代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。朝夏まなとさん退団後のロスから、少し息を吹き返し中。

花組博多座・あかねさす紫の花A日程ライビュー感想 必要欠くべからざる者

皆さま、こんばんは。寒暖差が激しい日々ですが、お元気でしたか?

先週土曜日に花組博多座公演「あかねさす紫の花」Aパターンライブ・ビューイングで拝見いたしました。基本、劇場での観劇感想が中心で映像のみでの観劇感想はあまり書かない派ですが、初見の「あかねさす紫の花」については書きたいことがあるので、書き残しておきたいと思います。

以下は、鳳月杏さんが演じられた中大兄皇子について、いつもながら私が勝手に受け止めた思いを書いたものです。宝塚ファンとしての歴史がごく短いmiyakogu。「あかねさす紫の花」は全くの初見。スカステでも見たことがありませんでした。ですので、自分がまっさらで拝見した印象で以下は書いております。

 

大熱演の花組さん、中でも明日海りおさんの大海人皇子は、心優しく暖かな人柄の中に揺れている複雑でいて多様・多彩な感情表現が見事だったと思います。

額田女王への少年から青年期の爽やかな愛、兄と家族への暖かな思い

兄皇子を助けて国をまとめるのだという青年らしい夢と野心

額田女王が兄に取り上げられそうになってからの兄への抵抗、従順、諦念

ずっと秘めていた思いの断ち切れなさ、やるせなさ

断ち切れない思いは、やがて狂気のような嫉妬と怒りへと転換していく。その様を見事に見せてくださったと思います。みりおさん、大熱演でしたね!

A日程は本日までとのこと。仙名彩世さんが演じられた額田女王も同様に多彩で複雑な感情を演じ分けておられ、また柚香光さんの天比古も幻のような恋に取りつかれた若き仏師の絶望を切なく演じておられました。

私は田辺聖子さんが短編(エッセイと言うべきかな?)で描かれた額田女王でイメージができあがっており、実はもっとおおらかでさらに強い額田女王をイメージしていました。そこは期待と異なりましたが、twitterでの感想を拝見すると、これまでの額田女王はどちらかというと強引に抗えぬ運命に引きずりこまれるようだった様子。なるほど、今回の花組公演では、宝塚版としては額田女王がより強く自分の意思で選んだように見えたのですね。

役替わりA日程は本日まで。皆様、お疲れ様でした!

 

さて、A日程で私は最も驚かされたのは鳳月杏さんが演じられた中大兄皇子でした。

ライブビューイングの映像のみの感想で恐縮ながら、鳳月さんが演じた中大兄皇子は国をまとめ大和王朝を確立させようとする若き王の夢と野心、その孤独が強く感じられたのです。

鳳月さんからは華やぐ儀式や宴にあっても、その周りにすっと静かな水の膜があるような、静謐でどこか激しさを秘めた孤独が感じられました。

観ている者の目をとらえて離さない、けれど近づけない領域。

鳳月杏さんが目線を動かすとそれは水が細かく波打つようで。「ちなつさんの色気」として客席の皆さまが圧倒されたように思われたのは、タカラジェンヌとしての色気以上に権力を掌握しつつある若き王としての佇まいからくるものだと、私は受け止めました。

 

彼は、弟とともに王の座へと駆け昇った。常に共にあった弟の皇子。

しかし、兄の持つ器量が他の誰にも理解が及ぶものではなくなったとき、心優しい弟の皇子はいつしか少しずつ、そこから置いていかれていったのではないかと思うのです。それまで100あれば100、お互いに響き合うようだった心が、わずかに1、2ずれていく。

置いていかれる方に同レベルの才気がなければ気づかないわずかな差異。弟の皇子はそのズレに気づいてしまう。同等に賢いから、けれど中大兄ほど冷徹にはなれないから。

おそらく、ともに進む中で二人の皇子には、互いにはっしと投げれば受け止めてもらえる喜びがあったと思うのです。

彼らは必要欠くべからざる者だった。

けれど、中大兄皇子が王となり、一人その座に座ったとき、彼の目に見えたものは中大兄にしか見えなかった。

その孤独。進んでいった者も、置いていかれた者も孤独の中にいる。

 

では、その孤独の中で、ただ一人、自分が見えている道の光も闇も同じように見ている者がいるとしたら?自分を補完してくれる者がいるとしたら?

若き王が見出した存在、それが額田女王だったか、と拝見していて私は思いました。

額田女王もそうなのです。国が大きくなっていく過程で、中大兄皇子と響き合うものを自分だけが持っていることに気づいてしまう。

 

必要欠くべからざる者。その組み合わせがいつしか変わってしまった悲劇。

私はこの「あかねさす紫の花」は、単に二人の皇子の間で奪い合われ揺れ動いた額田女王の「恋」のみを描いたものではないだろうと、今回の花組公演から感じました。

そして、そのように感じさせたのはやはり、明日海りおさんと鳳月杏さんの二人の皇子だったからではないかと思うのです。

鳳月杏さんは「兄」であり「王」でした。圧倒的に。

そう感じさせる演技をみせてくださったちなつさん。その演技力と説得力のある佇まいに拍手をお送りしたいと思います。

B日程、今度は明日海りおさんは、弟資質を備えた柚香光さんを相手にまた異なる説得力のある兄を演じられることでしょう。

博多座公演、観劇やライビューをお楽しみください。