代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

月組・舞音(マノン)/Golden Jazz まじめに感想1 月組さんの充実を感じさせる美しい舞台、賑やかなパレード!のショウ

皆様、秋の昼下がり、いかがお過ごしですか。宝塚観劇を終えて帰ってきました。立ち見も多数です。

こちらが、ショウでちゃちゃっちゃっと打ってよし!のミニタンバリンです(600円、キャトルレーヴのレジで販売)。美しい舞台にとても賑やかなJazzカーニバルのパレード、楽しめました。まずはざっくりとお芝居の感想を書いてみます。

改めて書きますが、「グランドカーニバル」と銘打った稲葉先生のショウがとてもとても素晴らしかったです。皆さん、いろいろお気に入りのショウがおありになると思うのですが、少なくとも私にとっては、今年、大劇場で観た中で№1でした。

ショウでは客席降りが冒頭であります。私はたまたま1階A席上手通路側に座っていたため、朝美絢さんが横にお立ちになり、ハイタッチを2回いただきました!ぐふふ。近くで見ると一層、圧倒されるような美しさ。ぼーとなるmiyakoguです。

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 トップコンビが創り出す現代的デュエダンに注目した記事、小学高学年娘、そして旦那はんのまさかの最新感想は下記です。

ストーリーそのものというより舞台美術の美しさへの感動があると、包み隠さずに書いているのは「小学高学年娘の感想」の記事です。

また意外な男性受けの良さについては「男性目線の感想」をよろしければご覧下さい。

mothercoenote.hatenablog.com

 

1.「舞音~マノン~」を創り上げた人々

アベ・プレヴォー「マノン・レスコー」を原作とするこのお芝居。原作を読んでみたmiyakogu、うわっ、これどうすんの?となっておりましたのは事実。

原作は1731年に刊行されており、おそらく当時の常識からはかけ離れた衝撃のヒロイン像だったのだと思われます。男性を破滅させるファム・ファタール、しかし本人は悪気はなく享楽的に生き、同時に無垢。会う男性誰もを虜にしてしまう美貌。騎士デュ・グリーの告白と言う形で物語は進むため、原作ではマノンの心情はさっぱりわかりません。←多分、そういう謎の存在として描かれているんだと思います。

この小説をベースに舞台をフランス統治下のベトナムに置き換え、主人公シャルルを取り巻く人間関係の構図は原作から写し取り、植田景子先生が描き出した新たな物語だと理解いたしました。

これはぜひご観劇いただきたい、驚くべき非常に美しい舞台です。水の精霊の軽やかな舞うような白い薄布の衣装がとても美しく大変印象的です。竹と白い薄布を使った舞台美術が場面ごとの映像をくっきりと切り取るかのようで、シンプルでありながらも美しい造形です。そしてアジアン・テイストが感じられる音楽、モダンバレエのイメージが強い振付。

プログラムには「Program Note」として、作曲、装置デザイン、振付、衣装デザインを担当された4人の女性アーティストたちのコメントが入れられています。音楽監督も吉田優子先生と女性です。

これは、宝塚初の女性演出家である植田景子先生の夢だったのではないでしょうか?もちろん舞台は多くのスタッフから創り上げられるものですが、このような要メンバーが女性で固められた作品、おそらく快挙と言っていいと思います。

植田景子先生の著書『Can you Dream? -夢を生きる-』(2010年、ソフトバンククリエイティブ)を以前に拝読しておりますが、演劇界というのは結構な男性社会のようで、彼女がその固い門を何度もノックし、そして開ける様子が描かれています。

どの分野でも「女性初」であった方は一心にその道を進んでおられることが多く、その少し肩に力が入っているような気合も含めて微笑ましく、尊敬申し上げたいと思います。

 

2.「舞音」感想

物語はフランス貴族の青年・シャルルがサイゴンの港に降り立ったところから始まります。観客も一緒にサイゴンへと誘われるかのようです。

シャルルが味わう開放感と、やがてクラブでの愛希れいかさん演じるマノンとの衝撃的な出会い。物語は最初のクライマックスを見せます。マノンに誘われ、夜行列車で旅に出てしまうシャルル。いきなり、避暑地で愛し合う二人です。(原作もいきなり逃避行です)

ここの場面での、シャルルの影を演じている美弥るりかさんとマノンの影を演じている叶羽時さんとの振付・・。ええっと・・。

いいんですかね!!!あれで!!(=ありがとうございます)。いえ、美しいんですがあわてるmiyakogu。ちゃぴちゃんの生腹というのは聞いていたのですが、あの場面は聞いてないです。「こぉーー」って変な声が出そうになるのを必死で抑えましたよ、おばちゃんは。

しかし、愛は束の間。マノンはパトロンとともにマカオに旅立ってしまうのです。マノンを忘れるために総督の娘と婚約しようとするシャルル。

そして、クラブで再会してしまう二人・・。原作を知っているため、あーー、これあかんわ、破滅に行くでと見守るmiyakogu。案の定、破滅へと続く道を理性よりも感情で選び取り突き進んでいくシャルル。ホイアン(ランタンで有名なまちですね)へマノンを連れて駐屯してしまいます。ホイアンの街のお祭りの場面、ランタンもとても美しい演出でした。

そして、フランスからの独立運動へと話はつながっていき・・

来たわ!植民地の独立運動、警察、スパイ、軍隊。宝塚ファンには慣れっこの展開ですね、うん。しかし、このあたりの物語も「ええっーー?!」感がなく、破綻なくうまくまとめてこられて、さすがのストーリー・テラーぶりです。(原作では政治的な活動とは全く関係なく、アメリカのフランス植民地に二人で流されるような形になります)

 

お芝居で印象に残った方々は以下の皆様。

龍真咲さんの品のあるナイーブな貴族青年ぶりと、ラストの「マノーーーン!」の叫び 

←ここで涙するmiyakoguです。真咲さんはナイーブなお役が似合う方なのですね。最初は何を言うてんねん状態なのですが、終盤、シャルルの必死さに凪七瑠海さん演じる誠実な友・クリストフも、観客席のおばちゃんも心を動かされたで!悲恋に突き進むシャルルを熱演されています。

 

愛希れいかさんの生い立ちから来る不安をどこかに抱えた奔放な愛 

シャルルに愛を問う場面でのちゃぴちゃんはとてもよかったです。ただ、原作をモチーフにした新しい物語であれば、もう少しだけ彼女の物語にもフィーチャーしてもらった方がより立体的な物語になったかなぁと勝手な希望です。ちゃぴちゃんはけなげな印象が強く、無垢なイメージはありますが奔放さを出すのは少し難しいところでしょうか。ショウは素晴らしく、「柚希さんの後継者って・・ちゃぴちゃん?」と思わせる男前な迫力のあるダンスです。素晴らしかった!

 

珠城りょうさん演じるマノン兄・クオンの暗いまなざしと自分にとって信じられる唯一のもの=金への渇望 

非常に骨太で、左側の額にかかる黒髪が素晴らしくかっこいい、影のあるニヒルな大人の男でした。素晴らしかったです。2番手羽のたまきちさん、ブレイクではないでしょうか?ショウのフィナーレでのネクタイ・スーツ姿。誰よりもお似合い、青年重役のよう。一家に一台、一家に一人たまきちさんがおられたらと思わせる完璧さ。男役として素晴らしい存在感です。

 

・物語の鍵を握る店「紅虎家」の支配人・ソンを演じる宇月颯さんの存在感

静かな信念を感じさせる素晴らしい演技でした。もっとご活躍してもいい方だと思っていたので、よかった、よかった。

 

・独立派の一人・カオを演じた朝美絢さんのどこにいても目を引く華

←バウホールW主演を経て、きらめきを身ににまとうかのような朝美さん。見た目の派手な美しさから、きざな方かと思っていましたが、抑えたお芝居がとても良かったです。意外な驚きでした。思い込みでごめんね。お芝居の声が好きです。

他にも輝月ゆうまさん、憧花ゆりのさんと書きたい方は一杯ですが、まずはこのあたりで。警察が狙う大物スパイ「紅の蛇」、意外な人物でした。

それにしても、月組さん、充実していますね!お話自体は原作が現代人からみるとはぁ?という展開ですので好みは分かれる可能性はありますが、私は好きです。とにかく美しい舞台と充実の月組さんの熱演。ぜひご観劇下さい。

 

3.さて、ここからはmiyakoguの勝手な憶測

さて、ここからは私の勝手な憶測です。ほんまに勝手な憶測やから、ごめんやで。

ここ数年、ベトナムに毎年行っていたmiyakogu。現地の日系企業や日本人社会の皆様、ご関係者とお話する機会がいろいろありました。

その中で、宝塚歌劇団がベトナムに来るかもという噂を聞いたことがあります(念のため、私の本来の仕事とは全く関係がありません)。実現するかどうか、またそれがどのタイミングかは別として、この「舞音」、ベトナム公演を前提としているとすると、お話後半の唐突な展開も納得がいくように思います。

フランス統治からの独立運動、その狭間でのフランス側と独立運動側の攻防と憎しみに巻き込まれるシャルルとマノン。恋に生きるために(お金がかかる人なのです、マノンは)密輸や武器強奪に結果的に加担してしまい、フランス海軍を辞する青年貴族と現地女性との美しい悲恋。迫力あるコーラスで描き出される独立運動への人民の熱。振り返ってみると、不正や権力闘争はフランス軍側にしかなく、ベトナム人民側の独立運動の正義が感じられるストーリーになっています。

途中から、「これはベトナム側のチェックに耐えられるお話か?」との観点でついつい観てしまったmiyakogu。うん、一部の男女間の表現は除いて、少なくとも日本人の考える範囲では大丈夫そう!(日本の男性誌は、ベトナムでは入国の際、写真がわいせつと判断されてよく没収されます)

さぁて、どうでしょうか?ショウの冒頭のイルミネーションもベトナム人の好きな赤と金。これは具体的にお話があってもおかしくなさそうな舞台美術かな??と勝手に憶測を始めるmiyakoguです。アジアの他の国かもしれませんが・・。

以上、私の非常に勝手な憶測です。勝手にごめんやで!!