代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

月組・桜嵐記新人公演感想 青く硬質な切なさの礼華はるさん、澄んだ声が美しい羽龍きよらさん 気迫に満ちた素晴らしい新公でした!

月組・桜嵐記の宝塚大劇場新人公演を観劇してまいりましたので感想をお届けします!

いやぁ、本当に素晴らしい公演でした。驚きました。

月組の皆様の確かな演技、通る声、お芝居の工夫、若く青くまっすぐに清々しい公演。出てくる方、出てくる方、皆さんのセリフの声が素晴らしく、主要役の方々の歌が素晴らしく、舞台における声の魅力を改めて感じさせる公演でした。 

 

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1.清々しく青い美しさと切なさ 礼華はるさん

ご縁があってお茶会にお邪魔したことがあり、ぱるちゃんが歌える人だというのは知っていました。歌うと朗々と通る声。ただ、セリフの声がまだ少し弱いのかなと、その点を少しだけ心配していたのです。

それが、まぁ、本当に嬉しい驚きでした!!!

開幕を告げるアナウンスの声が良く、あ、これは大丈夫とすぐに思えます。登場した堂々たるすっきりとした品のある若武者姿に、ああ、この人は久しぶりに再開された新人公演をやり遂げることに腹をくくっておられるのだと伝わる気迫がありました。その腹のくくり具合が正行に通じる気迫をもたらしていたように思います。

そして、セリフの声が、まさにそのお腹の底からの思い切った声。

あ、この方は一つ、何か越えられたのだ、殻を破られたのだと嬉しくなりました。

背が高くノーブルで美しい礼華はるさんが、烏帽子姿で桜の下に立ち、弁内侍に別れを告げる場面が美しく、若武者というより公達。源氏?!源氏なの?!という美しさ。

とりわけ良かったのは、出陣の挨拶を受けた弁内侍が、あふれる思いをこらえきれずに正行の背中にすがる場面です。

ここはきよら羽龍さんの演技も本当に素晴らしいのですが、いったん手を離すのに、うつむきためらうぱるちゃん正行の美しくも切ない横顔ですよ!

ばんばんばんっ!

おばちゃん、久しぶりに机をたたくで!!!

 

真面目に、私、この場面の礼華はるさんの切なさをこらえようとする、けれど、思いが溢れてやはり振り返ってしまう、手を取ってしまう、抱きかかえてしまう。その演技と表情の切なさに泣けましたーー!!オペラ握りしめ、涙をふきと大忙しでした。

本当に素晴らしかった。

出陣式では新人公演らしく、お別れではなく「皆様、出陣いたします」と晴れやかに告げ主上も「戻れよ」ではなく「生きろよ」と告げる。清々しい若者らしさに満ちたラストでした。

私は、常勝であった若き正行は出陣する前、1/3くらいは勝てるかもしれない、いや勝つ、そして流れを自分が変えるのだという20歳過ぎ(くらいですよね)の若者らしい青い気概を持っていたと想像しています。

その青さ、硬質なきらめきを感じさせるラストでした。

礼華はるさんの終演のご挨拶も、美しくもまっすぐに清々しいものでした。

 

2.驚きの美しい声 きよら羽龍さん

いやぁ、びっくりびっくり。

もちろん、きよらさんが美しい歌声の持ち主とは存じておりましたが、これほどみずみずしい情感豊かにセリフを話す、心地よい美しい声の方だとは知らなかったのです。同行していた旦那さんも今日一番の驚き。

背の高い礼華はるさんと小柄なきよらさんの一対のお雛様感が素晴らしく美しく、桜の場面で礼華さんに抱えられるきよらさんは、正行がそっと抱える大事な秘密の宝物のように見えました。

少し咲妃みゆさんを彷彿とさせる面がおありになるように思いました。楽しみです。

 

3.美しいお顔のはじけるやんちゃ 彩音星凪さん

All For Oneで珠城さん演じるダルタニアン少年時代を演じられたところから、もちろん注目していた美形さんです。

その美形さんがやんちゃにはじける、うん。いいね、ずっと見ていたいよね!!(笑顔でハイタッチ)

主人公の正行は、珠城りょうさんの場合はどーんとした楠木のよう、新人公演の礼華はるさんはまっすぐな清々しい青竹のようであり、どちらかというと受けの演技のお役側のように思います。

その分、正儀が飛び跳ね、疑問を投げかけ、弁内侍にちょっかいをかける中で物語が動いていく面があるように拝見しています。

彩音さんは思い切った演技で、ぐんぐんと飛び跳ね、時に賢く鋭い疑問を投げかけ、ちゃんとちょっかいをかけ、と生き生きと演じておられたのが魅力的でした。歌も堂々とお上手。ぜひ彩音さんの主演も観てみたい。そう思わせるきらめく魅力のある方と拝見しました。素敵でした。

彩凪翔さんをお好きな方はぜひご注目を。お顔が似ておられる美形さんです。雰囲気はちぎさんにも似ておられるかもです。

 

4.物語にぐっと引き込む力 風間柚乃さんと天紫珠李さん

まぁ、風間柚乃さんがうまいのはみんな知ってるからさ。うんうん。

冒頭、風間さんと天紫さんの二人が語り始めると、物語の世界に見ている側を一気に引き込みます。さすがのお二人。

天紫さんは普段よりかなり低く抑えた声。非常に巧みだったのが印象的です。

 

5.存在感を出したお二人 瑠皇りあさんと彩路ゆりかさん

もともと、瑠皇りあさんの尊氏は楽しみにしており、セリフをどう話されるのか、魅力的なのか、確かめに行ったところがありました。顔が美しいのはおばちゃん、よーーーーく知ってるから!

るおりあちゃんは曲者の尊氏をきちんと曲者に演じておられ、セリフも落ち着いたもので聞きやすい声でした。これは逸材なのでは?!

いや、とうに皆さん、ご存知なので落ち着いて・・。さすが宝塚音楽学校のポスター、センターで堂々と映っておられただけのことはあります。みりおちゃんをお好きな方はぜひご注目を。

そして我らが主上。本公演でええ声で歌う暁千星さんの京ことばが妙に好きなのですが、彩路ゆりかさんの主上がとても良かったのです。途中から、この方、誰だろうと一番気になった方でした。あ、ゆりかちゃんだからじゃないですからね!(注 これが言いたい)

お芝居がお好きな方なのでしょうか?セリフに込めた思いがこぼれ落ちるように伝わってくるのです。主上の切なさが強く伝わってきた演技でした。守ってあげたくなる主上なんですね。この方は。

美しい正行と主上を悪夢のような思い出が襲いかかる場面。舞台前方で膝をつく正行と主上の二人がかわいそうで、守ってあげたくなるようで。美しい幼友達でした。お歌もとてもよかったと思います。楽しみな方ですね。

 

6.巧みな蘭直樹さん、さわやかな魅力の一星慧さん、迫力の真弘漣さん

高師直の蘭直樹さんはさすがの上手さ。本公演で紫門ゆりやさんが怪演を見せておられるだけに、ある意味、一番難しいお役だったかもしれませんが、さすがでした。本公演よりも少し若めでその分、色事も一層お盛んそう。ただし人情もありそうな師直です。

一星慧さんは礼華はるさんと同じく身長178㎝。まぁ、迫力の楠木三兄弟なのですが、優しそうで、ああ、確かにこの方、お料理や日常を愛してそうな武将だわと思わせるものがありました。明るい爽やかな魅力の方と拝見。

高師直と並び、もうこれ、誰がすんの?新人公演でというお役が後醍醐天皇。本役さん、いつ鳩を持って登場してもおかしくない(宙組・王家に捧ぐ歌のアモナスロから来ています)の一樹千尋先生ですもん、いややん?自分が当たったら。

それが、真弘漣さんのファッファッファッという不気味な笑い声が響き渡った時点で、あ、この方いける!と確信しました。迫力ある熱い演技、舞台を覆う黒い雲のような大きさを十分感じさせる演技でした。

 

7.大きな魅力の大楠てらさん、可憐な羽音みかさん、軽やかな人間味の柊木絢斗さん、妖艶な結愛かれんさん

新人公演どうすんの?という役の一つである楠木正成公。しかし、よくよく考えると、この演目、そういうお役ばかりでした・・。

本役の輝月ゆうまさんは、珠城りょうさんが髪をたらし、舞台の真ん中で刀二つ持って戦う中、透明な明るさの中に哀しみを少し込めた楠木の歌を歌われます。その大きさを持っていないといけない、非常に難しい場面です。

大楠さんは、まさにその名前の通り。いや、本当にこんなぴったりのお名前のジェンヌさんがおられたとは!本公演よりも、明るさの中の哀しみがより増した表現だったように思います。その分、対照的に出陣式はより晴れやかになったのかなと。

羽音みかさんもきれいな声の方。おっとりとしていて、正時が好きで、芯は強いことが伝わる演技でした。それにしても、声が美しい方揃いでした、この新人公演は。見どころも聴きどころも多いのですね。

ジンベエ、あーー。これこそ、新人公演どうすんの、の役でしたわ。本役の千海華蘭さんが上手すぎて、年老いてからの歩き方があまりに模写過ぎて、もはやからんちゃんの芸を見るだけでも価値があるのですが、そこを柊木絢斗さんはきちんと踏襲されていたように思います。

南朝一のしたたかで色っぽい仲子、あーー、これもまた新人公演・・(以下略)。

結愛かれんさんはコケティッシュな魅力を一杯お持ちのキュートな方だけに、ぴたりとはまっておられました。

 

8.本公演から感じる微細にゆらめく魅力

久しぶりに再開された宝塚大劇場での新人公演。

何よりもその喜びと使命を感じておられたのは主演の礼華はるかさんであり、月組の新人公演チームの皆様であり、送り出した上級生さんだったと思います。

そして、見事に、本当に見事に全力でその使命を無事に全員で果たされたことに心からの拍手を贈ります。

ご挨拶で礼華はるさんが語られた「共に生きている」ことの喜びと実感。もちろん、オンラインでも伝わる一面はあります。しかし、気迫といった目に見えない熱、微かな声の震えから伝わる波。そういったものはやはり劇場でないと得られないものだと改めて実感します。

今回、一番実感したのは、その目に見えない何かが本公演は少しずつ違っていて、一つ一つの小さな差が、全体として本公演の隅々を繊細に覆っているということです。

たとえば、礼華はるさんが思い切って見事に発するセリフ。言葉自体は珠城りょうさんと同じです。ただ、語尾に込められた余韻が珠城りょうさんは少し違うのですね。

弁内侍に質問を投げかけるようでいて、珠城りょうさんの正行は弁内侍を柔らかく受け止め、柔らかく提案しているように聞こえるのです。語尾の余韻に込められた温かみ、弁内侍をからかうような面白がっているような余韻。

ちなつさんが呼ぶ「百合」も同じです。同じ「百合」という名前なのに、ちなつさんが言う「百合」は慈愛もいとしさも悲しさもすべて色が違う。

そこが新人公演と本公演の差か!と本日、納得いたしました。

ただ、この新人公演にはまっすぐな清々しい別の素晴らしさがありました。なんというか、役と本人が重なりあった若者の青い疾走感が清々しく、観終わった後の晴れやかな喜びが格別だったのです。

観客席に共に生きることの喜び=熱い何かを十分に存分に発揮された月組「桜嵐記」新人公演チームの皆様に心からの拍手を。本当にありがとう。

おばちゃんな、生きるわ!!!

観る側にそう思わせてくれた新人公演、控え目に言って最高じゃない?!