皆さま、お元気でしたか?公私ともどもイベントが多く、しばらくブログ更新ができていませんでした。が、気づくと早くも明日は宙組「オーシャンズ11」の東京千秋楽、私の好きな宙組の方々が宝塚歌劇団をご卒業される日です。
宙組で重要な役を演じご活躍されてきた純矢ちとせさん、澄輝さやとさん、愛白もあさん、蒼羽りくさん、さらに風輝駿さん、はる香心さん、雪乃かさりさんと7名の方々がご卒業されます。上級生の方々は重要なお役で、真風さんトップ時代に力強くご活躍、感謝しかございません・・。
私は今回のご退団者の中でも、とりわけ蒼羽りくさんの演技が好きでした。そのことを本日、書きたいと思うのです(T-T)。
私は真風さんの異動と共に宙組を拝見するようになったごくごく新しいファン。以下はりくさんを長く応援されてきた方からすると、極めて限定的な感想になりますこと、どうぞお許しください。
1.蒼羽りくさんの魅力に気づいたバウ公演
蒼羽りくさんの魅力に最初に気づいたのは桜木みなとさん主演のバウ公演「相続人の肖像」でした。白いフロックコートを着た長身、ちょっと天然のナルシストっぽいけれど姉思いで決めるときは決める、そういうお役です。
斜めに降ろした縮れた前髪。星風まどかちゃん演じるヒロインに想いを寄せて敗れる準主役的なお役ですので、フィナーレでりくさんがセンターのダンスがありました。
これが超絶、まぁ、かっこよかった!!!のです。美しいしなやかなダンス、本当にお綺麗でした。
ただ、この公演で着目したのは定評のあるダンス以上に、りくさんの優しい声でした。
りくさんのハロルドには、ずんちゃん演じる主人公チャーリーに想いを寄せる姉・ベアトリス(愛白もあさん)がいます。このお姉さんは財産目当てだとわかった上で、それでもいいと結婚しようとするのですが、りくさんハロルドは姉のために反対し、舞踏会で姉と踊ろうとするずんちゃんから、「姉さん、踊ろっ」と愛白もあさんを連れ出します。
大事な姉にそんな結婚をさせたくない、僕がちゃんと守るんだという姉思いの優しい弟がきっぱりと言うセリフ。
ただ一言だけなのに、緑豊かなお屋敷の中で、仲良く育った姉弟、眼鏡をかけて晩生の姉をいつもそっと守ってきた弟の姿が、ばぁっと浮かび上がったのです。
うん?この人はどういう人なんだろう??とりくさんに注目するようになりました。
2.「シェイクスピア」の友人役
自分でも不思議なのですが、こちらもただ一言のセリフでした。りくさんは宮廷一座のウィル・ケンプ役でもあり、シェイクスピアの地元の村の友人役でもあります。
シェイクスピアは父の反対にもめげずに物語を書いては父親と衝突しています。まぁ様シェイクスピアをお祭りに行こうと誘う友人役。
「また、何か書いたのか・・?」と少し心配そうに尋ねるりくさん。
シェイクスピアの友人として、シェイクスピアのやっていることには反対していない、ただ、もう一つ理解はできていない、けれど友人がやっていることを守ってあげたい。そういう大切な幼馴染なんだろうなぁという風景が、たたたたーーと浮かびあがるようでした。多分、文字は少し読める、でも得意ではないような気のいい若者。
大きな樹の根元に二人で寝っころがって、あらすじをシェイクスピアから聞いて、「へぇー、それでどうなるんだ?」とわくわくして尋ねることもあれば、途中で寝てしまうこともある。そういう友人だったのではないかと。
私のいつもの勝手な妄想です。
でもね、miyakoguだって、こほん。いつも妄想しているわけではないんですよ!
ばんばんばんっ。まぁ様、真風さん、ちぎみゆのお二人、珠ちゃん、そういうミューズみたいな人にしか反応しないんです。
最初、ん?と思った後、たまたまかな?と思ったのですが、複数回観てもやっぱりそうで、これはりくさんのお芝居の力ではないか?と思うようになりました。何かほっこりと、聞いている側の心をほんのりと暖かくさせるりくさんの優しさがにじみ出た演技の力と感じたのです。
3.「ウエストサイドストーリー」のチノ
チノは、りくさんのお芝居の魅力が最大限に発揮されたお役だったと思います。残念ながら映像に残らない作品です。私はたまたま東京、大阪と2回観ることができたため、りくさんのチノの魅力は繰り返し、ぜひお伝えしたいと思います。
星風まどかちゃんが演じるマリアを連れてダンスパーティに行くチノは、舞台下手でまだ幼さの残るマリアの相手を優しく大切そうに務めます。マリアの兄・ベルナルドにマリアを引き合わされた時、おそらくチノはかぁーーっと頬に血が昇っただろうな、きっと一目ぼれして、こんな子が自分の妻になってくれるなんてと、ひそかに嬉しくてしかたなかっただろうなと思わせる演技だったのですね。
twitterでリプライもいただきましたが、マリアが働くお店を訪ねてきたときに言う「女の人の店だろ?」というのも印象的でした。男の人の世界でずっと生きてきて、女慣れしてなくて、でも女性をきちんと尊重していて、多分、お母さんも大切にしている。そういう人物だろうという想像がたたたたーーーと想起される一言でした。とても優しい夫になれたはず。
そのチノが、マリアに対して放つ「トニーが兄さんを殺したんだ!」という叫び(セリフは正確でないと思いますが)は、自分の大切な女の子をトニーに奪われたこともわかった上で、マリアのためにはっきりとは言いたくなかった、でももう我慢できなかった、そういう哀しみが伝わる叫びでした。
4.優しく暖かな声が伝えるその人の世界
上記で取り上げた以外にも「王妃の館」のクレヨン、博多座「黒い瞳」のマクシームィチととても魅力的な演技でした。
なぜ、りくさんが放つ優しく暖かな一言のセリフの声は、ここまでたたたたーーーと、舞台の後ろにあるその人物の人生を、観ている側に想像させるのだろう?
そのことが、とても不思議でした。
新人公演の主役を何度もされたきた方です。だからこそ、主役の近くにいて、舞台に得も言われぬ「色」をつけることができる、そういう力を持った演者となられたように思いました。そして根底には、この方の持つ「常に相手を大切に思う暖かな優しさ」があり、その優しさが役ににじみ出るように思ったのです。
もちろん、演じる側は真摯に役名の人生を生きようとされます。けれど最後にどうしてもその人自身がにじみ出るところがちょっぴりあるように思います。
りくさんの優しく暖かな声、主役の近くにいて何かを発する一言、そこから感じたのはりくさん自身が向かい合う人をいつもきちんと大切にされてきた、その優しい暖かさだったのではないか。そう、私は受け止めています。
5.りくさんの魅力
twitterの中で得た情報なので、もしも間違っていたらごめんなさい。
ある時、和希そらさんのお茶会のレポだったと思います。バウ公演「ハッスル・メイツ」の主演が決まったことを、蒼羽りくさんがとても喜んでくださったとそらさんが語られたと読んだことがあります。
私はその内容を拝見したとき、はっとしました。
新人公演の主演を何度もされてきた蒼羽りくさん。バウ公演の主演をいつかというファンの思いを感じることもあったと思うのです。ご自分も、という気概を持ってもおかしくないポジション。歌が重視される昨今の傾向の中では、難しい面もあったのかもしれないと思います。
けれど、後輩がバウで主演する、自分はしていない。その中でそんな風に喜んであげることができるだろうか? 自分に置き換えてみると難しいなと思います。
りくさんも当然、ある程度以上に負けず嫌いでいらっしゃることでしょう。ただ、お持ちだと拝見する優しさが、ジェンヌさんの競争社会ではひょっとすると仇になった面もあったかもしれないと思います。けれど同時に、その優しさこそが、りくさんの魅力の本質なんだろうとも思うのです。
もちろん、オーシャンズ11のオープニングでもフィナーレでも、とびっきりいきいきとかっこよく踊っておられて、蒼羽りくさんの男役さんとしての魅力は炸裂しています。
私は真風さんのファンですが、大劇場での最後2回の観劇時は、ずっとオペグラでりくさんのダンスを追っていました。ダンスの中でも、特にしなやかに柔らかく伸びる美しい腕の動き、生き生きと楽しそうな少し挑発的な表情、腰が動くと体全体が動くような大きな動き。これらはとても美しいものでした。
彼女の大きな魅力であるダンス。それ以上に、私はりくさんの優しく暖かな声のお芝居が本当に好きでした。
おそらく、演技を通じて、この方の優しい暖かさにほんのりと触れるような喜びがあったのではないかと思います。心がほっこり、ほんのりと暖まるような・・。
たった一言のセリフから、たたたーーとその人物の世界を舞台の上に描き出す力。私は本当にそのお芝居が好きだったのです。
蒼羽りくさん、素敵なお芝居を見せてくださって、本当にありがとうございました。
明日、東京宝塚劇場で宙組「オーシャンズ11」は千秋楽を迎えます。蒼羽りくさんのあの優しく暖かな声の演技を、男役さんとして拝見することはもうない・・。寂しい寂しいことです。
蒼羽りくさんのお茶会に私は行ったことがありません。けれど、あなたの演技を私は忘れない。おそらくはりくさんご自身が自覚されておられる以上に、あなたの演技を楽しみにしていた人はいるのです。
どうぞ千秋楽を思う存分に楽しく、悔いなく過ごされますように。明日はLVを拝見いたします(涙)。