代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宙組・異人たちのルネサンス 感想 寂しかった少年と少女のピュアなラブストーリー、美しい短編への昇華

皆さま、こんばんは。お元気でしたか?昨日、miyakoguは宝塚大劇場にてダブル観劇和ものショーが華やかでにぎやかでテンポ良くて、メインテーマの音楽が切なくて良くて、真風さんがとにかく素敵で、まどかちゃんが可愛くて、二人が切なくて。完璧!本当にあっという間にラストの狐の嫁入りシーンから賑やかなお稲荷さんのお祭りが始まってしまうのです。びっくりです。

今日はお芝居の感想を少しあらすじを踏まえつつお送りします。以下は、ネタバレがお嫌な方は飛ばしてね!今からがっつり、あらすじが出てきてしまうので。

 

1.寂しかった少年と少女のピュアなラブストーリー

おばちゃんな、実はとても大切なことに気づいたのよ。お芝居の「異人たちのルネサンス」について。

これ、副題に「-ダ・ヴィンチが描いた記憶ー」ってついてますやん?舞台設定は芸術や文化の秋らしく、レオナルド・ダ・ヴィンチ、メディチ家となっています。おそらく、この時期に多い団体のお客様へのアピールもあるだろうと推察します。でもダ・ヴィンチやメディチ家は「借景」だと思うのですね。

この物語は、ただただ、一人の寂しかった少年と寂しかった少女の出会いを描いたピュアなラブストーリーだと思ったのです。

寂しかった少年が寂しかった少女と出会い、離れ、青年となり再会し、一瞬でも愛し合い、そして離れてしまった・・。青年の記憶に焼きついた少女の美しい微笑み、それを絵に描いた。青年はたまたま「天才 レオナルド・ダ・ヴィンチ」だった。だから、その謎の微笑が後世に伝わった。

初見時、「繊細で悪くない、でも余白が多い詩のよう」と感じたこの物語をそのように感じさせたのは、宙組トップコンビの「愛を奏でる力」と宙組のお芝居の力だと私は思います。

お二人の奏でる愛がきらきらとした目に見えない細かな光の粒になって、優しい風にのって舞台から伝わってくるように思った10月13日の公演でした。

真風さんの優しい包容力と、まどかちゃんの少女の可憐さが創り上げる王道の世界。ぜひご観劇ください。傑作や大作ではなく、妙に心に残って秋に読み返したくなる美しい短編小説のよう。田渕先生の繊細な歌詞はその世界を創っていると思います。

 

2.寂しかった少年と寂しかった少女をつなぐ「絵」

孤独で寂しかった少年は、同じく孤独で寂しかった少女と絵を介して出会います。

二人の間にあったのは「絵」。寂しそうな少女はその「絵」を観るときだけ、瞳を輝かせる。そして少年はその瞳を見るのが嬉しくて、絵を一心に描いた。

少年少女時代は、愛海ひかるさんと夢白あやさんがとても丁寧にいい演技をされています。愛海さんはピュアな存在感がありとても優れた資質をお持ちの方と拝見しています。

少年少女はある日突然、離れてしまいます。美しく成長した少女は残念ながら司教グイドに政治的な材料として利用されてしまう。その美ゆえに。置きざりにされた少年。さよならも言えなった少女。

その二人が再び巡りあうのがフィレンツェのロレンツォ・ド・メディチの館です。

少女はロレンツォの美しい愛人として。

少年は無理やり連れてこられたお抱えの天才画家として

二人を再び結びつけたのは、美しいものを集めることに執着するロレンツォであり、二人を隔てるのもまたロレンツォなのです。

少女は彼女を利用するフィレンツェ司教のグイドによって、罪、裁き、許し、そういったものにがんじがらめになっています。他に頼れる者がいなかった彼女は、おそらくそういうふうにしか生きられなかったのですね。

美しいカテリーナを「天使」として利用しようとするグイド(おそらくは欲情も内に持っていたはず)、愛人として享受するロレンツォ、横恋慕するメディチ家の次男ジュリアーノ。

グイドの愛月ひかるさんは「神」だの「悔い改めよ」だの、ジュリアーノから恋をされることすら「堕落」だの言うのですが、はっきり言って現世的な野望を追求する野心家。(愛ちゃんのフィナーレの髪型が超絶かっこいいです!)

※おそらく、当時の宗教的概念として、誰かに恋をされる=欲情される、それは恋をされた方の女性がはしたないこと、それこそが罪だという考えがあったのだろうとは理解しています。現代人からしたら「けっ」です。

 ロレンツォの芹香斗亜さんは傲慢な中に時々、弟への愛やカテリーナへの執着が本当は恋なのだろうと見え隠れする人間くさい当主。

まぁ、この二人が腹立つこと、憎たらしいこと、魅力的だこと!それだけ、お二人がお上手だったということです(褒めてます)。

  

3.一緒に生きようとする夢

カテリーナががんじがらめになっている場所から、レオナルドは彼女を解放しようとします。一緒に逃げ出す夢をみて。

ひととき、二人は翼を伸ばせると一緒に生きられると信じ、長年の想いが溢れ出るように近づきます。メディチ家内のアトリエで近づき、彼の秘密のアトリエで翼を伸ばすように夢をみる。

メディチ家のアトリエでのレオナルドはかつての少年ではなく、ロレンツォに嫉妬する青年であり、自分のものにしたいというピュアな欲望が溢れ出るかのようでした。

秘密のアトリエで夢見るように翼を伸ばすカテリーナとレオナルドからは互いをいとしく思う気持ちが溢れて、その思いがきらきらとこぼれて見えるようでした。

けれど、その願いは結局、かなわなかった・・。寂しかったかつての少年レオナルドが寂しかったカテリーナに伸ばした手は届いたのに、確かに届いたのに・・。

そう、ロミオとジュリエットのように、ウエストサイドストーリーのように。では、これはどこかの物語の焼き直しなのでしょうか?

私はそう思いません。それよりも、シンプルに物語の原型だと思います。

 

4.一人の人間が大切な人に出会う物語

一人の人間が、一人の大切な人に出会ってしまう。

近づきたいと願う、笑顔を見たいと思う、触れたいと願う、自分のものにしたいと思う。思いが通じてひととき歓喜を覚える、もっとと欲張りになる。一緒に生きたいと夢見る。でも、離れてしまう、終わりが来る。覚えている、ずっと覚えている。追憶となる。思い出す、何度も思い出す。静かな胸の痛みとともに・・。

恋なのです。普段よりやや上演時間が短いこの物語で描かれているのは。芸術でもメディチ家とパッツィ家の権力闘争でもない。

真風さんと星風さんの演技と歌唱。田渕先生が書かれた繊細な歌詞、青木先生の滑らかな音楽。その歌詞に感情を見事に乗せてこられた真風さんとまどかちゃんの寂しげな歌・・。

真風レオナルドが歌う「君を描く色」、まどかちゃんが歌う「あなたへと続く迷宮」。歌いだしの静かな声に込められた繊細な想いを、ぜひ劇場でお聞きください。私は正直、このトップコンビがここまでの二人になられるとは本当に予想していませんでした。

トップコンビの響きあうお芝居は、組全体に確実に影響を及ぼしていると思います。

 

5.舞台設定としてのメディチ家

15世紀、フィレンツェのまちを牛耳っているメディチ家。新興の銀行家であり芸術品の蒐集家であるロレンツィオはその当主です。傲慢で賢く色気もある当主。芹香斗亜さんが絶妙に醒めた感じと色気で演じておられます。

これをおもしろく思っていないのが歴史ある銀行家のパッツィ家末裔のフランチェスコ・パッツィ。凜城きらさんがお髭のイケメンで重厚に演じておられます。

ローマ教皇は領土を巡ってメディチ家と対立中(フィレンツェ近くのイモラ、交通の要所かな?)。パッツィはフィレンツェ司教グイドと組んで教皇に取り入りメディチ家を滅ぼし、グイドは次期教皇の座を狙おうとしています。

二人はジュリアーノを利用して、ロレンツォの暗殺を画策。ジュリアーノは兄への反発に加えて兄の愛人カテリーナに恋をしていて、青年らしいいらつきを桜木みなとさんがロングヘア美形で演じておられます。

メディチ家の中でも美男子の誉れ高く人気があったというジュリアーノ。彼の野心は枢機卿となることですが、狙っている領土が持参金がわりで手に入ると算段したロレンツォによってミラノ公の娘との結婚を決められてしまいます。ジュリアーノは美しく野心はありますが、頭角を現す才能はない。

パッツィ家とグイド側からすると、ジュリアーノはグイドがメディチに送り込んでいるカテリーナを使って利用できるコマ。ジュリアーノとロレンツォを一気に亡き者にできればパッツィ家の再興には好都合であり、教会での暗殺場面が展開されます。

この教会の場面の星風まどかさんが美しかった!ほの暗い舞台に浮かぶ色彩鮮やかなステンドグラスの舞台美術の中で、まさに聖母のようなまどかちゃん。

星風まどかさんは、本当にぐぐぐーーっと変化されましたね。もともとはすべて彼女の中にあった資質だと思います。可憐さ、清らかさ、少女性、同時に感じられる妙に大人びた影、母性。いや、あなたダ・ヴィンチの肖像画より綺麗ですやん?!劇中、美しいと褒め称えられるトップ娘役として堂々の説得力です。

教会での場面はラストの緊迫の場面です。メディチ家とパッツィ家&グイドの野望を巡る戦いは果たしてどうなったのか、レオナルドとカテリーナの恋と運命は?

劇場で物語の行方を見届けてくださいね。

 

6.乗ってる宙組、これだけは言っておきたい大型犬・真風さん

今、宙組のお芝居は乗ってると思います。

組長さん、副組長さん、純矢ちとせさん、花音舞さん、澄輝さやとさん、真風さん・凜城さん・松風さんの92期の三人、芹香さん・愛月さん・93期の三人、94期の方々。上級生さんが多いことがぐっとお芝居を締めているのですね。

松風さん演じる工房の長、ヴェロッキオとその妻の花音舞さんのルイーザ。工房仲間の澄輝さん(ベルジーノ)、蒼羽さん(何とボッティチェリ、明るくてかわいい!)、和希そらさん(クレディ)、前髪がかわいい留依蒔世さん(フィナーレはかっこいい髪型)、長身の瑠風輝さん。りくちゃんとそらちゃんは、ちょっとしたアドリブでくすっとさせてくれます。同じく行き場のなかった少年の複雑さを表現した天彩峰里さん。エトワールも絶品でした。

その中でこれだけは言っておきたい!!!(miyakogu心の叫び)

いろいろあってメディチ家のお抱えになっているレオナルドは、親方と話がしたくて工房にやってきます。夕暮れ時にうなだれてしょんぼりと工房の前につっ立って・・

花音さんが晩御飯をと誘ってくれるのですが、そりゃ、声かけるでしょ?!こんな美形が雨にうたれた大型犬のようにしょんぼりとしてたら。

何なん、あの美形しょんぼり大型犬?!

最後はmiyakogu心の声でお届けしましたが、寂しかった少年と寂しかった少女のピュアなラブストーリー。この秋、ぜひご観劇ください。

※多幸感があると噂のデュエダンについては、下記の記事を書きました。よろしければどうぞ!

mothercoenote.hatenablog.com