代取マザー、時々おとめ

宝塚の観劇感想メインのブログ。たまたま代取(代表取締役)になったワーキングマザーの日々と哲学。twitterは@miyakogu5。

宝塚宙組・Never Say Goodbye感想 今、ここで共に生きる ー真風涼帆さんの全身演技力の卓越

明日、いよいよ宝塚歌劇団宙組「Never Say Goodbye ーある愛の軌跡ー」が千秋楽を迎えます。一時も気を許せない状況ですが、最後まで無事に完走できますように。今日は、そのネバセイの観劇感想をお送りします。

映像の発売はまだもう少し先の5/27。TCAさんのこちらのサイトの画像では、トップスター真風涼帆さんがこちらに向けてシャッターを切っておられます。

www.tca-pictures.net

さて、明日には千秋楽映像配信もあるのですが、明日観るとまた、うきゃーーー!!真風さんかっこいい、胸元の開襟きゃーー、毛の流れが完璧というのと、最後のフィナーレですべて飛んでしまいそうなので、あえての今日、宝塚大劇場で観劇し感じていたことを感想記事としてまとめておきたいと思います。

 

1.Never Say Goodbyeという作品の強さ

1)世界情勢とリンクする観劇体験

再演が決まった時、古くからの宝塚ファンから聞こえてきたのは「暗いスペイン内戦の話やし、パスやわ」。娘も「スペイン内戦の話かぁ、うーーん」と関心が低かったことを思い出します。(その後、娘には絶対に見た方がいいと慌ててチケットを取りました)

パンフレット冒頭の小池先生のご挨拶からは、稀代のトップコンビの退団公演であると同時に、怪我から復帰されたばかりの(復帰できる状況ではなかったと聞きますが)和央さんを迎えた緊迫感に満ちた集合日の様子が伝わります。

映像では、真風さんの初舞台作品とあって繰り返し繰り返しラインダンスを拝見。しかし、その内に花總まりさんの絶唱、和央ようかさんの匂い立つような男役さんの色気に驚き、何度も拝見した作品となりました。ただ、確かにちょっと照明の影響か全体的にやや暗め?かな、退団公演からくる切ない緊迫感の方がより印象に残っています。

その再演。おそらく当初イメージされていたのは、小池先生のご挨拶末尾にあるように、コロナ禍と戦う社会、その中でのOne Heartだっただろうと想像します。

しかし、まさかのウクライナへのロシア侵攻。人々が武器を持ち、海外からウクライナに武器が提供され、一つの国をめぐって国際社会が大きく動く。一国の命運を我々も同時代に生きて見守ることになるとは、思ってもみなかったことでした。

私は、たまたま若い頃に少しだけ英国で勤務したことがあります。当時は第二次中東戦争の渦中で、新聞の見出しの「under the war」という文字に、今、戦時下の国にいる?!と驚きました。ミサイルが命中する映像をTVニュースで見て「やった!」と喜ぶ英国人同僚たちに驚く日本人。戦場は遠くでしたが、明らかに戦争がそこにはありました。

この作品がまさか、このような世界情勢の渦中に上演されるとは、宝塚歌劇団も小池先生も全くの予想外であったと思います。スペイン内戦で戦う人々、それぞれの思惑で手を貸す外国、オリンピアードに集まりそのまま残る外国人部隊。絡み合う複雑な様相、本来はさらにもっと複雑でしょう。

私たちは、日々流れてくるニュース映像と重ね合わせるように衝撃を受け、戦う人々の心を表現する宙組のコーラスに胸打たれ、その中で動いていく人々の心を受け取り、切ない離別に泣く。世界情勢が私たちの観劇体験を大きく変えた側面が相当あったと思います。

ただ、世界情勢とあたかもリンクするこの物語が、では戦乱の物語かというとそうではない。副題にあるとおり、その中で生きた一人の男性と一人の女性の「ある愛の軌跡」こそが、この物語の本質だと私は思います。

私は、宝塚歌劇団が根底に持つ強さがここにあると思うのですね。

 

2)日々の中にある光

恋にうっとりし、悲恋に涙し、シリアスな悲劇を考察するかと思えば、明るくてわかりやすい作品も大好き。複雑な世界史だろうか日本物だろうが、書籍を読み込み予習はばっちり。ロマンにうっとり、人情にほろり。タオルハンカチでは足りずにタオルを持っていくこともあれば、ジェンヌさんのちょっとしたしぐさに可愛いと盛り上がり、アドリブを観察し、オペグラでスターを追いかけ、全体像を全く把握せずに映像で初めてこんなのあった?!とびっくりする。

我々はそういう大変愉快な観客です。(ちょろいオタクとも言う・・)

ただ、どのような舞台であれ、宝塚歌劇団の舞台には一組の男女の出会いが必ず描かれいて、人の多くが持つ自身の物語や憧れにそっと触れてくる面があると思うのです。

恋だけでなく親子の情や友情、そういったものも含めて「心の出会い」と言えばいいでしょうか。誰かと誰かが出会い、その中で始まり動き出す人生の新たな物語。その中での主人公の変化が描かれる。

人生は案外悪くないという、人生の「ささやかな善き希望」を見せてくれる信頼を、私は宝塚歌劇団の舞台に持っています。

少し前のtweetで、私は以下のように書きました。

宙組ネバセイ 圧巻でした!!
これは暗いスペイン内戦の話ではなく、いかなる状況下でも自身が見つけた生きる意 味を貫いた人々の力強い物語だ
今、この物語を見事に上演できる宝塚歌劇団、小池修一郎氏のクリエイティビティ、ワイルドホーン氏の楽曲に心からの拍手と敬意を👏

この物語から私は、どのような状況下であったとしても人は生き誰かに何かを残すことができるという希望を感じたのですね。

世界的に見れば圧倒的に豊かで平和な日本であっても、日々を生き抜く私たちは何かと戦っていたり、どうしようもない不条理を突き付けられたりします。ささやかな喜びを得たり浮かれたり泣いたり、ヒリヒリとした哀しみややるせなさを抱える日もあります。

私たちは愉快な観客ですが、その日々は存外に複雑で不条理に満ちています。私自身、少し前までまさに「闘病最前線」で戦っていた訳ですが、今でも闘病アカウントには訃報が度々届きます。

そんな日々の中で感じる「匂いとぬくもり」こそが「眩いほどの光を放つ」鮮烈な出会いであり、記憶に残り、喪ってもなお心を温める追憶となる。

眩い光は、結果としての輝かしい成功や勝利だけではなく、日々の時間の中に、誰かと出会い変わっていくプロセスの中にこそ、宝石のように煌めいている。

この物語は、そこを描いていると私は受け止めています。

 

2.真ん中に立つ真風涼帆さんの力

1)ジョルジュの変化

きゃあきゃあ、ばんばんんばん!と書きたいことは山ほどあります。

ただ、今日はそこを封印。この作品で私が感じた真風さんの表現者としての強さを書きたいと思うのです。

この作品で真風さんが演じる国際的に著名なカメラマンのジョルジュは、スペイン内戦を記録する人間です。世界に何が起こっているかを伝える素材が無ければ、真実は伝わらない。その役割は重要です。

しかしながら、その立場を容認していたはずのヴィンセントが後半、詰め寄るようにあくまで第三者。「俺はデラシネ」とジョルジュが歌う通り、ここに根を下ろした人間ではありません。

しかし、彼はヴィンセント達に出会い、銃で撃たれた少年の治療を行い、アギラールにキャサリンを連れて行かれ、彼女を取り戻し戦列に加わる中で、歴史の渦に主体的に関わっていきます。最初はおそらく意識せず、でも最後は明確に自分の意思によって。

あれほど常に持っていたカメラを置くシーンはジョルジュの決定的変化を示すものでした。

 

2)多様に変化する感情を全身で伝える真風涼帆さん

私が今作品で真風涼帆さんの演技に驚かされたシーンは1幕ラストと、2幕のキャサリンとの別れのシーン直後です。

小池先生特有の1幕ラストは、大勢の人が舞台にいて音楽が盛り上がり、ばばーーんと終わって、ほぅとため息をつく。そういうものですよね。

No No Pasaranと繰り返すリズムと旋律が舞台の緊張感をぎりぎりと上げ、「俺たちはカマラーダ」と小休止のような明るさを取り戻しここで幕?と思う中、アギラールとコマロフが登場し、2幕の仲間割れを予感させる一発触発の緊張感が一気に高まります。

静かな渦のように襲ってくる緊張感。その真ん中ですくっと立ち、静かに歌い始める真風さんジョルジュのOne Heart。

ぞくぞくっとしました。

この場面で真ん中に立ち、この歌をたった一人で歌い始めることができる説得力。これは年数を一定重ねたトップスターでなければ無理だと思います。

今作品で真風さんの歌が素晴らしいものになっていること以上に、ジョルジュとしての信念が伝わるゆるぎない立ち姿と、場面の緊迫を破って歌い始めることができる力量。真風さんが演じた星組「ロミオとジュリエット」の”死”の役で感じた、言葉を発しないままヴェローナのまちを操るかのようであった力量が、今、見事に結実したのだと思いました。

舞台俳優には、歌や目での表現はもちろんのことですが、映像以上に全身での表現力が求められると思います。真風さんの大きな強みは、容姿と衣装の着こなし、さりげない所作や目線を含めて全身でその表現を見せることができる点にあると私は思います。

それこそ、舞台役者!!だと思うのですね。ジョルジュが今、ここで生きているのを我々は今ここで共に見ている。そう感じさせる真風さんの全身での演技です。

デラシネとして、どこか周りと距離を置きつつ世界を楽しんでいる浮遊感

時折、垣間見える離れた故郷への思い。

写真家としての野心と成功後のどこか物足りなさ。

キャサリンとの出会いと自身の中の変化への戸惑い。

歴史に残る内戦のただ中にいることの高揚。

キャサリンを取り戻せた束の間の安堵を見せる隠れ家。

キャサリンに告げる別れと希望。

カメラとの決別と目に込められた戻らない覚悟。

心に強く残るキャサリンへの思いを届ける戦場でのダンス。

 

真風涼帆さんという舞台役者は、見事に全身で今、この物語をまさに生き、この作品をリアルなものとして観客に届けている。

真風さんの全身で見せる演技力が到達した境地。素晴らしいものがありました。

 

3.ぞくぞくする瞬間を見届ける喜び

コロナの影響により宝塚大劇場での休演を余儀なくされたこともあり、久しぶりに見た宙組メンバーの表現は爆発していました。おそらく、東京でさらにより熱を帯びた舞台になっていると期待しています。今の宙組の充実、パッションが伝わる舞台です。

キャサリンの愛の絶唱を堂々と聞かせ、涙を一杯に湛えてジョルジュから離れる演技を見せた潤花さん。

故郷・バルセロナへの熱い思いを表現した芹香斗亜さん。

アギラールの彼なりの正義と野心を演じ切った桜木みなとさん。

ハリウッドのトップ女優らしいつんとした誇りを見せてくれた天彩峰里さん。

カマラーダとして真風さんと肩を組んで背が揃っていることに毎回驚かされる柴藤りゅうさん、瑠風輝さん、優希しおんさん、鷹翔千空さん、風色日向さん、亜音有星さん。

これらの主要役の皆様はもちろんこと、寿組長・松風副組長さんといった方々の演技を含めて、印象に残る場面続きでした。特に印象に残った方々をご紹介いたしますね。

傑出していた留依蒔世さんのラ・パッショナリアの歌。対するバルセロナ市長の若翔りつさん。見事な歌唱対決でした。(名場面です)

演出、コーラスを含めて特筆すべき名場面だとぞくぞくした「一つの心が 二つに割れる」の分裂の場面の迫力。その場面を真ん中で堂々とリードする澄風なぎさん。(名場面です)

短い歌唱ながらはっとさせるマタドールの真名瀬みらさん。

良識ある知識人なんだろうと感じさせる美しいスーツ姿の春瀬央季さん。

さすがの存在感で物語の鍵を握るコマロフの夏美ようさん。

サグラダ・ファミリアで美しく歌う小春乃さよさん。

ヴィンセント恋人・テレサを演じる美貌の水音志保さん。

「一枚のカードを」と歌う迫力ある瀬戸花まりさんと、そのメロディーをカゲソロで歌う朝木陽彩さんの超美声。(ぜひ!)

まぁ、歌上手さんがこれでもかと出てこられる公演、どうぞ、ぞくぞくっとした瞬間と共にお楽しみください。

作家仲間が集まるバーの作家仲間の秋音光さん、秋奈るいさん、水香依千さん、希峰かなたさんやバーテンの琥南まことさんも好きです。「腕の力 少し弱いけれど」と歌って、「いや、ちゃいますやろ!」と一斉に心の中で突っ込まれる留依蒔世さんと強そうな宙娘さん達もどうぞご覧ください。

本当に素晴らしい心に残る公演になりました。宙組の皆さん、ありがとう!

宙組・デリシュー 感想 見どころ満載!美しい色彩の甘美なるパリショー、ホームズもね!

皆様、熱い夏、お元気ですか?今日は6回目にしてようやく全貌をつかんだ宙組「デリシュー」の感想をお届けしますよ!ホームズについても少しね。

いやぁ、開幕からなぜここまでかかったかというと、お耽美シーンで登場する真風ベラミ様の胸元開襟が深すぎて、あ、うわ、ちょ?うきゃーとオペグラで凝視、その後、キャンディ・ケーンの娘役ちゃんずの可愛さにうっとりして、気づくと毎回、パティシェ真風さんが「誰かを勇気づけたい」と歌っておられ、miyakogu涙・・というループをですね!都合4回ほど繰り返しまして、全ての記憶が吹っ飛んでたんですよ。お芝居もショーも。わなわな。

で、5回目から、そうだ、オペグラで全体像を観よう!(矛盾あり)という究極の技を思いつきまして、ようやく全体像を把握したわけですよ。ええ。

↑ miyakogu・・、本当にそれで全体像を把握できたと思っているのですか・・(by 心の中のメーテル)

なので、感想をようやくお届けするわ!(以下、ショーのネタバレがっつりなので、要注意でお願いしますね)

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(大劇場内フルールの2階、ラ・ロンドの公演デザートです)

 

1.生田先生 vs 野口先生 真風の素材を活かしてみせる頂上決戦?

バウ公演でお若い演出家の方々の台頭が著しい現在の宝塚歌劇団。頼もしい限りです。

そんな中にあって、「男役・真風の素材を活かせるのは俺」頂上決戦が繰り広げられている本公演パンフレット。少し前にはスヴィッツラで植田先生、フライイングサパの上田先生と、真風にコートを着せてみたいわ公演もありましたね。

両者対決のパンフレットは、挨拶が長い!そして文字が小さい!生田先生も野口先生も写真の気合が違う!

ただ、やはり野口先生のパティシェコスプレの熱さが、ショーに軍配を上げさせたかなと思います。

 

2.華やかな甘美なるパリショーを彩る色彩の美しさ

全編を通じて、本当にお衣装が綺麗で華やか。加藤真美先生と古き良きパリの相性はぴったりそう。スカートの裏地をフル活用されています。

冒頭、潤花ちゃんのあっ!という衣装替えの工夫に、カンカンの時の大階段の皆様の白いお衣装のスカート裏地の濃いピンク。ここは次はスカートを降ろすと、真っ白なドレスになるんですね。カンカンの場面は、白・濃淡の紫・濃いピンクと本当に薔薇が咲いたような美しさでした。

そして、デュエダンの潤花さんの綺麗な青いドレスのふんわりとしたスカート。中に青みがかった薄いグレー(パープルかな?)と緑のふんわりとした布地が重ねてあり、表面の青の布地の下にその緑が透けて見えて、きらめきます。ぜひご覧ください。

 お耽美シーン(第3章のフォレ・ノワール三重奏)でのある新聞での掲載お写真が少しどきっとするものだったので(その後、撤回されてましたっけ)、開幕すぐに、関西オールドファンの間にすこしお下品なショーだという噂が回りました。残念ながら。

その場面はご存知のように一部、振付が変更されています。私は変更前にどうなんだろう?と拝見したのですが、華やかでゴージャスで、パリ盛りだくさん、宙組スターの魅力を全盛りしましたんでどうぞ!!という胸熱ショーで気になるものではありませんでした。振付変更後は宝塚あるあるのスパイス場面かと思います。鞭がお嫌いな方はその場面はスルーでね。

私はずっとオペグラで真風さんの胸元を追っていたので、何もわかりませんでしたね、ええ。

 

3.見どころ一杯です!第1章から第2章へ

ぼーとしていると、真風さんの解禁胸元の残像でショーが終わりかねません。宝塚大劇場の千秋楽も間近ですが、miyakogu的見どころをお送りします。遅くてごめんやで!

・幕開け

茶色系統の可愛いチェックのお洋服を着て出てくる潤花ちゃん。これが白いドレスにぱっと切り替わります。ぜひご注目を。パティシェ姿で降りてくる真風さんル・ヴォンを中心にぱーーんと一気に明るく華やかに。スカステでおっしゃってた洋物チョンパ、輝くばかりの美しい場面です。

・大階段でどんどん降りてくる皆様

あれ?と思いますが、大階段でどんどん降りてくる皆様。ショー最後のパレードのスタイルで冒頭に華やかに、今の宙組をご覧くださいという感じです。桜木みなとさんと皆さんの被るショコラケーキのお帽子がかわいい!

・さぁ、皆様ご一緒に!のペンライト

二つずつマカロンペンライトを持って、皆様も銀橋にずらり。我々も点灯してノリノリでペンラでダンスです。後ろの方のお邪魔にならない程度にね!

「メルシー!」と真風さんが言ってくれはるので、フリフリし甲斐もありますよ~。

・花道まで広がる華やかなカンカン、大階段には初舞台生さん

真風さんが潤花ちゃんの背中を押してカンカンに送り出されます。

とびっきりの笑顔で潤花ちゃんが回る回る回る。ここでは桜木みなとさんや優希しおんさんのダンスにも目を奪われます。よく片足上げたまま回れるよね?皆様、すごいわぁ。

・王妃のお茶会(第2章)

芹香斗亜さんのマリー・アントワネットがお茶目でとっても素敵で、ドレスがこれでもかのベルサイユスタイル。宝塚のお衣装部さんはよくこれだけゴージャスな作品、おつくりになられますよね。本当にすごい。ぜひご注目ください。本当に綺麗。

女官長の寿さんもノリノリで貴婦人は全員、男役さん。りんきらさん、まっぷーさん、春瀬さん、水香さん、穂稀さんでゴージャスにも美しくも可愛くもです。

柴藤りゅうさんと留依蒔世さんのマカロン伯爵がバーベル上げたり、風色日向さん・亜音有星さん・大路せりさんの若手三人組が可愛くイチゴのダンスを踊ったり(却下されてぷぅとなるあのんちゃんが可愛い)、瑠風輝さんと鷹翔千空さん兄弟が暗いスミレの砂糖漬けの歌を歌ったり、クレープ男爵和希そらちゃんが朗々と歌ったり。宙組が誇る歌上手さんたちを大変贅沢にコミカルに無駄遣いです(笑)。

もっと良いものがないのかしら?というアントネット様に、フェルゼン真風さんが最後にアイスクリームを持って登場。真風さんのフェルゼン、私は映像のみですが、超久しぶりです。(紅さん主演のバウ公演ですね)

そして、おキキ様アントワネットがばーーーんと美脚をお出しになり、ノリノリで銀橋で盛り上がるお茶会なのでした。すっしーさんの王妃様~という制止もむなしくです(笑)。超超超楽しい!初見の方はわぁとなりますよー。

 

4.ぐいぐい来るよ、第3章から第4章

 ここが話題になったお耽美場面。確かに当初の振付が新聞の写真に使われたのをみると、ちょっとエロティックであわわとなる訳ですが、これも真風さんの漢な男役の色気がそうさせちゃったかな?

少し振付も変わったわけですが、真風さんファンの同志はもちろん開襟胸元をうぎゃーーと見守っているので、ろくに全体像を観ていないわけですよ。ばんばんばん!!(miyakoguも同じく)

この場面は留依蒔世さんの素晴らしい歌唱を聞きながら、真風さんの胸元と、レザン桜木みなとさんの太ももと、潤花ちゃんとずんちゃんの真風ベラミ様取り合いっこファイトを見とけば、まぁいいんじゃないかな!うん。

そこから黒と金基調のお衣装の皆様が銀橋を渡って歌いつなぐ場面へ(確か。記憶が一番飛んでいる場面なのでつながりを思い出せないのです)

で、ふと我に返ると(気を失っていたんかーーい?)、パイナップル(でしたよね?)をバックに、真風さんが再び登場、ねっとりとベサメムーチョを歌い上げ、宙組男役さんが超オラオラする場面です。ラストは皆さんもポンポン持って登場、盛り上がりますわぁ。

私が見た回では一度、暗転してはける直前に真風さんがねっとりウィンクを飛ばしておられましたわ。(他でも確か2回ほどウィンクはありますよね)

 

5.とびっきりキュートなキャンディケーン 第5章

ここなのよ。普段、私がようやく我に返るのは(それまで記憶を失いがち)。

遥羽ららちゃんを先頭に、天彩峰里さん、愛海ひかるさん、花宮沙羅さん、春乃さくらさん、朝木陽彩さん、愛未サラさんが、めちゃくちゃキュートに、真夏のサンタさんお付きみたいなかわいい衣装で出てこられる訳です。

もう超絶かわいいから、ぜひ見て!!

そして、キキちゃんがいつの季節のパリも好きと歌って出てこられて、タップ。星月梨旺さんが超かっこよく決めて拍手ですよーー!何でもできる星月さん、退団が惜しまれます。

くるくるキャンディみたいなマイクの前で歌う2人1組のペアも素敵です。下手一番左端の愛未サラちゃんが表情豊かで、見ていてとっても楽しいので、どうぞご注目くださいね。

 

6.ほろりの第6章

これまでの観劇では、キャンディケーンで少し正気を取り戻して、気づくとこことなっていました。 真風さんがええ歌、歌いはるんですよ。。(涙)

とざされたパリの街、これはたぶんコロナのことでしょうね。世界中、どこも同じですが、パリ=宝塚大劇場とも受け取ることができ、憧れたパティシェになり=タカラジェンヌになりとも置き換えられそうです。

そう聞いていると、「誰かを幸せにしたい 誰かを勇気付けたい」と歌う真風さんは真風さん自身、そしてタカラジェンヌさんのことだろうなと思えます。

ここで毎回、一人涙するmiyakogu・・。

手術で入院していた元旦に、一人で病室で見たNHKのアクアヴィーテ。抗がん剤投与の2時間半の間、ずっと宝塚のDVDを見ていたことを思い出します。

真風さん、あなたは確実に一人の闘病者を勇気付けてくださったんです、本当にありがどーー、わぁーー(涙)、じゅるじゅるーーとなるのでありました・・。

ここの「虹色の薔薇」、素敵な歌詞、楽曲です。

 

7.美しいマカロンタワー 第7章

しんみりしていると、桜木みなとさんと和希そらさんが明るく登場。新しい時代を築こうと歌って、初舞台生さんのマカロンタワーになります。皆さん、「マカロンの美女」なのね。美脚の方が多いように思える107期生さん。ここのお衣装の配色もとっても綺麗です。

 

8.やたらとかっこいい巴里野郎 第8章

 さぁ、そろそろ終わりかな?と思っていると(それくらい中身が濃いので)、ご褒美的に赤・白・青の巴里野郎がやってきて歌ってくれるんですよね。

青を率いる瑠風さん、赤を率いるそらちゃん、白を率いるずんちゃんとみんな歌が上手くて軽快。確かに層が厚いなぁ・・。そらちゃん、組替えも致し方ないのかなぁ・・。

私が注目している青の風色日向さんは毎回、2階席上手にウインクを飛ばしておられます。宙組を盛り上げる気概を感じる場面です。

 

9.ピンクの帽子が美しいフィナーレの幕開けからポップス、シャンソン、男役で組むダンス

宙組下級生さんを含めて男役さんかっこええわぁと、ぽーとしていると、再びキキちゃんご登場。「この帽子、どこで被るの?」という宝塚のショーにしか出てこない、とびっきり美しいピンクの帽子にパールの何連ものネックレス、ピンクのふわっとしたお衣装の娘役さんと一緒に大階段を下りてこられます。宙組を長らくリードしてくださった花音舞さん、綾瀬あきなさんのお二人の笑顔が素敵です。メラコリで綾瀬さんが演じておられたレジーナ、好きだったなぁ。

そしてラスト、「パリの散歩道」というフレンチポップス(羽生結弦さんがプログラムにお使いになった曲とのこと)を歌いながら真風さんが大階段を降りてきて、キキちゃんに向かって超絶かっこよく「ジュテーム」。

なんでやねーーーん!となりますが、超超超かっこいいからいいの!!

男役さん同士が黒燕尾で組んで踊るダンス、眼福眼福。観劇6回目ともなると、真風さん&キキちゃん以外では、上手一番端の風色&亜音ペア、下手から2番目の瑠風&秋音ペアを見る余裕までは出てきましたよ。オペグラで見る全体像です(?)。

そして、キキちゃんの歌う「トワエモア」(君と僕)に乗って、真風さんと潤花さんがゆったりと踊るデュエダン。3人が組んだフォーメーションもあります。

最初の頃、あーーー、”まかまど”ではないショックを和らげるための3人かなと拝見していましたが、今ではすっかり自然に。

正直申し上げると、2週目くらいまでは演者の皆様にも何らかの手探り感があるように拝見していました。宙組の皆さんも自信を深められたのかな?潤花さんがのびのびされていて、真風さんがおおらかに受け止めておられるのが伝わってくるからかもしれませんね。良かった!

 

10.シャーロック・ホームズで見つけた若手美形さん達

お芝居は、原作からイメージしていたホームズとアイリーンとは少し違いました。あくまで私が勝手に持っていたイメージとの違いがあっただけです。

有村先生の数々の衣装を着こなす真風さんは素敵で、ワトソンずんちゃんとの居間での退屈だーーやりとりも毎日のアドリブ見せ場となり、芹香さんモリアーティも巧みな人物造形です。巧いなぁ。

ホームズの兄マイクロフトの凛城きらさんがお上手で、一番原作のイメージに近いかもしれません。ホームズ&モリアーティの有名な滝の場面もありますし、ベイカーストリート221Bの楽曲も楽しくて耳に残ります。

BBC『SHERLOCK(シャーロック)』を全編録画して見ている旦那さんいわく(あらすじも全編、言えるそうです・・)、「これはもう、ホームズという名前を借りた宝塚活劇として楽しめばいいんじゃないの?」とのこと。

確かに副題に「サー・アーサー・コナン・ドイルの著わしたキャラクターに依る」とありますから、その通りです。生田先生、そういうことですね。了解!

ただ、アイリーンの描き方はもうちょっとミステリアスにいろいろな魅力を引き出せたと思います。(ごめんね!膨大な参考資料の中で大変でいらっしゃったと思います)

 

で、ホームズについて、何が一番言いたいかというと!!!

ばんっ!!(立ち上がるmiyakogu)

地下武器工場の若手男役さんがかっこいいんだわよーーー!!!

政府のお付きの子もーーーー!!!

風色さん&亜音さんはもちろん、私が目を付けたのは(皆さんもご注目)長髪クールな嵐之真さん、政府お付き2列目一番右手にいる黒髪美形の輝ゆうさん政府お付2列目一番左手のすっと立つ聖斗亜さんも。

プログラムでいろいろ持っている皆様も本当にかわいい!前髪縮れ毛がキュート&クールな穂稀せりさん、泡立て器持ってるオペラ座歌手でも活躍の若翔りつさん、今回、優しそうな警部で活躍の希峰かなたさん、両手にお菓子挟んでにっこりの澄風なぎさんの癒しの四天王も素敵です。希峰さん以外の3名さんは、地下武器工場でも武器持ってどやってていい感じですわぁ。銃を背負ってどやっている若翔りつさんはもちろん、あれ?こんな方おられたっけ?と思うと澄風なぎさんで、すっとクールに悪そうなお顔もされるんだと発見でした。

武器工場のキーパーソン、天才的武器開発者の松風輝さんヘルダー、弟思いの柴藤りゅうさんモリアーティ大佐、素敵眼鏡男子の留風輝さんポーロックベンガルの虎の鷹翔千空さんもね、かっこいいんだよーー!みんな。

くっくっく、宙組に通う楽しみが増えて嬉しいわぁ。

 

という訳で、6回観劇して、最後はオペグラで全体像を観る!という荒技で感想をお届けできて満足。

ワクチン接種のため実は私の4連休はこの週末です。先週末はひたすら、タカホでも仕事、幕間でもアイデアをメモしていたのですが無事にコンペにも勝利しました。ただ、以前と絶対的に違うのは、きちんと代わりに休む時間を取っているところ。前進していますよー。

さぁ、明日土曜日は7回目と8回目、存分に観ますわよーーー。大劇場千秋楽の8/2月曜の実施について心配しつつ・・。

月組・桜嵐記新人公演感想 青く硬質な切なさの礼華はるさん、澄んだ声が美しい羽龍きよらさん 気迫に満ちた素晴らしい新公でした!

月組・桜嵐記の宝塚大劇場新人公演を観劇してまいりましたので感想をお届けします!

いやぁ、本当に素晴らしい公演でした。驚きました。

月組の皆様の確かな演技、通る声、お芝居の工夫、若く青くまっすぐに清々しい公演。出てくる方、出てくる方、皆さんのセリフの声が素晴らしく、主要役の方々の歌が素晴らしく、舞台における声の魅力を改めて感じさせる公演でした。 

 

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1.清々しく青い美しさと切なさ 礼華はるさん

ご縁があってお茶会にお邪魔したことがあり、ぱるちゃんが歌える人だというのは知っていました。歌うと朗々と通る声。ただ、セリフの声がまだ少し弱いのかなと、その点を少しだけ心配していたのです。

それが、まぁ、本当に嬉しい驚きでした!!!

開幕を告げるアナウンスの声が良く、あ、これは大丈夫とすぐに思えます。登場した堂々たるすっきりとした品のある若武者姿に、ああ、この人は久しぶりに再開された新人公演をやり遂げることに腹をくくっておられるのだと伝わる気迫がありました。その腹のくくり具合が正行に通じる気迫をもたらしていたように思います。

そして、セリフの声が、まさにそのお腹の底からの思い切った声。

あ、この方は一つ、何か越えられたのだ、殻を破られたのだと嬉しくなりました。

背が高くノーブルで美しい礼華はるさんが、烏帽子姿で桜の下に立ち、弁内侍に別れを告げる場面が美しく、若武者というより公達。源氏?!源氏なの?!という美しさ。

とりわけ良かったのは、出陣の挨拶を受けた弁内侍が、あふれる思いをこらえきれずに正行の背中にすがる場面です。

ここはきよら羽龍さんの演技も本当に素晴らしいのですが、いったん手を離すのに、うつむきためらうぱるちゃん正行の美しくも切ない横顔ですよ!

ばんばんばんっ!

おばちゃん、久しぶりに机をたたくで!!!

 

真面目に、私、この場面の礼華はるさんの切なさをこらえようとする、けれど、思いが溢れてやはり振り返ってしまう、手を取ってしまう、抱きかかえてしまう。その演技と表情の切なさに泣けましたーー!!オペラ握りしめ、涙をふきと大忙しでした。

本当に素晴らしかった。

出陣式では新人公演らしく、お別れではなく「皆様、出陣いたします」と晴れやかに告げ主上も「戻れよ」ではなく「生きろよ」と告げる。清々しい若者らしさに満ちたラストでした。

私は、常勝であった若き正行は出陣する前、1/3くらいは勝てるかもしれない、いや勝つ、そして流れを自分が変えるのだという20歳過ぎ(くらいですよね)の若者らしい青い気概を持っていたと想像しています。

その青さ、硬質なきらめきを感じさせるラストでした。

礼華はるさんの終演のご挨拶も、美しくもまっすぐに清々しいものでした。

 

2.驚きの美しい声 きよら羽龍さん

いやぁ、びっくりびっくり。

もちろん、きよらさんが美しい歌声の持ち主とは存じておりましたが、これほどみずみずしい情感豊かにセリフを話す、心地よい美しい声の方だとは知らなかったのです。同行していた旦那さんも今日一番の驚き。

背の高い礼華はるさんと小柄なきよらさんの一対のお雛様感が素晴らしく美しく、桜の場面で礼華さんに抱えられるきよらさんは、正行がそっと抱える大事な秘密の宝物のように見えました。

少し咲妃みゆさんを彷彿とさせる面がおありになるように思いました。楽しみです。

 

3.美しいお顔のはじけるやんちゃ 彩音星凪さん

All For Oneで珠城さん演じるダルタニアン少年時代を演じられたところから、もちろん注目していた美形さんです。

その美形さんがやんちゃにはじける、うん。いいね、ずっと見ていたいよね!!(笑顔でハイタッチ)

主人公の正行は、珠城りょうさんの場合はどーんとした楠木のよう、新人公演の礼華はるさんはまっすぐな清々しい青竹のようであり、どちらかというと受けの演技のお役側のように思います。

その分、正儀が飛び跳ね、疑問を投げかけ、弁内侍にちょっかいをかける中で物語が動いていく面があるように拝見しています。

彩音さんは思い切った演技で、ぐんぐんと飛び跳ね、時に賢く鋭い疑問を投げかけ、ちゃんとちょっかいをかけ、と生き生きと演じておられたのが魅力的でした。歌も堂々とお上手。ぜひ彩音さんの主演も観てみたい。そう思わせるきらめく魅力のある方と拝見しました。素敵でした。

彩凪翔さんをお好きな方はぜひご注目を。お顔が似ておられる美形さんです。雰囲気はちぎさんにも似ておられるかもです。

 

4.物語にぐっと引き込む力 風間柚乃さんと天紫珠李さん

まぁ、風間柚乃さんがうまいのはみんな知ってるからさ。うんうん。

冒頭、風間さんと天紫さんの二人が語り始めると、物語の世界に見ている側を一気に引き込みます。さすがのお二人。

天紫さんは普段よりかなり低く抑えた声。非常に巧みだったのが印象的です。

 

5.存在感を出したお二人 瑠皇りあさんと彩路ゆりかさん

もともと、瑠皇りあさんの尊氏は楽しみにしており、セリフをどう話されるのか、魅力的なのか、確かめに行ったところがありました。顔が美しいのはおばちゃん、よーーーーく知ってるから!

るおりあちゃんは曲者の尊氏をきちんと曲者に演じておられ、セリフも落ち着いたもので聞きやすい声でした。これは逸材なのでは?!

いや、とうに皆さん、ご存知なので落ち着いて・・。さすが宝塚音楽学校のポスター、センターで堂々と映っておられただけのことはあります。みりおちゃんをお好きな方はぜひご注目を。

そして我らが主上。本公演でええ声で歌う暁千星さんの京ことばが妙に好きなのですが、彩路ゆりかさんの主上がとても良かったのです。途中から、この方、誰だろうと一番気になった方でした。あ、ゆりかちゃんだからじゃないですからね!(注 これが言いたい)

お芝居がお好きな方なのでしょうか?セリフに込めた思いがこぼれ落ちるように伝わってくるのです。主上の切なさが強く伝わってきた演技でした。守ってあげたくなる主上なんですね。この方は。

美しい正行と主上を悪夢のような思い出が襲いかかる場面。舞台前方で膝をつく正行と主上の二人がかわいそうで、守ってあげたくなるようで。美しい幼友達でした。お歌もとてもよかったと思います。楽しみな方ですね。

 

6.巧みな蘭直樹さん、さわやかな魅力の一星慧さん、迫力の真弘漣さん

高師直の蘭直樹さんはさすがの上手さ。本公演で紫門ゆりやさんが怪演を見せておられるだけに、ある意味、一番難しいお役だったかもしれませんが、さすがでした。本公演よりも少し若めでその分、色事も一層お盛んそう。ただし人情もありそうな師直です。

一星慧さんは礼華はるさんと同じく身長178㎝。まぁ、迫力の楠木三兄弟なのですが、優しそうで、ああ、確かにこの方、お料理や日常を愛してそうな武将だわと思わせるものがありました。明るい爽やかな魅力の方と拝見。

高師直と並び、もうこれ、誰がすんの?新人公演でというお役が後醍醐天皇。本役さん、いつ鳩を持って登場してもおかしくない(宙組・王家に捧ぐ歌のアモナスロから来ています)の一樹千尋先生ですもん、いややん?自分が当たったら。

それが、真弘漣さんのファッファッファッという不気味な笑い声が響き渡った時点で、あ、この方いける!と確信しました。迫力ある熱い演技、舞台を覆う黒い雲のような大きさを十分感じさせる演技でした。

 

7.大きな魅力の大楠てらさん、可憐な羽音みかさん、軽やかな人間味の柊木絢斗さん、妖艶な結愛かれんさん

新人公演どうすんの?という役の一つである楠木正成公。しかし、よくよく考えると、この演目、そういうお役ばかりでした・・。

本役の輝月ゆうまさんは、珠城りょうさんが髪をたらし、舞台の真ん中で刀二つ持って戦う中、透明な明るさの中に哀しみを少し込めた楠木の歌を歌われます。その大きさを持っていないといけない、非常に難しい場面です。

大楠さんは、まさにその名前の通り。いや、本当にこんなぴったりのお名前のジェンヌさんがおられたとは!本公演よりも、明るさの中の哀しみがより増した表現だったように思います。その分、対照的に出陣式はより晴れやかになったのかなと。

羽音みかさんもきれいな声の方。おっとりとしていて、正時が好きで、芯は強いことが伝わる演技でした。それにしても、声が美しい方揃いでした、この新人公演は。見どころも聴きどころも多いのですね。

ジンベエ、あーー。これこそ、新人公演どうすんの、の役でしたわ。本役の千海華蘭さんが上手すぎて、年老いてからの歩き方があまりに模写過ぎて、もはやからんちゃんの芸を見るだけでも価値があるのですが、そこを柊木絢斗さんはきちんと踏襲されていたように思います。

南朝一のしたたかで色っぽい仲子、あーー、これもまた新人公演・・(以下略)。

結愛かれんさんはコケティッシュな魅力を一杯お持ちのキュートな方だけに、ぴたりとはまっておられました。

 

8.本公演から感じる微細にゆらめく魅力

久しぶりに再開された宝塚大劇場での新人公演。

何よりもその喜びと使命を感じておられたのは主演の礼華はるかさんであり、月組の新人公演チームの皆様であり、送り出した上級生さんだったと思います。

そして、見事に、本当に見事に全力でその使命を無事に全員で果たされたことに心からの拍手を贈ります。

ご挨拶で礼華はるさんが語られた「共に生きている」ことの喜びと実感。もちろん、オンラインでも伝わる一面はあります。しかし、気迫といった目に見えない熱、微かな声の震えから伝わる波。そういったものはやはり劇場でないと得られないものだと改めて実感します。

今回、一番実感したのは、その目に見えない何かが本公演は少しずつ違っていて、一つ一つの小さな差が、全体として本公演の隅々を繊細に覆っているということです。

たとえば、礼華はるさんが思い切って見事に発するセリフ。言葉自体は珠城りょうさんと同じです。ただ、語尾に込められた余韻が珠城りょうさんは少し違うのですね。

弁内侍に質問を投げかけるようでいて、珠城りょうさんの正行は弁内侍を柔らかく受け止め、柔らかく提案しているように聞こえるのです。語尾の余韻に込められた温かみ、弁内侍をからかうような面白がっているような余韻。

ちなつさんが呼ぶ「百合」も同じです。同じ「百合」という名前なのに、ちなつさんが言う「百合」は慈愛もいとしさも悲しさもすべて色が違う。

そこが新人公演と本公演の差か!と本日、納得いたしました。

ただ、この新人公演にはまっすぐな清々しい別の素晴らしさがありました。なんというか、役と本人が重なりあった若者の青い疾走感が清々しく、観終わった後の晴れやかな喜びが格別だったのです。

観客席に共に生きることの喜び=熱い何かを十分に存分に発揮された月組「桜嵐記」新人公演チームの皆様に心からの拍手を。本当にありがとう。

おばちゃんな、生きるわ!!!

観る側にそう思わせてくれた新人公演、控え目に言って最高じゃない?!

宝塚宙組バウホール・夢千鳥 感想2 愛を知る映画監督と夢二、美しいゴージャスフィナーレへ

では、引き続き宙組バウホール公演「夢千鳥」の感想2として、第二幕からフィナーレについてレポしますね。

 

1.新たなモデルのお葉

第二幕は撮影所で幕を開けます。

夢二役の演技に納得がいかないそらちゃん白澤監督。第三の女性であるお葉役はまだ決まっていません。映画会社の社長の穂稀さんとプロデューサーの水香さんがいいアクセントになっていて、くすっとなります。このお二人、上演が続けば日々、いろんなことをしてくれそうな名コンビでした。惜しい!しかし、再演と東上を諦めないぜ!

 

お葉の役者が見つからないと、バーで再び飲んだくれるそらちゃん監督。誰を紹介してもらってもうんと言わないのです。

そんな完璧な女性なんていない、わがままだと言いながらも、知り合いの絵画モデルを推薦するバーテンダーの紺野(留依蒔世さん)。呼びかけが、監督→先生へと変わる中で、観客は再び、夢二の物語へと誘われます。この演出もにくいところです。

 

お葉は美貌の水音志保さん。アナスタシアでも皇女の一人タチアナ役で輝いておられました。

教育を受けていないお葉さん。字を教えてあげるという夢二。絵画の教育を受けていないことが根深いコンプレックスとしてある夢二が庇護しようとするお葉もまた、彼にとっての青い鳥なのだと思えます。

モテモテだった夢二が、お葉に出ていかないでくれ、置いていかないでくれとすがりつく。その切なさ。

籠を出ようとする健やかで若い青い鳥のようなお葉。魅力的なお葉さんには、多くの男性が引き付けられ、言い寄ります。

 

2.彦乃の死、二つの別れ

常宿なのでしょうか?ホテルの一室の決まって一つの窓を眺める夢二。桜の花がきれいに見える方の窓ではなく、空を見つめるかのような夢二。

その方向には、彦乃さんが入院する順天堂病院があるのです・・。

夢二はついに傑作を描いたのです。モデルはお葉ですが、そこに描かれているのは彦乃のようでもあり、彦乃でもない。

誰のことも愛せないのだと看破するお葉。

医師に求婚されたのだと、お葉は夢二のもとを去ろうとします。

そして、彦乃は病院で亡くなります。父にごめんなさいと一言を遺して・・・。

 

※圧巻のソロダンスはここだったようです。最初、1幕ダンスの歌のところとやや混濁してましたが、お教えいただき書き直しました。

彦乃の死を電話で知らされた夢二はすべての時間が止まったような表情を見せ、そしてここから、圧巻のソロダンスとなります。

哀しみを表現し、崩れ落ちるように膝をつき、最後までゆっくりと仰向けに崩れるように倒れるそらちゃん。圧巻でした。ものすごい腹筋力で仰向けに横たわります。

次々と見どころが来るため、記憶がややあいまいで申し訳ないのですが、そらちゃんに目を引き付けられていると、白いスモークの中、天国のような夢のような列車の中、彦乃の膝で目を覚ますそらちゃん夢二。

※このあたり、次の内容も含めて前後関係が少しあいまいです。間違っていたらごめんなさい。

 

3.青い鳥の卵

亡くなった彦乃の夢を見ているのか、電車の中で彦乃と再会する夢二。

しかし、過去の女性や関係者が次々に現れ、夢二を糾弾する言葉を投げつけます。

その中で、彦乃の父である笠井(若翔りつさん)が、愛の意味を教えるのです。(おそらくは映画を作った監督自身の気づきにもなっていきます)

青い鳥を探すのではないと。

青い鳥の卵を温めるのだと。

 

ここからは私の個人的感想ですが、そうやってしか、愛する幸せはないのだと示唆するようでした。

娘を失った笠井父。彦乃はこの世にはいません。しかし、愛は残ります。

娘がこの世から去るなら、最初から娘がいなかった方が、娘への愛を体験しなかった方がよかったでしょうか?

いいえ。慈しみ育てた記憶は、愛そのものとして長く彦乃父の心に残ったはずです。この点は、病気によって死と生の意味を一度真剣に見つめたことのある私が語ってもよいかと思います。

 

ついに、夢二はお葉を手放します。あたかも鳥を籠から放つように。

その場面は、脚本を書き換えたことにより映画ラストが完成したような場面でした。

 

4.フィナーレ

ゴージャスでした!!!

留依蒔世さんがすくっと背中を見せて立ち、始まるフィナーレ。留依さんがバウ2番手として堂々と歌い踊り、ゴージャスショーを見ているかのように始まります。

黒燕尾で白い羽を持った男役さんたちに囲まれる天彩峰里ちゃん。皆さんの白い羽でみねりちゃんの大羽根をつくる場面、狂気めいた演技をたっぷりと演じきった彼女への敬意の現れのようでした。

堂々とラスボスで登場する和希そらちゃん。

背中をゆらめかせて登場されるのですが、その身のこなしが柚希礼音さんのようで、独特のセクシーさでした。それでいて、軽やかに手を挙げて高くジャンプするところはむしろ優雅で、朝夏まなとさんを見ているでした。

お二人のハイブリッドのような和希そらちゃん。ぜひ今後のご活躍をご注目ください。

花組に異動される美風舞良さんをそらちゃんとみねりちゃんが手を差し出して見送るかのような場面もあり、本当に良かった!

 

和希そらさんは、WSSのアニータ(東京版)の時も感じましたが、セクシーなんですね、存在自体が。生の存在そのものが持つエネルギーやゆらめきがセクシー。

もちろん男役さんとして見せておられるセクシーさもあるでしょう。しかし、それ以上に存在自体が持つエネルギーから生まれるセクシーさが、和希そらさんの最大の魅力だと思います。

汗がほとばしるような熱を帯びた陰影のあるセクシーさ。タンゴダンサー的な色気というのが一番当てはまるかもしれません。

声がよく抜群に歌えて、ダンスがとびきり美しく、演技ができ、憂いを帯びた横顔が美しく、存在自体がセクシー。WSSのアニータ、二度のバウ主演を経て、私は今後が楽しみな大型スターさんへと育っておられると思います。

どこかでの再びの上演、東上を心より希望します!素晴らしい公演を、宙組バウチームの皆様、ありがとう!

そらちゃんのWSSアニータの記事はこちらです。よろしければどうぞ(^^)

https://mothercoenote.hatenablog.com/entry/2018/01/12/235301

(一度だけの観劇で私はメモを取らずに観ます。そのため、感想1,2とも誤解や記憶違いがあるかとは思います。そこはご容赦くださいね!)

宝塚宙組バウホール・夢千鳥 感想1 和希そらさんの堂々たる主演、美しい凄みと安らぎと切なさの愛の物語

緊急事態宣言の発出とは裏腹に、穏やかでさわやかな日曜午後、皆様、お元気ですか?不詳miyakogu、今日は、思いっきりネタバレで宙組バウホール公演「夢千鳥」の感想レポをお届けする所存ですわ!!

宝塚バウホールでは、わずか4日間となった幻の宙組公演「夢千鳥」千秋楽が始まった頃ですね・・(涙)。俺のスヴィッツラハウスもーー(泣)

しかし、今、私に託された使命はこの貴重なバウ公演を奇跡の日程でぎりぎり観られた者として、全国の宙組ファン、そらちゃんファン、みねりちゃんファン、ご出演者ファンの皆様に、できるだけ詳細にレポること。

さぁ、涙を拭いて~、立ち上がるのだ~♪ (注 英真さんの神父様が歌っておられるイメージです)

以下はがっつりネタバレしています。

スカステで放映されるまで知りたくない方はお読みにならないでくださいね。

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パンフの5/3までの文字が切ない・・。

 

1.感想総括

まず総括を申し上げます。

・物語にぐいぐい引き込まれる素晴らしい作品、作・演出の栗田優香先生、おめでとうございます!今後に大いに期待

和希そらさんの低音のイケボ、憂いを帯びた横顔、縮れた前髪、美しいダンスが最高でした、本当に楽しみなスターです

天彩峰里さんの演技がすごい!今すぐ外部で舞台役者できます、美しい声

凄みのある愛憎、安らぎのある柔らかな愛、すがる切なさ。三様の愛の物語です

・宙組の誇るおじさま演者陣が素晴らしい!

機会を改めての上演、そして東上を希望します

なんというか、すごかったんです。端的に言えば。感想はこれでは終わってしまいますね。うん、がんばって書こう。

 

2.物語のあらすじ

この物語は現代の大御所映画監督・白澤(和希そらさん)が、次回作として竹久夢二を主人公とする映画を撮るという二重の構成になっています。

竹久夢二(和希そらさん)と恋多き映画監督の白澤優二郎

夢二の元妻であり籍を抜いても同居関係にある他万喜(天彩峰里さん)は映画女優であり白澤と事実婚にある女優・赤羽礼奈

他万喜に思いを寄せる東郷青児(亜音有星さん)は若手映画俳優・西条湊

がそれぞれに投影され物語は場面に応じて現代と夢二が生きた時代を行き来します。なお、映画の中で夢二役を演じるのは秋音光さんです。

栗田先生がうまいな!と思ったのは、その中で観客を混乱させることなく物語を演じ切り、愛憎の激しい場面を入れつつも、最後は宝塚らしい愛でまとめてみせた手腕です。ラジオ劇でもおそらく十分に楽しめただろうし、小説のようでもありました。

また、演劇のご経験が豊富におありなのでしょうか?少ないセットながら、上手側、下手側を効果的に入れ替え、舞台転換が見事に進んでいきます。

栗田先生はご挨拶で「夢二が残した手に入りうるすべての文章に目を通したのですが」と書いておられます。「春の雪」を舞台化した時に三島の文章を模写した生田先生のような執念をそこに感じました。

妻であった他万喜、病弱で京都で共に住む紙問屋の一人娘・彦乃(山吹ひばりさん)、彦乃と引き離された後、モデルとなるお葉(水音志保さん)。

ミューズである他万喜との痛々しいほどの愛憎

まっすぐに夢二を愛する彦乃とのひとときの柔らかな安らぎ

愛というより、夢二がお葉にすがりつく切なさ。

三者三様の愛の形がそこには描かれています。

彦乃ちゃんとの愛は、夢二にとって安らぎなのですが、彦乃ちゃんには夢二を籠に閉じ込めるような感じがあったのも、少しぞくっとする点ではありました。

 

竹久夢二が生涯愛したのは誰だったのか、誰も愛さなかったのではないか。

いや、愛とは育てるものなのだ、青い鳥を探すのでなく青い鳥の卵を育てるように。

夢二を描く中で、映画監督の白澤もその意味を知るのです。

あ、物語の核心をいきなり突いてしまいました!でもいいの、今日はがっつりネタバレだから(涙)

俺は絶対に東上を希望する!!!もったいなさ過ぎる!!!

 

3.オープニングが美しい

開演を告げる和希そらちゃんの低音ウィスパー・ボイス!高まる緊張感で舞台を見つめていると、幼少期の夢二のシーンが始まります。

頑固そうな父に、着物の美しい端切れを集めていることを叱られ、囲炉裏で燃やされてしまう夢二。姉の松香は味方であり、夢二が強い愛情をもって慕っていることが示されます。姉をよく通る声で演じるのは有愛きいさん、頑固な父は安定の星月梨旺さん。幼少期は真白遙希さん

この場面のお芝居がよくて、「ゆ、雪組の和もの?!」となりました。宙組さんに次々登場するお芝居上手さんです。

そして、美しい鳥と主要登場人物が登場します。

この鳥が美しくて、ええ?誰?!となりましたが、前髪を縮らせた秋音光さんでした。1羽が2羽になり踊るのですが、まぁ、秋音さんの手と柔らかなジャンプが美しいこと、美しいこと。

宵待鳥の歌(美風舞良さんでしょうか?)、手島先生の音楽が美しいこと。

だいたいオープニングで物語の予感、良作の予感がしますよね?びりびりーーときました。

 

4.物語に引き込む空港、映画会社からバーへ

竹久夢二の物語から、一転、空港へ。あれ?え、時代いつ?と思っていると、和希そらさんは世界的映画監督の白澤優二郎として登場します。主演女優にほれ込み、スキャンダルになる稀代の監督。そして事実婚の大女優・赤羽礼奈。赤いドレスと毛皮のストールをゴージャスに着こなす天彩峰里さんがクラシカルなたたずまいで素敵です。

物語にくすっとしたポイントを添えるのは穂希せりさん演じる映画会社社長とプロデューサーの水香依千さん。お二人ともええ味出しておられます。

水香さんは、フィナーレの黒燕尾の時に一転、黒髪の色気が駄々洩れておられましたよ!素敵でした!

そして、凛城きらさんがマスターのバーで飲んだくれる和希そらちゃん監督。バーテンダーは留依蒔世さん。

もうこの二人がカウンターの向こうにいるバーって、何それ、どゆこと?!とオペグラを握りしめながらわなわなするmiyakoguです。(静かにわなわな)

また、二人ともかっこいいんだわ、これが!!宙組の男役さん、最近、髪型かっこいいよね?!真風さんの影響なのーーー?!!(miyakogu心の声)

 

5.港屋から待合へ

竹久夢二の作品である千代紙や美人画を「港屋」というお店で他万喜さんが売ってるんですね。美貌の他万喜さんは女学生や男子学生の憧れの存在です。

きゃっきゃして買いにくる女学生三人組は愛海ひかるさん、朝木陽彩さん、彦乃役の山吹ひばりさんです。愛海ひかるちゃん、おきゃんな女学生でかわいいわぁ。

この場面のカゲソロは真名瀬みらさんだったんですね。素敵な声でした。

で、竹久夢二が描かないと売り物がないんです・・。赤ちゃんが泣いているのに座って絵のモデルになれという横暴な夢二。

あ・か・ん・やろーーー!!!稼げよ、描けよ!再びわなわなするmiyakoguと他万喜さん。

でも、いらついた夢二は飲みに行っちゃうんですよ。むーん・・・。

芸者さんたちと飲み、花宮沙羅さん演じる菊子さんといちゃつく夢二。菊子がつまびく三味線を片肘ついて聞く夢二そらちゃんが色っぽいんですよ!ばんばんばん!!

あの人、顔を寄せながら「それで?」とか言ってなかった?吐息まじりの低音で!

スカステの番組で真風さんとお風呂の温度話して、「ばかだね」とか言われてた可愛らしい子だったのに。きぃーーーっ!オペグラを握りしめながら再びわなわなするmiyakogu(注 歓喜)。

一方、他万喜さんは救いを求めて婦人矯風会(キリスト教の教えのもと、禁酒をはじめ女性・子どもの人権を保護しようとする団体)の活動へと入っていきます。

 

6.嫉妬と愛憎がぶつかり合うタンゴ、名シーンです

要所要所で登場してシックな歌でこの物語を彩る花音舞さん。素晴らしい存在感です。

他万喜に思いを寄せる東郷・亜音さん。彼は夢二をまねて千代紙を描き、それを売っていたんです、他万喜さんは・・。

芸者さんから渡された千代紙でそこに気づき、他万喜に詰め寄る夢二。殴り、つかみ合う二人の愛憎シーン、殴られても他万喜も一歩も引きません。

ここがすごかったの!!!

真ん中の二人は和服、周りのペアを組んだタンゴダンサーは黒の洋装。美しく激しいタンゴ。他万喜は多くのタンゴダンサーを妖艶にひきつけ、夢二はいさかいばかりなのに嫉妬する・・。その不条理。

真ん中で和服のまま、軽やかにジャンプするそらちゃん夢二を見て、振り付けた人、気狂ったか?!と思いましたよ。素晴らしかった!振付がいもありましょうとも!

 

7.女学校から彦乃ちゃんがぐいぐいと

一転、バーをはさんで、花嫁修業に励む無邪気なかわいい場面になります。ザ・宝塚らしいかわいい場面ですね。

山吹ひばりさんの彦乃はわざとかもしれませんが、やや幼い声。純粋にひたむきに先生である夢二を慕います。夢二は絵の正式な教育を受けておらず、大衆画家として画壇では全く評価されていない。そこに彼の大きなコンプレックスがありますが、彦乃はそこをすっと乗り越えていきます。

世間知らずの一途さとそれゆえの強さで、彦乃とそらちゃん夢二は近づき、彦乃といる夢二は本当に安らかに幸せそうなのです。ようやく得た安らぎのひと時。二人は山、川と相互に暗号で呼び合い、手紙を交わしきゃっきゃしています。よかったね、あんた、ようやく安らげる愛が・・・(涙)。ただ、彦乃ちゃんは籠に閉じ込められるように両親に育てられたためか、夢二を籠に閉じ込める=愛だと考えているような怖さも少しありました。

一方、他万喜はただ自分のみが夢二のミューズなのだというプライドから、狂気のような提案を彦乃の両親にします。彦乃と夢二が夫婦になり、自分は姉として一緒に暮らすのだと。この場面の狂気的演技も凄かった!

あ・か・んてーーーー!!!他万喜ちゃん、自分をもっと大切にしなあかんて!オペグラを握りしめて再びわなわなするmiyakoguと彦乃父。(注 物語に入り込んでます)

この彦乃父を演じる若翔りつさんが、まぁ、すんばらしいんだわさ。頑固だけではなく、愛情が深く、礼節もあり、夢二をも愛をもって諭すかのような父。

花に水をあげるように、青い鳥の卵を抱くように(これは最後に出てきます)と、愛の意味を繰り返し教えてくれるのは、実はこの彦乃父なのです。素晴らしい演技でした。

 

8.彦乃の病と絶唱の「うつら、うつら」

そらちゃん夢二とひばりさんの彦乃は、二人で京都へ。彦乃さんは絵の修業と家には言ってあるようです。

二人で暮らす穏やかな日々、絵のモデルは彦乃さんに変わり(他万喜さん・・・涙)、画壇から反感を買いながらも個展は大成功します。子どもの不二彦(美星帆那さん)も引き取り、絵本「青い鳥」を読み聞かせてあげるひばりちゃんの彦乃さん。彦乃さん自身が籠を飛び出た青い鳥なのでしょう・・。

夢二と彦乃さん、不二彦の落ち着いた安らかなひと時の暮らし。

ただ、彦乃さんの病は進んでいくのですね・・・。絵の仕事か、長崎に行く夢二、ついていくと言い張る彦乃。

あ・か・んてーーー!!病気の時は療養第一やで!(miyakoguが言うと説得力)

しかし、知らせがあって迎えに来た彦乃父により、二人は引き離されます。

やせ細った彦乃さんとの再会に驚愕する彦乃父、ひばりさん彦乃の演技。迫真でした。

一人残されたそらちゃん夢二が震える声で歌う「うつら、うつら」という主題歌。絶唱です。

雪(花びら?)が舞い散る中、苦悩を歌うそらさん。

登場する2羽の鳥の秋音光さんと花宮沙羅さん。

美しくも絶望的な歌。

※見どころが多すぎて、二幕とここかやや記憶があいまいでした。

圧巻のソロダンスは二幕、彦乃さんが亡くなって、夢の中の列車で再会するシーンの前ですね。twitterで教えていただき、書き換えました。

 

(2幕からフィナーレは、感想2に続きます)

https://mothercoenote.hatenablog.com/entry/2021/04/25/155802

宙組・アナスタシア 感想 最高でした!美しい楽曲と圧巻の宙組コーラス、見どころ一杯の「回復」の物語

皆さま、お元気でした?今日は宝塚大劇場にて初日開けてすぐの宙組・アナスタシアの11時公演と15時半公演を観劇してきましたので、感想、ネタバレをできるだけしないように行ってみます!

今日は、観劇できなくなった方のチケットを宝塚お友達が遠方から運んでくれて、見やすいお席のセンターとSS席下手で観劇するという、大変にもう本当にすんばらしい観劇でした。本当にありがとうね(泣)。

絶対に真風さんと目合ったし、まっぷーさんにはずばっと手を差し伸べられての笑顔をいただいので、宝塚お友達と92期生さんのおかげで寿命が10年は確実に伸びたから!

宝塚って何なの?!健康寿命伸びさせるエンタメ?!本当にありがとう!(泣)

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1.作品の持つ力

何よりうならされたのは、宝塚でありがちな説明セリフを一切排除、幕開けからごくわずかなセリフのみで、ロマノフ帝政崩壊とロシア革命を一気に見せ、おばあ様であるマリア皇太后とロマノフ家の末娘であるアナスタシアの強いつながりをクローズアップさせて見せてくれた展開です。

音楽とダンス、衣装の対比で何があったかがずばりと進展、ややこしい説明は一切ありません。ま、もちろん、まぁ様のご退団公演「神々の土地」により、我々宙組ファンがよく訓練されたロマノフ通であることは否めませんが、それにしても、展開がスピーディかつ上手かった。驚きました。

そして、数々の美しい楽曲、テンポよい楽曲が素晴らしかったのです。

私が特に好きなのは、Home, Love, Familyと歌われるメインテーマ「過去への旅」、真風さんディミトリーが楽しそうに歌うリズミカルな「俺のペテルブルク」。

宙組のコーラスやダンスが少しユーモラスな「新たな噂」(かな?間違ってたらごめん)。

真風さんディミトリー、ずんちゃんヴラド、まどかちゃんアーニャが3人でコミカルに歌う「やればできるさ」、真風さんがふっと微笑みながら切なげに歌う「すべてを勝ち取るために」。キキちゃんが見事な声量で歌う「ネヴァ河の流れ」。

さらに、宙組の美しいコーラスが響くロシアを去る際の故郷への思いがにじみ出た歌、列車で旅に出る場面のうきうきや冒険が伝わる歌もとても良かった!

また、娘とも語り合っていたのですが、列車の場面をはじめ映像と舞台セットを組み合わせた立体的な舞台の見せ方が見事で、本当に素晴らしかった。お見事でした。

おそらく、時間をかけて練られてつくられたのだろうということが分かる見事な作品だったと思います。もちろん、部分的にはうん?というところや海外ミュージカル特有の主要役以外の役の少なさもあるかもしれないけれど、そこはもう楽曲と宝塚ならでの華やかさをお楽しみください。マチソワを楽しく、本当に心から楽しめる作品でした。

当ブログでは舞台を悪く言うことはほぼありません。ただ、お気づきの方もおられるかもしれませんが、私が「背景の映像が美しかった」「舞台美術が美しかった」と書いている場合、それは反対にそれ以外、あまり良くなかったということです(苦笑。ただし私にとって、です。もちろんね)。

この作品は、掛け値なしに贔屓目を取り除いても、楽曲と立体的な舞台演出により作品自体が素晴らしい力を持っています。そこは間違いないと思います。ぜひ、一度はご観劇をお楽しみください。

なお、この作品の原作者であるテレンス・マクナリー氏は今年3月、新型コロナウィルスの感染によりご逝去されたとのこと・・。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

2.素晴らしかった3人の女性陣

星風まどかちゃんは、ミュージカルのヒロインでした。見事に。強くて賢くてたくましいアーニャ。ただのプリンセスじゃないのですね。ロシアの半分を歩いて移動してきて、身を守るための喧嘩も強くて、一生懸命働いてお金を貯めて、1ルーブルでも無駄にできないわ!と出発する前に今日までのお給料を受け取りに行くのです。ええわ!!好き。

和希そらさんのリリーもとても素敵でした。歌って踊れて演技もできる。WSSのアニータも圧巻でしたが、今回はセクシーで強くて亡命ロシア人が集まるパリ社交界の華の存在。彼女は健康的にセクシーで粋なんですね。行く行くは舞台でご活躍される素晴らしいミュージカル女優になられるだろうと本当に期待しています。

寿つかささんのマリア皇太后は2回目、威厳あり頑固者だろうなという存在感あり、堂に入ったもんです。歌も演技も素敵でした。アナスタシアとの二人の場面、涙涙涙です。それにしても、まぁ様ドミトリー・・。いつ舞台に登場してもおかしくないほどの密接な設定でした。

 

3.真風さん、真風さん、真風さん

もう、もう、もう、真風さーーーーん!!!

ばんばんばんっ!!

(注 宝塚ホテルでキーボード連打のmiyakogu。劇場まで届きそう)

WSSの梅田公演の時にぐっと歌がうまくなられたなぁと思ったのですが、アクアヴィーテの時、うん?リズムをとらえておられるな、歯切れがいいなと思って楽しみにしておりました。

これだけの楽曲を生き生きと歌いこなされていて、そこにまず感動。

真風さんの歌は、一曲、大ナンバー歌いあげますよ、さぁどうです?というより、芝居の中にしっくりと来る歌。感情がセリフのように乗ってお芝居の中に溶け込むような歌で、私はそこが今回、とても良かったと思います。

家族を喪っている真風さんディミトリーとまどかちゃんアーニャ。アーニャがおばあ様であるマリア皇太后にアナスタシアだと認められれば、彼女には家族が戻る・・。そうなることを願い喜びつつ、でも自分とは離れてしまうのだという切なさ。

そこを黒燕尾で微笑みながら歌い始め、声量を落として切なく旋律を終える。見事に心情を伝える歌唱でした。まぁ様のお芝居に溶け込んだ歌を聞いているようでした。素晴らしかったと思います。

真風さん萌えポイントも、ちょっとだけ行っとこ!!

・かばん、斜め掛けな!

・パジャマでもスタイリッシュな真風涼帆な!開襟サービスタイムな!

・旧ユスポフ邸内の劇場に隠れ住んでいるディミトリちゃんな!3年越しの壮大な匂わせなん?と娘と語り合いです。まぁまかファンの妄想はかどる、はかどる

・フィナーレのそらちゃん(娘役群舞に登場)への顎くいっな!

・デュエダンのまどかちゃんへの音楽に合わせての鼻ちょんからの~、お手つなぎでの銀橋移動な!

※手つなぎを見た瞬間、「鼻ちょんから、手つないできたで!このトップコンビは!」と頭の中、ぱーんと飛びました。ばんばんばんっ!!

 

4.見どころ一杯!

舞台を斜めに使ったり、列車を回したり、丘の向こうから映像がせりあがってきたり(人ちゃうねん、映像がせりあがってきますねん。見て!)、バレエの観劇をしている場面を心情を4重唱で聞かせつつ、バレエもしっかり見せると、本当に上手いんです。この舞台は。心にくいほど。

革命の中で辛い体験を余儀なくされた人々を描いているのですが、後味悪くなく、ハッピーエンドの予感があるエンディング。

あなたは何者なのだ?と問いかけられながら、喪ってきた場所から逞しく登場人物が「回復」する物語だと、私は思いました。リピートするぜ!

バレエの場面は、オデットの潤花ちゃん、ジークフリートの亜音有星さんのお二人のダンスと見事なリフトに加えて、ラスボス・優希しおんさんのロットバルトですよ!

マリア皇太后、ディミトリー、アーニャ、見張ってる芹香斗亜さんグレブの歌で忙しいのに、バレエまで踊ってはるんですもの、大忙しです!

後ね、可愛らしい潤花ちゃん、気品のある笑顔の柴藤りゅうさんもようこそ、に加えて、誰?この美人ちゃん?の愛海ひかるさんの娘役さんも素敵でした。愛海ひかるさんはみりおんちゃんにちょっと似ておられるように思います。

劇中、銀橋に皆さんがずらっと並んで歌う噂話の歌も良かったし、ロシアを去るときの故郷を思う歌もコーラスがうわーーと舞台から立ち昇るのが「見える」ようなんですね。宙組さんのコーラスは。音の塊があたかもそこにあるように、見えるように思えるほどの厚みがあるのだと思います。

フィナーレも見どころ一杯なのですが、今日は真風さんと絶対目あったし!!という記憶ですべてがぱーーん!なので、どうぞご覧になってくださいませ。

※語彙力を無くすと、ぱーーんだの、どーんだの、擬態語に頼りがちなヅカファンあるある・・。

皆さまも、劇場でどうぞご観劇をお楽しみください。

宝塚観た!ミュージカル観た!、あら、バレエもちょっと見たわ!と一粒で二度以上に美味しい演目です。

月組・WELCOME TO TAKARAZUKA-雪と月と花と-/ピガール狂騒曲 感想 ただただ尊く楽しく美しく!

皆さま、お元気ですか?本日、金曜に初日開けて4回目の公演を観劇してまいりましたので、感想をお送りします!(ショーの見どころは少しお伝えするけれど、お芝居のネタバレは避けますね)。

一言で言えば、ただただ尊い・・。

そして、楽しく美しい!!

初めて宝塚を観た気持ちを思い出しました。ありがとう、宝塚!そういう感想です。

作品自身の持つ力以上に、今回の観劇はファンにとって尊く楽しいように思えます。それはなぜかと考えたとき、思い当たるのは、演じる側の”喜びの粒”が劇場を溢れんばかりに満たし、客席にストレートに伝わるからではないかと思います。

月組の皆さんの喜びも、初舞台生さんの喜びも。舞台に立っている皆さまのフレッシュな喜び。それが私たちの心に伝播する。そういう舞台のように思えます。

新型コロナウイルス感染症の影響により、宝塚大劇場の公演も長らく中断、花組さんの「はいからさんが通る」のチケットも残念ながら観劇には至りませんでした。昨年12月の宙組「オーシャンズ11」千秋楽後、ようやくたどり着いた大劇場です。

ただいまーーーーー!!!(涙) f:id:miyakogu:20200927214301j:plain

1.WELCOM TO TAKARAZUKA -雪と月と花と- 感想

1)チョンパで開幕、尊いトップスター

照明が落ち、劇場中の期待が高まる中、チョンパでぱぁーーっと明るくなり、花道までずらっと並ぶ明るい美しい衣装の月組の皆様。銀橋をそそと渡るトップスター・珠城りょうさん。

「あなたの夢はなんですか みんなあなたに叶えましょ」

 作詞:植田紳爾氏

ウエルカム・トゥ・タカラヅカ♪♪と繰り返されるメインテーマの冒頭の歌詞です。

私たち観客に夢は何かと問い、叶えましょと一緒に言ってくれる!

尊い・・。なんて尊い頼れるトップスター・珠城りょう!

たまちゃんは確かに一緒に叶えようとしてくれるはず、どーんと任せようではありませんか、宝塚に!

俺の寿命も任せた! ←落ち着いて、歌詞をよく読んで、miyakoguさん?宝塚の専門領域は夢や愛なんで・・。

 

2)尊い初舞台生の向上

そして、口上です。そもそも、初舞台生さんというのは常に尊い。

美しい少女が強い意志で宝塚を目ざし、2年間学び、初めて宝塚大劇場の舞台にあがる隅から隅まで一生懸命で笑顔の美しい若い女性。そんなもん、尊いに決まってますやん?!

今年はそこに新型コロナですよ。ずっと舞台に上がれなかったんですよ。練習だって隔離ですよ。その波を乗り越えて、美しいスタイルをキープして、おそらく一生懸命練習して、待って待って春のお披露目のはずが、ようやく初秋の今。スミレ色のお着物が本当に綺麗でした。

初舞台生をお披露目する光月組長さんの声が暖かく思わず涙涙。

一生懸命な口上にまた涙涙涙。

嗚咽しかねないところでした。気付くと、お隣の方もハンカチでずっと涙を抑えておられ、まったく同じところで泣きまくる二人。無言の連帯感がありました。2階9列〇〇番付近におられたあなた!同志です。

 

3)松本悠里先生の雪の巻

赤基調のお着物で美しくご登場。ドラマチックにクラシックと合わせた日本舞踊です。

今回の公演でご退団される松本先生。本当に年齢とは関係ないのですね、全身を使った表現というのは。松本先生の美しい手の所作、何とも言えない切ない表情、美しい衣装、豪華な鬘に見とれました。技が尊いです。

 

4)月の巻

斬新かつ、ただただ美しい!ぜひぜひ劇場で実際にご覧ください。

暗い照明の中、ちらちらと光る衣装の袖(多分)。何が始まるのか、どきどきしていると、月がどんどん明るくなっていく中で皆さんが美しく踊られます。

このセンターで皆の動きを自在に自然に統率しているように見える珠城りょうさん。ああ、珠城さんは「月の御子」なんだなぁと思わせる存在感です。

最後の扇の場面、月の光がゆらめく海を見るようでした。クラシックに合わせて日本舞踏でこれだけの人数で行うマスゲームのような場面。

宝塚が唯一にして随一だろうと思います。尊い・・。ぜひ劇場でご覧ください。

 

5)花の巻

月城かなとさんが鏡を取り出して自分をご覧になります。

はぁーーー。傾城の美女なの?!

そりゃ見ますよね、お美しいですものね・・。あの人、絶対にこれまでに国を3国くらい傾けてるって!美が尊い・・。

他の場面を含めてれいこちゃんと鳳月杏さん。和物の所作では特にこのお二人のひらひらとした手の動きが美しく目を惹きました。

美園さくらちゃんも日本人形のようで本当に美しいショーでした。45分でさくっと終わるところも良いところです。

 

2.ピガール狂騒曲 感想

演出の原田先生のご挨拶にあるとおり、シェイクスピアの「十二夜」の枠組みをベル・エポック時代のパリを舞台に、ムーラン・ルージュをめぐる物語に仕立ててあります。

・ムーラン・ルージュに憧れ働かせてほしいとやってくる男装の麗人ジャック(ジャンヌ)が珠城りょうさん ※異母兄のヴィクトールと2役(見事に演じ分ける!)

・ムーラン・ルージュの支配人シャルルが月城かなとさん(渋かっこいい!)

・パリで大人気の本の”陰”の著作者ガブリエルが美園さくらさん(潔くてかっこいい!)

・表向きはその本の著作者であるウィリーが鳳月杏さん(面白うまい!)

・ムーラン・ルージュの振付師ミシェルが光月るうさん(うまい!)

・ムーラン・ルージュの常連客のロートレックが千海華蘭さん(うまい!)

・ムーラン・ルージュのダンサーで回転しまくるレオが暁千星さん(美しく回る!)

 ※このイケメンダンサーズに新人公演主演予定だった礼華はるさんも、髪型が素敵でお似合いです(かっこいい!)

・ウィリーが雇っている弁護士ボリスが風間柚乃さん(動きだけでやたらと面白い!)

だいたいこれくらい抑えておけば、後は劇場にて!

 

1)珠城りょうさんの男女の見事な演じ分け

珠城りょうさんはジャンヌちゃんなんですね。本当は。(”ジェンヌ”でなくお名前ね)

ある事情から男装し、ジャックとしてムーラン・ルージュにやってきます。憧れを持って仰ぎ見ていた赤い風車。

実は異母兄がいてこちらは伯爵。このヴィクトールの青い衣装と髪型、特に左側からみた横顔が私の大変に好みでございまして・・。ありがとう!!

ちょっとちゃらいけれどいい人そうなヴィクトールと、秘密を抱えて憧れを胸に純情でいい人そうなジャック(ジャンヌちゃんの男装)。

本当にどうなってるんだろう?と思うほど、不思議にその時々で男性に、また女性に見えます。足の出し方、揃え方、肩の出し方なんだと思うのですが。お見事でした!

その演じ分けと、あの横顔をもう一回見たい!(※)少し長めの髪型が尊いです。

二役を演じる珠城りょうさんが同時に舞台上に登場する場面はあるのかないのか、あるならどうするのか?そこは劇場でご確認ください。

※と思っていたら・・。もともともう一回観る予定でしたが、観劇後、miyakoguに友の会さんからとんでもないメールが・・!ありがとう!(涙)

 

2)月城かなとさんのイケおじシャルル

シャルルーーー!ムーラン・ルージュは君の夢の場所だったんやね?

その思いは、まるで宝塚への思いのよう・・。現代の舞台をめぐる状況と物語の中のムーラン・ルージュのピンチが重なるかのようです。

利益だけでなく、夢の場所を大事に大事に守ろうとするシャルル、最後には・・。うふふ。劇場でどうぞご覧ください。

あ、シャルルの歌で劇場を沸かせる場面があります。こちらもどうぞお楽しみに。

 

3)美園さくらんさんのきりりとしたガブリエル

有村先生の黒白縞の衣装を見事に着こなすさくらちゃんです。IAFAのエマもそうでしたが、彼女は「ついてまいります」という役よりも、こういう意志の明確な現代的な女性像がしっくりきますね。といって、きゃんきゃん言ってる訳ではない。自分の意志で未来を変えよう、何かをつかみ取ろうとする賢い強さ、潔さのある女性です。

 

4)鳳月杏さんのウィリーと風間柚乃さんの迷コンビ

この二人がまぁ、面白くて上手いんですねぇ。そこに光月るうさんも加わって、笑いを持っていくメンバーです。

鳳月さんはセリフの間合いややや漫画チックな動きで、足が長い分、無駄に面白い!

風間さんは、セリフ以上にあれ、才能ですね。動きだけでおかしいんです。オタクが推しをこっそり見守るような場面がありますので(多分、みんなが稽古場に潜入してやりたいやつ)、どうぞお楽しみに。

 

5)ムーラン・ルージュのダンサーチーム

いやはやまぁ、かっこいいわ、回るわの暁千星さんリーダーのダンサーチームです。

暁千星さん、英かおとさん、彩音星凪さん、礼華はるさんの4人組、長身でスタイルが良くてそれぞれ個性の異なるかっこよさ!ありちゃんの回転はすごいし、礼華はるちゃんの髪型もかっこいいし。ムーラン・ルージュのショーは娘役さんダンサーたちのカンカンとともに、ぜひご注目を。ただただ楽しい!

あ、娘役さんチームに交じってあれこれやってるおだちんにもね、ぷぷぷ。

 

6)フィナーレ

せり上がって伸びやかに歌うありちゃん、力強い存在感です。

106期生さんの賑やかに美しいロケット。お衣装が水色・ピンク・白で綺麗でした。皆さんがほっそりとしたスタイルを維持しながら開幕までずっとこのロケットを練習してこられたのかと思うと、また泣けて。やっぱりお隣さんも泣いておられて、無言の連帯感です。

男役に戻った珠ちゃんのセンターの迫力。

黒燕尾で堂々とセンターを降りてくるれいこちゃん。(本来なら全ツがあったと思うのですが、その分やや初々しくもありました)

最後に再び黒燕尾で登場する珠ちゃんの圧倒的存在感

美しいシルエットのドレスを着こなすさくらちゃん。裾が翻るのが本当に綺麗でした。

月組のかっこいい娘役さん、端正な男役さんの黒燕尾。ただただ美しかったのです。

最後の階段降りでの月城さんとさくらちゃんの衣装と羽の色、珠ちゃんの羽にもどうぞご注目を。男女の色を入れ替えたような、どうだっていいんだ、そんなこと、というような粋な衣装、演出でした。

 

3.泣けた植田先生のご挨拶文

坂東玉三郎様が監修、植田紳爾先生が作・演出のショー「WTT」ですが、パンフレットの植田先生の挨拶文が素晴らしいのです。

「生命の賛歌を」というタイトルです。宝塚歌劇団がどれくらいの覚悟で、先生方も生徒さんもここまで進んでこられたのか、どれほど必死でこの舞台を創り上げてきたのかがストレートに伝わりました。

命がけなのですね。舞台は。そして、我々観客のことも、命がけで観にきてくださったのだと気遣ってくださっています。miyakoguはまぁ、実際命がけでここまで来たのは事実。うんうん。いやぁ、がんばってきたよ、俺も。

生徒さんたちの姿に「宝塚の生徒としての伝統と矜持と誇りを感じています。」と書かれた先生ご自身の伝統、矜持、誇り。それがどれほどのものなのか、想像できました。

最後の一文「本日はほんとうに、ほんとうに有り難うございました。」の”ほんとうに”の繰り返しが、植田先生の心からのお気持ちなんだろうと受け止めました。

私たちから「ほんとうに、ほんとうにありがとうございました」という気持ちを伝えるには、客席から”拍手の花束”を贈るしかないのだろうと思います。精一杯に。

 

さて、観劇が終わりtwitterを見てみると、TLにチケットの当選の喜びや驚きが溢れていました。友の会が随分、親友になってくれたんだろうなぁと、先日入力した月組さん追加抽選結果のメールを何気なくチェックしたところ・・。

えええええ??え??え、SS席って、え?

前方の40番台のお席?ええええ?!というまさかの展開がmiyakoguをウエルカム・トゥ・タカラヅカしてくれてたのです・・。動揺のあまり、阪急の特急で一駅乗り越しました(笑)。

ほんとうに、ほんとうにありがとう、宝塚(感涙)。

ミラーボールも回っていました。

宙組・FLIYING SAPA(フライングサパ) 漂白された記憶を越えて、感想と勝手な考察

※日生劇場も千秋楽を迎えたので、少しだけ加筆修正を加えて再掲いたしますね。

梅田芸術劇場・宙組公演「FLYING SAPA -フライングサパー」。上田久美子先生が「波紋や喧噪が生まれるのを期待して」とご挨拶で書かれたとおり確信犯的に世に放たれたこの演劇。miyakoguは12月の手術前に最後に見た宝塚大劇場宙組公演千秋楽から8か月のブランクを越えて、8/8 11:30公演を観劇してまいりましたので、その感想と若干の考察(妄想?)をお送りします。

宙組に終わり、宙組に始まるですよ!だんだんだんっ!(注 激しく浮かれている)

総論から言えば、よくぞやり切った、宙組の皆様!コロナ禍の中で何とか上演できた奇跡、美しい音楽と映像。ネタバレ含みますね。一度だけの観劇ですので誤解や不十分な点もあると思います。ご容赦ください💦

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1.不思議な美しさをキープした舞台

この舞台の最大の特徴は、凄絶な戦場の記憶に触れざるを得ない物語(特に2幕)にあって尚、舞台が不思議に”美しい”ということです。

演じるのが、背が高くスタイルのいい男役さんが多い宙組であり、真ん中に立つトップスター・真風涼帆さんが、水星(ポルンカ)の世界の中で、記憶を無くした兵士として白いコートもセーターも何を着てもただただ立っているだけで様になる。そのビジュアル面の力が、大きくモノを言う舞台になっていると思います。

今回、感動いたしましたのが、宇宙空間の物語であることを支えるどこか浮遊感のある美しい三宅純氏の音楽と、光の粒を散らしたような抽象画の趣のある上田大樹氏の美しい映像。その世界にスタイリッシュな宙組の皆様が見事にマッチして、美しい舞台を作り上げておられることです。優れたクリエイターの力を結びつけた上田久美子先生の手腕に拍手を送ります。特に、1幕ラストの光の粒が川のように見える映像は圧巻でした。

戦後75周年を迎えた我が国において、幼少期に戦争の記憶がある親族に話を聞くと、「空が燃えるように赤かった」ことを話すことが多いように思います。凄惨な戦争の空のはずなのに、その空は奇妙に赤く輝き人々の記憶に残り続けている。2幕のミレナの凄惨な記憶の場面、恐ろしいのに、奇妙に美しく赤い空の映像が記憶に残りました。

 

2.消してしまいたい凄惨な記憶

2幕、水星ポルンカの中心にある謎のクレーター「サパ」に保存されていた人々の記憶のデータベースと星風まどかさんが演じるミレナの意識が、総統01によって結合されたことにより、真風さん演じるオバクは見てしまうのです。総統01(汝鳥怜さん)とミレナの地球での凄惨な記憶を、真風さんオバク自身の記憶とともに。この愚かさを許せるのか?と詰め寄られながら。

人類が愚かに争いを繰り返していた地球において、敗戦国の人間として戦火に逃げまどい、妻と娘を敵兵に奪われた難民ブコビッチ(後の総統01。若き日を穂稀せりさんが見事に演じておられます)。目の前で大切な家族を守れなかった痛恨の記憶。

同じく敗戦国の人間として戦火の中で祖母・母とはぐれ、敵兵につかまり幼い少女であるにも関わらず過酷な運命に直面するミレナ。少女の身体に刻まれてしまった凄惨な記憶。

優れた科学者であるブコビッチは少女からその凄惨な記憶を消し去り、喪った娘の名前「ミレナ」を付け、二人は難民としてポルンカ行きの船に手をつないで乗ります

真風さんオバクの父は戦勝国側の優秀な科学者(星月梨旺さんが人間味を持って演じておられます)です。オバク(サーシャ)の父が、医療用に完成させていた意識管理システムを統合すれば、誰かが何か”愚かな悪”をたくらんでも事前にキャッチしその考えを除去=“漂白”できます。ブコビッチの考えでは、二度と地球で繰り返された戦争のような愚かで凄惨な世界にはならない。

そのために、ブコビッチが発明した「へその緒」とサーシャ父が発明した意識管理システムの統合が必要でしたが、政治的利用を懸念するサーシャ父はそのシステムを渡しません。ブコビッチは宇宙船の中で、サーシャの父母、同席していたイレエナ(夢白あやさん)の母を殺し、船長を脅迫してでも自分の理想の完遂を目ざすのです。

その理性的な狂気。ブコビッチの狂おしいほどの大きな悲哀。

 

オバク真風さんの見た記憶として彼らの過去が明らかにされる場面。1幕で独裁者として登場する総統01の哀しみが舞台から観客席にひたひたと、大きな波となって押し寄せるようでした。

オバクと総統01(若きブコビッチも共に)が対峙するこの場面。叫びとともに見事に演じ切られた真風さん、総統01の汝鳥さん、若きブコビッチを演じた穂稀せりさんの特筆すべき演技に、心からの拍手を送りたいと思います。

ブコビッチとミレナの記憶が凄惨であればあるほど真風さんの叫びが観客側に迫るのです。

2幕のこの場面はなかなかに恐ろしい場面。せめてフィナーレ、ミラーボールとか回っててほしかったわぁ・・(T_T) ←世界観台無しなんで、落ち着いて、miyakoguさん。(雪組全ツでミラーボール6回も回ってくれて、梅芸で涙しました。ありがとう、雪組さん!!)

 

3.眠れない夜からの救済

水星ポルンカの夜は長く、1つの夜の間に地球上の夜が88回あります。オバク真風さんの冒頭のナレーションにあるとおり、後何回眠れば朝が来るのか。ポルンカに生きる人々は眠れないこと、後味の悪い夢を見ることに悩まされていることが多い。

危険思想の漂白に加えて、人間を許せない、そんな記憶はすべて消し去りたい。それが総統01の考えだったのではないかと思います。

ただ、自分が何者かわからない不安もまた、人々を眠れない夜に突き落とすものです総統01も記憶のデータベースに自分の消し去りたい記憶を移していたでしょう。これは私の勝手な妄想ですが、システム管理の権限を有するであろう彼は、それでも時々、地球の記憶にアクセスしたのではないかと思うのです。

消し去りたい記憶、けれど失いたくない記憶もそこにある。家族とともに合った記憶も。

すべてをシステムで管理できる、管理してみせると思っていた彼を、宇宙船の中で眠らせてくれたのは実のところ、戦火の中で手を取った少女=自分の娘の名前を付けたミレナのリアルな寝息や体温ではなかったと私は想像します。

幼い子どもを守ったことにより、守られ癒されたのは実は彼の側ではなかったかと思うのです。

終盤、彼は撃たれ、ミレナの腕の中で息を引き取ります。その死は、志半ばで無念というより安らかな眠りに見えました

 

4.コードナンバーの素数と総統01が創り出した世界

宇宙船の中で平和に語り合う青年サーシャ(真風さんオバクが記憶を無くす前の名前)、婚約者のイレエナ(クールでなく優しいお姉さま)、イレエナとサーシャやサーシャ父を慕う少女ミレナ(まどかちゃんの声の演じ分けがお見事)。

サーシャとミレナは「大きい素数」について話したことがあるのですね。後にオバクのコードナンバーになる30111。総統01に続くように、ミレナには2が割り当てられています。

物語の狂言回しのような役割を演じるズーピン(優希しおんさんが「真夏の世の夢」のパックのように軽々とジャンプしながら生き生きと)は確か30015。3× 3× 5× 23 × 29で構成され、深読みし過ぎかもしれませんが、一見、普通に見えるのに23や29で割り切れる意外性があり、ズーピンが繰り返し語るようにいかにも「使える」数字です。

私のあくまで勝手な解釈です。ただ、総統01は単純にコードナンバーを割り当てたとは思えないのです。

一見ばらばらと不規則に登場するように見える素数の出現ですが、実は規則性があると予想されており、宇宙の秘密を握っているらしい。素数は「創造主の暗号」と言われているとのこと。私は2009年に放映されたNHKドキュメンタリー『魔性の難問 ~リーマン予想・天才たちの闘い~ 』で初めて知りました。

確かウランが崩壊する際のエネルギーの間隔と素数の出現の間隔が似ていることが(正確にはもっと違う言葉のはずですが)、物理学者と数学者の偶然の会話の中で明らかにされていく過程が番組の中で紹介されていたと覚えています。

天才科学者である総統01(ブコビッチ)は、自分が望んで創った平穏なはずの世界が、いつか壊れる運命にあると予想していた気がします彼が眠りにつく姿を見ていると、むしろいつか、誰かが登場してその世界を打破することを無意識のうちに望んでいたのではないかと思ったのです。(あくまで私の妄想気味の考察です)

消してしまいたい記憶は、他の輝く記憶と一緒にあります。同様に、人の愚かさだけを取り出して排除することはできない。人生は、運命は、丸ごと受け止める他ない。

総統01は、自分が作り上げた世界を壊すことができる、違うやり方を示すことができる人物の登場を待っていたように私には思えました。そして、その可能性のある人物に素数のコードナンバーを意図的に割り当てたのではないか。サーシャ(オバク)は別の方法を切り拓ける「それでも許すと言える人物」だったのだと思います。

徹底的に管理された社会の中に仕組まれた暗号としての素数のコードナンバー。最初の素数のミレナと、大きな素数のオバク(サーシャ)。彼らは偶然でなく、自分以外に分かり合える相手を見つけられない孤独を抱えながら、記憶を失ってもなお、いつか宇宙の法則に従って「出会うべくして出会った」ように、私には思えました。

科学大臣98、アンカーウーマン777、記者8324。役名に数字が示してあるこの人たちのナンバーはいずれも素数ではありません。柴藤りゅうさんが気品を持って演じるスポークスパーソン101は素数であり、彼はどちらにでも行ける可能性を持った人だったのだろうと思います。

 

5.役者・真風さんと印象に残った方々

・真風涼帆さん(サーシャ、記憶を失ってからは兵士オバク)

真風さんは開演アナウンスの時点から、ポルンカに我々を連れていくようで、暗くなった会場は宇宙船の出発を待つかのようでした。ブコビッチとミレナの記憶、オバクの記憶を見せられた場面での懊悩の叫びは、役者・真風」だったと思います。

私が一番好きだったのは、コートを脱いだシンプルなセーター姿。長い脚の膝を立てミレナの頭をのせて眠らせてあげる姿は「お、俺も頼む!!!」と立ち上がりそうになりましたね。

ばんばんばんっ!!(注 キーボード連打)

 

・星風まどかさん(ミレナ)

トップ娘役としては異例のお役。あんな辛い場面をうちのかわいいまどちにさせるなんて!とちょっと過保護になりそうですが、少女時代と今の声やしぐさの演じ分け、見事だったと思います。

 

・芹香斗亜さん(精神科医ノア。SAPAにある違法ホテルに滞在)

この演目の中の優しい冷静な良心のようなお役。SAPAの中心地に向かう野営地で歌う優しい声がとても印象的でした。イエレナを包み、癒すのですね。優しい精神科医です。

 

・松風輝さん(テウダ。歩けない少年の車いすを押す母)

美しく優しい声の演技、優しい子守唄がお見事でした。寿つかささんが味わいを持って演じておられるタルコフとのささやかなロマンスが気になるところ。結末はお見届けください。

 

・瑠風輝さん(科学大臣98、ペレルマン)

ミレナの婚約者。シンプルに好青年なのか、サイボーグのような人なのか、総統に忠誠心が強すぎるのか、やや謎のキャラをまっすぐに迷いなくええ声で演じておられます。

 

・柴藤りゅうさん(スポークスパーソン101)

真っ白な衣装に身を包み、すっと気品を持って立ち、長いセリフを素晴らしい滑舌で淀みなく発しておられました。お見事!ようこそ宙組へ。

 

・穂稀せりさん(若き日の難民ブコビッチ)

この方の演技次第で終演後の印象が大きく変わってしまうであろう大変難しいお役。私が拝見した8月8日(土)11時半公演、まさに見事でした。若き日の彼の哀しみと決意、哀しみ故に閉じてしまったかたくなさが伝わりました。本当に素晴らしかったと思います。

 

・夢白あやさん(優しいお姉さまが革命の戦士になっているクールなイエレナ)

夢白さんのクールなショートカットのイエレナ、かっこ良かった!苛立っていて復讐の思いが強くて、ちょっと怖い現在のイエレナ。でも本当は優しいお姉さま。ミレナもなついていました・・。

 

・愛海ひかるさん(SAPAの酒場?のダンサー、ロロ)

SAPAの違法ホテルの酒場かな?男役さんですが、そこの女性ダンサーとして登場されます。切れがあって粋でかっこいいんだ!アクアヴィーテでも、そらちゃん率いる若手ダンサーのウイスキーボンボンチームで表情豊かに踊っておられたのが印象的です。

 

・真名瀬みらさん(SAPAの違法ホテルに滞在するアーティストかな?キターブ)

私は真名瀬さんの声が好きなんだと思います。セリフがそれほど多くないのに、はっと惹きつけられる声。

 

この他、留依蒔世さんのうざいほどの存在感(褒めております)、春瀬央希さんの光沢のある赤紫のスーツ姿、違法ホテルの女主人である京三沙さんのかっこいいサングラス姿(旅立ちの時ですね)、寿つかささんの映画に心を残したポルンカの実直な公務員のロマンも印象に残りました。

 

6.惜しむらくは

この演目の一点惜しむらくは、メインテーマとなる「歌」がなかったことです(わざとだろうとはわかります)。宙組のコーラスは見事であり、キキちゃんの優しい歌声もまっぷーさんの優しい子守唄もとても素敵でした。ただ、最後に劇場を後にしたとき、口ずさみながら帰れる曲が一つでいいからあればよかったなぁと。贅沢で古風な望みですが、宝塚ファンとしてはそう思います。

ビジュアルに満足、宙組生さんの演技も素晴らしかった、楽曲と映像と舞台もぴたりと合っていた。意欲作だとも良くわかる。けれど、宝塚ファンとして後ほんの少しだけ「甘いフレーバー」が欲しかったかな?

もちろん、確信犯的に送り出された演劇意欲作だとわかった上でのささやかな願望です。何といっても、おばちゃん、さる所から出所してきたような身の上やん?そういうのも、ちょっと見たかったのよぉぉ(涙)。真風さんがかっこいいからええけど!

この厳しい状況下、日々の緊張の中で宙組の皆様が存分に演じ切った舞台。宙組の皆様、本当にお疲れ様でした。ありがとう。

去っていった片胸への思い、娘の提案(^^) 乳がんによる外見変化

皆さま、お元気ですか?(^^) 新型コロナウィルスの感染症拡大防止のため、自粛生活の中、宝塚ファンの皆さんが、同時上映で盛り上がっているのをtwitterで拝見しております(私は早寝)。TCAでぽちぽちお買い物したり、頼もしいヅカファンです。

私は手術日が決まった11月下旬から「インフルエンザにならないでね」との主治医の言葉より、以降4か月半、手洗い・うがい・マスク・人込み避けの自粛生活。最後の観劇は宙組「エルハポン/アクアヴィーテ!!」千秋楽となりました。

今は3週間ごとの点薬治療を受けつつ、出社は週1、リモートワークも合わせて週3-4日で仕事もしています。人込みを避けて近所でウォーキングも。

昨今は、吐き気止めを筆頭に治療を支援する医学・薬の進歩が著しく、主治医もおっしゃってたとおり、抗がん剤治療でやせ細るということはなさそうです・・(^^)。幸い、私の場合、まだ味覚障害が起こっていないこともありがたいところです。

さて、こちらは、日々のウォーキングで昨日見つけた少し早めの牡丹。艶やかですね。

女性に例えられる牡丹。乳がんによる外見変化は、この艶やかさとは程遠いものがあるのです・・。よよよ。ただ、高校生娘が素敵な提案をしてくれました。そのことを今日は書きたいと思います(^^)。

※前回の記事はためらってアップをいったん降ろしたため、今回、初めて更新通知が行ってしまう読者の方もおられると思います。びっくりさせてすみません(^^)。

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1.乳がん治療時に発生する外見の変化

乳がんは女性の11人に1人が罹患するとされる比較的多めの疾病で、世界的に症例が共有されており、医学も薬も進化が著しく、その恩恵に預かることができます。

twitterで実は・・、と切り出す前から周辺に複数の先輩がおられ、またリプライやDMで教えて下さった方もおられました。考えてみると、宝塚大劇場で複数の経験者の先輩とご一緒に観劇していたのだと思います。改めてその多さに驚きます。

医学・薬学の進歩に加えて、外見の変化をカバーするため素敵な自然な感じのウィッグ、ケア帽子、胸のパッド、専門の下着、温泉等入浴時のカバー等、様々に工夫された商品があります。ありがたいね!

ただ、大きな問題が一個ありまして・・・。

おばちゃん、ほれ、もう50代半ば近いやん?30年社会人もやってきさぁ、大概のことは笑い飛ばせる図太さも鍛えてきてるわけ。

でね、

・全摘の片方のお胸 →下着とパッドで調節、リブのセーターも着れるやーーん?

・ウィッグ →つやつやで自然、めっちゃ綺麗でいいやん?もういっそ、ずっとウィッグ使えばいいやん?家族から好評

と大きな点はクリアしてきたわけです。

 

問題はね!なんと、お風呂なんですよ。お風呂時!!

髪と胸、女性の象徴のような箇所がダメージを受けている姿と、まともに向き合わざるを得ない時間となってしまったんですよ。洗面とお風呂の鏡に映るのを直視できないのです。きぃぃぃーー!

お地蔵さんの頭と、片方の胸にもう片方は横一文字の傷のアンバランス。これはねぇ、さすがのおばちゃんでもぐっと来るものがありました。髪と胸ですもの。闘病仲間には30代くらいのお若い方も多く、より一層、大きなショックだと心中お察し申し上げています。

 

ただ、おばちゃんはな、結構生きてきたし、めげるより工夫!の立ち直りも早いんで(^^)。私が取りました対策がこれです。

・頭には薄いタオル巻き

・胸は温泉入浴用カバーで隠す

・入浴時に鏡はできるだけ湯気で曇らせる! ←見えなくする大作戦

これで何となく、温泉に来た人の雰囲気を醸し出しです。

新型コロナウィルスが収束する日が来たら、絶対に温泉に行くから!博多座から熊本な!と決意を固めておりますよ。うん(^^)。

 

3.去っていった胸への思い 娘の提案

高校生娘は小さいころから、何かあると私の胸にひっついて安心するところがありました。今も時にはね!(^^)

「おっぱいちゃん」は、幼子にとって最初の大事なお友達であり、お母さんとともにいる柔らかな安心感の象徴なのだろうと思います。近所の小さなお子さんが、「おっぱい~、おっぱい~」という極めて原始的な歌を作って歌っておられるのが聞こえてきたことがありますが、連呼しちゃうくらい大事なもの(^^)。

実は、最初、私が自分で見つけた小さなしこりは良性のものでした。その近くでたまたま見つかったごく小さなしこりを感じない腫瘍が悪性。

発見は本当にラッキーだったんです。おっぱいちゃんが何かを伝えてくれたんですね。

その良性のしこりは、私には免疫細胞ががん細胞を抑え込んでくれた跡のように思えました。闘って闘ってくれて、でも力尽きてしまったように思えたのです。

 

「あんな、「ここは俺に任せろ、いいからお前は生きろ!」とトップスターを守って、敵の前に自分は滅びる二番手みたいな感じやんな?」と娘と語り合うmiyakogu。なんでも宝塚にたとえがちです(^^)

「あの子はな、すべて一人で負を背負って去っていったヒーローなんやで」

娘「ほんまやで」

続けて、「片方のおっぱいちゃん、いなくなっちゃったね・・」と言うと、娘がきっぱりとこう言ってくれました。

 ↓

娘「いや、おっぱいちゃんはいる。”概念としてのおっぱいちゃん”は、私の中にちゃんといる。だからおっぱいちゃんは今もいるねん。

小さな頃からずっと娘を守ってきた片方のおっぱいちゃんは、娘の中に今もちゃんといるのかと思うと、私も安堵しました。

大小さまざまな疑問やピンチ、娘に何かあれば新しい考え方を提案するのはこれまで常に私の役目でした。どうやら、娘の成長が追い付いてきたようです。

抗がん剤点滴後は便秘になりやすいのですが、先日も「ちょっとあんたー、ヤクルト忘れずに飲んどきや!」との助言も。若干おばちゃんチックなノリが気になりますが、ありがたいことです(^^)

 

ただーし! 髪、胸と来て、ただいまは爪問題も発生。ほんまに女性の大事にしているところばっかりやーーーん!状況です。

どないなっとんねーーん!責任者出てこーーい!(with エコー)

あ、私でしたね・・。

こんな感じになりますねん。爪の根本が黒くなります。これからさらに!なんですのよ、奥様。

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身近に闘病中の方がおられたら、こちらからは触れずに、何かおっしゃったら愚痴を聞いて慰めてあげくださいね。

爪は、目に入りやすいため、見るたびにちょっとがっかりなんです。治療時に指先で酸素量を測りますので治療日前にはオフにすることにして、できるだけダメージを与えにくいネイルを探したいと思います。

いろいろ次から次へと来るけど、胸一文字を除けばいずれも一時的なもの。どうしても気になるなら、事後の乳房再建手術も可能です。

おばちゃん、乗り切るわね!

そして、またいつか、宝塚大劇場で皆さまと観劇できますように。ただただ待っています。その時は、宝塚で温泉にも入っちゃうからね!(^^) 

乳がん発覚からの記録 ーたどり着いた自分なりの死生観、乗り切りますね

(事情があって一旦記事をおろしてましたが再アップしました(*^^*))

皆さま、お元気でしたか?(^^) 新型コロナウイルスの感染が一日も早く収束するよう自身も気を付け、祈る日々です。

さて、11月中旬に病気が判明し、クリスマスに手術を受け、先週、術後の抗がん剤治療が始まりました。この間のアップダウンの中で、最後にたどり着いた「結構ほっこりとした死生観」について、自分のために記録しておきたいと思います。

同時に、遠い将来に娘の支えとなるように。

そして、今この瞬間、同じようなプロセスの中で眠れない夜を過ごしているどなたかのために。ほんのちょっぴりでもお役に立てばと願います。

↑ 落ち着いて、miyakoguさん。あなた、四捨五入でほぼ100%の5年生存率。いいの、開き直るまでのプロセスを伝えるの!

 

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1.はじまりは突然に

中年以降、ぼんやりと意識していても、真剣には考えてこなかった「死」。

知識としては「メメント・モリ」(死を忘るなかれ)、「よく死ぬことは、よく生きることだ」(乳がんと闘われた千葉敦子さんの著書のタイトル)という言葉は知っていても、真剣に考えたことはなかった「自分の」行く末です。

もちろん、73歳で亡くなった父の死に接して「死」という現象については深く考えました。私はお父さんにもう会えない・・、生と死の境目は何なのかという疑問、そこは考えたことがあります。

自分で小さなしこりを見つけ即日、専門医院で検査→判明→手術まで2か月の奔流でしたが、クリスマス手術の前日、主治医からの説明はあくまで「ごく早期」でした。

家族や会社のスタッフに「落ち着いて。完治率の高い、ごく早期だから心配せんで良し!今はがん治療はここまで進んでいるから!」と、こちらが励ますという妙な状況でした(^^)。

※私は創業会長のもと、非親族で後継した中小企業の二代目なんですね。

けれど、麻酔から醒めた手術直後、センチネルリンパ節への転移が見つかり(注 本格的転移のことではありません)、節分に聞いた結果はやや進んでいました。

そもそも病気判明後、「乳がん」という言葉の前にただでさえ大変な状況な中、本をざざざーと読み、いろいろ調べて調べて調べて、

「あれ?これ、ごく早期の場合、ほぼ完治?」

「ステージ1の5年生存率って99.8%? 行けるやーーん!」

と安心して、明るく臨んだ手術が、あらら・・です。

がーーんですよ、まさに(^^)。←ごめん、一度は言ってみたいやん?(^^)、それから落ち着いて、miyakoguさん?あなた、5年生存率はこちらの専門病院、ほぼ100%。

※これはただ、今だからそう言えるのです。

 

2.ファクトと向き合い、不安に

検査の段階で再発しやすいタイプとはわかってましたが、幸いに早期発見、よしこの機会に生き方を変えよう、おばちゃん、やるわ!と思っていたところに見舞われた急な変化。これには正直、参りました。混乱です。

将来の再発・転移のリスクがぐんと上昇か・・。そこから再び、ががーーとさらに勉強です。

その結果、把握したことは、

・がんは5年再発がなければ、完治とみなされるが、乳がんの場合は時間を置いての再発がみられること。

・私のタイプは2年以内の再発が一定程度あり、次は7-8年後くらいにやや高まること。

・国立がん研究センターの最新の乳がんの5年相対生存率は、ステージ1で99.8%、2でも95.7%と極めて高く、通院している専門病院はさらに高いこと。

・仮に再発したとしても、抗がん剤治療をしながら、長く生きている人が多いこと。

・再発せずに80歳、90歳まで長生きしている実例も結構、身近にあること。

これらのファクトを把握、なるほど!と納得しました。

いったんは、です。

 

こういう状況下では、まず否認、そして不安や落ち込みが出て、受容へとなることも頭では理解していました。

けれど、ここまでわかった上で尚、人間ってどうなると思います?

絶対に自分は「まずい方の少数に入る」と、思うんですね。だいたいのことは笑い飛ばせる大阪の立派なおばちゃんである私もです。

だって、ここまでずっと、しこり発見→がんの疑いです→がんです→ごく早期です、温存できます→あれ?ちょっと広いな、全摘です→リンパ節への転移あり、ステージは進むかもと、毎回毎回、出るのは悪い方のカード。 

悪いカードしかないやん、どないなっとんねーーーん?!

先生、実はタヌキーー?!

 個室の窓から叫ぶmiyakogu、名医に八つ当たり(^^)。

最初思ったのは、「ちっ。宝塚友の会のチケットは全然当たらないのに、ここで当選かよー!」ってことでした。人間って妙ですね。ただ、しこりが実際にがん細胞であるのは2割程度のようです。

良い子の皆さんは、40代半ば以降特に、恐れず検査に行って下さいねーー!

あと、がん保険とか、女性疾病特約のある保険はかけておいてーー!薬の進化が非常に速く安心なのですが、その分高額になるため、保険は心強いです。

私のタイプの場合、手術後に抗がん剤と併用される画期的な分子標的治療薬(副作用が格段に少ない)により劇的な改善がみられるというのに、

「自分は再発する側に入るんだ、きっと」

「5年生存率を下げる側になるんだ」と思ってしまうのです。

次も「やっぱり」、「どうせ」、自分には悪いカードが来るんだという悲観。

この時期、「そんなネガティブに考えるのはやめようよ。病は気からと言うじゃない?」なんていう「ど正論」は、まったく通じませんので、患者の近くにいる方は、そこんとこどうぞよろしく!

落ち込んでいい、かっこ悪くていい。

実際、私が浮上するきっかけになったのは、twitterで出会った同病仲間との何気ないDM上での会話でした。急に、それまで抑えていたやるせなさ、これはあの時の負荷のせいなんだと、普段絶対に言わない、かっこ悪くて卑怯だと自分が絶対に許さないはずのことを、全部全部、ぶちまけたい。

そこがばばばーーっと涙&鼻水と一緒に出て、オフィスの昼休み、周りに気付かれないようにするのにちょっと苦労しました(^^)。

私は闘うタイプのようで、泣いたのはその時と山下達郎さんの「ずっと一緒さ」を聞いて娘を思って泣いた2回だけです。(ちなみにこの曲はむしろ、プロポーズの曲。すみません、タツローさん)

 

3.心の問題

電子書籍を含めて15冊程度の本を読み、標準治療を受け生き方をがらっと変えた上で、最後には「心」が重要だということはよくわかりました。

※たとえば『がんが自然に治る生き方』ケリー・ターナー氏、プレジデント社

しかし、どう受け止めどう考えれば、次へと動き出せるのか。その手がかりはなかなか見つかりません。

その状況の中で、聖路加国際病院に精神腫瘍科を開設された医師・保坂隆先生と今渕恵子さんとの対談本『がんでも長生き 心のメソッド 』を拝読。その中で保坂先生の言葉、「人間は死亡率100%」というものに出会います。

確かに。地球上、77億人(2019年の国連推計による)は、いつか確実に全員亡くなります。誰もが等しく。もう絶対に間違いなく。100%。

対談相手である今渕恵子さんは2018年に逝去されているのですが、彼女のtwitter上、スタッフの方が投稿された内容には、こうあります。

「今渕が亡くなる何日か前、しみじみつぶやいた言葉は「私は幸せ者だなぁ」というものでした。」

出典:今渕恵子様のtwitterより

「幸せ者」だとご本人も周りの方も思っておられる・・。これはどういうことだろう?と考え始めたのです。

 

4.10年、15年という時間

幸いにして、私の場合、発覚が50代半ば。分子標的治療薬の開発が続々と進んでいる昨今、仮に再発しても治療しながら15年生きるとして、私は60代半ばから70歳なんですね。

これって、本当に短い人生かな? 志半ばかな? 今まで何も残していないかな?

いや、全然違う。結構、十分に良く生きた人生だと言える。そう思ったのです。

(もっとお若くしてがんになられた方のご本人とご家族の思いについて、今、そこまで配慮できていなくて申し訳ないです。私のケースとして、ご容赦ください。)

坂本竜馬は31歳、織田信長は47歳。歴史上の人物との比較はおこがましいものの、十分です。

じゃあ、15年を一つの区切りに持とう。その見取り図ができたのです、急に。

もしそれより早ければ、そこがもともと神様からもらった寿命。粛々と受けましょう。

逆に長ければ、もうけもん。余生として楽しく生きれば良し。

仮に15年だとすると娘とはこれまでの倍、一緒に生きられる。

会社も3年後の周年事業を全うして、次に引き継ぐだけの時間はたっぷりあります。

その仕事が終われば、プチ鉄子として鉄道の旅に出よう。そうだ、宝塚を平日に観る!(^^)。楽しいことをしよう。もっと、楽しむことを自分に許そう。

だいたいの見取図ができることで、病気への向き合い方が定まったように思います。

脱毛前の記念にと、プロのカメラマンに公園で出張撮影も依頼(お安いです)。家族とともに綺麗に楽しく、家族三人でポーズを決めた宝塚風の写真も撮っていただき大満足です。遺影にも使えます。←割とまじでした。ただ、今ではあわよくば、20年-25年は生き延びる気満々ですね、ええ・・。

 

「事実を直視する恐怖」。

それを乗り越えたら、次は「どうなるのかわからない恐怖」

特に後者の「どうなるかわからない恐怖」=「一生懸命治療を乗り越えたとして、いつ再発するかわからない恐怖」こそ、がん患者を苦しめるものではないかと、私は思います。

あくまで私の場合ですが、再発込みのシナリオで人生の見取り図を10年、15年と描けたことで、私の場合は落ち着いたように思います。

 

5.父からの贈り物

見取り図ができた上で、では「いつか来る死」をどうとらえればいいのか。最後にその問題が残りました。その時、はたと気付いたのは父のことです。

私は単身赴任の長かった父と唯一、二人で一緒に住んだことがあり、三人姉弟の中で一番近しい関係でした。

父はすい臓がんで余命1か月、「思い残すことは何もない」とさっぱりと73歳でこの世を去りました。その父が、亡くなる数日前に病院で楽しそうに弟に語った言葉。

「もうすぐ、行かんならん。ご先祖さんが、ようけ迎えに来はったから、7月18日に行かんならん。」と笑いながら楽しそうに語った父。そして、17日に息を引き取ります。

そうか、ご先祖様がたくさん来てくれるのか・・。宝船のイメージで。

もしもそうなら、会いたかった人に会えるなら、それは悪いことでは決してない・・。

父が亡くなる前夜、ベランダで洗濯物を干していたとき、さぁっと何かが私の背中を触ったように思ったことがあり、それは父の挨拶だったと私は信じています。

私のことを大切に思っていてくれていた父が、いざとなったら迎えに来ないはずはない。帰省の際、「何時になってもいいから連絡するように、駅まで迎えに行くから」といつも言っていた父です。

ご先祖様がたくさん乗った宝船のへさきに父が乗って、笑いながら手を振って「おおーーい!」と現れるなら、それは悪いことじゃない。むしろ、いつか父に会いたい。

そう思いました。今のところ、父は気配すら現していません。大丈夫そうですね。

父が人生の最後に示してくれた道筋。私がもし、同じことをこの先、いつか娘に示すことができるなら、彼女の遠い遠い将来の支えになるかもしれない。

私の父から私へ、私から娘へ。それはとても大切な贈り物になるはずです。

そして、先日、実際に娘にこのことを話してみたところ。

「え?ちょっと待って?じゃぁ、私がいつかそうなるとして、その時はお母さんが迎えに来てくれるの?」

「そう。宝船の一番先で、●●ちゃーーんって手を振って。」

「それは確かにちょっと嬉しいなあ。」

彼女も安心してくれました。

贈り物は引き継がれたのです。私は人生で一番大事な仕事を成し遂げたのかもしれません。

 

6.構成要素の一つとしての病気

もう一つ大事なこと。

仕事をしていて気づいたのですが、病気は私のすべてではないのですね。今回、抗がん剤治療初回が始まり、大変な日もありましたが、やや大きめの構成要素が一つ加わったと考えることもできます。

病気の前後。大きく変わっているようでいて、私は仕事をしている50代の女性で、結婚していて、娘がいて、父の娘であり、宝塚ファンである。そこは何も変わっていない。世界が崩れ落ちたわけではない。

先達の経験談を読み、絶対に変えたことはあります。「ノー」を言う、仕事をし過ぎない、自分の体を大切に扱う、運動を週に4-5回する、野菜を含めてバランスの良い食事をする、漢方も飲んでみてと努力する。

人事を尽くす。その上で運命を受け止める。

 

病気とどう向き合えばいいのか。混乱の中で考え始めた「私の旅」は、これでひとまずの結論を得ました。

そして、いつの日か、父が向こうからにこにこと迎えに来るなら、いつか会いたい。今はそう思えます。

 

最後に、いつもの私らしく(^^)。

片側の全摘手術後、上から胸を見下ろした時、ちょっとしたふくらみが見えました。「いやん、先生の配慮?ちょっとふくらみあるやん!タヌキとか言ってごめん!」と思ったのもつかの間・・。

 ↓

それは、なんと!おなか中段のは・ら・に・く普段、胸の下に隠れていたんですね(^^)

そんな感じで、やっぱり変わっていないのです。わははーー。

ただ、副作用が和らぐとつい仕事をうっかりしてしまいます。どうにかならんかなぁ、これ?ブログ読者の皆様、仕事しすぎるな!と時々、見張っていただけらありがたいです。治療は1年半に及びます。皆さま、仕事し過ぎるなと、どうぞ見張ってやってくださいね。