代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宙組カジノ・ロワイヤル感想 小池先生の優しい直球の贈り物 真風さんボンドの清らかなセクシー

真風さんファンの皆様、こんにちは。私がひたすら観劇できる日を待っていた4月、ブログを書く余裕が出てきた4月。いつも当ブログでは、できるだけ多くの方々に敬意を払うべく、多くの演者の方々のお名前を出してきました。しかし、この4月、以下の感想(ではないかもしれない)記事は真風さんファンに捧げます。

 

1.小池修一郎氏の優しい贈り物「カジノ・ロワイヤル」

初日開けてすぐ、とりあえずファンの間に走った衝撃はイルカとキャベツでした。

大劇場公演が中盤に差し掛かる今、小池先生はマジだわ、本当に「イルカが人を愛するように」とお考えなんだわ。その深遠な人類愛に打たれ、小道具としてキャベツ畑のキャベツになろうと緑色の服を探す日々。

大丈夫か、真風ファン?

我々はもちろん、大真面目です。もうね、無いねんよ、次の公演が・・(T-T)。

最後に思いっきり悔いの無いように、こうなったら、何でもやるんですよ!(注 公演も中盤になり情緒乱れがちなmiyakoguでお送りしています

小池先生が雑誌『歌劇』の座談会で語られ、また、本公演パンフレットの『真風涼帆 AS JAMES BOND』で熱く語られているとおり、この公演は小池修一郎先生という日本ミュージカルを代表する一人の演出家が、一人の宝塚トップスターに贈った「優しい贈り物」だと、私は受け止めました。

いわく。

・・・真風の初舞台公演でもあった『NEVER SAY GOOD BYE』16年ぶりの再演に取り組んでいた。コロナで公演の半分以上が中止となったにも関わらず、屈することなく一心不乱・鬼気迫るごとく舞台に集中してくれた。・・(中略)・・極度の緊張を強いられたであろう真風と宙組生たちを、いつか解放して羽ばたかせたいう思いが私の中で高まって行った。

作 小池修一郎氏、2023年 下線はmiyakogu

出典:「カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~」パンフレット、宝塚歌劇団より

どういう運命か、2022年2月5日 ~3月14日にかけて宝塚大劇場で上演された『NEVER SAY GOOD BYE』は、真風涼帆さんの初舞台公演という記念すべき作品であり、上演当時の2022年2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した時期でした。

我々の日常からは、本来なら遠くの話に思えたであろう内戦当時のスペイン。とどまって命を落とす外国人カメラマンとオリンピック選手の物語、内戦の真実を伝える役割を全うするために帰国した女性脚本家。

しかし、揺れ動く世界情勢の中で、私たちも息を詰めるように観劇し、舞台の運命を現実と重ね合わせて衝撃とともに受け止めざるを得ませんでした。平和への希求を訴える名曲は素晴らしく、感動的であり、同時にずっしりと重い。

観ている側がそうであったなら、それ以上に、コロナ禍でいつ公演が中断するかという緊迫感も加わって、演じる側は一層、ずっしりと重い運命に圧倒される思いがあったのではないかと想像します。

でも、中断をはさみつつも、創作した側が「頭が下がる思い」を感じるほどに、真風さんと宙組メンバーは真摯に公演を全うされた。

その真風さんと宙組への、この「カジノ・ロワイヤル」は小池先生からの優しい軽やかな贈り物だと私は思います。

今日、80代前半の義母は初見でとても楽しんでいました。心から。笑い、手をたたき、感心し、うっとりする。彼女は宝塚初観劇ではありませんが、あたかも宝塚を初めてみる観客のように。

私たちのような濃い真風ファンと異なり、「オーシャンズ11」「エリザベート」「神々の土地」等の過去作品へのオマージュに密かな喜びを覚える訳ではない。ただ、軽やかに楽しかったのです。初めて「カジノ・ロワイヤル」を観劇して。一本ものだと少し退屈されるかな?とやや心配していたのですが、華やかで格好いい舞台だと楽しんでもらえました。

予想外だったのは、冷戦が高齢の義母にはすっと入っていったこと。確かに大人として同時代を生きた年齢層です。

真風涼帆さんという宝塚の男役らしいトップスターが見せるスーツ姿、タキシード姿、銃を構える所作、潤花ちゃんディルフィーヌへの熱いキス、娘役達に振りまくさらっとしたチャラさ、男役どおしの熱いダンスによる戦い。

過去作品を知らなくても、くすっとなる芹香斗亜さんが歌う「皇帝ゲオルギーは立ち上がる♪」や唐突で大げさなラスプーチンの面白み。キキちゃんならではでした。

桜木みなとさんがチャーミングに演じるミシェルの間合い。「ね?」の一言で客席を沸かせる見事さです。

ひたすらにかっこいいスーツ姿や訓練服姿の宙組男役さん達。いろいろな衣装で登場するチャーミングで明るくセクシーな娘役さん達。舞台の端っこでもお芝居の工夫を凝らす追求心や美しく見せる努力の数々。ちなみに、輝ゆうさん(愛称 おかゆちゃん)は、フィナーレの男役群舞を含めて多分、15回以上ウインクされていますので、ぜひご確認ください。あの人のやる気、すごいです。

真風涼帆さんと潤花さん。小池修一郎氏の言葉を再び借りるなら「近年稀な解放的大型コンビ」のお二人を軸にした充実の宙組さんの宝塚らしいゴージャスな舞台。

ぜひ、初めて宝塚を観劇した時のようにくすっとして、綺麗ねぇ、格好いいわねぇ、羽が豪華ねぇ、パラシュートにはびっくりねぇと、どうぞ心から楽しんでご観劇ください。

 

そして、不意打ちに来る「この広い世界に生まれて」で泣きましょう・・(T-T)。

歌詞にある「いつの日か 遠い街角で 君を/あなたを 思い出す時」

それはボンドとディルフィーヌの「時」であると同時に、真風さんと潤花さんにしかわからない二人の「時」であり、私たちファンと真風さんの間にある「時」です。

私たちは、いつかきっと街角で空を見上げて思うのです。真風さんを。

そして、思いがけないタイミングで泣くはずです。

いや、もう、わかってるねんって・・・。

 

2.真風さんの清らかなセクシー

映画の007シリーズは、次のジェームズ・ボンドは誰になるのかがニュースになり、議論の的になる世界的作品です。

私は一部作品を見ているに過ぎませんが、胸毛のある(ごめんなさい、思い込みです)セクシーでハンサムな男性俳優さんが派手にカーチェイスしたり、かっこよく銃で戦って、スタイル抜群のセクシー美女とベッドイン、そういう思い込みがあります。(本当にすみません、思い込みです!)

ただ、ダニエル・クレイグ氏の最新ボンドは、あくまで彼の風貌(特に眼)からですがクールなタフネスとエレガンス、硬質な哀愁を感じます。セクシーなスーパーマンでなく、複雑な人間性を宿したクールな眼をしたボンドなのかなと感じます。

そういった違いがあるにせよ、男性が演じるジェームズ・ボンドと、真風涼帆さんという宝塚らしいトップスターが演じるジェームズ・ボンドの決定的な違いは、セクシーでありながらもジェンヌらしい清らかさがそこにあるという点ではないかと、私は思います。

胸毛のあるセクシーさではないのです。(大真面目なmiyakoguでお送りしています)

きっちりとネクタイを締める。タートルネックで首を覆う。そこにある清らかなセクシーさ。息が止まるようなキスと言いながらも、リアルな男性の生々しいセクシーではない、白い光を放つ硬質なダイヤモンドのような清らかなセクシーさ。

 

2幕のラスト、デュエダンのために大階段に登場したいお衣装の真風涼帆さんは、自ら清らかな白い光を放つようでした。繊細なステップで踊る潤花さんは白い光とともにある妖精のようでした。潤花さんはダイナミックに笑う、爆発的に楽しい娘役さんです。でもデュエダンを終えた彼女は、羽の生えた白い妖精のように軽やかに下手にはけて行かれます。

 

一人舞台に残る真風さん。

後ろの大階段が青く光り、星が流れます。舞台の上は薄い紫の照明に照らされ、様々な星が映し出されます。星組出身の真風さんの宙組での退団公演を象徴する美しい照明でした。

その光の中で、一人静かに踊る白い発光体の真風さん。私が好きになった「ロミオとジュリエット」の「死」の役を思わせる手足を柔らかく使った伸びやかなダンス。

愛おしむように、大劇場に別れを告げるように、床に静かに片手を付く真風さん。

もうだめだ。千秋楽の日、干からび切った自分が見える・・(T-T)。

 

3.ど直球の「君に会えて良かった」

小池修一郎先生が退団ど直球ストレートの歌詞を投げてこられます。これから観劇の方はどうぞお覚悟を。

フィナレーが始まる直前のお芝居ラスト。一人舞台に残った真風さんは「Adieu 君に会えて良かった」を歌われます。

小池先生!なんで、そんな臆面もなくど直球のタイトルと歌詞で来はりますのん?(T-T)

いえ、それでこそ小池先生。清らかな宝塚愛がそこにあります。

今夜見上げる星を 君も数えているのだろうか

明日見上げる空を 君も見ているのだろうか

この地球のどこかで 君は生きている

作 小池修一郎氏、2023年「Adieu 君に会えて良かった」より

 

パラシュートに乗る二人が歌う「この広い世界に生まれて」で、「私たちは、いつかきっと街角で空を見上げて思うんだ、真風さんを」と思った後、お芝居ラストでとどめを刺されます。

きっと不意に思い出すのは間違いない。その時に何をどう思うのか。漠然とまだわからないまま、私たちは取り残される。その一つの答えが、ここにあります。

星を見上げて、空(宙)を見上げて。

大丈夫、あの方も今、地球のどこかで生きておられる。きっと、健やかに幸せに。

そう願うしかないのです。

そして、再び出会うまでに、私達ももっと強く賢く優しくなっていないといけない。

真風さんが「もっと大きく もっと賢く もっと強く もっと優しく なっていられるように 俺も生きていく」と歌われるから。

私にとって、それは一つの約束に思えました。再びきっと会える。でもそのために、私たちも「会うにふさわしい自分」になっていたい。そう願います。

「君に会えて良かった アデュー」を最後の言葉に、舞台から去っていくトップスター・真風涼帆さん。

何という直球どストレート。何のてらいも、詩情で美しく飾ることもない率直な言葉。でも、それこそ、私達にとって真風さんに言ってほしかった言葉なんだと思います。

ありがとう、小池先生。私たちへの優しい贈り物。

4月に入り、たとえばラスト10日頃から、私達は大丈夫なんでしょうか・・。もうだめかもしれない。でも強く賢く優しく生きる。だって、それが約束だから。

 

以上、読み返してみたら作品の感想じゃなかったです。真風さんファンの心の叫びとしてお送りします・・。