴隷として扱わないのです。

最後、王族が追放になってもなお、ジャーは家族のような愛によりビルハーナと生きていきます。

 

4.英真さんのピピの慈愛と賢さ、盗賊の女ラクメのじゅりあさん、品のある盗賊・水美舞斗さん

英真さん演じる年長の奴隷・ピピは王妃アムダリヤ付の奴隷です。彼もまた、静かに長年にわたり王妃を愛していたのではないかと思わせるものがありました。激しい愛ではなく、慈愛に満ちた愛によって。彼の静かな慈愛は、他の人々にも及びますが、やはり第一には王妃を守り抜き、彼女の悲劇的な最後をも、彼は止めないのです。見守っていたがゆえに・・。泣きました。

花野じゅりあさんが演じる盗賊の女ラクメは、逃げてきたギィが抱える何かを見抜き、彼を仲間に迎え入れます。というかさぁ、惚れたんですよね?多分、年下の美しいギィに。ちゃいます?!おばちゃんな、絶対そうやと思うで!! ←落ち着いて、miyakoguさん。

じゅりあさんのかっこよさに目を奪われていましたが、盗賊団に「うん、誰、この美形?!」という方がおられ、慌ててロックオン。もちろん、水美舞斗さんでした。かっこええわ!少し荒れている盗賊だけれど、本来は王宮に仕える人々であったというような品が醸し出されている美形さんです。皆さんも注目してね!

 

5.結末でうーん・・・?

見事に紡ぎ出され、織り成されていく一枚の美しい絨毯かのような物語。さすが、新進気鋭の上田久美子先生でした。

ただし、途中まで、です。もう少し言うと、最後の結末の直前まで、と申し訳ないですが私は思いました。

静まり返り、物語の進行を息を呑んで見守る観客席。ああ、でも時間が足りないわ、これ2幕ものじゃないし?!となった頃・・。

うーーん。大きなクエスチョンマークがあららら?と飛び交う中、物語は結末を迎えます。

結末直前までは見事に複数の物語が、伏線をはらみつつ、その伏線が活かされて進んでいたのです。

そして、結末の場面もとても美しい金色の砂漠でした。美しく死んでいく二人・・。

その間をつなぐ部分が、あらら?だったのです。

え、なんでまた、タルハーミネ、そんなこと?あなた、だって一度は若い頃、二人で逃げるって言ってたやん、ギィの復讐と同時に恋が成就することを、それほどまでに許せなかったの?その誇りはいったいどこから?そして、何のために??そんな誇りはかなぐりすてて、相手はみりおちゃんやで!!!わかるけど、父の仇やってこと?!国は、民はどうすんのよぉーー‼(注 実録、miyakogu心の叫び)

もちろん、私にだってわかります。推定20代の真ん中の二人。人間は理屈のつく行動だけをするものではありません。

激しい砂漠を吹く熱風のような人生において、理性や計算やそういったものとは関係ないところに生きる砂漠の王女。それこそが、おそらくギィをとらえて離さなかった彼女の芯にある魅力でもあるのではないかと、思います。

しかし・・。夫となったテオドロスを氷のように拒み続けた奥に、ギィへの忘れられない生涯の恋があるのだとしたら・・。ああもう!!!!となりました。

人気の連載が、出版社の事情により、ぱたんと打ち切られたかのようだといえば、お分かりいただけるでしょうか?

ただ、幸せそうな二人のデュエダンで、王女が芯に持っていたギィへの恋心を素直に出し、二人は幸せに死後の世界を過ごしたのだと、そう思わせるものはありました。そうでなければ、観客席側の戸惑いは最後まで浮かばれなかったと思います。

そして、みりおさんは白、皆さんは黒ターバンの燕尾での大階段を使ったダンス。上田先生ご自身がパンフレットにお書きになっている「色っぽくて熱い空気」が、あのターバンによって、大変申し訳ございませんが、半減しているかのように思いました。世界観を維持するためのものとはわかります。しかし、前髪を乱して踊る男役さんを、できれば拝見したかったのです。色っぽく・・。ちょっとお風呂上りのタオルというか・・。本当にごめんなさい。ターバンがお好きな方もおられるでしょうしね・・。

 

6.概ね成功していて、少し物足りなさがあったチャレンジだったかと・・

上田久美子先生がご挨拶に書かれていたとおり、「共感や同情の涙とはまた違ったところで」「美しい特別な人たちの悲劇という異世界に」、確かに私達観客は緊張感を持って引き込まれました。

それは上田先生の新たなチャレンジだったのだと思います。「美しい非日常」。ドラマは舞台の上で進み、私は固唾を呑んで拝見しました。結末のシーンも美しいものでした。私達の人生にはあまりない、激しい要素により構成された、美しい砂漠の遠い時代の架空の国の物語。

物語はアラビアンナイトの一つのように美しく進み、それは概ね成功をしていたと思います。あえて、共感とは違うところで勝負をかけられた、その上田先生の気概に大いに尊敬の念を表したいと思います。

ただ、物足りないすぽっとした時間が一番重要な部分であった。あくまで私個人の本日の感想ですが、それが正直な感想です。若干、舞台との間に距離があり、では物語の結晶が舞台で見事に完結したかというと、そこまでではなかったように受け止めています。後、もう少しでその結晶が完成しそうなだけに、余計にもどかしいような・・。

砂漠の熱風の中の、激しく美しい非日常の舞台を眺める。みりおさんの美しくも無謀なギィの熱情、花乃まりあちゃんの熱演、どうぞご観劇ください。