皆さま、こんばんは。雨の一日、お元気でしたか?本日、宝塚大劇場にて星組さんの「ANOTHER WORLD / Killar Rouge」(アナザー・ワールド、キラー・ルージュ)を観劇してまいりましたので、その感想をお芝居中心でお届けいたします。
- 1.ちょっとお疲れ気味な心に効いた宝塚
- 2.これは集団で演じられる落語だと思います
- 3.実はひそかに泣けました なぜ?
- 4.紅さんはあの世でも心優しきヒーローでした
- 5.宝塚にはいつだって夢がある
- 6.ショー感想
- 7.かっこよく素敵な娘役さんはショーの華
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http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html
1.ちょっとお疲れ気味な心に効いた宝塚
先週、日曜から翌土曜午後まで1週間連続勤務になってしまったmiyakogu。おまけに最近ドはまりしていたTVドラマ「おっさんずラブ」の最終回予告があんまりで、さすがに心が疲れておりました。優れたドラマと役者さんでピュアなラブストーリーを展開されているとはいえ、あのね、TVってちょっとあざといね。視聴率や話題性が大事ですものね。
同ドラマは、最終回予告でファンに衝撃を与えてtwitterを沸騰させた後、前々から準備されていたであろう対談や記事が矢継ぎ早に出され、あれ?やっぱり牧君の恋は実るよね?と希望を抱かせて最終回に呼び戻すというマーケティング戦略が透けて見えるようで。いや、ビジネスとしては大変正しいよ。ただ、ちょっとね。
そこで、これはもう宝塚しかないわ!とチケットをお譲りいただき(定価以下ね)、本日15時を観劇し、帰りの電車で真風さんの「異人たちのルネサンス」超絶ビジュアルを確認。真風さまーーー!!(発狂)
星組・紅さんに心癒され、宙組・真風さんに魂を取り戻された有意義な午後でした。いや、ほんま。
みんな、わかってはる?!宝塚ってねぇ、ほんとにねぇ、ええとこよ!!(涙目)←miyakoguさん、皆様、よくわかってはると思うんで、落ち着いて。
正直、今回の星組さん、私の周囲の評判はよろしくはありませんでした。長年のヅカファンの方から「miyakoguさんはお忙しいでしょうし、観なくていいですよ」とか、「松竹新喜劇です」とか、「お芝居はおもしろかったんだけど、ショーが・・」とか。なかなかでした・・。ごめんね!私が言ったんじゃないよ!
ただ、本日、お芝居で一か所、信じてもらえないとは思いますが、私がひそかに泣いた場面があるんです。この点について書きたいと思います。
2.これは集団で演じられる落語だと思います
ぱっと明るくなって本日貸し切りのお客様も「わぁっ」となった幕開け。華やかで綺麗で見事な桜の場面から始まります。
紅さん演じる康次郎さんは大阪の両替商の一人息子。恋煩いで死んでしまって、この世とあの世の間に蓮の花びらの船に乗って流れてきます。冒頭とこの場面の紅さんは江戸時代の浮世絵に描かれた歌舞伎役者のような涼やかさ。黙っていれば超美形。
もちろん、紅さんが黙っているはずもなく(笑)、おもしろおかしく進む物語。耳に心地よい声でセリフが明晰な礼真琴さんとの掛け合いもテンポよく、ぽんぽんと進んでいく物語のリズムには、確かに落語だなと思わせるものがありました。
これは宝塚のお芝居というより、集団で演じられている落語だなと。そう思います。そうご覧いただければ、大変意欲的でチャレンジングな作品です。
音楽も東西こだわりなく、美しい衣装をふんだんに、ネオンサインもきらきらと。冥途歌劇団には笑いました。組の名前に加えて「専」とあるのが大笑い。
落語では一人の演者が口調もがらっと変えて、言葉と身振り(あくまで座布団の上で)で見事に笑いとともに物語が描かれます。天満天神繁盛亭で見事な落語を聞いた時のことをよく覚えていますが、小屋が笑いで揺れて、笑いがきらきらと空中に見えるようでした。ただ一人の男性が演じているだけなのに。
ところが、宝塚のこの舞台では言葉でしか表現されないそのおかしみ、きらきらとした輝き、一人が演じ分ける登場人物すべてを、色と音楽と大勢の演者で物語として見せることができるのです。
どうぞ「集団で演じられる落語」と、そう思って観劇を(落語を)お楽しみください。
3.実はひそかに泣けました なぜ?
本日、この落語で感動した最大のポイントがあるのです。
5日目のサバにあたって死んでしまった店の喜六(七海ひろきさんがかわいい!)、礼真琴さん演じる徳三郎さん、そのお付きの人たちに、天寿光希さんがいなせにかわいく演じる三途の川の渡しの杢兵衛。そして、出会った貧乏神(華形ひかるさん)。
私は拝見したことがないのですが、花組「くらわんか」でも確か演じておられたのですよね。この貧ちゃんがまぁ絶品で身振りがかわいいこと。見事な華形さんの演技でした。その貧ちゃんの夢は天国に行って「福の神」に生まれ変わること。
そんなのって、ぷぷぷ。
もちろん笑いどころであり、冥途で出会った人々がうつぶせで顔を隠す貧ちゃんを一笑に付す中、康次郎さんだけは言います。「夢を応援する」と。
そして彼は閻魔様の前で地獄に行くか、天国に行くか、誰か一人だけ地獄だとなった時も、貧ちゃんの夢をかなえるために「俺が地獄に行く」と立ち上がります。彼は恋しいお澄さんと一緒に天国に行くべくがんばっていたのに・・。
miyakoguがこっそり一人で泣いたのはここ。あの笑える落語お芝居で、まさか泣いている人がいるなんて、誰も思わなかったでしょ?あほみたいでしょ?
でもね、泣けたんですよ。
4.紅さんはあの世でも心優しきヒーローでした
瞬間思ったことは、役としての康次郎さんとしても、中の人の紅さんとしても多分、真剣に貧ちゃんを応援するだろうなとということです。
笑って笑って、どこかほろりとさせる人情ものの落語。
紅さんの康次郎さんは、他でもいつも「いや、そうじゃない」と一人だけ立ち上がったり、希望や状況を打破する解決策を見つけています。
ふらふらとしているように見えて、彼はいつも友情と人情に厚く、状況に巻き込まれながらも状況をうまく利用して、最後にはこの世に戻り、愛しいお澄さんとの恋も成就させます。
ちゃらんぽらんで、あーれーと状況に巻き込まれている感じなのに、なぜかちゃっかりと強い。
康次郎さんは心優しきヒーローなんですね。いつだって、実は。
それは何だか紅さんご自身の個性と重なるように私には思えました。おそらく紅さんはトップスターとして誰よりも強く宝塚に憧れ、誰かを応援する気持ちが人一倍強くて、人情に厚い方なのではないかしら?そう感じました。
5.宝塚にはいつだって夢がある
宝塚は清く正しく美しく。そしてこの作品は落語作家の小佐田定雄さんがパンフレットに寄せられているとおり「清く正しくおもしろく」でした。
たとえあの世であっても、トップスターは心優しきヒーローとして描かれる。
「そーりゃ そりゃ そら ありがたや そーりゃ そりゃ そら なんまいだ」という歌を、大真面目に踊り歌う。あの世でもきらびやかな衣装を身に着け、美しい蓮の花びらに乗ってたどり着く。(「ありがたや なんまいだ」より 作詞:谷正純氏)
全部、無駄に美しくて、全力で一生懸命です。鬼なんて、もう誰が誰だかさっぱりわかりません(ごめんね!)。女性が演じてていいのかしら?となるくらい、驚きのおかしさです。
でも、一生懸命で星組の皆さんはノリノリで楽しそうで。宝塚はお客さんのためにという気持ちが他のジャンルよりとても強く感じられ、その根底に共通の約束として夢を守る、夢を見ていいということがあるように思います。
とっても不思議でユニークでチャレンジングな作品、残り少ない大劇場公演ですがどうぞ、東京も含めて観劇をお楽しみください。
6.ショー感想
ショーはねぇ、音楽がずっと同じ感じでメリハリがないままぼーっと終わってしまいました。ごめんなさい、斎藤先生!
ただ、私は久しぶりの星組さんでしたので、あ、イケメン、うわ、美形、あれ誰?とウォッチングに忙しく楽しむことができました。
スタイルのいい美形しか舞台上におらんがな?!これが本日、miyakogu心の叫びです。印象に残ったのは以下の皆さま。きらきら、ぎらぎらと大人の魅力の上級生さんが特に印象に残りました。
・紅さんと綺咲さんは一対のお人形さんのよう
・礼真琴さんはイケボで、ダンスのきれや表情がどこか柚希礼音さんを思わせました
・七海ひろきさんはほっそりと長身の美貌(ビジュアル完璧!)
・天寿光希さんはどこにいたってきらきらとした端正さ
・大輝真琴さんは長い前髪が黒い目元にぱさーーとかかってすごい色気
・退団される十碧れいやさんは銀橋で優しい笑顔(とっても素敵でした)
・輝咲玲央さんは低音のイケボ
・瀬央ゆりあさんはきりっとした目元がかっこよく、ポストマンの歌がとても良かったです
・漣レイラさんは揺れる黒髪が素敵
・柴藤りゅうさんのウィンクは2回確認
・多分、極美慎さんは小顔で華がありました
・夢妃杏瑠さんは随所で歌声が魅力的、お芝居もかっこよかった!
・有沙瞳ちゃんはお芝居のめいどかふぇの初音も良かったし、客席降りでは指差し笑顔、ありがとう
・初舞台生さんのラインダンスの羽根が桜の花びらのようでとっても綺麗
・そしてラストは音波みのりさん
7.かっこよく素敵な娘役さんはショーの華
音波みのりさんがとても素敵でした。第7場Bかな?
礼真琴さんと二人で踊る場面。きりっとした表情で、きびきびとしたダンスで美しい脚で。大人の素敵な女性で華がおありになりました。
私は基本的には男役さん中心に宝塚を見てしまいますが、組ごとに楽しみにしている上級生娘役さんがおられます。たとえば月組なら退団された早乙女わかばさんや、花組の花野じゅりあさん。
星組はずっと前から音波みのりさんです。お綺麗で、強い演技も大人の演技もできて、踊ればかっこいい大人の女性の見事な華。素晴らしかったと思います。
というわけで、久しぶりの星組さんを楽しみ、かつ癒してもらいました。
いつでも清く正しく夢を見せてくれる宝塚歌劇団。もちろん大人の事情も様々にあるでしょう、内部では役付きを巡った嫉妬もあるでしょう。しかし、舞台上ではいつもヒーローがいて、ヒロインがいて、素敵な人たちが生き生きと演じ踊り歌う。ありがとうね、宝塚歌劇団の皆さま。
皆さまも集団で演じられる落語、その中の心優しきヒーロー像をどうぞお楽しみください。