代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宙組・ヴァンパイアサクセション 感想続き 場面場面は楽しかったのですが、お話はさて、どうでしょう?

(こちらは感想2です。記事のアップが前後してしまいました。よろしければ、まず感想1つめである以下の記事を先にお読みください) 

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7.率直に申し上げて、どうかな?のストーリー

真風さんのビジュアル、宙組さんのコメディ力、随所にはされまれるお笑い。とても楽しい公演でした。場面場面に心に残るセリフもメッセージも感じます。「一人で見る夢よりも二人でつくる未来」、とても素敵な歌詞で印象に残りました。

 

しかし、あくまで「場面場面は」です。

一つ一つのエピソード、場面場面はとてもいい感じなのですが、全体のストーリーはどうか?と言われると、あくまで一観客の初日現在の感想に過ぎませんが、あらら??でした。根底に流れはあるように思いましたが、途中に盛り込まれる様々なプチ主張が邪魔をして、ストーリーがわかりにくくなってしまったように思いました。

私が一番好きな真風さん主演の舞台なのに、本当にごめんなさい。

 

このブログをお読みいただいている方はお分かりいただけるかと思うのですが、私は宝塚の舞台について、厳しく書くことはほぼありません。

社会人を長くしてきた私からすると、舞台の上におられるタカラジェンヌさんは一部の方を除いて、キャリア10年以下から10年少しの方々、20代から30代半ばのお嬢さん方です。きらきらと美しく、一生懸命で、私達に愛と夢と希望と感動さえいただければ、それだけでもう十分。その中で、お芝居心、プロ意識、卓越した芸、芸はなくても必死の姿が見られたら、もう絶賛するに決まってるじゃないですか?

今作品も真風さんと愛ちゃん、うららさん、まどかちゃんが美しくキュートで素敵で眼福この上なし、笑いが満載。場面場面はとても楽しめました。

 

しかし、お話は流れるようには受け止められませんでした。これは長年のご経歴がある演出家の石田先生によるものであり、この点はジェンヌさんとは違う目で見てしまって当然かと思います。幕間も終演後も、皆さまが口々に何かを語っておられたかというと、真風さんのビジュアルとフィナーレ以外について、興奮・熱気は薄いように思いました。

真風さんは本日の舞台の出来に納得されているのだろうか?とやや疑問に思いました。(これは私の勝手な印象です。あくまで私が観劇したのは初日ですし、コメディって、実はかなり難しいですよね。)

私は真風さんは、本来、もっと大きな力を持った方と思います。本日も正直、舞台が狭く見えました。梅芸のDCサイズはもう通り越しておられると思います。

  ( 5/7の二度目の観劇の感想です。真風さん、熱演!です。)

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8.雑学の盛り込みと多彩な遊び心が邪魔したのでしょうか?

正直申し上げますと、現代社会への痛烈な風刺というよりは、よくある物知りのおじ様の飲み会の席でのちょっとしたうんちく話の盛り込みのように感じました。ES細胞、創薬研究、ヴァンパイアの歴史や研究、過去の戦争、9.11。科学、系統樹、進化論、軍事に国際情勢、核爆弾、宗教と無宗教、輪廻転生。ドローンにAI、軍事ロボット、西洋医学と民間療法。ロビー外交、コネクション、天然資源。

これらが何かの執念によって調べ上げられた非常に膨大な知識を背景に、エッセンスを出したものだというふうには感じませんでした。

おそらく、石田先生はこういうジャンルのお話を読み、お聞きになることが純粋にお好きで、少年のような純粋な好奇心のある方だろうとお見受けし、それはとても素敵なことだと思います。

しかし、個々には重要なテーマではありますが、時事的なトピックスを少しずついろいろ盛り込みすぎた結果、このような言い方をして大変申し訳ないのですが、舞台が薄くなっているように思いました。

 

日々、お芝居がこなれていくと違うんだと、今後への期待はかけています。しかし、え?それで、なぜルーシーはその犬笛を持ってたの?、最後どうして華形さんはそうなるの、最後、華形さんの元妻である美風舞良さん演じるグレンダはそんなにあっさり消されますか?、軍事・ES細胞・ドラキュラの関係って何ですか?(おそらくは死なない兵士の開発)という未消化ポイントがいくつかありました。

本当にすいません。まだ初日時点での一観客の感想としてご容赦ください。

 

9.石田先生の心の芯は?

ただ、京三紗さんが演じられたおばあ様をめぐるお話や、真風さんとのやりとりはお見事でした。このあたりは、どこかで読んだような話ではなく、おそらく「死」というものに対して、石田先生が考えてこられた結果、つかみ取られた、心の芯から出てきたセリフだと思います。私はそこにこそ、今回、心を動かされました。うららちゃんが演じた派遣の死神が生き生きとしていたのも、そのためではないかと思うのです。

石田先生はパンフレットのご挨拶でやや自嘲気味に書かれていましたが、私達は今流行りの2.5次元話でなくてもいいのです。もしも宝塚歌劇団が2.5次元だらけになったら、それは果たして、どうでしょうか?

2.5次元も観たい、多少恥ずかしくてもいいとびっきり乙女な話も観たい、哀切で涙を振り絞るお話も観たい、とびっきり楽しくてハートフルなコメディも観たい、べたべたな昭和っぽいお話でも泣けてほっこりすることだってあるのです。

2.5次元であっても、結局は「お話」です。その意味で、私は最初のお話を創り上げる方々を大変に尊敬申し上げており、このような勝手を申し上げましたこと、どうぞご容赦下さい。

 

最後に。

では、今作品の観劇をお勧めできないか?というと、それは全く違います。石田先生の見事で多彩な遊び心、大変楽しめました。ありがとうございます。

「くすくす」「あはは」「わっはっは」。とても楽しいひと時でした。真風さんの見事なビジュアル、どうぞご観劇をお楽しみください。

 

「大事なおまけ!!」はこちらです。石田先生に最大級の感謝を捧げていることがあるのです。

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