代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宙組トップスター・真風涼帆さんの退団発表に捧ぐ 「カプリチョーザ!!」のアリベデルチ・ローマ

本日、宝塚歌劇団宙組トップスター 真風涼帆さんの退団が発表されました。

いつか来る日とわかってはいました。十分、いろいろな真風さんを見せていただきました。

けれど、文字になってしまったものを見る衝撃の大きさ。初めて、今日わかりました。ご贔屓を2人見送ってきた娘に教えを乞うか・・。今はそんな気分です(泣)。

以下は、予兆を感じる中、ハイロー千秋楽の夜に書いた、いわば「予定原稿」です。発表があったため、アップいたします・・・。

潤花さんがご一緒されること、胸暖かく受け止めております。(かっこいい真風さんを見たら)火を吐く、(ショーの魅力を伝えるための)もうすごいことになっております!等の明るい名言、今回の公演で見せてくれた静かな明るさをたたえた繊細な演技に歌。艶やかな大輪の花のような潤花さん、本当に宙組に来てくださってありがとう・・・。

 

1.「カプリチョーザ」のローマ

今公演のショー『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』-心のままに-を初日観た真風さんファンは、予兆を受け止めていたと思います。

第6章官能の町 ローマ。

キキちゃんとその場を去る潤花さんの背中を押し、一人になった真風さんカプリチョーザ。(結局、潤花ちゃんは旅を終えようとするカプリチョーザの元に戻ってくれたのですね・・涙)

そこに同期の副組長・松風輝さんがハットとコートを持って現れ、真風さんに微笑みかけます。客席からは真風さんの表情は見えません。けれど・・。

初日、松風さんが、同期のトップスターを慈しむ、少し照れたような、始まるねというような笑顔を真風さんに向けられた瞬間、あ、これはもう・・と察しました。

「アリベデルチ・ローマ」。1955年に作曲され、後に映画で使われたことで大ヒットしたカンツォーネと知りました。二度と会えないというより、「また会う日まで」というニュアンスのようです。

副組長の同期が真風さんにコートを着せ、組長がこう歌われます。

アリベデルチ・ローマ 旅の終わり

あなたを振り向かせ 時計の針を止めて 永遠に旅を続けたい

さらに、まっぷーさんと小春乃さよちゃんが歌い継ぎます。

あなたとの思い出は 楽しく美しく

心に刻まれ続けている

出典:宝塚歌劇団『Capricciosa(カプリチョーザ)!!』 

メモを元にしているので細部が間違っていたらすみません。

もちろん、後ほど出て来られる今公演での退団者の皆様を送る場面でもありますが、明らかに真風さんに向かって歌われた歌です。

真風さんも、「いろんなことがあったよね、わがままばかりでごめんね」と歌われ、あたかも宝塚人生を振り返るかのような歌詞になります。

その場面のラスト。真風さんは一人だけ大階段を上り、ハットを取って振り向き、ぱっと腕を客席に伸ばします。再び、帽子をかぶり背中を見せて一人で階段を上がり去って行く真風さん。千秋楽の配信のこの場面、真風さんは清々しい輝きに満ち、いつも以上に時間を取っておられました。

階段を上がる背中を隠すように幕が下がり、対照的に舞台上に残る”これからの若手メンバー”。そう、過去に何度も真風さんが担ってきたシーンですね。うんうん・・。

 

がしっ!(オペグラを握るmiyakogu。机がないので叩けない)

なーに、サヨナラショーの盛大なリハやってんですかぁーーーっ?!(泣)

(心の声 エコー)(エコー)(エコー)(エコー)

オペグラを握りしめる手もぷるぷると・・(泣)。注:初日

 

私のTLにおられる真風さんファンの暗黙の統率が見事だったのは、誰もtwitter等で、この場面に触れなかったことです。同じローマでも、ご退団者については触れるけれど、ローマの場面の歌や振りの意味については、一切触れない暗黙の連帯。

次が007のジェームズ・ボンドという、これまたかっこいい男代表のようなお役の小池先生の一本ものですから、ショーは”今この時”しかできません。

東京であれば発表も済み、あたりをはばかることなく盛大に泣ける。

私が今回、東京遠征、しかも普段は観劇しない平日遠征を決めた最大の理由がこれです。大劇場ではまだ泣くわけにはいかない。そう決めていました。

 

2.退団の予兆のような何か

6月の末、宝塚お友達からチケットを譲っていただき、私は朝夏まなとさんと加藤和樹さんのコンサート「THE Roots 2022」を見に住友生命いずみホールを訪れました。クラシック音楽用に作られた小規模ながら高質なホールです。

その時、すらりとした背の高い長め前髪のジェンヌさんが3列目くらい斜め前に座られました。きゃしゃな肩の、たおやかな女性的な雰囲気。

まぁ様のコンサートに来られているなら、おそらく花組か宙組の下級生さんです。真風さんによく似ておられるなぁ、こんな方おられったけ?花組さんかなぁ?帰ったら「宝塚おとめ」を見てチェックしようと思っていました。

しかし、その方は他の目撃談から、どうも真風さんご本人。後に、最新ビジュアルを見たときに、長い前髪で確信しました。

なぜ、気づかなかったのだろう??

私は真風さんデータベースのようなものが脳のどこかにあり、真風さんの画像や取材インタビューの内容がタカタカタカと取り出せるのです(オタク特有の特殊技能)。

真風さんを見逃すはずがない。おかしい、なぜ、このような失態を・・?miyakogu一生の不覚、真風さん後頭部をがん見できたチャンスだったのに?(違)

おそらく、今までと違う雰囲気をまとった真風さんだったからだと思います。

コブラちゃんを演じるための長め前髪はもちろんですが、お稽古場から直接駆け付けたようなラフなシャツに加えて、お見掛けした真風さんはたおやかでした。

そう、何か重い荷物をいったん降ろしたかのような。

もしかすると、荷物を降ろすことにされたのかもしれない・・・(絶句)。6月末のことでした。

 

3.宙組20周年の堂々たるトップスター

真風さんの退団があるとしたら、おそらく9作目かなと一定予測はしていました。

真風さんが入団後、研9まで過ごした星組の大トップ・柚希礼音さんは大劇場11作。宝塚歌劇団100周年をリードされた特別なトップです。

真風さんは、100周年後半を次の110周年につなぎ、創立20周年を迎える宙組の”らしさ”をより明確にするためにトップとなられた、燦然と輝く特別なトップスターのお一人だと思います。

175センチの長身、江戸の浮世絵の歌舞伎役者のような面長、涼やかな目元。長くまっすぐな美しい脚、縦長の美しい骨格。踊っても元に戻る美しい髪の流れ。センスのいい鬘、優しい声、美しく品のある男役としての所作。

私は大劇場の星組「ロミオとジュリエット」でシルバーグレイの長髪で「死」の役を踊る真風さんを初めて見たとき、こんなに美しい生き物を見たことがないと呆然としました。

前トップの朝夏まなとさん=まぁ様が花組からの伝統で、娘役さんに可愛いねを連発し(ちゃらく)宙娘ちゃんの素敵さを増していかれた後、柚希礼音さんの元で男役像を学んだ真風さんが宙組に伝えたであろう熱さ。真風さんが秘めた情熱は静かに見えて、瞬間、爆発する、そんな情熱。

今、宙組さんは、もともとあったコーラスと長身スタイルの強みの上に、一つの“らしさ”が完成されたように思います。すこーんと青空のように明るくて楽しそうでスタイリッシュ。そこに、”華”と”熱”が加わった今の宙組はとても魅力的です。

宙組の太陽・まぁ様に続き、経験値の高い男役1,2が一定期間、かちっと安定しておられることで若手が育つ今回、「HiGH&LOW」を観て、20周年を越えていく宙組には、どこかでその安定的なプロセスが必要だったのだろうと私は思います。

 

4.終わりを見据えた静かな覚悟

柚希礼音さんの元で新人公演、3番手時代を過ごされたために、経験値が非常に高いことは、真風さんのゆったりとした大きさを作った要因の一つだったと思います。バウ、DCはもとより、ショーの新人公演主演の経験(大羽根を背負って)、武道館でのコンサート、男役123によるディナーショー。その経験があってこその東京ガーデンシアター「FLY WITH ME」。

随分前に退団発表後の柚希礼音さんを取り上げた雑誌「anan」に星組3番手として登場された時、近くで柚希さんの退団プロセスをご覧になっていたためか、インタビューでいつか男役を終える日が来ることを見据えて、という趣旨の発言をされていたことを覚えています。

この人はもう、男役をいつか終える日を見据えている・・。衝撃でした。

だからこそ、この限られた「今を生きる」を大事にされてきたのでしょうか。その静かな覚悟が大きな包容力となり、熊本から来た少女を今の真風さんへと変えていったのかもしれません。

 

5.真風さんと共にある10年

宙組『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』の東京千秋楽は来年6月を予定されています。

私が星組ロミジュリを観劇したのは奇しくも、その10年前の6月。すぐにお手紙を書いて7回観劇し、7月のお誕生日イベントに入待ちで参加したことがあります。

新入りさんです」と紹介され、間近で真風さんと向かい合いました。どんな席よりも近かったと思います。(残念ながら私のライフスタイルはFC活動には馴染まなかったので、継続はできませんでした)

当時、私は小さな会社とは言え、親族外で後継者となることを打診されていました。

星組3番手の真風さんにいつかトップスターの大羽根を背負ってほしいと夢をかける。一方で、自分はそんな重そうな役目は嫌だと辞退する。それは卑怯ではないだろうか?その思いに動かされて役割を引き受け、来年6月には私自身も10年目を迎えます。

その10年の間にはまさかの療養もありました。お正月の病室で見たNHK生中継の「アクアヴィーテ」。今となってはもう懐かしい思い出ですらあります。でも、あの劇場に行くんだという強い願いは、何よりの薬であり、光でした。

美しく完成された男役、宝塚歌劇団宙組トップスター 真風涼帆さん。

私の光になってくださって、ありがとう。

故郷・熊本の震災後、巴里祭で歌われた「希望という名の光」、FWMで歌われた「Love,Dream & Happiness」。ずっと覚えていたい優しい声の響き。

来年6月、退団される真風さんをまっすぐに見送ることができますように。

 

まずは東京宝塚劇場でのハイロー、無事の上演をお祈りします。

ぶち上がるぜぃ!!!最後までHigher、もっと高みへ、へーい!!!

叫びたいねぇ(泣)。