皆さま、お元気でしたか?本日の仕事を先ほど終えましたので、日曜日に観劇した花組全国ツアーのお芝居「メランコリック・ジゴロ」について感想を書いておきたいと思います。
私は新米宝塚ファンですので、前回の2015年の宙組全国ツアーとのみ比較しながら拝見しました。以下はあくまで、私が柚香光さんのお芝居をそのように受け止めたという内容であり、演出側の意図を分析しようとするものではありません。
こちらは阪急インターナショナルの前のクリスマスツリー。毎年綺麗ですね✨
1.2015年宙組・まぁまかの爆笑スタイリッシュ・コメディ
今作品は、パンフレットの小川理事長の文章にあるとおり「名作コメディ」。
前回、宙組さんの「全国脚長見せびらかしツアー」で観劇した時、爆笑し少し泣き、朝夏まなとさんの「お前が好きだ!」にどっひゃーーーん?!(≧∇≦)と赤面した遠い日の思ひ出・・・。
本当に楽しくって少しほろっと来てハッピーになった演目でした。コメディセンスのある真風さんの間合いが素晴らしく、みりおんちゃんの天然っぷりと微妙なテンポのずれがなんともおかしく傑作だなと思ったのを覚えています。
1920年代のヨーロッパを舞台にした作品。第一次大戦後、戦争の傷は大人世代には色濃く感じられるものの、人々が未来に向かって立ち上がっていった時代だと思われます。そう、まぁまかのメラコリは、笑いとペーソスで言えば、笑い>ペーソスの舞台でした。
※その時の感想はこちらです。よろしければどうぞ。
2.れいまいのメラコリ、ペーソス>笑い
さすがれいまい、同期なだけありました。
1つか2つ年齢差があるかな?というまぁ様ダニエルと真風さんスタンの関係性以上に、テンポ良く丁々発止で進む前半。気持ちがいいリズム感と遠慮のない青年どおしの関係性がありました。
ただ、途中からあれ?おかしいな?これ、ハッピーコメディのはずだったよね?と思い始めたのですね。(ご安心を。あくまでいい意味で、です)
柚香光さんのダニエルはまぁ様とは違う。何だろう?と思い始めてまもなく、私が好きだった場面の一つにさしかかりました。
フェリシアと一緒にホテルの一室に閉じ込められたダニエルが、ぐずで学校の給食の時間が嫌いだったというフェリシアに、同じような子だった自分の子ども時代の同級生が先生になっていること、その子の教室ではゆっくりご飯を食べるんだというセリフのところです。
「嫌な目にあったやつは、他人の気持ちがよくわかる」と言う場面。
まぁ様ダニエルは、だから大丈夫だよとフェリシアを勇気付けるように優しく、かみしめるよう。ダニエルの優しさがフェリシアに染み、観ている側のささくれた心にも優しく染みこんでいくような名場面です。※主に仕事に疲れたアラフィフのおばちゃんとかにな!うんうん。
ところが・・。
そう、光ちゃんのダニエルはフェリシアにも伝えようとはしていたのですが、むしろ自分自身にも言い聞かせるようで・・。
「ごめんって、癖か?」の言い方も、まぁ様のフェリシアに一歩近づき解きほぐしていくような言い方ではなく、少し遠慮がちな感じの距離感。
この瞬間、れいまいのお二人は、この一見コメディに見えるお芝居に対してまぁまかとは異なるアプローチをしているのではないかな?と、miyakogu、はっと座り直したのです。
光ちゃんのダニエルは心のどこかに大きな傷を抱えていて、誰かの光による救いを求める気持ちを心に秘めた青年と感じられたのですね。
まぁまかのお二人が28、27歳くらいとしたら、れいまいのお二人は20-22歳くらいの同級生、まだ少年ぽさを残した青年初期に見えました。
3.柚香光さんのやるせなさの魅力
皆さまは高校時代に、制服を少し着崩して男の子どおしつるんでいてお肉とお米はよく食べて、授業中はちょっとかったるそうにしていたり寝てたりしているんだけれど、笑うとかわいくて、よく見ると相当な美少年で、少し陰があって雨の日に仔犬を拾って帰る。そういう同級生がいませんでしたか?
そんなん、恋するしかないやんか?!放っておけるの?そんな美少年がいたら?!(miyakogu、心の叫び)
ええと、漫画だったかな・・? ※注 半分、miyakoguの妄想入ってます(^^)。
れいちゃん、あの子はそういうやるせない面があるんだってば!ばんばんばんばん!少し複雑な事情があって、それが陰になっているような少年特有の!
おばちゃんな、わかってんよ。
最後のあの名場面、「おまえが好きだ!」の赤面シーン。
朝夏まなとさんのあのセリフは、全客席をなぎ倒していって「まぁ様に言ってほしい!俺も嫁にいく!」と妄想と願望をたぎらせたよね? ←落ち着いて、miyakoguさん。まぁ様はもう立派なミュージカル女優さんなんで・・。
れいちゃんの「おまえが好きだ」は、フェリシアという光を見つけたダニエルが必死でその光を引きとめようとしている「必死な健気さ」が感じられ、不思議な説得力がありました。
※「はいからさんが通る」でも感じたれいちゃんの魅力についてはこちらの記事。よろしければどうぞ。
4.舞空瞳さんフェリシアの清らかな光による救い
まぁ様のダニエルは、寄る辺のないみりおんちゃんフェリシアを救うかのようでした。世間慣れしていて、このダニエルなら何とか切り抜けてフェリシアを優しく守ってくれる、俺もついでに頼む!と客席も言いたくなるような。←落ち着いて、miyakoguさんってば(^^)。
でも、れいちゃんダニエルはどこか放っておけない危うさがあり、舞空瞳さんフェリシアの優しく清らかな光によって救われた印象だったのです。良かったね、ダニエル、幸せになるんやでーーー!(涙)的な。舞空さんはダンスがうまく、お歌も上手く、可憐で可愛くて、よくぞ宝塚に入ってくださった!!
5.戦争の傷
メランコリック・ジゴロは、戦争から帰ってきて心に傷を負った人物が登場する正塚先生のお芝居あるあるで、それはフェリシアの父であるノルベール・サーダとフォンダリの世代に特有でした。前回の宙組さんでは。
仮に、まぁ様ダニエルが戦争で父を失ったものの、貧しい中でも快活で美しい母に育てられ故郷を離れた青年であるとしたら、れいちゃんダニエルは相当小さい頃におそらくは戦争によって両親を失った寄る辺のない子どもに見えたのです。
「ダニエルのテーマ」を歌うとき、まぁ様ダニエルには遠いまちが見えるようでした。一方、れいちゃんのダニエルは「そのまち」に永遠の別れを告げてきたようであり、もう帰る場所がないように見えたのですね。
その切なさ、やるせなさ、行き場のない思い、憂い・・。
大人の哀愁ではなく、少年の持つ不安定な憂い。美少年がそのよう憂いを帯びている。そして、フェリシアとの出会いによって帰る場所を見つけたのだとしたら・・。
そんなもん、魅力的に決まってますやんかーーー?!(with エコー)
なるほどなぁ、と納得いたしました。
そのように考えられた上でのアプローチだったのか、元かられいちゃんが持っておられる資質が自ずとそうさせたのか、それはわかりません。でも、そのように大阪のアラフィフおばちゃんの心に届いた演技と存在感でした。
考えてみれば、このサスペンス・コメディのもう一組の主役はノルベール・サーダとフォンダリです。この二人も若い頃はおそらく他のメンバーも含めて絶妙のチームワークを組んでいたのかもしれない、けれど別れてしまった。
戦後のインフレの影響により盗んだお金の価値が暴落していると気づいた時のフォンダリの絶望、しかし案外さっぱりと立ち上がった姿には、戦争の前後の人々の変化を見るようでした。羽立光希さんが相当ながんばりで演じておられましたね。素晴らしかったのですが、ペーソスはちょっとやっぱり難しかったかな。でも大健闘でしたね(^^)。
6.水美舞斗さんのスタン
水美舞斗さんのスタンには驚かされました。明晰な口跡と力強い演技に。
マイティーのスタンは、どこか寂しげなれいちゃんのダニエルを口うるさく構いながら「守っている」ように見えました。憎まれ口をききながらも同級生を気遣うように。
それはお芝居でもあり、この全ツでのマイティーの役割でもあったのだろうと感じました。
ショー「EXCITER!! 2018」で1階席一番後ろまで、一人で走っていかれた水美さんの風を感じたとき。ああ、この人はこうやって全国を回ってこられたのだろう、ツアーを主演で回る同期を必死で守り支えてきたんだろう、そう感じさせる気概が水美舞斗さんからは伝わってきました。
二人で必死だっただろう、でも楽しくもあっただろうなと。
マイティーのスタンにはダニエルとは違い、戦争の傷は感じませんでした。戦争の傷は何らかの事情でダニエルにはあり、スタンにはなかった、そういう二人の関係性に見えたのです。
7.戦争から帰ってきた祖父を思い出した光ちゃんの演技
以前にも書いたことがありますが私の叔父はサラリーマン生活を全うしつつ、詩人として数冊の詩集を出してきた人です。その叔父の詩集に繰り返し登場するのが彼の父、すなわち私の祖父。
私自身はまったく覚えていないその祖父は、戦争に行き、帰ってきた人でした。
祖父は普段は寡黙ながらお話を聞かせるのがとても上手な人だったらしく、冬の夜、子どもたちはわくわくと物語をせがんだそうです。
ただ、戦争から帰ったきた祖父は戦地でのことを何一つ語らず、一層寡黙な人となってこの世を去ったそう・・。戦争後、何も語らなかった祖父のことを、叔父は詩に書き続けてきました。
祖父の背中に向かって放たれた叔父の言葉。詩となったその言葉には冬の夕暮れのような切なさがあります。
私は、柚香光さんのダニエルから叔父の詩のことを思い出しました。そういう切なさを秘めた彼女の演技だったのだと思います。
不思議な方ですね。おにぎりとお肉が似合うのに。
いたずらっ子のような確信犯的な「にやっ」を客席に放てるはずの人なのに。
なぜ、切なさとやるせなさを纏っているのだろう、れいちゃんは??
その不思議さを感じ取ってしまった人は、ただひたすらにあの綺麗な横顔を見つめるしかないのだろうと思います。気になってしかたがない。
今後、さらなるご成長を楽しみにお待ちしながら、これからの舞台も拝見したいと思います。
ショー「EXCITER!! 2018」は、これはお若い方々中心だった花組全ツチームには、ゴージャスな大人の音楽にやや力負けだったかな??(^^)。
れいまいと下級生さんのキザリも、私の目には「まぁ、お若い方ががんばって、微笑ましいわぁ」という微笑を誘うもので、ホストのようなファンサとは思いませんでした(^^)。
大阪のおばちゃんな、それくらいではびくともせんで!ま、実のところ、客席降りから列が離れてたんよ、通路側やったけどな!(miyakogu、心の声の強がり)
三分割の花組さん、全ツチームはお若いメンバー中心にご健闘されていたと思います。
お疲れ様でしたね。次は大劇場で一段階段を上がった姿を見せてくださると期待しています!(^^)