代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

月組バウホール公演・月の燈影感想 礼華はるさんの三味の音、真摯な成長

真風さんが小池先生作の「ルパン」にダブルキャストでご出演されると発表されて以降、息を吹き返したmiyakogu。皆さん、お元気でしたか?

さて、本日は、バウホールにて3度観劇する機会のあった「月の燈影」の感想を書いておきたいと思います。その後、スカステで放映された「今夜、ロマンス劇場で」の新人公演についても少しね!

 

1.バウホール「月の燈影」における礼華はるさんの飛躍

最初に観劇したのは開幕後5回目、次は11回目、ラストは14回めの公演となりました。

びっくりしたのは千秋楽間近の3回目の観劇時のこと。

「な、なに、何があったー?!この2回の間にーー?!」

もともと同作は、花組・彩吹真央さんと蘭寿とむさんのダブル主演として創作された大野先生の作品。今回は礼華はるさん演じる幸蔵を主とした作品と発表されています。

初回から、専科さんと月組組長になられた梨花ますみさんの熟練の演技には、もちろん感嘆しておりました。しっかり受け止める演技の礼華はるさん、彩海せらさんが歌も演技も何でもできる方で、お芝居も白熱。最初の観劇時の段階で素晴らしい出来でした。

2回目に一緒に観たお義母さんは「正直、今まで宝塚で見せてもらった中で、今日のが一番良かったわ」と感激したくらいです。

ただ、ぱるちゃんのお役的には辛抱役。高い水準に満足しつつ、もう後一息のぱるちゃんブレイクがあれば、単独主演によりふさわしくなるのでは?と思っていたところ、ヅカ友ちゃんがチケットが被ってしまい、急遽3回目の観劇へ

そして、そこでぱるちゃんの爆発!にびっくりしたんです!終盤近くでこう来るのか、この人は?!と驚きの観劇となりました。運に感謝です。

終盤で見事に「礼華はるの堂々たる主演舞台」になったと思います。若木が匂い立つような、この時期にしか出せないであろう清新な色気が香るいなせな兄さん。

本来、東京のお嬢さん育ち(のはず)のぱるちゃんが、欲が渦巻き、それ故に魅力的な川向うの一部を仕切る通り者の頭として「兄ぃ」と行き場のない少年達に慕われる。そんな演技できるだろうか?

彼女の役者魂を見くびっていたなと反省いたしました。もしかしたら、三代前くらいに木場の材木問屋さんの若旦那と親戚になられたとか、妄想するくらいには驚きました。

幸蔵として、やり場のない目をして、ほの暗いものを抱え、三味線を手元を見ずにつま弾き、超爽やかな色気駄々洩れ木遣り歌を踊り、切ないまなざしを動かして、気配を察知すると「誰だ!」と瞬時に全身から凄みを出して見せる。

びっくりしましたよ。

ストイックに必死に真摯に、ただただ幸蔵にこの世界観に向かい合われた、その成果だろうと思います。おそらくその真摯さが、私が観た終盤土曜日の舞台で、ついに沸点に達した。そういう舞台だったのではないかと思います。

この人には、何があっても進んで行く揺るぎない強さがある。

その真摯な強さ故に、遠くまで行ける人だと思います。

中村座に関わりながら育った幸蔵は三味線の名手で、再会した火消しの頭にも「おめぇの三味の音、久しぶりに聞けて嬉しかったぜ」と言われ、淀辰の女房であるおゑんには、「お前の三味の音、もう一度聞いてみたかったよ」と言われます。

私達は幸蔵の、礼華はるさんの三味の音をたっぷりと聞かせてもらえます。礼華はるさんは手元を一切見ずに三味線を弾き、どこか遠くを見るかのように歌います。

あのシーンは凄みのある名演でした。どのような人生を生きてきたのか、何があったのか、江戸に残してきた人への想い、今ここで生きていることへの覚悟。幸蔵はここでしか生きられなかったけれど、そこには確かに誇りもある。そう思わせる演技でした。

それにしても、幸蔵は気づいているのでしょうか?

次郎吉に心を閉ざそうとする一方、お壱にだけは本音を話していることに。お壱だけは、他の通り者が聞きたいけれど聞けない、幸蔵の突いてほしくないところを問いかけてきます。大野先生の脚本、上手いなぁ。

あ、多美子姫だからか・・。ま、お兄様、溺愛してたしなぁ・・。(それは「応天の門」なんで、落ち付いて)

 

2.名演の役者さん達

新人公演とはまた異なる、お一人お一人が「本役」であるバウ公演の良さをしみじみと感じました。

下級生さんも一人一人役名があって、一人一人がその役を愛して、真剣に考えて、どの場面でも工夫して。月組さんの底力を感じるとともに、この人達は多分、今、演技が楽しくて仕方ないだろうと思わせる、心の弾みが伝わるようでした。

その弾む心の喜びは客席に絶対に届きます。千秋楽で皆さんが、嬉しそうに楽しそうに客席に投げ込んだ手ぬぐいのように。

淀辰を演じた夏美ようさんの色悪ぶり、その女房おゑんを演じた梨花ますみさんのすべてを見届けるラスボスぶり、火消しの頭丑右衛門を演じた悠真倫さんの気風と人情。

完璧な名演でした。ほれぼれしたねぇ。

「5年前の木遣り歌はどえれぇ、いい男だったねぇ」、「川向うに来た頃のお前は昔の淀辰と同じ目をしていたもんだよ」と言うおゑんさん。

ほぼ惚れてますよね?!推しっぷりがすごすぎる!

梨花ますみさんの名演は、雪組「ハリウッド・ゴシップ」のアマンダ(往年の大女優)もしかり。宝塚というより、もう何というか、あれはすごい演技でしたよ。

 

3.彩海せらさん次郎吉他の皆様

彩海せらさんの次郎吉がどうしても「さっちゃん」と一緒に居たい、ずっと一緒に生きていたい、違うというなら自分だって手を汚す、その覚悟が切な過ぎて。そこをまた、あみちゃんが上手く演じるから、泣けました・・。次郎吉、ほんまにええ子。あみちゃんは、低音の歌声が素晴らしいですよね。

次郎吉は最初からずっと「さっちゃん」と呼びかけますが、幸蔵はただ一度だけ「じろちゃん・・」と絞り出すように言います。

そんなもん、泣けるに決まってますやん?!

気風のいいねぇさん喜の字の天紫珠李さんの綺麗な声と品のあるしぐさも最高でしたね。芸者さん姿がしっくりと板につく品のある色気が素敵。芸者仲間の蝶之助の妃純凛さんも、お名前通り凛としてかっこよかったなぁ。六八を適当にあしらう様も粋。

春海ゆうさんの重厚な人情のある大八木、蘭尚樹さんの見事な調子者であり策士の六八、天愛るりあさんの色気たっぷりの文字春ねぇさん。いや、すごかったね。皆さん、専科?ただ、蘭尚樹さんの退団が発表されてしまいましたね・・。切ないねぇ。

天愛るりあさんの口調に影響されて、しばらくは文字春ねぇさんの口調でついつい話しちまったくらいですよ、ねぇさん。

お壱の花妃舞音さんは存在が可愛く、少し震えるような歌声がいいんですねぇ。目が離せない可愛さがあるわぁ、あの方。「今夜、ロマンス劇場で」の新人公演、鮮烈デビューで話題となったのも分かります。

兄ぃと慕う通り者の片腕なのかな?粂八を演じる大楠てらさん、小柄な体で虚勢を張る三吉を演じる彩路ゆりかさん。このお二人の演技も心に残りました。私は以前から甲海夏帆さんが好きで、彼女が出てくると常に注目しています。

 

4.ほぼ全員、幸蔵が好きなんよ

ね、大野先生?和傘って武器なん?それとも、男っぷりを上げるためだけに肩にかけてるん?バズーカ砲かと思いましたよ。ええ。

何とかして一緒に江戸に連れて帰ろう、一緒に生きようとする次郎吉、最後には自分の手を汚して自分も川向うに来る、一緒だと言う愛。もう、幼馴染の友情ちゃうやん?愛やん、愛!

淀辰の旦那がねぇ。ぺたぺた、幸蔵のほっぺや襟元に触っちゃってさぁ。執着している感じが、たまんないねぇ。本当は跡目を継げる器があるのはこいつ、とわかってたんでしょうね。おゑんさんも「そこを見抜いていたのは、幸蔵、お前一人きりだったね」と見破っています。愛!

そいでさぁ、指とんとん(机の上で指をたたくmiyakogu)。

粂八もお壱ちゃんも、幸蔵に叱られたいとか、とにかく兄ぃと一緒にいたいんだねぇ。健気で可愛くて、おばちゃん、泣いちゃう。

淀辰に従って喜の字を渡してでも、兄ぃと一緒にいたい通り者仲間も必死なんよ。幸蔵と一緒に生きたくて。

会いに来る火消しの頭を含めて、ほぼ全員、さっちゃんが好き。そういうお話です。ええ(真顔)。

一番あかん子は喜の字の弟、髪結いの新助な。借りたお金で賭博するわ、六八の乗せられて逆恨みで、うちのさっちゃんを刺そうとして挙句、結局、間に入った次郎吉を刺すわで、ねぇさんのビンタ一つで済まされる思たらあかんで!一輝翔琉ちゃん、顔が可愛いからと言って、あかんで!

あ、でもなぁ、初舞台が宙組デリシューやったんよ。あの子のロケット何回も観てるから、ちょっとしょうがないかなぁ。(107期生には甘い)

 

5.月組「今夜、ロマンス劇場で」新人公演

その後、スカステで礼華はるさん主演「今夜、ロマンス劇場で」新人公演を拝見。娘が受験期で大劇場で一度も観れなかった作品でしたが、宝塚には珍しく市井の人の一生を描いた作品。

礼華はるさんの初々しさやわたわたしたコミカルさがこの作品と不思議にマッチして、良き新人公演でした。花妃舞音さんもとにかく可愛い。

まのんちゃんが思い切って口に出す「会いたかったんだ、お前に」のところ、何回見ても泣けます。

すらりと黄色の宮廷服とロングブーツを着こなし、跪いて薔薇を姫に渡す。それがキザでなく清潔感を持って絵になるスターはそう多くはありません。

そもそも長身で歌える人材は歌劇団にとって大変に貴重。録画を見た旦那はんも「この子は一生懸命何かを伝えようとしている、それが分かる」と激賞です。おっさんの心を動かすぱるちゃん、伝わっていますよ✨

彼女のお茶会、面白いんですよ。あの方、何と言うか魅力が多面的なんですね。かっこよく決めたり、初々しかったり、お茶目だったり、ぽつんと面白いことしゃべったり、コミカルだったり、ばーんと伸びやかに歌ったり。「I AM FROM AUSTRIA」のお茶会はサングラスかけて登場、爆笑でした。機会が出てきたら、またぜひどうぞね。

 

それにしても、宝塚歌劇団、さすが100年の老舗。てぇしたもんだねぇ。

以前、和希そらさんの「ウエスト・サイド・ストーリー」のアニータを観て、これで彼女を上げないなら、阪急・東宝グループのミュージカル戦略も本気とは言えないなと密かに思っていたところ、その後、そらちゃんは大躍進。

歌劇団はその時々でタイプの異なるスターをモザイクのように組み合わせて育てているはずです。今回のバウ公演を観て、礼華はるさんの今後の躍進を確信いたしました。今後を楽しみに拝見していきたいと思います。

以上、真風さんの「ルパン」ご出演決定で息を吹き返したmiyaokoguから、お送りしました。次は真風さんのビジュアル、来るまで待つ!