代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

梅芸・宙組WSS 感想1 真風さんとまどかちゃんの化学反応、響き合う音楽と宙組ダンス

皆さま、こんばんは。本日は調整していた東京出張が無くなり、替わりに梅芸メインホールに出張。宙組新キャストによるWSS(ウエストサイドストーリー)を観劇してきましたので、感想をお届けします!

 

1.真風さんとまどかちゃんの化学反応

梅芸DC「ヴァンパイア・サクセション」で初めて真風さんと星風まどかさんのコンビを観たとき、あーー・・・と思ったものです。あまり良くない意味で、です。(ごめんなさい。でもあれは人物設定の問題だったとは思います・・)

しかし、「天は赤い河のほとり」のライブビューイングを観た時、驚きました。真風さんの優しい目、まどかちゃんの演技の充実ぶり。ああ、大劇場と東京宝塚劇場のほぼ3か月を経て、おそらくは東京のどこかでお二人は飛躍されたのだと。

そのまかまどの化学反応を今公演で確信しました。お二人の芝居が飛躍的に良くなっておられると思います。

国際フォーラムで観たトップコンビお披露目公演は、今から振り返って正直に申し上げますと、「和希そらちゃんアニータのWSS」でした。

当時、私はトップコンビと作品に敬意を払いつつ、そらさんについて大変熱く語る記事を書いています。ただ、和希そらさんの圧巻の演技と歌の一方で、まかまどの熱演と歯車が回り始めている手ごたえはありました。

※こちらは当時の記事です。

mothercoenote.hatenablog.com

 

そこが今回の公演では、「まかまどのWSS」として見事に化学反応を起こしていると思います。二人の声の相性の良さは当時から感じたのですが、今はおそらくお互いの演技が響き合っている実感をお持ちなのではないでしょうか?

国際フォーラムでの初見時、私は2幕で真風さんが「チノ、どこにいるんだ、俺を撃ってくれ」という演技から泣きました。

本日は、マリーアは亡くなったと真風さん演じるトニーがドクに告げられ、カバンを落としたシーンから泣けました。

最初はぼんやりとしか事実を受け止められず、衝撃を受け、まちに駆け出して撃ってくれという真風さんの演技。そこから星風まどかさんがトニーの死に衝撃を受けて叫ぶような演技を一人で続けるシーンまで。圧巻でした。

星風まどかさんはとても勘のいい方なのだろうと思います。

 

このミュージカルはずっとバーンスタイン氏による様々な調の音楽が鳴り響き、ダンスとともに物語を語っています。

しかし、真風さんのシーンからまどかちゃんのラストまで。ほぼほぼ音楽はないのですね。二人の間で時が止ってしまったかのように。

時が止ってしまったかのような空間。その時空を埋める迫真のお二人の演技。おそらくお一人ずつで演じる以上に、化学反応のように想いが溶け合い一つになる様があたかも「見える」そういう演技だったと思います。

それは、「星逢一夜」でちぎみゆの間に青く光る天の川のような想いが見えたようだった演技と共通していると思います。ここまでのお二人の演技になるとは予測以上でした。

 

2.響き合う音楽とダンス

各国からの移民の第一、第二世代が集まっていたであろう当時の米国社会において、「〇〇系」というのは社会階層の中の位置を示すものだったと思います。私もかつて少しだけ働いていた英国で、民族に関するジョークめいたきわどい発言をいくつか聞きました。本で読んで知っていたとしても、実際に日本人が聞くとどきっとするものでした。

ただ、その中でも米国におけるプレルト・リコへの蔑視は相当厳しいものがあったようだなと、小説や映画を見る中で気づきました。

そういう社会の階層の中でのさらなる争い、更生を必要とする少年たちの行き場のない怒り。物語としてはわかります。音楽も美しい。けれど、私自身の体験に響く要素はあまりない物語です。

ただ、大人になることに伴う痛み、知らなくてよかったこと、経験したくなかったことを知ってしまう痛み。そこは自分自身に響くものがあったかもしれません。

そういう中で、このミュージカルをまた観たい!と思わせる最も強い要素は、響き合う音楽とダンスの見事さ、中でもダンスの素晴らしい振り付けにあると本日、気づきました。

緊張を示す音楽、とても美しいメロディ、クールな音楽。その音楽の多様性は舞台となっている当時の米国社会の複雑な構成を示すようです。また、少年少女から大人へとなっていく登場人物たちが揺らぎながら成長し同時に傷ついていく様を示しているようです。

オペラが、人の声を楽器のように一緒に演奏していくものであるとしたら、このミュージカルは音楽とダンスの交響楽のように思えました。ダンスがすごい!

劇中、ダンスはずっとずっと続きます。そして、宙組さんはそのダンスをずっとずっと見事に踊っておられます。

体育館でのパーティシーンのにぎやかな迫力、クールに踊るジェッツ団、Somewhereへの憧れを歌う場面、このダンスシーンはぜひご覧ください。素晴らしい振り付けと、そこを見事に見せてくる宙組のダンスです。

美しい回転を見せる愛月ひかるさん、切れのあるダンスの桜木みなとさん、とびっきりのアメリカン・ガールを演じる綾瀬あきなさん、しなやかに美しい蒼羽りくさん、迫力のある留依蒔世さん、高いジャンプの優希しおんさん、力強い風馬翔さん、綺麗に踊る秋音光さんが印象に残りました。

国際フォーラムで最初、ジーンズにシャツで登場したジェンヌさんを観たときは何となく違和感がありました。でも今日は違和感が払拭されていて、宙組の皆さんは少年であり青年になっていたと思います。

宝塚とこの舞台をつなぐ大きな役割を担われたのは、実は澄輝さやとさんではないかと本日思いました。下町の社会で生きる少年の中にあって、リーダー格のリフはどこか品があり美しく、しかし怒りに満ちた目をしておられます。

(印象に残った新キャストについては、その2に続きます)