代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

花組・メサイア感想1 明日海りおさんの力強いカリスマ、原田先生が創る小宇宙の見事さ

皆さま、こんにちは。昨日、初日を迎えて2日目の15時、宝塚大劇場花組公演「MESSIAH(メサイア)/BEATUTIFUL GARDENSー百花繚乱ー」を観劇してきましたので、お芝居から感想をお届けします。

 

一部ネタバレもしますので、これから観劇予定のある方やネタバレがお嫌な方はお読みにならないでくださいね。

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1.「こことは違うどこか」からきたカリスマ

素晴らしかったです。

特に天草四郎が「メサイア」として圧政に苦しむ天草の人々からたたえられる場面の迫力と、ラストシーンの宗教画のような美しさが素晴らしかった。これはぜひご観劇ください。

倭寇の頭領であった明日海りおさん演じる夜叉王丸は、この天草、日本だけでなく遥か遠くに広がる「こことは違うどこか」をリアルに知っている強い青年です。航海技術に長け、天気を読むことができ、闘いにも強い。

厳しすぎる現実の中で、概念としての「ここではないどこか」=「神の国(パライソ)」で救われることこそ、信仰の対象となっていた天草の人々にとって、遥か遠くに広がる世界を現実のものとして知っている夜叉王丸=天草四郎は、そこに連れていってくれる救世主に見えただろうと、その設定に説得力がありました。

そして、何もしてくれない神への疑問だけでなく、だから「神はあなた方の中にある」と力強くきっぱりと言う四郎に寄せられる多くの期待と憧憬。それらをすべて受け止められる人物を説得力を持って演じることができる明日海りおさんの力強いカリスマ性。

本当に見事でした。

「メサイア」を歌い上げるシーンでは、「レ・ミゼラブル」をロンドンの劇場で初めて観たときのことを思い出しました。「One day more」と人々が立ち上がる場面の力強い圧倒されるような迫力とコーラス。そこに匹敵するかのような「メサイア」の場面の湧き上がるような力強さ。求心力を持って真ん中に立つみりおさんのカリスマ性。これはもう、ぜひ劇場で確認ください。

また、ラストシーンの宗教画のような構図も特筆すべきものがあります。ぱっと内側の幕が開いたとき、「あっ」と息をのみました。美しくて。

そして、中心に明日海さんと仙名さんが出てこられて、中心に向かって色とりどりの服を着た天草、島原の人々が立ち歌う場面。見事な宗教画のような色彩の配置で、これは偶然ではなく、立つ場所もおそらくは人々の高低も、そして何よりも配置された衣装の色が見事に計算されたものだと直観的に思います。それほど見事な場面でした。

 

2.明日海りおさんというカリスマ

見事でした。

明日海りおさんは、美しく中性的で妖しい美を持ちつつ、内面にものすごく骨太の強い何か、演じることと宝塚への狂気めいた愛をお持ちの方なのではないかと拝見しておりました。時にこれはみりおさんの内面に比べると役不足?なのではないかという演目もあったかと思います。

しかし、月組さん時代の傑作「春の雪」に続き、「ポーの一族」の妖しい美、私は1パターン観ただけなので恐縮ですが「あかねさす紫の花」の迫真の演技。それらを経ての今作品での円熟期にふさわしい力強い骨太の男役さん像、お見事でした。

「私が神」だというのでなく、自身の神への信仰でもなく、天草の人々とその魂を守ろうとする天草四郎像。それはあたかも明日海りおさんが魅入られた宝塚を守ろうとするみりおさんご自身の力強さのようで、四郎としての声が彼女自身の内なるものから出たのだと、はっきりと伝わるまっすぐな迷いのない強さがあったと思います。

そう、迷いがなかったのです、この舞台は。2日目にして。素晴らしかった!

フェアリータイプのジェンヌさんにはまったく興味を示さないうちの辛口夫ですが、今作品のみりおさんは「王道スター」と納得です。

 

3.原田先生の創る小宇宙

原田先生は前に花組さんのショー「雪華抄」を観劇したときも思いましたが、原田先生は舞台上に小宇宙を生み出すことができる演出家だと思います。残念ながら私は原田先生の作品をあまり見ておらず、良い面とそうでない面があるらしいということは伝聞が主になります。

私は上橋菜穂子先生の『精霊の守り人』シリーズが好きで全巻繰り返し読んだ時期があります。守り人シリーズについては既にいろいろなところで語られていますが、上橋先生の頭の中に3次元ではっきりとした映像で動く世界があって、それを上橋先生が書き留めておられる感覚があります。国には地図があり、物語の中の道具や食事のメニューにいたるまでくっきりと完結した一つの世界なのですね。

原田先生にも同じものを感じるのです。物語はもちろんなのですが、セリフや歌詞が美しいとか切ないという以上に人物の絡まり方や物語の設定、見せ方の構図に見事さを感じるのです。歌詞の美しさでは、私は意外に思われるかもしれませんが、実は田渕先生が一番好きです。

例えて言えば、今作品は一つの美しい聖堂があって、そこに天草四郎と天草の人が生きていて、その世界から外に出たときに幕府や藩の人間と対峙していたような感覚です。実際には聖堂ではなく、村や島の一角や立てこもった原城なのですが、四郎のいるところが聖堂であると伝わるかのような。原田先生は美しい建築作品のように舞台を創りあげる方なのではないかと思います。

そういうことができるクリエイターは限られると思います。そして、そうできるのは実は何回かに1回だということも、何らかの創作に関わる人はおわりになると思います。でも黙々と創り続ける中でしか、そういう瞬間はないということも。

「メサイア」ではその小宇宙が舞台上に創出されていると私は思います。

 

それにしても明日海りおさんという美しいジェンヌさんの存在は、舞台を創る側の創作欲をかきたてる方だなと改めて。

春の雪、ポーの一族、そして今作品。

我がままで自分勝手だけれどそれが許されることを知っている究極の美しい少年。

永遠の命にいらだちながらも旅を続ける孤独な美しい青い瞳の青年。

日に焼けた肌が健康的で強く、人々の心を惹きつける言葉を発する力強い青年。

美しいタイプの異なるカリスマを演じきった明日海りおさん、彼女はやはり稀代のジェンヌさんのお一人なのだと感嘆いたしました。ぜひご観劇をお楽しみください。

また、今作品で一番の飛躍を感じたのは水美舞斗さんでした。感想2で書いてみますね。

(感想2へ続きます)書きました!

mothercoenote.hatenablog.com