皆様、秋の穏やかな週末、いかがお過ごしですか? miyakoguは娘の習い事の合間に、宙組さんのバウホール公演「相続人の肖像」を観劇してまいりました。
全国ツアーチームにかなりの方がとられているため、大きく期待せずに観劇したところ・・。なかなかどうして!これが予想以上の好演で、嬉しい驚きでした。
※「パーシャルタイムトラベル」は6月17日に観劇予定です。こちらもまた書きますね!
1.目移りしてしまう宙組さんのお芝居好演
メランコリック・ジゴロに結構な人材が出ておられるため、主演お二人と七海監督のブリドリで世にその「ちゃらお」ぶりをしらしめた美月悠さんを中心に観劇を楽しむかな、と思っていたのですが・・。
桜木みなとさんの歌の迫力、星風まどかさんのヒロイン力はもちろんのこと。悠真倫さんと純矢ちとせさんの好敵手ぶり、蒼羽りくさんの前髪垂らし超絶イケメンぶりが素晴らしかったです。特筆すべきは、チャーリーと婚約し自らそれを破棄する愛白もあさんの見事な演技。
その蒼羽さんと愛白さんが演じるのはアルンハイム子爵姉弟。このお父さんが、おひげがお似合いの美中年の美月悠さんです。そこに、さすがの松風輝さんの執事、長身が目立つ新聞王の朝央れんさん。「ミー&マイガール」を思い起こさせる弁護士の穂稀せりさん。
そして、春瀬央季さん、七生眞希さん、水香依千さん、澄風なぎさんの美形召使達がまぁ、華を添えること!!この召使チームが踊りまくるんですよ、お屋敷で。留依蒔世さんが残念ながら休演されているため、代役の水香依千さん、その影響で召使チームに入られた99期生の澄風なぎさんも初めて認識しました。
バウはいいですねぇ、下級生さんに出番が一杯あって、今まであまり存じ上げない方々をよく観ることができ、嬉しい驚きが一杯です。
途中、いくつかメロディラインに乗りにくいなぁという歌がややありましたが、桜木さんはさすがに歌いこなしておられました。ミュージカルには時にそういう歌がありますが、観客は心地よい音楽に身を委ねたいものですしね・・。脚本的には場面のつなぎ目が少し弱いように思いましたのと、音楽の使い方はやや不満かなぁ。
でも、全てを払拭する美しいフィナーレ。宙組の長身美形若手達、素敵でした。では、本日の見所を私がのけぞった点を中心に以下、暑苦しく語りたいと思います。
2.物語内容と、桜木みなとさんの迫力
もうおばちゃんな、冒頭からのけぞったで!
お芝居冒頭、白い薔薇を一輪手にした桜木みなとさん演じる青年貴族チャーリーが、舞台上手の階段に足を一段下ろし、斜め横顔を見せてくれます。かっこよ過ぎるやろ!
チャーリーは後妻のヴァネッサが長年、父の愛人(どうもプラトニック・ラブだったようです)であったために、自分の母と自分自身が愛を得られなかったことに、強い憎しみを持っている青年です。その青年が貴族社会のルールには縛られずに愛を優先して生きる母娘に、相続がからんで出会い、後妻の連れ子であるイザベルとの出会いと語らいから、愛について考える、そういうお話ですね。
ただ、貴族社会のルールからはみ出している、おそらくそれ故に生き生きと見えるであろうヴァネッサとイザベルの魅力をもう少し打ち出していただけると、お話がさらに説得力が出たかなぁと思います。
桜木みなとさんは、普段から優しくかつ朗らかそうな印象があるだけに、自分を呼び戻した祖母への反発、強い語調と歌の迫力に驚かされます。桜木さんって、こういうお役も似合う方だったんですね。青年貴族の鬱屈のやりきれなさを全身からにじませる演技です。
黒いフロックコートに身を包み、桜木みなとさんがホール後方から登場、葛藤をはらませながら歌い、下手側の通路を歩いていかれる場面があります。その時のややきゃしゃな肩と背中を見ていると、いかにも世間知らずの青年貴族の弱さと憂鬱が感じられるようであり、悩みやつれている風情にみちた美しい横顔でした。斜め下をうつむいた横顔がとても美しい桜木みなとさんです。
3.それ何プレイの桜木さんと春瀬さんのタイ緩め!
桜木さんはね、確か、舞踏会の後だったと思いますけどね、舞台上でタイをゆるめておられますよ!わわわーの場面です。
タイを緩められるのは、もうお一方、春瀬央季さん。召使仲間で取り合っていた娘役さん(美桜エレナさんかな?)をゲットし、キスをされている場面があるのですが、そこでタイを緩めておられるのです!長身美形迫力の春瀬さん、ものすごいインパクトです。
4.蒼羽りくさんの美しすぎる英国青年貴族ハロルド
今回の最大の見所の一つと思われるのが、茶色がかった金髪の前髪縮れ毛を垂らし、白いフロックコートを着こなす蒼羽りくさんです。どこの英国貴族青年ですか?!あなた!
桜木さんとお二人とも白の衣装を着て二人で並ぶところがあるのですが、まぁ、美しいこと、絵になること、眼福です。そして、ダンスがお上手な方と聞いておりますが、お歌もかなりお上手になられたのではないでしょうか?
ええ人なんですよ、このハロルドが! 周りの貴族女性にはない魅力をもったイザベルに惹かれ、結婚を真摯に申し込み、チャーリーといつか愛し合っていると知ると、潔く身を引く。世間慣れしていないオールドミスになりそうな姉のことを心配し大事にしていて、美月悠パパの子育て大成功だと思われます。
イザベルな、もうええやん、ハロルドにしとき!と言いたくなるくらいええ奴なんですよ。
5.素晴らしかった愛白もあさんのベアトリス
誰、この超上手い娘役さん?!と思ったら、「サンクチュアリ」で伶美うららさんの侍女を演じておられた方でした。このベアトリスがめっちゃええ子なんですよ、これまた!いや、ほんとこの姉弟、ええ子やで。
女性の魅力には残念ながら欠け、本を読みふけり、ロマンチックな夢を描いていて、チャーリーのことが大好きな役です。憧れのチャーリーとの婚約に喜ぶのですが、チャーリーを愛するが故に彼女は見抜くのですねぇ、誰かが心の中にいると。そして、自ら婚約を破棄し、最後に愛を告げ、チャーリーの頬にキスをし去っていくのです。
なんという見事な! 私はこの場面に泣かされました。ベアトリスはいかにもな外見の役ですが、しかし彼女の切なさ、愛する人のために身を引く健気さ、そして凛とした貴族らしい気高さが伝わってきたからです。本当に素晴らしい演技でした。
6.悠真倫さんと純矢ちとせさん、松風さんの執事
いやはや、もう傲慢で貴族のおばあ様にふさわしい存在感のある悠真さんのどっしりとした演技。見ものでした!「エリザベート」のゾフィーのような迫力なのですが、ちょっと茶目っ気があり、決して悪い人ではなく、お屋敷を守ることに一生懸命な、笑いもお取りになられる存在です。
純矢ちとせさんのエレガントな演技や落ち着いた物腰はお見事であり、執事や召使から慕われているところから、人格的に素晴らしい方なんだろうと思わせるのです。ただ、悠真おばあ様との対立的構図が多いため、チャーリーと同じく愛を知らなかったジョージを救ったであろう暖かな人間味がもう一つ、伝わってきませんでした。そこが残念なところでした。これは脚本上の問題かと思います。
でも、悠真さんと純矢さんお二人の並び立つ場面での迫力は、宝塚のバウで下級生中心の演技を観ているという感覚を忘れさせるほどで、外部のストレート・プレイを観ているようでした。
松風輝さんの執事は、お屋敷を陰で取り仕切るお役ですが、心の温かさが随所ににじみ出ていて、いい味を出されています。チャーリー坊ちゃんの感情のゆらめきに、最初に気づくのが彼。チャーリーの恋を応援してくれる優しい存在感でした。
7.愛らしい星風まどかさん
可愛らしいお顔立ちに、すらっとしたスタイル、はっきりとしたセリフに、かなりのお歌と、さすが抜擢されるだけの娘役さんです。
ロマンチックな愛への憧れを持った、美しいうら若き女性として、その存在だけでももちろん、ハロルドとチャーリーが二人とも好きになるのも当然と思わせるものがおありになります。
特にチャーリーと二人で広間で踊るワルツ。年頃らしいダンスへの憧れから、二人の間の恋が生まれる場面は、こちらまでどきどきが伝わってくるような、お二人の演技でした。フィナーレの登場場面でも、彼女が踊ると、周りにふわっと小さな花がいくつも散るようで、とても華のある方ですね。驚きのまだまだ研2、大いに期待しております。
8.額縁で切り取るかのような演出の巧みさ
うまいなぁと思ったのが、舞台装置の二つの入り口。左右に背景が黒の、開け放った扉のようなところがあるのですが、ここが額縁のようにみえます。そこから別々の場面ですが、薄いピンクの衣装のイザベル、そしてチャーリーが白いフロックコートを着て現れます。
黒い背景ですから、ピンクと白が際立ちます。特に、桜木さんは扉で立ち止まっておられるため、あたかも肖像画のようです。おそらく田渕先生もそう意識されているのではないかと拝察いたしました。
9.フィナーレ
額縁ということでしょうか、縦長の長方形の電飾の枠の中から、宙組の長身美形男役さんが登場されます。皆さん、イケメンすぎて目移りすぎて、誰が誰やらです。桜木さん、蒼羽さん、美月さん、春瀬さん、朝央さん、七生さん、水香さんは確かおられたような。間違っていたり他にもおられたら、うろ覚えですいません。男役さんどおしのデュエットぽい振りがあり、あわわわーーー!となります。
ここで、宙組きっての若手ちゃらお様とうかがっている美月悠さんに被弾いたしました・・。ちょうど、miyakoguは少し段があがる列で美月さんの線上の席に座っていたのですよ。そこで、絵になるなぁとうっとり眺めていたところ、最後にねぇ、あの方、「にやり」と笑ってはけていかれたのですよ!!
明らかに自分をうっとりと眺めているのを、わかった上での「にやり」。ものすごい破壊力でした。お芝居では人間や世の中のことをよくわかった美中年を演じておられただけに、美月さんのそのギャップにのけぞりましたよ!ほんま、怖いわ。まぁ様の流れなのかしら??
というわけで、もしもチケットをゲットできる機会がまだありましたら、ぜひ一度、ご観劇を! 宙組さんの若手美形ぶりとあのフィナーレをご覧いただくだけでも十分に価値はあります。
あ、たった今、スカステではメランコリック・ジゴロの映像が流れてます。お正月には全国ツアーのチームとバウホールのチームが合流して、大劇場かいな・・。
楽しみすぎですやん?!トップ、2番手、3番手をはじめ長身美形の男役さんが揃い、そして演技がお上手な娘役さんが随所におられ、コーラスが見事な宙組さん。楽しみにしています。
(相続人つながりについて書いた、その2はこちらです)